ぐるぐる思考が止まらない理由~認知行動療法で読み解く反すう思考の正体~
2025/12/25
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
私たちは本来、考える力によって問題を解決し、危険を回避し、よりよい選択をしてきました。
しかしその「考ええる」というものが、同じ内容を何度も繰り返し考える方向に使われると、心はかえって消耗していきます。
例えば、過去のイヤな出来事を改めて考えてみたり、将来の不安について考えてみたり…
こうした思考は、一見すると問題解決への取り組みのように思えます。
しかし、「問題について考えている」というつもりでも、その内容のほとんどが現時点で答えの出ない者だったらどうでしょう。
つまり、答えが出ない問いを延々と反復している状態です。
このような思考パターンを、心理学では「反すう思考(ぐるぐる思考)」と呼び、ケアの対象として扱います。
というのは、このぐるぐる思考は先述したように答えは出ませんし、そして何よりもご本人の心理的精神的な状態を悪化させるからです。
そこで今回は、この反芻思考、つまりぐるぐる思考について考えてみたいと思います。
1.反すう思考が心に与える影響

認知行動療法の研究では、反すう思考(ぐるぐる思考)は単なる「考えすぎ」の域を超え、心の回復を妨げる思考プロセスとして知られています。
具体的には、ぐるぐる思考が続くと、次のような影響が起こりやすくなります。
(1)抑うつ気分が長引きやすくなる
ぐるぐる思考は、言ってみればネガティブな出来事・感情・自己評価を何度も再生する行為と言えるでしょう。
そして、そのぐるぐる思考の結果は、①気分が自然に回復する機会が減る、②「もう終わった出来事」が現在進行形の苦しみとして残る、③自己批判的な思考が強化される、という悪循環が生じてしまいます。
認知行動療法では、抑うつが長引く背景として「出来事そのもの」よりも、「その出来事を何度も反芻し続ける思考習慣」が問題になることが多いため、ぐるぐる思考がケアの対象の1つとなります。
(2)不安や緊張が強まる
ぐるぐる思考は過去に関するものだけではなく、未来の出来事にも向かってしまいます。
例えば、「もし○○だったらどうしよう」、「最悪の結果になったら…?」「準備が足りないのでは」、というものですね。
これが問題なのですが、こうした思考を繰り返すことで、脳はまだ起きていない出来事を「現在の危険」として処理してしまいます。
その結果、交感神経が優位になり続け、身体が常に警戒状態になり緊張するため、リラックスする感覚を失ってしまう、といった状態に陥りやすくなります。
そして不安が強い方ほど「考えて備えよう」としますが、ぐるぐる思考は答えが出ないという問題を持っているため、考えることが未来に対しての備えではなく、不安そのものを増幅させる行為になりがちになってしまいます。
(3)問題解決能力が低下する
一見すると矛盾しているようですが、反すうが続くと「考え続けている」のに、実際には問題解決力は下がってしまいます。
その理由やメカニズムは明確です。
まず思考の焦点が「自分を責めること」に偏よってしまいます。
そして新しい視点や選択肢が見えなくなり、その結果行動より思考が優先されるようになってしまいます。
つまり、問題解決への行動がぐるぐる思考に絡み捉えてしまうために、その第一歩が進めなくなるんですね。
認知行動療法のアプローチでは、問題解決は①情報整理、②現実的な選択肢の検討、③そして小さな行動という段階を経て無理なく進めるようにします。
しかしぐるぐる思考は、「なぜこんな自分なのか」「もっと違う結果があったはずだ」といった答えの出ない問いを繰り返すため、行動につながりにくくなるんですね。
(4)睡眠や集中力に悪影響が出る
ぐるぐる思考は、脳を「仕事モードから休ませない」という特徴があります。
そのため、布団に入ってから思考が止まりませんし、何度も同じ考えが浮かんでしまいます。
そして、それが長じて日中も集中力が続かない、といった状態が起こりやすくなります。
また睡眠不足や集中力低下は、さらに不安や抑うつを強め、ぐるぐる思考をさらに増やす要因にもなってしまいます。
1-1.重要なポイント~反すうは「考えているのに前に進めない思考」~
ぐるぐる思考の最大の特徴、そして問題点は次の通りです。
まず、ぐるぐると考えている感覚はあります。
そのため、ご本人は真剣に向き合っているように感じられ、何か大事なことと向き合っている気がします。
しかし実際には気分は消耗しますし、行動は止まってしまいます。
そのため、状況は変わらないという状態が続いていきます。
つまりぐるぐる思考とは、「思考という形をとった停滞」なんですね。
1-2.認知行動療法的な理解~ぐるぐる思考は「性格」ではなく「習慣」~
ぐるぐる思考を「ネガティブに考える自分のせい」と考える方が多いのですが、実際は躁ではありません。
