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パニック症(パニック障害)の悪循環~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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安全を求めるほど不安になる?パニック症等の悪循環を断ち切る方法

安全を求めるほど不安になる?パニック症等の悪循環を断ち切る方法

2025/11/30

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

私たちは「ドキドキしたら、すぐ座る」「外出時は必ず薬や水を持つ」「不安になる場所は避ける」といったように不安を楽にするために、日常生活で色々な工夫をしています。

 

こうした工夫は私たちの日常における心の安定に役立ちますが、パニック症や広場恐怖、強迫性障害等においては、少々話が変わってきます。

 

というのは、こうした「安心のための行動が」、実は症状を長引かせている可能性を高くしてしまうんですね。


そこで今回は、分かりやすいようにパニック症(パニック障害)を例に安全のための行動、つまり「安全行動」が不安やパニックをどう維持してしまうのかということについてシェアしたいと思います。

 

1.安全行動とは何か~不安を「防ぐつもり」の行動~

 

 

パニック症(パニック障害)を抱えている方の多くは、何かしらの形で安全行動を取る傾向があります。

 

ここでいう安全行動とは、現在生じている不快な身体感覚や、恐れている「最悪の事態」を防ぐために、その場で取る行動のことを指します

 

例えば…

 

✔めまい=失神が怖くて、壁や人にすがる

✔動悸=心臓発作が怖くて、すぐ座る・水を飲む

✔「おかしいと思われる」が怖くて、人前から離れる

✔パニックにならないように、過度に周囲を確認する

 

これはパニック症を抱えているご本人にとっては、心の安定を保つための「命綱」のように感じられる行動です。

 

しかし研究では、これらがパニック症の回復を妨げてるということが示されています。

 

2.そもそも、なぜ安全行動が不安を長引かせるのか

 

 

安全行動の多くは、短期的には効果があります。

 

そのため、パニック症を抱えている方は安全行動を取ることによって不安場面を切り抜けたとき、こう考えがちです。


「~ということをしたから、最悪のことが起きなかった」

 

しかし、これが実は問題なのです。


こうした安全行動と短期的な効果の関連付けが、不安の核となる破局的信念(「倒れる」「死ぬ」「取り返しがつかない」など)を温存することになってしまいます。

 

さらに、論文では安全行動がもたらす「錯覚」を指摘しています。


安全行動によって、恐れている事態が起きなかったという現象は確かに生じます。

 

そして、それは安全有働のおかげだと解釈されやすく、結果として「次も同じ対処をしないと危ない」という学習が強化されます。


その結果、安全行動はますます多用されるようになり、そして症状は慢性化するようになってしまうのです。

 

3.「安全行動をやめた方」の変化~研究の結果より~

 

 

では、安全行動の効果や限界はどのようなものなのでしょうか?

 

その点を理解するために、この研究で何が行われ、どんな結果が出たのかを簡単にまとめますね。

 

研究では、不安症状のある参加者を「安全行動をやめる群」と「安全行動を続けたままの群」二つのグループに分けました。

 

そして、同じように不安場面に触れるスキル取得を行い、その後の不安の強さ・考え方の変化・症状の程度を比較しました。

 

ここで重要なのは、両群とも同じだけ怖い場面にとどまった点です。

 

違いは「安全行動を止めるかどうか」だけでした。

 

3-1.研究結果の要点

 

結果はとてもはっきりしていました。

 

● 安全行動をやめた方々の結果

 

主観的な不安の強さが大きく低下し、「倒れる」「おかしくなる」「取り返しがつかない」といった破局的信念が大きく弱まりました。

 

また質問紙による評価(不安・抑うつ・全体的症状)においても臨床的に意味のある改善が見られました。

 

● 安全行動を続けた方々の結果

 

不安は多少下がることはあったが破局的な考え方はあまり変わりませんでした。

 

そして、症状の改善も限定的でしかありませんでした。

 

3-2.なぜ「やめた群」のほうが回復したのか?

