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愛着障害と感情調節~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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大人の愛着障害と感情のセルフケア~不安定な愛着と感情調節との関係~

大人の愛着障害と感情のセルフケア~不安定な愛着と感情調節との関係~

2025/12/03

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

私たちの心は、幼い頃から周囲との「つながり(愛着)」の中で育まれます。

 

そして、その愛着の形(安全か、不安定か、不回避か)は大人になってからの不安感や抑うつ、人間関係や感情の扱い方に大きく影響します。

 

そして近年の研究では、「大人の愛着スタイル」と「感情のセルフケア能力」が、うつや不安などの心理的な不調と深く関係していることが示されてきました。

 

今回は、研究論文をもとに、愛着スタイルが感情の扱いにどう影響するのか、そしてどのようなセルフケアがあるのかを解説いたします。

 

1. 愛着スタイルと感情調整の関係

 

 

愛着障害で最も顕著な大変さの1つに感情調節のスキル(情動調節能力)の難しさがあります。

 

これは単に自分自身の感情に対する困難さだけでなく、対人関係にも大きな影響を与えるという意味で非常に重要な意味を持ちます。

 

そこで、ここでは「そもそも愛着スタイルって何?」というところから初めて感情説についてシェアしたいと思います。


1-1.成人の愛着スタイルとは何か

 

心理学では、乳幼児期に養育者とのあいだで築かれた関係性が、その後の「自己のとらえ方」や「他者との関係の築き方」の原型になると考えられています。

 

ここで1点注意が必要なのは、ここで言う「養育者」とは多くは親ですが、広い意味では周囲の大人や学校の先生等も含むという点です。

 

ただ、親をはじめとする周囲の大人との関係が子供にとって成人期において大きな影響をもたらすということは重要な点です。

 

このように「幼少期の養育者との関係の影響」を専門用語を用いると「内的作業モデル」と呼ばれるものです。

 

内的作業モデルとは…

 

✔「自分はどんな存在か」

✔「他者はどんな存在か」

✔「人間関係とはどのようなものか」

 

…という基本的な信念や期待の集合体であり、主に幼少期の養育者との関わりの経験から形成され、その後の対人関係や感情・行動のパターンを方向づける心の枠組みのことを指します。

 

この内的作業モデルは、大人になって以降の対人関係や恋愛関係、仕事上の人間関係のスタイルにも影響を与え続けます。

 

そして愛着スタイルは、主に以下のタイプに整理されます。

 

● 安全型

 

安全型の方は、「自分には価値があり、他者は信頼できる存在である」という基本的な対人信念を持っています。

 

人との距離感の調整が比較的自然であり、助けを求めることも、ひとりで過ごすことも極端になりにくい傾向があります。

 

そして感情面では、次のような特徴が見られます。

 

✔自分の感情に気づきやすい

✔感情を抑圧しすぎず、過剰にもなりにくい

✔困ったときに人に頼ることに強い抵抗がない

✔対人ストレスがあっても回復が比較的早い

 

研究上も、安全型の愛着を持つ方は、感情調整能力が高く、精神的な安定度が高い傾向が示されています。

 

● 不安型

 

不安型の方は、「私は本当に愛される存在なのだろうか」「見捨てられるのではないか」といった不安を抱きやすい愛着スタイルを持っています。

 

そのため、人との距離が近くなりやすく、相手の反応に強く影響を受けやすい傾向があります。

 

パートナーシップにみられる「見捨てられ不安」などを抱えている方は、この愛着スタイルを持ってることが数多くみられます。

 

また、感情面では以下の特徴が報告されています。

 

✔感情が強く揺れ動きやすい

✔相手の言動に過敏に反応しやすい

✔不安や怒りが持続しやすい

✔「嫌われたのでは」と考えやすい

 

このタイプの方は、感情を過剰に感じやすく、ストレス状況では感情がコントロールしきれなくなることも珍しくありません。

 

● 回避型

 

回避型の方は、人との距離を保つことを重視しやすく、不安定型とは正反対の性質、つまり感情の依存を避ける傾向があります。

 

この愛着スタイルを持っている場合、幼少期に「感情を出しても受け止めてもらえなかった」経験を持つことが珍しくなく、「人に頼るより自分で何とか『しなければならない』」という価値観を形成しやすいと考えられています。

 

そして感情面での特徴としては次のものが挙げられます。

 

