心理カウンセラーが教える不安が軽くなる3つの方法~認知行動療法・ACTに基づく心の整え方~
2025/12/08
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて…
「心配事をぐるぐると考えてしまう」
「小さな不安が頭から離れない」
このような相談は、カウンセリングの臨床でも非常に多いものです。
多くの方はこれを「ネガティブ思考」や「性格の問題」と捉えがちですが、心理カウンセラーはそのようには考えません。
というのは、こうした心配や不安は脳が「危険を探すモード」に入りやすいだけで、誰でも起こり得る自然な反応だからなんですね。
しかし、考えすぎて行動できなくなったり、不安の度合いが強い、睡眠や集中力に影響が出る
といった悪循環が生じるのであれば、心理的な介入があった方がよいでしょう。
ただ、こうした不安になりやすい傾向はセルフケアでも解決が可能です
そこでこのブログでは、心理学の知見、具体的に言うと私の専門である認知行動療法とACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)をもとに不安症をやわらげ、上手く不安と付き合うための3つの方法をシェアしたいと思います。
1. まずは「不安の正体」を書き出し明確にする

不安とは、多くの場合は「もやもや」というように実体のない「曖昧なもの」として存在するときに最も強くなります。
「よくわからないけれど不安」
「何か悪いことが起こりそう」
こうした曖昧さは、不安をさらに悪化させてしまいます。
そのため認知行動療法では、曖昧な不安を「見える化する」ことを最初のステップにしています。
その、曖昧な不安を「見える化」するためには、書き出してみるという方法が効果的です。
1-1.書き出すことで浮き上がるもの
紙に書き出すプロセスで、漠然とした不安が「具体的な内容」へと変わっていきます。
そうすると、例えば次のようなものが浮かび上がってきます。
✔私は何を恐れているのか?
→「仕事で失敗するかもしれない」「体調が悪化する気がする」
✔この不安には、どの程度の根拠があるのか?
→過去の一度の失敗から予測していないか?事実ではなく想像ではないか?
✔どこから先が「脳が勝手に作り出したもの」なのか?
→脳が勝手に最悪の未来を勝手に作り出していないか
心は、曖昧なものに対しては強いネガティブな反応を示すという性質を持っています。
しかし、不安の正体がはっきりすれば不安は弱まります。
1-2.書き出した後に大切な3つの視点
さて、書き出した後はここからが本番です。
認知行動療法では、書き出した不安に対して次のように整理を行います。
(Ⅰ)対策可能な不安だけに集中する
全ての不安に同じエネルギーを注ぐと、間違いなく心は疲弊していってしまいます。
そのため、具体的に行動できる不安(例:「締め切りに遅れそう」)には対策を立てて、行動ではどうにもならない不安(例:「将来が漠然と不安」)と切り分けて扱います。
(Ⅱ)根拠の弱い不安は「事実」と分けて扱う
私たちは自分の中で生じた感情を「現実のもの」として捉える傾向を持っています。
しかし、感情は全て「現実のもの」とは限らず、生じた感情には実は根拠がないというケースは珍しくありません。
そのため、「不安=現実」とは必ずしも言い切れないんですね。
例えば、多くの方が悩まれる「きっと嫌われているはず」は「根拠のないもの」であって、「事実」ではないことが多いのです。
そのため、不安といった感情を「事実と確認できるものと、そうでないもの」とで区別することが大切になります。
(Ⅲ)不安を否定するのではなく、「選別」する
不安といった感情は、「完全に消そう」とすると、逆に不安は強くなります。
というのは、不安を消そうと思えば不安に着目しなければならず、その着目によって不安がさらに大きく見えてしまうという逆説的なメカニズムがあるからです。
そのため、認知行動療法では「役に立つ不安」と「そうでない不安」を分ける、ということを行います。
そもそも、不安は悪者ではありません。
役立つ形に整えることで、私たちを守るチカラにもなります。
1-3.認知行動療法から見た「不安に対する対処法」
認知行動療法の目的は 不安をゼロにすることではありません。
ゼロにすることを目的としないのは、いったん生じた感情をゼロにすることは相当に難しいため、現実的ではないからです。
また不安は人間が生きるために必要な感情であり、先述しましたように完全に消すことはできませんし、消す必要もありません。