ぐるぐる思考そのものは、心を守ろうとして身についた思考のクセ・習慣です。
しかし、「考える」ということの本来の役割を果たしていないことが問題なんですね。
そのため認知行動療法ではぐるぐる思考を当事者の方の性格的な問題として考えることはありません
その代わりに、①ぐるぐる思考に気づく、②ぐるぐる思考と距離を取る、③別の関わり方ができるようになる、というアプローチを取ります。
そのため、ぐるぐると考えてしまう自分を否定する必要はありません。
ただ、その思考が本当に助けになっているかを一度、静かに見直すことが、ぐるぐる思考からの回復への第一歩になります。
2.「考え続けている自分」に気づくことが第一歩~認知行動療法が重視する「止めない介入」~

ぐるぐる思考に悩む方ほど、そのぐるぐる思考が止まらないことで悩んでおられます。
そして、そのぐるぐる思考を何とか止めようと考えます。
しかし、認知行動療法ではぐるぐる思考を「力ずく」で止めようとはしません。
というのは、思考を止めようとするほど、脳はその思考を逆に「重要なもの」として再点火して、さらにぐるぐる思考を悪化させるからです。
2-1.認知行動療法が最初に行うのは「コントロール」ではなく「気づき」
認知行動療法での第一歩は、非常にシンプルです。
「今、私は何をしているのか?」
こうやって「ぐるぐる思考にハマっている自分」に気づくことから始めます。
具体的には、次のように自分に問いかけます。
✔いま考えていることは、本当に問題解決だろうか
✔新しい情報や行動につながっているだろうか
✔同じ考えを何度も再生していないだろうか
この問いかけは、思考の内容を変えるためのものではありません。
また「考えを評価する」ためでも、「正しい考えに修正する」ためでもありません。
目的はただひとつ、それは思考のプロセスに気づくことです。
2-2.「内容」ではなく「状態」に注目する
ぐるぐる思考に巻き込まれているとき、多くの方「何を考えていて、その考えは正しいのかどうか、そして間違いを防げないか」というように考えがちです。
しかし認知行動療法では、何を考えているかよりも、「どう考えているか」を重視します。
つまりこれは、「一度考えれば十分なこと」か、それとも「何度も同じ回路を回っているだけか」という「状態」に目を向けます。
ここに気づけた瞬間、思考と自分の間に、「わずかな隙間」が生まれます。
2-3.「また始まっているな」という気づきのチカラ
認知行動療法では、つぎのようなセルフトークをとても大切にします。
✔「あ、また同じことを考えているな」
✔「ぐるぐる思考モードに入っているな」
これは自分を否定するための言葉ではなく、むしろ回復のサインです。
というのは、思考の中に「飲み込まれている状態」から思考を「観察できる立場」へと移動できているからです。
この瞬間、私たちは「ぐるぐる思考そのもの」ではなく、ぐるぐる思考を「観ている自分」になっています。
2-4.気づきがもたらす3つの変化
「考え続けている自分」に気づくことで、次の変化が起こり始めます。
(1)感情の勢いが弱まる
気づくことによって、思考と感情が完全に一体化しにくくなります。
(2)選択肢が戻ってくる
「今は考え続ける」「一旦手を止める」など、柔軟な行動を選べるようになります。
(3)自分責めが減る
「またやってしまった」ではなく、「脳がいつものやり方を勝手にしているだけだ」と理解できるようになります。
2-5.反すうから抜けるためのスタート地点
重要なのは、ぐるぐる思考をゼロにしようとしなくてもよく、またすぐに切り替えられなくてもよい、ということです。
それよりも…
気づく→また巻き込まれる→また気づく
…というプロセスに乗ることが大切なんですね。
認知行動療法では、この繰り返し自体が回復のプロセスになるため、非常に重要視しています。
つまり、「また始まっているな」と気づけた回数だけ、ぐるぐる思考から一歩外に出ることができるんですね。
まとめ
ぐるぐる思考は、それを止めようとするほど、逆に強化されやすくなっていきます。
そのため、認知行動療法では、まず「気づくこと」を最優先にしてケアを進めます。
その上で大切なのは、「今、問題解決か? 反すうか?」という問いかけを行う事です。
そして「また始まっているな」と気づいたときが、ぐるぐる思考から抜け出す出発点となります。
考え続けてしまう自分というのは、性格がネガティブだからではありません。
単に脳の「考えるチカラ」が逆効果な方向に働いているためのものです。
まずは、その状態にそっと気づくこと、そこから、ぐるぐる思考との関係は確実に変わり始めます。
最初はぐるぐる思考に気づく、ということから始めてみてくださいね。
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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