なぜ私たちは最悪を想定して動けなくなるのか~不安との上手な付き合い方~
2025/12/21
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
不安という感情は常に未来志向です。
他の感情が「現在」や「過去」の場合が多いのに対して、不安だけは常に未来に向けられたものなんですね。
そして不安というものは、常に「最悪の結果」を想定してしまいます。
その結果、判断ができなくなったり、動けなくなるという問題が生じます。
典型的な状況は「迷ってしまう」というときです。
不安が頭を支配し、そして決定することができなくなり、その結果迷いが生じてしまう…
こうした経験は誰にでもありますよね。
そこでこのブログでは、不安と迷いとの関係についてシェアしたいと思います。
1.迷いは「慎重さ」ではなく「不安の暴走」から生まれる

私たちの脳には、生き延びるための重要な役割があります。
それは 「危険を予測し、回避すること」 です。
このため脳は本来、失敗する可能性はないか、あるいは損をする危険はないか、さらには傷つく事態は起きないか、という自然に最悪のシナリオを先回りして考える仕組みを持っています。
これは性格的な問題というよりも、進化的に備わった正常な機能だと考えるのが妥当なものです。
しかし、この本来私たちを守るべき脳の機能が、問題を引き起こすことも珍しくないんですね。
1-1.不安が強いと、脳は「安全装置」を過剰作動させる
脳の危険予測システムは、私たちの生存のためには必要不可欠なものです。
しかし、この危険予測システムが過剰に働くと、当然ですが問題が生じます。
例えば、本来は「可能性の一つ」にすぎない不安が、まるで起こることが確定しているかのように感じられる、というものがそうですよね。
この時、その想定されている未来は感情レベルでは「すでに起きている危機」として体験されます。
その結果、失敗の可能性ばかりが際立ったり、成功や中立的な結果が視界から消えてしまう、また選択肢そのものが危険物のように見えてくる、という状態に陥ります。
1-2.決断が「行動」ではなく「リスク行為」に変わる瞬間
この段階では、脳にとって①決断する、②一歩踏み出す、③選択肢を一つに絞る、といった行為は、前向きな行動ではなく、危険に飛び込む行為として認識されます。
すると脳内では、次のような誤った安全判断が作られます。
✔「今は決めない方が安全だ」
✔「動かなければ傷つかない」
✔「保留していれば失敗しない」
確かに、こうした発想は一時的には安心感をもたらしてくれます。
しかし、その安心は短期的な効果でしかなく、その内容は錯覚に近いものです。
なぜなら、その内容は私たちをより良い選択へと導いてくれないからです。
1-3.「決めない安心」が、長期的な苦しさを生む
こうした脳の仕組みは、「迷い」という決断の先送りを生じさせます。
しかし決断を先送りしてしまうと、当然ですが問題は解決しませんし、選択肢は頭の中に常に未解決のまま居座り続けることになります。
これによって不安は背景ノイズのように鳴り続けることになります。
その結果、迷い続けること自体がストレスになっているのに、それに加えて「動けない」、という別の問題が伸し掛かる状態が生まれます。
ここが重要なポイントで、迷っているという状態は「不安によって思考と行動がロックされている状態」なんですね。
そして、思考と行動がロックされると、不安は次のアクションを起こします。
1-4.迷いが長引くほど、不安は「正しい判断」に見えてくる
不安が続くと、つい私たちははこう考え始めます。
✔「迷いが深い=危険が高い」
✔「不安が強い=やめた方がいい」
つまり、「根拠の乏しい不安」そのものを判断材料にしてしまうということです。
しかし不安は、正しさの指標でもありませんし、現実の予測精度も決して高くありません。