そのため大切なのは、不安を「扱える形」に整えること、ということになります。
漠然とした不安という霧の中で立ちすくむのではなく、霧を少しずつ晴らし、事実を見て、取れる行動を見極めるプロセスが大切であり、また効果的です。
その第一歩が、「書き出して整理する」という、とてもシンプルですが効果的な作業なんですね。
2. 不安を「紙に置く」~書くことで思考のループを断ち切り、心を回復させる技法~

不安は、頭の中にとどまっている限り、際限なく増幅し続けます。
そして、そうしたぐるぐる思考(反すう思考)は脳が疲れて思考が止まるまで続いてしまいます。
このように「考えても答えのないこと」を何度も反芻してしまうという問題は、認知行動療法でいう「思考のループ(反すう)」です。
しかし、紙に書き出すだけで、このループは確実に弱まります。
2-1.書くことが不安を軽減する理由(心理学・脳科学の観点から)
書くという行為は、脳内で次のような変化を起こします。
(1)不安が「頭の外に移動」することで、脳の負荷が軽くなる
脳は、未処理の問題を「ずっと考え続ける」クセがあります(ツァイガルニク効果)。
しかし、紙に書くことで「この問題は外部に保管された」と認識し、脳の警戒状態が緩みます。
(2)感情の勢いが弱まり、客観的な視点が戻る
不安は「感情のエネルギー」が高いほど敏感に強く感汁という傾向を持っています。
そして、その状態だと前頭前野(理性的判断の領域)が働きにくくなります。
そのため書くことで言語化されると、感情の強度が下がり、前頭前野が働きやすくなります。
(3)思考のループが止まりやすくなり、睡眠や集中力も改善する
書くことは「脳の整理整頓」と言えます。
そのため、書き出すことで夜間の不安や寝る前の考えすぎが軽減されるケースも多く報告されています。
(4)長期的にストレス耐性が上がるという研究結果
ポジティブ・ネガティブにかかわらず、「感情を言語化する習慣」はストレス耐性を高めることが複数研究で示されています。
そのため書き出すという行為は不安を減らすのではなく、「扱える強さに整える」行為と言えます。
2-2.効果的な書き出しの方法
書き出すという行為は、決して難しいものではありません。
というのは、誰かに見えるものではないため、乱雑でも、短文でも、箇条書きでも問題ないからなんですね。
では、その具体的な方法をお伝えしますね。
(1)今、心配していることをそのまま書く
● 具体例
✔仕事でミスしそう
✔人間関係のトラブルが不安
✔体調が悪くなりそうで怖い
こうした文章化の際、その文章の良し悪しは考えないでください。
単純に「ぐるぐるする」という漠然としたものでも良いのです。
(2)いま感じている身体感覚を書いてみる
● 具体例
✔胸が重い
✔お腹がざわつく
✔肩に力が入っている
このように身体の緊張を言語化すると、不安が「感情」から「体験」へと変わり、扱いやすくなります。
(3)最悪の想定を一度書き、その対処法も並べる
これは認知行動療法の「問題解決技法」の一部です。
具体例
①最悪:上司に怒られる
②対処:事前に確認する/必要なら謝罪する
ネガティブな感情や思考に陥っているとき、どうしても脳は最悪の状況を考えます。
そのため、あえて最悪の状態を想定して、それに対する対処を書くことで「自分には対処能力がある」という認知(考え)が所持るようにします。
ただ、最悪を書くだけでは不安は増してしまいます。
そのため、必ず「できる対策」もセットにすることがポイントです。
(4)今日できた「小さな前進」を1つ書く
● 具体例
✔5分だけ散歩できた
✔メールを1通返せた
✔不安について書き出せた
不安の渦中では「できていること」が見えなくなるため、意識的に小さな達成を書き出す作業は、回復力(レジリエンス)を高めてくれます。
2-3.書くことの目的は、「完璧な記録」ではなく「不安を外に置く」こと
書くという作業をする場合、先述したように誰かに見せるものではありませんから、極端に言えば殴り書きでも全く問題ありません。
大切なのは、「不安を頭の中に閉じ込めない」ということです。
紙の上に移動させて、脳を休ませることができるようになると、不安との戦いではなく、不安との「距離」をつくるということができるという認知行動療法の技法です。
3. 自分の「不安パターン」を知る~ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の視点~