 

これは本当に重要なポイントです。

 

というのは、一見すると安全行動はパニック症から自分自身を守る効果があると信じがちになりますが、しかし結果は逆でした。

 

そして、そのメカニズムはどのようになっているのでしょうか

 

その違いを生んだのは、「安全かどうかを、自分の身体で学べたかどうか」という点にあります。

 

(Ⅰ) 起きなかったことを「事実」として学べるかどうか

 

安全行動をやめた方は、次のような体験をすることになります。

 

✔めまいがしても倒れなかった

✔動悸がしても心臓発作は起きなかった

✔人前で不安になっても、何も悪いことは起きなかった

 

そして、この体験は、誰かに言われた「大丈夫」でも、頭で考えた「たぶん平気」でもなく、「自分の身体で起きなかった」という事実として記憶されます。

 

これによって、「もしかして本当は危険でもなんでもなかったのでは?」という疑いが初めて心に入るようになります。

 

(Ⅱ)「安心できた理由」の書き換えが起こる

 

安全行動をしていると、心は「あれをしたから助かった」「あの行動がなければ危なかった」という発想を持つに至ります。

 

しかし、安全行動をやめると、この因果関係が崩れます。

 

すると、心の発想が次のように書き換わります。

 

✔「やらなくても、何も起きなかった」
✔「本当は、最初から大丈夫だったのかもしれない」

 

この認知(考え)の書き換えこそが、破局的信念が下がり、そしてパニック発作が減少する最大の理由です。

 

(Ⅲ)「耐えられた」という体験が、自信を生む

 

安全行動をやめて不安な場面を通過すると…

 

「不安になったけど、でも逃げなかった」

「そして何かが壊れなかったかったし助けは来なくても大丈夫だった」

 

…という体験が残ります。

 

これが、破滅的な結果は起こらないという感覚を育てます。

 

そして、この感覚が根づくほど不安は「危険のサイン」ではなく「一時的な状態」として扱えるようになっていけます。

 

(Ⅳ)「慣れ」だけでは回復が起きにくい理由

 

ただ、この研究では「慣化だけでは不十分」という重要な示唆も与えています。

 

安全行動を「続けながら」のアプローチは、確かに不安には「慣れる」かもしれません。

 

しかし「大丈夫だった理由」が安全行動に固定されてしまいます。

 

そのため不安は下がっても、「本当は安全」という核心には届かないのです。

 

逆に言えば、心が「安全」と理解するためには、「安全行動を取らなくても問題なかった」という経験が必要なんですね。

 

4.「コーピング」と「回避」の境界~行動そのものより「目的」が違う~

 

 

心理学の観点では、「同じ行動でも、なぜそれをするのかによって意味がまったく変わる」という重要な考え方があります。


それが、「回避(安全行動)」と「コーピング(対処)」を分ける最大の基準です。

 

そして結論から言うと回避(安全行動)はパニック症の緩和にはあまり役に立ちませんが、コーピング(対処)の場合はパニック症の緩和に役に立ちます。

 

4-1.回避とコーピングの違いは「行動の中身」ではない

 

一見すると…

 

✔呼吸を整える

✔水を飲む

✔その場を離れる

✔誰かに連絡する

 

…といった行動は「回避」にもなり、「コーピング」にもなり得ます。

 

そう考えると、効果は同じなのではないかと思われるかもしれません。

 

しかし、同じ行動が回避かコーピングになるかどうかは、「それを、何のためにしているか」という点なんですね。

 

4-2.「回避」になるか「コーピング」になるかを分けるのは「意図」


回避に近い状態とは、「これをしないと危険だ」「何かが起きるかもしれない」「ここにいたらまずい」という考えが前提にあります。


つまり、恐怖から逃げるために行動している状態と言えばイメージしやすいかもしれません。

 

