なぜ気持ちが満たされないのか?~虚しさの正体は「価値観の迷子」~
2025/12/12
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
カウンセリングをしていると、「何か空しい」「空っぽな感じがする」「今やっていることの意義を見出せない」というお話をよく耳にします。
これらは、いわゆる「虚無感」「空虚感」というものです。
ここでは、言葉を統一するために「虚しさ」としますね。
虚しさを感じるのは、結論から申し上げると「大切にしたい価値観と、今の生き方が噛み合っていない」という状態から生じやすいんですね。
そこで、このブログでは心理学的な視点から、虚しさが生まれるメカニズムや大切にしたい価値観の見つけ方、そして価値観に沿って虚しさを和らげる具体的なステップをシャアしたいと思います。
1.改めて考えたい「虚しさ」とは

虚しさは、うつ病やPTSD、依存症などと一緒に語られることがあります。
確かに、心のご病気によって虚しさが出現することは珍しくありません。
しかし、重要なのは「虚しさ=心の病」とは限らない、という点です。
心理学的に見ると、虚しさは、「人生の方向感覚を失っている」、あるいは「自分にとって意味あるものと距離が生まれている」、「役割や期待に応えることが優先されすぎている」というときに生じやすい感情です。
つまり虚しさは、「今の生き方を見直してほしい」という心が持つニーズの現れと言えるでしょう。
2.「虚しさ」に共通する4つの特徴

虚しさは漠然としていて言葉にしにくいという特徴を持つ感情です。
しかし心理学的に見ると、いくつかの共通した体験パターンがあります。
そもそも、虚しさは性格的な問題というよりも「心と現在の生き方のズレ」が生じているときに発生しやすい感情です。
その点を踏まえて「虚しさ」にはどのような特徴があるのかを見ていきましょう。
(Ⅰ)感情や目的が感じられない
虚しさを抱える方の多くが、「嬉しいはずの出来事に心が動かない」「悲しい出来事が起きても、どこか他人事のよう」、あるいは「日々を『ひとまず、こなしている』という感覚を持っておられます。
これは感情が失われたわけではありません。
むしろ、長い間感情を無理したり、我慢を続けていた、あるいは過度に期待に応え続けるといった状態が続いた結果、心が「感じるチカラを一時的にオフにした」可能性があります。
心理学ではこれを「情動の鈍麻」「意味の希薄化」と捉えます。
これは、目的や意味が感じられないのも同じ仕組みです。
自分自身が大切にしたい価値観と結びつかない行動を続けると、「なぜこれをやっているのかわからない」という感覚が、どうしても強まってしまいます。
(Ⅱ)人とのつながりが実感できない
虚しさの特徴として非常に多いのが、孤独感です。
例えば、周りに人がいるのにに孤独を感じたり、会話はしているのに、何か満たされないという感覚ですよね。
もちろん、これは対人スキルの問題ではなく、関係の中で「本当の自分」としてふるまえていない状態で起こるものです。
例えば、嫌われないように振る舞ったり、相手の期待に合わせ続けるという人間関係が続くと、
心はこう感じます。
「私はここにいるけれど、必要とされているのは『私』ではない」
この感覚は心に非常に大きなネガティブな影響を与えます。
その結果として、「人と関わるほど孤独が強まる」という逆説的な現象が生じます。
(Ⅲ)世界との距離感がある
虚しさ、という感覚が強くなると、「世界が薄く感じられる」「現実に参加していないような感覚」、「ガラス越しに人生を見ている感じ」といった表現が出てくることがあります。
これは、自己と世界のつながり感(意味づけ)が弱まっている状態で生じやすいものです。
自分自身の価値観に沿った行動が減ると、当然「世界と自分との関係」が失われやすくなります。
そのため、「自分が何のためにここにいるのかわからない」という感覚が生じることになります。
この状態は、違った観点から見ると、心が「これ以上消耗しないよう距離を取っている」ということもできるでしょう。
(Ⅳ)身体感覚としての不快さ
虚しさは感情だけでなく、身体感覚として訴えられることも珍しくありません。
例えば、胸の奥の重たさや、胸に空洞がある感じ、だるさや気力が湧かない、呼吸が浅くなるといった現象です。
これは、自律神経やストレス反応とも深く関係しています。
このように、自分自身が行っている行動の意味や「何のためにやっているの?」という方向感を失った状態が続くと、は「エネルギーを出さないモード」に入りやすくなります。
理由は簡単で、自分自身にとって意味がないと判断される行動によってエネルギーが消耗されるのを防ぐためです。
そのため、これは怠けで決してなく、生理的な反応だといえるでしょう。
3.虚しさの意味を考えると…