不安が強い方の多くは、「気づいたらネガティブ思考の渦に巻き込まれている」という体験を繰り返しています。
これは性格の問題ではなく、脳の性質上、どうしても生じてしまう問題です。
ACTでは、この状態を「気づかずに思考と融合している状態(フュージョン)」と呼びます。
そしてまず不安と上手に付き合うための第一歩は、自分の脳がどんなパターンで不安を作り出すのかを理解することです。
3-1.まずは、自分の「不安を生みやすい脳のクセ」に気づく
不安を感じやすい方には、次のような思考パターンが見られます。
(1)「最悪のシナリオ」を自動的に想像する
これは具体例があった方が分かり良いと思います。
例えば…
少し上司の表情が硬い →「怒られるかもしれない」→「職場に居られなくなるかも」
この「飛躍した予測」は、脳が危険を回避しようとする自然な反応です。
ただ、これが頻繁に生じている場合は、ケアが必要になってきます。
(2)曖昧な状況を、悪い方向に解釈する
これも具体例をお伝えしますね。
LINEの返信がない →「嫌われた?」
実際には相手が忙しいだけでも、不安脳は「危険」「問題発生」と判断してしまうんですね。
(3)小さな違和感を「重大な危機」と受け取る
またまた具体例です。
「少し体調が悪い」→「重大な病気かもしれない」
そもそも不安脳は、常に危険を探します。
これらは全て、脳がその人本人を守ろうとする働きであり、決して悪いことではありません。
ただし、意識的に「距離を置くスキル」がないと、不安が暴走しやすくなるんですね。
3-2.不安に巻き込まれそうなときの「切り替えの問い」
ACT(アクト:アクセプタンス&コミットメントセラピー)では、不安を消そうと闘うのではなく、「自動的に出てくる思考と距離を取るスキル」を大切にします。
というのは、感情というものは自然発生的に生じるものなので、消そうとするよりも上手に付き合うという方法をとる方が現実的なんですね。
そんため、以下の問いかけはそのための強力なツールとなります。
(1)「これは事実? それとも私の解釈?」
多くの不安は「事実」ではなく、「脳が作った解釈」です。
(2)「これは不安が語っているだけで、現実はどうだろう?」
思考を「ただの言葉」として扱うだけで、感情の強度が下がります。
(3)「この心配は、今の私に役立つだろうか?」
これは、ACTが重視する効果の高い問いかけです。
「役に立つ不安」なら行動につなげる価値がありますが、「役に立たない不安」なら手放す方向へシフトできます。
3-3.ACTの核心~不安を消す必要はない~
多くの方が「不安をなくしたい」と願いますが、ACTでは次のように考えます。
不安は生きていくうえで自然に発生する。
だから「不安ゼロ」を目指すほど、かえって苦しくなる。
代わりにACTが目指すのは、不安を抱えたままでも、自分が大切にしたい方向へ進む力を育てることです。
不安があっても行動できるようになると、人生の選択肢が広がり、「不安に支配されない生き方」が可能になります。
これは「不安を克服する」というより不安を「飼いならし」ながら、自分の価値に沿って生きる方法です。
まとめ~心配性は「治す」ものではなく「整える」もの~
不安を感じる力は、本来とても大切な能力です。
というのは、「クリーンな不安」は、私たちに未来の危険性を教えてくれます。
しかし、「ダークな不安」の場合、私たちの心を苦しめるだけです。
そのため、「ダークな不安」が過剰になると心が疲れてしまいます。
今回の3ステップは…
✔ 不安の中身を知る
✔ 頭の外に出す
✔ 脳のクセに気づく
…という、「不安を消すのではなくコントロールする土台づくり」です。
心配性であるというのは、丁寧に考え、準備し、慎重に行動できるという強みがあります。
不安を敵にせず、味方になる形に整えていってくださいね。
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こころのケア心理カウンセリングRoom
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電話番号 : 090-5978-1871
兵庫でメンタルケアを実施
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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