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双極症(双極性障害)のケアが上手くいかない時の対処~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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双極症のケアで「うまくいかない」と感じたときに~ガイドラインの「その先」を見据えた心理支援の視点~

双極症のケアで「うまくいかない」と感じたときに~ガイドラインの「その先」を見据えた心理支援の視点~

2026/01/02

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

うつ病や双極性障害と言った心の病については、エビデンス(科学的根拠)に基づいたガイドラインが存在します。

 

当然、エビデンスを重視する私にとっては、そうしたガイドラインは役立つものであり、非常に有用です。

 

しかし一方で、ガイドラインに沿ったケアがフィットしない方は珍しくなく、むしろフィットしない方の方が多いのでは?という感覚すらあります。

 

もちろん、これはガイドラインを否定するものではありません。

 

ただ、エビデンス「だけ」に準拠したケアには限界があります。

 

そこで今回は心の病の中でも長期的なケアが必要となる双極症(双極性障害)をテーマにエビデンスベースド(科学的根拠に基づいた)の意義と限界、そして双極症に対するケアにおいて、どのような視点が必要なのかを、研究論文を踏まえつつ考えてみたいと思います。

 

1.エビデンスベース治療の「落とし穴」

 

 

今回参照にする研究論文の冒頭で著者らは、次のような問題を提示しています。

 

それは、現在の双極症治療ガイドラインの多くは、ランダム化比較試験(RCT)を根拠に作られています。

 

RCTは科学的には非常に重要ですが、実は次のような特徴があります。

 

✔症状が比較的単純な人が対象になりやすい

✔重い併存症(不安障害、物質使用、人格特性など)がある人は除外されやすい

✔命に関するリスクが高い人は研究から外されることが多い

 

つまり、実際の臨床でよく出会う「複雑なケース」ほど、RCTの対象になっていないという現実があるのです。

 

その結果、ガイドラインは「最初の治療として何を使うか」については教えてくれても、「効かなかったときに次に何をするか」については、ほとんど指針を与えてくれていないんですね。

 

2.双極性障害は「慢性疾患」であるという前提

 

 

双極症のケアで最も重要な視点の一つが、双極症は「一過性の病気」ではなく、「長期的な経過をたどる慢性疾患である」という理解です。

 

双極症というと、「躁状態やうつ状態が治まれば回復した」、あるいは「薬が効いていれば大丈夫」と捉えられがちですが、実際の臨床ではそうしたものはあまり当てはまりません。

 

2-1.エピソードを繰り返すこと自体がリスクになる

 

双極性障害の特徴として、気分エピソード(躁・軽躁・うつ)を繰り返すほど、病状が複雑化しやすいという傾向があります。

 

具体的には、気分エピソードを重ねることで、次の再発までの間隔が短くなる、比較的軽いストレスでも気分が崩れやすくなる、加えて治療に対する反応性が低下するという変化が起こりやすくなります。

 

これは気分エピソードを重ねるごとに脳や神経系の感受性そのものが変化していく可能性がある、という理解が背景にあります。

 

2-2.認知機能への影響という見過ごされやすい問題

 

双極症において重要視する櫃夜があるものと言えば、認知機能への長期的影響があります。

 

具体的には、気分エピソードを繰り返すことで、①注意力の低下、②記憶力の低下、③判断力・遂行機能の低下といった変化が起こりやすくなることが珍しくありません。

 

これらは、気分が安定している「寛解期」にも残ることがあり、ご本人にとっては…

 

✔症状が楽になったのに仕事のミスが多い

✔以前より考えるのに時間がかかる

✔集中力が続かない

 

…といった形で実感されることがあります。


そうした背景があるため、双極症の認知機能に関する問題は慢性的な疾患経過の中で生じうる、機能的な変化として理解する必要があります。

 

2-3.社会的・職業的機能への影響

 

さらに双極性障害が長期化することで、就労の継続が難しくなったり、対人関係が不安定になりやすいという問題も生じます。

 

そして、その結果として自尊感情が低下しやすいといった社会的・職業的機能の低下が起こりやすいことも見過ごせない問題です。

 

特に厄介なのは、症状が落ち着いている時期であっても…

 

✔「また再発するのではないか」という不安

✔過去の失敗体験による自己不信

✔周囲の理解不足による孤立感

 

…といったものが積み重なり、生活の質そのものが下がってしまうケースが少なくない点です。

 

双極症に限らずですが、心の病を抱えている方は、日常生活や対人関係、社会的活動が上手くいかないという問題を抱えています。

 

そのため必然的に「失敗経験」が多くなります。

 

その失敗経験と双極症の再発に対する不安が重なり自尊心が低下することで、悪循環が生じるという結果になります。

 

2-4.「進行性」という言葉の本当の意味

 

ここで言う「進行性」とは、必ずしも悪化し続けるという意味ではありません。

 

研究論文が示しているのは、適切なケアや予防がなされない場合、病状や生活への影響が複雑化しやすい、という問題です。

 

裏を返せば、早い段階から適切な治療と心理的支援を受けることで、この進行を緩やかにし、生活の安定を保つことは十分に可能だということになります。

 

2-5.なぜ「寛解を維持する」ことが重要なのか

 