そもそも不安という感情は危険信号というよりも「将来に備えた方がいい」という信号なんd背うね。
しかし、不安は多くの場合脳の過剰なアラームとなってしまいます。
しかし、「音が大きい=危険が大きい」とは限りません。
2.「正解を選ぼう」とするほど、決断は遠のき、時間が流れる

不安によって迷いにはまり込んでいる方ほど、無意識のうちに選択や決断に過剰な意味づけをしていることがあります。
たとえば、頭の中にこんな前提がありませんか。
✔この選択で今後の全てが決まってしまう
✔もし間違えたら、もう取り返しがつかない
✔ちゃんと考え抜いて「完璧な答え」を出さなければならない
これらは一見、迷いや不安に対して真剣に向き合っているようにも見えますが、心理学的には、不安を増幅させる典型的な思考パターンなんですね。
その理由は、脳というものは「正解が一つだけ」と思うほど動けなくなるという性質を持っているからです。
人の脳は本来、「複数の選択肢を比較しながら、だいたい良さそうなものを選ぶ」ことは得意です。
しかし、正解は一つしかなく、かつそれを今、絶対に当てなければならないという条件が加わると、状況は一変します。
脳にとってこれは、試行錯誤できないテストのような状態になります。
つまり、間違えたら終わり、やり直しが効かない、そう感じた瞬間、脳はその状況を危険と判断し安全装置を作動させ、ある反応を生じさせます。
それが「迷い続ける」「決めない」という反応です。
2-1.現実の選択は、ほとんどが「途中変更できる」
しかし、冷静に現実を見てみるとどうでしょうか。
仕事の選択も、合わなければ配置換えや転職ができますよね。
人間関係も、距離を調整することで適切な関係を作ることができます。
また学びや進路も、後からの方向転換はできます。
つまり、私たちの人生の多くの選択は「一発勝負」ではないんですね。
しかし、それでも不安や迷いが止まらないのは、「今ここで、最善の答えを出さなければならない」という思い込みが強すぎるからです。
別の言い方をすると、不安は完璧主義を生んでしまうということです。
ただ、何かを選択するときに完璧主義があると「絶対的な正解」を求めがちになってしまいます。
しかし実際の「正解」は選ぶものではなく、育てるものです。
現実の人生では、最初から完璧な選択、誰が見ても正解だと分かる答えが存在することは、ほとんどありません。
多くの場合、実際に選んでみて試し、そして修正しながら続けるというこのプロセスによって「結果的に良かった選択」になっていきます。
つまり正解とは「選ぶ前に存在するもの」ではなく、選んだ後の行動によって形作られるもの、なんですね。
そのため、「最善でなければならない」という発想は迷いを固定してしまいます。
つまり、「これ以上の選択肢があるかもしれない」「もっと良い答えを見逃しているかもしれない」、あるいは「今決めるのは早すぎるのではないか」という発想です。
この思考は一見すると慎重ですが、実際には 不安を根拠にした完璧主義です。
「最善でなければならない」、また「後悔してはいけない」と考えるほど、選択は重くなり動けなくなります。
2-2.決断を近づけるための視点
そこで、不安による迷いが強いときは次のように問い直してみてください。
✔この選択は、本当に一発勝負だろうか
✔途中で調整できる余地はないだろうか
✔完ぺきではなく、60点でも進んだ方が楽になるのではないか
決断を完璧にしようとすると苦しくなります。
それよいも、前に進むために、いったん「仮決定」を行うという感覚の方が楽になります。
つまり、「これが正解かどうか」よりも「選んだ後、その決断をどう扱うか」に意識を向けたとき、決断は現実的な一歩に変わっていきます。
ここで必要なのは、「選んでから育てる」という発想への切り替えです。
3.不安が強くて前に進めないとき
では、不安による迷いが生じた時、どのようにすればよいのでしょうか?
