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社交不安症(社交不安障害)の心理的支援とは~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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社交性不安症と心理支援~支援の臨床的視点より~

社交性不安症と心理支援~支援の臨床的視点より~

2025/12/18

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

社交不安症(社交不安障害)は、社会的な活動に影響を与えるという意味で、当事者の方にとっては大変お辛い問題と言えます。

 

また、(これは社交不安症に限った話ではありませんが)「少し楽になったと思ったのに、また不安が強くなった」というように、回復のプロセスの中で生じる波に対して不安を感じる方も少なくありません。

 

しかし、社交不安症の回復は一直線ではありません。

 

「良くなったり、戻ったりしながら進む回復」というのが一般的であり、それは研究によっても明らかにされています。

 

そこでこのブログでは、不安症状の典型的な変化パターンやなぜ停滞や揺り戻しが起こるのか、そしてどう理解すると回復につながるのかという観点を研究結果をもとにシャアしたいと思います。

 

1.不安症の回復は「平均」では語れない

 

 

今回参考にする論文が示している前提となっているのは、平均値だけを見ても、実際の回復像は分からないという点です。

 

つまり、多くの治療研究では「治療前より症状がどれくらい減ったか(平均)」によって効果を測ることがほとんどです。

 

しかし実際の臨床の現場では、早く楽になる方もおられますし、ゆっくり変化する方や一度良くなってから停滞し、そして再び回復へ向かっているというように、回復のプロセスは様々です。

 

そのため、この研究は症状の変化を「パターン」として捉えることで、回復の多様な姿を明らかにしています。

 

2.社交不安症の「典型的な症状変化パターン」

 

 

先述しましたように、社交性不安に対する心理的支援の効果は必ずしも一直線に良くなっていくとは限りません。

 

そこで、今回参照にした論文では、治療過程における不安症状の経過を詳細に分析しました。

 

そして、その結果いくつかの典型的な「症状変化パターン」が確認されています。

 

ただ、注意していただきたいのは、これらのパターンは「良い・悪い」という評価ではなく、回復がどのような形で進みやすいかを示す道筋として理解してくださいね。

 

では、社交不安障害の回復における3つのパターンをご紹介します。

 

(1)初期に大きく改善し、その後は緩やかに変化するパターン

 

このパターンでは、治療の比較的早い段階で、前より少し楽に感じたり、不安が前ほど支配的ではなくなる、また不安を感じることを避けずに向き合える場面が増えたといった目に見える変化が起こります。

 

● なぜ初期に変化が起こりやすいのか

 

論文が示唆しているのは、初期改善が次のような要因と結びついている点です。

 

まず、不安の仕組みを理解できるようになります。

 

そして次に「不安=危険」という捉え方が少し緩み、回避を減らすことで「思ったより耐えられた」という体験が生まれます。

 

その結果、自分には対処する力がある、という感覚(自己効力感)が芽生えるという流れです。

 

これらは不安そのものが消えたというよりも、不安に対する構え方が変わった結果として生じていることが見て取れます。

 

● 臨床的に大切なポイント

 

初期に変化が起こるといいましたが、重要なのはこの初期改善が「劇的」である必要はないという点です。

 

例えば、不安が10→8になった、あるいは避けていた場面に一度だけ挑戦できたという、こうした小さな変化が、その後の安定につながる出発点になるんですね。

 

それらの点を踏まえて研究では、初期のわずかな変化が、その後の回復軌道を決める可能性があることを示唆しています。

 

(2)改善と停滞を繰り返しながら進むパターン

 

臨床的に多くの方に当てはまるのが、この「波打つような経過」です。

 

つまり…

 

✔良くなったと思った矢先に、また不安が強くなる

✔新しい場面に直面すると、不安が再燃する

✔以前ほどではないが、つらさを感じる時期が出てくる

 

…というものですね。

 

このような経過を経験すると、「うまくいっていないのでは」「元に戻ってしまったのでは」と不安になる方も少なくありません。

 