ただ、その行動自体は「危険は現実に存在している」「対処しないといけないほど深刻だ」というメッセージを脳へ送り続けることになります。

 

そうなると、パニック症は改善されません。

 

一方、コーピングはこうした姿勢です。

 

✔「不安だけど、最悪の結果にはならない」

✔「一時的な反応だと理解している」

✔「怖さはあっても、必ずしも危険とは限らない」

 

つまり、不安を消すためではなく、波のようにやり過ごすための行動というイメージです。

 

別の言い方をすると、コーピングは恐怖を否定しない、無理にコントロールしない、でも潰されないための工夫をするという態度に近いのです。

 

回避(安全行動)にせよコーピング(対処)にせよ、行動は同じでも意図によって結果が異なるというお話をしました。

 

これを深呼吸を例に挙げて考えてみましょう。

 

もし…

 

✔「この息苦しさを止めないと危険だ」
✔「このままでは倒れる」

 

という思いで呼吸を整えている場合、それは回避のニュアンスが強くなってしまいます。

 

一方で…

 

✔「今、不安で呼吸が浅くなっている」
✔「この感覚を、少し楽にするために呼吸をしている」

 

という姿勢で行うならそれはコーピングです。

 

つまり、「破局的な事態を回避するための行動」なのか、「単に事態を軽減させるための行動なのか」という意図の違いなんですね。

 

このように行動自体は同じでも、脳に伝わるメッセージはまったく違ってきます。

 

4-3.境界線は「危険だという前提があるかどうか」

 

回避とコーピングの境界をシンプルに言えば…

 

「この瞬間を『危険』と見なしているか」
「この瞬間を『不快だけれど安全』と見なしているか」

 

という違いと考えるとよいでしょう。

 

そしてこの「捉え方」こそが、不安を長引かせるか、あるいは緩和していくかを決めてくんですね。

 

4-4.コーピングは「恐怖と戦わない」

 

コーピングの本質は、「不安を打ち消すことではなく、不安があっても問題は生じない」という体験を積むことです。

 

恐怖と戦えば戦うほど、脳は「敵がいる」と学習してしまいます。

 

しかし、「怖いままでも、何とかなる」「感じていても最悪の結果には至らない」という経験が蓄積されると、不安は「危険」としてではなく、「単なる脳の過剰な警報」として認識されるようになります。

 

5.今日からのセルフケア~「やめる勇気」を小さく持つ~

 

 

では、今までの内容を踏まえて今日からできるセルフケアをご紹介します。

 

ただし、安全行動を無理に一気にやめる必要はありません。以下の順で「実験」してみるという感覚で取り組んでいきましょう。

 

(1)安全行動を書き出す

 

まず、「私は何をして『最悪』『悪化』を防ごうとしている?」を可視化します。

 

(2)影響度で順位づけ

 

次に、取り組みやすいもの、つまり「安全行動がなくても耐えられそうなもの」に順番を入れ替えます。

 

(3)代替のコーピングを用意

 

そして、呼吸、足の感覚、周囲の物の色探しなど、「不安を扱う」道具を準備しましょう。

 

(4)短時間・短距離で試す

 

まずは、数分、数歩、1回というように、小さな単位から始めていきます。

 

(5)検証する

 

「安全行動なしでも、最悪は起きなかった」というを事実を確認していきましょう。

 

まとめ

 

いままで見てきましたように、不安やパニックが続く背景には、「安心しよう」として行ってきた安全行動が関係していることがあります。

 

そして研究では「安全行動を少しずつ手放すことで、不安そのものが弱まっていく」ということを示しています。

 

大切なのは、無理をせず、小さく試しながら、「やらなくても大丈夫だった」という体験を重ねることです・

 

そもそもパニック症とは「性格」の問題ではありません。

 

だから、変えることができるのです。

 

まずは、小さなことから始めてくださいね。

 

参考論文

An experimental investigation of the role of safety-seeking behaviours in the maintenance of panic disorder with agoraphobia

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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