虚しさという感情は、当たり前ですが決して心地よいものではありません。
しかし、ACT(アクト:アクセプタンス&コミットメントセラピー)では、虚しさを取り除くべき不快感情とは捉えません。
むしろ虚しさは、自分の生き方が、「価値観から離れていることを知らせる内的体験」として位置付けられているからです。
虚しさが強く現れるとき、多くの場合その背景には、「自分をないがしろにしてきた」というものがあります。
例えば周囲の期待や役割を優先し続けていたり、「こうあるべき」「これが正解」という「ルール」に縛られた生き方になっていたり、あるいは自分が本当に大切にしたい方向性を後回しにしてきた、といった状態がまさにそうです。
これをACTの言葉で言えば、「価値ではなく、思考や評価に導かれた行動」が続いてきた状態、ということになります。
このとき心は、「今のまま進み続けると、あなたが大切にしたい人生から遠ざかってしまう」という形で、虚しさを通してメッセージを送ってきてくれているんですね。
そのため、虚しさは敵ではなく、「価値に立ち返るための心のコンパス」なのです。
3-1.ACTにおける「価値観」とは何か
価値観をACTの観点からとらえなおすと、それは「達成すべきゴール」や「条件」ではありません。
例えば、お金があることや評価されること、人がうらやむような成功していること…。
これらは結果であって、価値観そのものではありませんよね。
ではACTで扱う価値観はどのようなものかというと…
✔どんな人として在りたいか
✔人生にどう向き合いたいか
✔どんな態度・姿勢を選び続けたいか
…という、「行動の方向性」です。
例えば、誠実さを大切にして関わりたいという思いや、人の痛みに目を向ける優しさを持ち続けたい、学び続ける姿勢を持ちたい、というものがそうです。
あるいは、自分のペースを尊重して暮らしたい、というものも価値観に含まれます。
ここで重要なのは、これらは「終わりのない指針」であるということです。
つまり、結果やゴールではないため、いつでも今この瞬間の行動として何度でも選び直すことができるということなんですね。
3-2.虚しさは「間違っている」というサインではない
ACTでは、「虚しさを感じている=失敗している」とは考えません。
むしろ、これまで一生懸命適応し続けていた、そして期待に応え、役割を果たしてきた。
しかし、その結果として自分の価値観から離れていることに気づいた。
…という、気づきの段階に入ったサインと捉えます。
大切なのは、虚しさを消そうとすることではなく、虚しさはあるものとして、不安や迷いがあっても自分が大切にしたい方向へ、小さく行動を選び直すことです。
ACTが目指すのは、「虚しさのない人生」ではなく、虚しさがあっても大切にしたい価値観に沿って生きられる人生です。
その結果として「自分自身を生きる」ということができるようになるんですね。
4.価値観を見つけ、人生に取り戻すための3つのステップ~「虚しさ」を出発点にするという選択~

虚しさという感情の存在は、自分自身の価値観を生きていない、つまり自分自身を生きていないということが出発点になる場合は多々あります。
しかし、「価値観」と言われても、ピンときませんよね。
「私の価値観って何だろう?」と感じる方が大半だと思います。
しかし、大切にしたい価値観が明確になることによって、自分の人生を生きることができる可能性は大きく高まっていきます。
価値観は、頭で考えて「決める」ものではありません。
多くの場合、今感じている違和感や虚しさの中に、すでに手がかりがあります。
そこで、ここでは虚しさを避けるのではなく、虚しさを「価値観に沿った生き方へ戻るための入口」として使う方法をお伝えします。
(Ⅰ)虚しさを「消す」のではなく、立ち止まって感じる
先述しましたように、価値観から離れて生きているとき、心は「虚しさ」という形で知らせてくれます。
しかし、この感情を無理に打ち消そうとすると、「何が大切なのか」という情報まで一緒に見失ってしまいます。
そのため、まずは「虚しさ」を評価せずに観察してみてください。
つまり、どんな場面で虚しさが強まるか、何をしているときに心が空白になるか、体のどこでその感覚を感じるか、ということを観察するんですね。
当然ですが、これは自己否定の作業ではありません。
あくまでも「観察」ですので、自分の内側に起きている変化を、丁寧に読み取る作業だとお考え下さい
(Ⅱ)「足りないもの」ではなく「望んでいたあり方」を言葉にする
次に、虚しさに対して次のように問いかけてみます。
✔本当は、どんな感覚を取り戻したいのか
✔どんな自分で生きていたかったのか
✔何を大切に扱っていなかったのか
ここで大切なのは、「自分を責める」ということでもなく、また「正解を出そう」としないことです。
はっきりした言葉でなくても構いません。
例えば、「もっと丁寧に関わりたかった」「追い立てられずに過ごしたかった」「誰かの役に立っている実感がほしかった」こうした感覚的な表現こそ、価値観の芽になります。
(Ⅲ)「うまくいっていた過去」ではなく「生きていた感覚」を探す
価値観を明確にするうえで、以下の点を振り返ってみてください
✔少しでも心が動いていた瞬間
✔時間を忘れて没頭していたこと
✔評価とは関係なく「やってよかった」と感じた体験
例えば、「誰かの話をじっくり聴いていた時間」や「一人で考え事をしていた静かな時間」、あるいは「自分なりに、誠実に向き合っていた場面」などがそうです。
そこに共通する「姿勢」や「関わり方」の中に、大切にしたい価値観が潜んでいます。
つまり、「私は~というものを大切にしたかったんだな」という再発見が生まれるということですね。
その再発見の内容が、大切にしたい価値観です。
(Ⅳ)価値観は「見つけたら終わり」ではない
価値観は、見つけて終わりではなく、日常の小さな行動として選び直していくものです。
価値観を明確にした後、その価値観に従って、少し丁寧に人と関わってみたり、自分のペースを尊重する選択をしたり、あるは誠実さを大切にした言葉を選ぶ、といったことです。
これらは、本当に小さな選択であり、小さな行動です。
しかし、こうした小さな行動の積み重ねが、虚しさを「『自分自身を生きる』感覚」へと変化していきます。
まとめ~虚しさは、価値観を見つけるための入口~
価値観は「結果」ではなく「あり方」「生き方」です。
そして、価値観を生きるとは、今この瞬間の行動を選び直すこと、つまり自分自身の人生を生きることにつながります。
もし今、虚しさを感じているなら、それは虚しさで感じやすい「何もない」という意味ではなく、「本当に大切なものに戻る準備が始まっている」状態だといえるでしょう。
虚しさの奥には、大切にしたい価値観、そして生き方が眠っています。
ぜひ、それを見つけて自分らしい生き方を目指してくださいね。
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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