しかし、波はあっても「平均値」は改善に向かっていっているんですね。

 

● 研究が示す重要なメッセージ

 

実際に研究では、このパターンについて「治療が失敗しているサインではない」と明確に述べています。

 

むしろこれは、新しい行動に挑戦していたり、これまで避けてきた状況に触れてみる、あるいは不安を感じながらも向き合おうとしているという、回復過程に特有の「自然な揺れ」と捉えらるのが妥当です。

 

なぜ不安は一時的に強まるのかというと、不安は慣れた回避パターンを崩したときに一時的に強まる性質を持っています。

 

つまり、新しい取り組みをしているという時点で社交不安症という「慣れた」状況から外へ出ようとするので、不安を感じるのは当然の反応です。

 

しかし、その不安というものは「不安が出る=間違っている」ではなく、不安が出る=新しいことに取り組んでいる」ということを意味している場合も多いんですね。

 

これらの点を考えると、「不安に取り組んでいるプロセス」という視点を持つと、「揺れ」を回復の一部として受け止めやすくなります。

 

(3)変化がゆっくり現れるパターン

 

多くの方が「回復していけるのだろうか?」と不安を感じるのが、このパターンです。

 

このパターンの場合、初期の段階では「正直、あまり変わっていない気がする」と感じる方も珍しくありません。

 

しかし、時間をかけて振り返ると、①以前ほど強く反応しなくなっている、②回避の範囲が少しずつ狭まっている、③不安があっても生活を続けられている、といった緩やかな改善が積み重なっていることが見えてきます。

 

● このパターンに関係しやすい要因

 

論文では、このパターンの場合は次のような背景が考えられると示唆されています。

 

まず、安心して取り組める関係性が整うまでに時間がかかること。

 

次に、不安の背景に長年の経験や複雑な要因があるという場合

 

最後は生活環境や対人関係の調整に時間を要してしまう。

 

このケースの場合は、変化は「症状の数値」では見えにくく、生活全体の質の変化として徐々に現れることが多くなる傾向があります。

 

「早く良くならない=効果がない」ではない

 

この研究論文が与える重要な示唆は、そもそも回復のスピードは人によって大きく異なるという点です。

 

そのため、早い変化が起こらなくても安全感が少しずつ育っている、あるいは新しい理解が内側で整理されている、といったプロセスが進んでいる可能性があります。

 

そのため、回復には大きく分けて3つのパターンがありますが、「正しい形」があるわけではありません。

 

研究が示す症状変化パターンから言えるのは、回復は直線的ではなく、揺れや停滞はよくあること、そして変化のスピードにも個人差がある、ということです。

 

そしてどのパターンにも共通しているのは、変化は必ず「積み重ね」で起こるという点です。

 

この「積み重ね」という理解は、社交性不安と向き合う方が「自分は遅れている」「失敗している」と感じすぎないための、大切な視点です。

 

3.回復を妨げるのは「揺れ」ではなく「誤解」

 

 

先述しましたように、回復のプロセスにおいては波はどうしても生じやすいものです。

 

そして社交性不安の回復過程について、研究から読み取れる非常に重要な臨床的ポイントがあります。

 

それは、回復を妨げやすいのは、症状が揺れること自体ではない、という点です。

 

不安が強まったり、楽になったりを繰り返すことは、繰り返しお伝えしていますように、回復過程ではごく自然に起こります。


ただ問題になりやすいのは、その「揺れ」に対してどのような意味づけをするかです。

 

3-1.不安の再出現が「失敗」と解釈されるとき

 

回復途中で不安が再び強まったとき、多くの方の頭には次のような考えが浮かびます。

 

「また不安が出た=振り出しに戻った」

「やっぱり自分は変われない」

「この方法は意味がないのでは」

 

これらは自然な反応ですが、しかし研究の視点から見ると、この考えは回復を阻みやすい解釈でもあります。

 