✔感情を意識しない傾向

✔弱さを見せることへの抵抗

✔親密になりすぎることへの違和感

✔困りごとを人に相談しづらい

 

表面的には自立的で安定して見える場合もありますが、内面では感情に気づきにくく、処理しきれないストレスが蓄積されやすく、気づいたら抑うつや不安が良くなってしまっている、というパターンに陥りがです。

 

これらの愛着スタイルは、性格ではなく、「環境との相互作用によって形成された心の傾向」です。

 

つまり「生まれつき」ではなく、「これまで養育者どのような関係の中で生きてきたか」によって形づくられる心理構造なのです。

 

1-2.感情調整(Emotion Regulation/ER)とは何か

 

感情調整とは、単に「感情をコントロールする」ことではありません。

 

心理学における感情調整とは、感情のメカニズムを踏まえて以下のように理解されています。

 

✔自分の感情に気づくこと

✔感情を理解すること

✔感情を否定せず受け入れること

✔感情に基づいた行動を調整すること

 

上記のように感情調節とはプロセスであり、かつ包括的な意味を持っています。

 

たとえば以下のような能力が感情調整に含まれます。

 

✔「今、不安を感じている」と自覚できる

✔「なぜそう感じたか」を理解しようとする

✔感情を抑え込まず、暴走もさせない

✔感情に飲み込まれず、行動を選べる

 

感情調整がうまくいっている状態とは、「ネガティブな感情がない」状態では決してありません。

 

むしろ「ネガティブな感情があっても振り回されすぎない」状態のことを指します。

 

1-3.愛着の不安定さ → 感情調整の困難 → うつ・不安へ

 

今回参照にした研究によると、愛着スタイルとメンタルヘルスの関係は、感情調整を介して説明できることが示されています。

 

つまり…

 

愛着の不安定さ
↓ ↓ ↓
感情調整の困難
↓ ↓ ↓
うつ・不安症状の出現

 

という流れです。

 

研究では、不安型・回避型の人ほど、感情調整がうまくいきにくく、感情調整の困難さが、うつ症状や全般性不安障害(GAD)と強く関連するということが示唆されています。

 

また、愛着スタイルそのものよりも、そのあとに生じる問題である「感情調整能力」が症状の強さを予測するとされています。

 

例えば、具体的に言うと、次のような傾向を中核的な要因として有するとされています。

 

✔自分や他者の感情の受容ができない

✔ストレス時に思考が極端になる

✔不安や怒りを自分から切り替えられない

✔衝動的な行動が出やすい

✔一度生じたネガティブ感情が長引いてしまう

 

ここで非常に重要なのは、愛着スタイルが不安定や回避型であっても、感情調整能力が育てば、心理的リスクは軽減されうるという点です。

 

つまり、「過去は変えられなくても、今の心の扱い方は変えられる」ということが、研究の結果として支持されています。

 

つまり、このモデルは感情、特にネガティブな感情に振り回されるという問題が「そもそも生まれつき」でも、「性格の問題」でもなく…

 

「生育環境という過去」

「感情調整スキルという現在のスキル」

 

という2つの要因が重なり合って、現在の心理状態が形づくられていると言えるんですね。

 

2.セルフケアへのヒント~愛着ではなく「情動調整」から心を整える視点~

 

 

愛着スタイルと心理的な不調の関係は、どうしても「性格上の問題」や「人付き合いのクセ」「パートナーとの不和」として現れがちです。


しかし研究が示しているのは、実際の影響の中心にあるのは「感情調整のあり方」だという点です。

 

つまり、「愛着が不安定だから不安になる」のではなく、「感情をどう感じ、どう扱っているか」ということが重要なんですね。

 

こうしたスタンスの方が、うつや不安の状態に大きく関係しているという理解に基づくものであり、臨床的にも現実的です。

 

この視点に立つことで、「性格を変えなければならない」という無理なことを行う必要性は一切なく、「いまの感情との付き合い方を整える」ことで回復の道が開けるという、現実的なケアの方向性が見えてきます。

 

そこでここでは、心理療法の現場で重視される感情(情動)調整の考え方をもとに、日常でも取り組めるステップをご紹介します。

 

2-1.「いまの感情」に気づくことが回復の出発点

 

感情調整の第一歩は、まずは感情のコントロールではなく感情を認識することから始まります。

 

✔「不安を感じている」
✔「心が緊張している」
✔「寂しさがある」

 