このような背景から、双極症の治療目標は「症状を一時的に抑えること」では不十分であり、「寛解をできるだけ長く維持すること」に置かれるということになります。

 

つまり、躁やうつが出たら対処するというものではなく、「そもそも大きな波が起きにくい状態をどう作るか」という発想が不可欠なのです。

 

この「慢性疾患としての理解」は、心理カウンセリングの臨床においても非常に重要です。

 

心理支援の役割は、気分が落ち込んだときや問題が起きたときの対処法を考えるだけというものでは決してありません。

 

むしろ、自分の変調に早く気づく力を育て、生活リズムやストレスとの付き合い方を整えることが求められます。

 

そして再発のサインを「失敗」ではなく「調整の合図」と捉え直すといった、長期的なセルフマネジメントを支えることが、心理支援の核心になります。

 

3.心理療法の役割は「補助」ではなく、治療の中核である

 

 

この論文では心理療法を「薬物療法の補助的な手段」として位置づけておらず、むしろ中核的なものとしています。

 

双極症の治療において、「薬で症状を抑え、あとは経過を見る」という発想は現実的ではありませんし、効果も限定的になりやすくなってしまいます。

 

そのため双極症の長期的な安定には、心理療法が不可欠な治療要素であるという立場を、この論文は明確に示しています。

 

論文では、心理教育や認知行動療法、対人関係・社会リズム療法、家族支援やDBT(弁証法的認知行動療法)的なアプローチ(感情調整・衝動性への対応)といった心理社会的介入を、双極症治療の「標準的な構成要素」として位置づけています。

 

ここで重要なのは、これらが「症状が重いときだけ行う特別な支援」ではなく、再発予防と長期的な安定のために、継続的に組み込まれるべきものとして扱われている点です。

 

3-1.再発の引き金は「気分」そのものではない

 

論文が示しているもう一つの重要な視点は、双極症の再発は、単に「気分が不安定だから」起こるわけではない、という点です。

 

特に再発の大きな引き金として挙げられているのが、生活リズムの乱れやストレスへの脆弱さや不安障害といった、日常生活や心理的要因です。

 

これらは薬物療法だけで完全にコントロールすることが難しく、ご本人が自分の状態を理解し、調整していく力が強く求められる領域でもあります。

 

ここにこそ、心理療法の重要な役割があります。

 

3-2.心理療法が支えるのは「波をなくすこと」ではない

 

心理カウンセリングの臨床では、「もう気分の波をなくしたい」「波さえ来なければ普通に生きられるのに」という切実な思いが語られることが少なくありません。

 

確かに気分の波は非常につらいものがあります。

 

しかし、今回の論文が示唆しているのは、双極症の治療目標は「気分の波を完全になくすこと」だけないということです。

 

確かに、気分の波が生じないようにケアをすることは心理カウンセリングでは求められますし、それがあることによってご本人のQOL(生活の質)が維持されるという重要な役割があります。

 

しかし、それと同じくらい重要なのは、波が小さいうちに気づけること、そして波が来たときに、生活を大きく崩さずに立て直せることにあります。

 

つまり、「早期発見」と「リカバリー」が大切なんですね。

 

3-3.波を「失敗」ではなく「調整のサイン」として扱えること

 

先述したことと重なるのですが、どうしても症状が出ると、「症状が出ている=ケアの失敗」という図式で考えられがちです。

 

つまり、症状の存在そのものが「ケアの失敗」として認識されやすいということなんですね。

 

しかし、「早期発見」と「波に対するリカバリー」があることによって、相当程度双極症の症状に振り回されにくくなります。

 

心理療法は、まさにこのプロセスを支えるための治療です。

 

双極症における心理療法の本質的な役割は、症状を評価し行動を修正するといった表面的なものにとどまりません。

 

それを踏まえて上で、自分の状態を理解するセンサーを育て、感情や衝動と距離を取る方法を身につけ、再発の前兆に早く気づき、適切に対処するということが重要です。

 

また双極症とともに生きる現実を、孤立せずに引き受けていくという、長期的なセルフマネジメントの土台をつくることも大切です。

 

論部において心理療法を「標準治療の一部」として扱っているのは、双極症が一過性の疾患ではなく、人生全体に関わる慢性的な状態であるという理解が前提にあるからなんですね。

 

まとめ

 

双極症は慢性化しやすく、また再発しやすいという性質を持っています。

 

しかし、そうした中でもご本人の人生は進んでいきます。

 

そのため心理療法は、双極症を「治す」ためだけのものではなく、双極症とともに、現実的に、そして安全に生きていくためのチカラを育てる治療だと言えるでしょう。

 

これは、ガイドラインをそのままご本人に適応するのではなく、双極症を抱えている方それぞれの個別的な要因に着目しながらケアを進めるという視点が重要であることを意味ます。

 

双極症の方に私が伝えてたいのは、双極症の症状のぶり返しや気分の波を回復のためのプロセスとして理解していただきたいということです。

 

症状を失敗経験にカウントすることは、双極症の症状を悪化させることに役立っても、回復には役立ちません。

 

ぜひ、「気分の波=調整のサイン」として扱うようにしてくださいね。

 

参考論文

Beyond evidence‐based treatment of bipolar disorder: Rationalpragmatic approaches to management

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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