なぜなら、このような解釈は、①それまでの変化を「なかったこと」にしてしまう、②一時的な状態を「全体像」と誤認してしまう、③新しい行動や挑戦を控える方向に働く、という問題が生じやすいからです。

 

3-2.「揺れ」をどう解釈するかが回復の分かれ道

 

そのため重要になるのが、症状の揺れそのものよりも、「揺れの捉え方」が回復を左右するという視点です。

 

不安が再び強まった場面を「失敗した証拠」、「努力が足りない証拠」、そして「やっぱり回復できない自分の証拠」と捉えると、人は自然と行動を止め、回避を強めてしまいます。

 

その結果として、新しい経験が積み重なることがなくなり、そして不安を修正する機会が失われるます。

 

その結果、回復のプロセスが途中で止まってしまうという悪循環に入りやすくなります。

 

3-3.論文が示すもう一つの視点~不安の再出現は「異常」でも「後退」ではない~

 

論文の視点から考えると、不安が再び出てくることは新しい状況に直面しており、行動範囲が徐々に広がりつつあり、そして不安だったために、これまで避けてきたテーマに触れている可能性を示すサインとしても理解できます。

 

つまり、「不安が出た=回復に取り組んでいるプロセス途中」である場合も少なくありません。

 

実際に心理カウンセリングにおいて心理療法を受けているのであれば、その段階で社交性不安症に取り組んでいる、ということが言えます。

 

ということは、回復に向けたプロセスは進んでいるんですね。

 

この視点がないまま回復を進めると、不安が出るたびに「やめたほうがいい」「元に戻ろう」という判断になり、結果的に回復の芽を自ら摘んでしまうことにつながってしまいます。

 

3-4.「良くならない自分はダメだ」という自己評価の落とし穴

 

もう一つ、臨床でよく生じる回復を妨げやすい誤解があります。

 

それが…

 

✔「他の人はもっと早く良くなるはず」

✔「自分は遅れている」

✔「こんなことでつまずく自分はダメだ」

 

…といった自己評価の問題です。

 

繰り返しになりますが、回復のスピードや程度には大きな個人差があります。

 

それにもかかわらず回復を「一直線で進むもの」と想定してしまうと、「早く変わること」を成功の基準にしてしまうことになります。

 

そうなると、回復途中の自然な停滞や揺れが、自己否定の材料になってしまいます。

 

そして大きな問題なのは、この自己否定は不安そのものよりも強く、行動を止める力を持つことがあります。

 

また波によって不安が再燃すると、「このやり方は合っていない」「意味がないのでは」と感じることもあります。

 

こうした考えが生じるのはごく自然なものなのですが、これは必ずしも方法の問題ではなく…

 

✔期待していた変化と現実のズレ

✔回復過程に対するイメージの誤解

✔一時的な状態を全体評価に使ってしまう

 

…ということから生じている可能性があります。

 

つまり回復が「少しずつ」「揺れながら」進むものだという理解がないと、途中経過を過小評価してしまいやすくなるんですね、。

 

まとめ:回復を止めるのは「症状」ではなく「意味づけ」

 

今回参考にした研究論文から導かれる重要なメッセージは、次の点に集約されます。

 

不安の揺れは回復過程では自然に起こることであり、問題になりやすいのは、揺れを「失敗」と解釈すること。

 

そして、そうした誤解があると、回復のプロセスが止まりやすくなってしまう、ということです。

 

回復とは、不安が二度と出なくなることではなく、不安が出たときの受け止め方が変わることでもあります。

 

この視点を持つことが、社交性不安と長く向き合う上での、大きな支えになります。

 

回復のプロセスで波が生じ不安を感じるのは当然のことです。

 

しかし、それと同じくらいに「波」が生じることは当然の事であり、回復のプロセスが止まってしまっていたり、後退しているわけではない、という点を意識してくださいね。

 

参考論文

Typical symptom change patterns and their predictors in patients with social anxiety disorder: A latent class analysis

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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