その方法をご紹介しますね。
3-1.迷いを抜ける視点①~「これが最善か?」ではなく「これでも進めるか?」~
不安が強いとき、先述したように私たちは完璧主義に陥るため、脳は「正解探し」を始めます。
その理由は単純で、正解を当てられれば安全だと感じるからです。
でもここで問題が起きます。
✔最善が分からない
✔最善を証明できない
✔間違いの可能性がゼロにならない
この3つが揃うと、脳は「まだ決めるな」とブレーキを踏み続けてしまいます。
その結果として、迷い=安全確保みたいな状態になってしまいます。
● 「最善」から「前進可能性」へ質問を変える
こうした状態を改善するためには、以下にような質問を問いかけるのが効果的です。
これが最善か?(正解テスト)→✖
これでも進めるか?(前進の仮決め)→ 〇
この切り替えが効く理由はシンプルで、現実の多くは 「やってみて調整する」ほうが精度が上がるからです。
● 不安が強い方向けの「進める基準」
不安が非常に強い場合、上記の「これでも進めるか?」を、もう少し具体化すると動きやすくなります。
例えば…
✔致命傷にならないか(取り返しがつくか)
✔小さく試せるか(一気に決めなくていい形にできるか)
✔修正ポイントがあるか(やりながら微調整できるか)
たとえば「転職するか迷う」であれば、いきなり辞める前に情報収集だけする、面談だけ受けるという行動を取る方も多いことでしょう。
この方法の応用、つまり「試運転」に落とすことができます。
こうすると不安の脳が行動を受け入れやすい形になります。
● 「成功/失敗」ではなく「進む/直す」で考える
不安が強いと、選択は①「成功か、失敗か」、②「正解か、不正解か」、③「取り返しがつくか、終わるか」という発想に陥ります。
でも現実は多くの場合、「進む」「途中で直す」「必要なら引き返す」の連続です。
そのため、「最善」を狙うよりも「進めるサイズにして前に出る」ほうが、結果的に良い決断になりやすいんですね。
3-2.迷いを抜ける視点②~ネガティブ予測は「事実」ではなく「仮説」~
これは重要な視点です。
迷っているとき、頭に浮かぶのは多くの場合、ネガティブな未来の映像です。
つまり「うまくいかない」「嫌われる」「取り返しがつかない」という結果が想定されるんですね。
しかし、ここで大事なのは、これらはまだ起きていない出来事についての「仮説」だということです。
● 不安の特徴:確率ではなく「印象」で判断する
不安は感情なので、統計のように冷静に考えるということはありません。
不安によって強く想像できる「嫌な感じのリアルさ」が「ネガティブな映像」を鮮明にさせます。
こうなるほど、脳は「実際に起きそう」だと判断してしまいます。
つまり、不安が強いと「想像が強い = 起きる確率が高い」と錯覚しやすくなってしまうんですね。
これが「不安で動けない」の中心メカニズムです。
● 「仮説」を「検討可能な材料」に戻す
そのため不安に飲まれそうなときは、次の手順が効きます。
まず、いま浮かんだ予測を、そのまま言葉にしてください
✔「嫌われるかもしれない」
✔「失敗するかもしれない」
次に、その言葉にラベルを貼ってください(これが重要です)
✔「これは未来の仮説だ」
✔「これは単なる不安の予測だ」
最後品、現実的な形に落としこみましょう。
✔起きたとして、何が困る?
✔困る度合いはどれくらい?
✔対処は何ができる?
ここで初めて、不安は「止める力」から不安本来の機能である「備える力」に変わってくれます。
● ネガティブ予測が出ても前に進めるの頭の中
不安が出ない方というのは非常にまれで、ほとんどの方は不安を感じます。
しかし、その不安が出ても行動できる、対処できる方は次のように考えています。
✔「これは事実じゃない。予測だ」
✔「予測は外れることも多い」
✔「起きたら起きたで対処する」
✔「今は小さく試す」
つまり「不安がない」ではなく「不安の扱い方が上手い」なんですね。
不安はゼロにならなくても、扱い方が変わると行動は戻ります。
そのため、不安を消そうとはせず、むしろ上手に扱うにはどうしたらいいか、ということを考えるのが大切になってきます。
● 不安で止まるときの実践フレーズ
最後に、文章をそのまま使える形にしておきます。
✔「最善かどうかは分からない。でも、これでも一歩は出せる」
✔「これは事実じゃない。不安が作った仮説」
✔「一気に決めない。試せるサイズにする」
✔「動いた後に、修正していい」
こうすることで、不安を上手に扱うことができるようになります。
まとめ~「迷わない人」「不安を感じない人」になる必要はない~
心理的に健康な状態とは、迷わないことでも不安を感じないことではありません。
迷いながらも動けること、そして不安があっても、選べること。
これが現実的で持続可能な目標です。
その持続可能な目標の達成のために、上記の内容を試してみてくださいね。
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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