このように、いま自分の内側で起きていることを、評価せずに言葉にしていくことが重要です。

 

愛着障害を持っておられる方の少なくない方が、「感じていることがよくわからない」「不快な感情に名前をつけるのが苦手」「気づいたときには感情に飲み込まれている」という状態に陥りやすくなっています。

 

しかし、「胸が苦しい」「落ち着かない」などの身体感覚をヒントに「私は今、不安を感じているようだ」とラベリングするだけで、感情は「漠然とした苦しさ」から「取り扱える対象」へと変わります。

 

このように感情にラベリングをするということは、「感情を取り扱える」ということから、臨床的に見て非常に重要かつ効果的なアプローチです。

 

2-2.感情を「処理」する前に「受け止める」こと

 

次に必要なのは、感情を早く消そうとするのではなく、感情の存在そのものを否定しないことです。

 

愛着障害を抱えておられる方は、「こんな気持ちを持ちたくない」「こんな自分はダメだ」という思いを強く抱きがちです。

 

こうした内的な否定は、感情を抑え込むことにつながり、それが結果的にうつや不安を深めることが少なくありません。

 

感情調整において重視されるのは、「感情をなくすこと」ではなく、「抱えられる状態をつくること」です。

 

例えば…

 

✔「そう感じるのも無理はない」
✔「つらかったね」

 

というような言葉を自分に向けることは、心理療法においても重要な「感情の安定化技法」の一つとして位置づけられています。

 

感情は、抑え込むほど強まります。


しかし、優しく受け止められるほど、穏やかに変化していきます。

 

2-3.愛着ではなく「つながりの感覚」を育てる

 

愛着スタイルそのものを変えることは簡単ではありませんし、そこを標的にすることは臨床的に見て現実的ではありません。


しかし、愛着スタイルによって影響を受けている感情調整能力ならば後天的に育てることができます。

 

特に重要なのが、「安全だと感じられる関係性」を意識的につくることです。

 

それは必ずしも家族やパートナーである必要はなく、受け入れてくれる相手や気を張らなくてよい関係、そして、そのままで受け入れてくれる環境が「安全である」という認識や安心感をもたらしてくれます。

 

そしえ、こうした「安全である」とい体験の積み重ねが、感情の安定感を底上げします。

 

2-4.情動調整スキルは「習慣化」で育つ

 

情動調整能力は、生まれつきの能力ではなく、スキルとして習得し、習慣化によって育てていくことが可能となります。

 

例えば、ネガティブな感情に「巻き込まれた」場合は、以下のような方法が役立ちます。

 

✔呼吸に意識を向ける

✔身体の感覚に注意を戻す

✔自分に優しい言葉をかける

✔「いま、ここ」の感情を記録する

✔強い感情が出る場面を振り返り、何が起こっていたのかを理解する

 

これらは一見すると地味に見えるかもしれませんが、感情調整の基礎を支える非常に重要な実践です。

 

感情日記やジャーナリング(書く瞑想)の活用も、「なんとなく苦しい」を「理解できる状態」、「扱える状態」に変えることに繋がります。

 

2-5.必要なら、ひとりで抱え込まない選択を

 

長年にわたる愛着の揺らぎや、慢性的な不安・抑うつは、自力だけで乗り越えようとすると、かえって苦しくなったり、息詰まりやすくなります。

 

そのようなときは、心理カウンセラーとともに…

 

① 感情の扱い方を理解する

② 安全な関係性を体験する

③ 思考と感情を整理する

 

というプロセスを歩むことが、回復の近道になることもあります。

 

もしもセルフケアで行き詰まりを感じたり、状況が複雑化してしまっている場合は、心理家運セリイングを活用することも1つの選択肢として持っていて損はないでしょう。

 

まとめ

 

愛着スタイルの問題で自分自身を責める必要は全くありません。


変えるべきは「愛着スタイルそのもの」ではなく、感情との向き合い方です。

 

愛着は過去の経験の積み重ねですが、情動調整は「これから育つスキル」です。

 

過去に縛られ支配される人生ではなく、「いまの自分」から整え直せる道は、確かに存在します。

 

愛着障害を優しく抱きしめて、そして前へ進んでいってくださいね。

 

参考論文

Adult Attachment, Emotion Dysregulation, and Symptoms of Depression and  Generalized Anxiety Disorder

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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