心理学が示すウェルビーイングとは?「満たされた人生」を実現するための条件について
2026/01/03

みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、皆さんは「ウェルビーイング」という言葉をご存じでしょうか?
私たちが生活する社会の中で「ウェルビーイング」という言葉を目にする機会が増えているので、ご存じの方も多いかもしれません。
ウェルビーイングをすごく単純化すると「幸福学」というものです。
そのウェルビーイングは最近では行政施策や企業の取り組み、教育や医療の分野でも注目されるようになってきています。
心理学においてウェルビーイングとは、単なる一時的な幸福感や満足感を指すものではありません。
人生全体を通して、どのように機能し、意味を感じながら生きているかという、より包括的な概念です。
つまり今は、個人のメンタルケアだけでなく、社会全体の「シアワセや暮らしの質」としても注目されているテーマだと言えます。
ただ心理支援の現場で大切なのは、ウェルビーイングを「いつも前向きでいること」と誤解しないことです。
ウェルビーイングは、気分の波があっても、自分の人生に手応えを持てる状態に近い概念です。
かつては「不調を減らす」ことが心理学の中心でしたが、現在は「どうすれば人はよりよく生きられるのか」という視点が重視されるようになっています。
そこで、このブログでは「そもそもウェルビーイングとは何?」ということから、なぜウェルビーイングが重要なのかを解説したいと思います。
1.心理学から見たウェルビーイングの代表的な2つの見取り図
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心理学で「ウェルビーイング(well-being)」というとき、単に「気分がいい」「幸せだ」という状態だけを指すわけではありません(それらも当然含まれますが)。
大きくは、「快をどれだけ感じているか(気分・満足感)」と、「よく生きているか(主体性・目的・関係性・成長など)」の両面から捉えられます。
その中で、心理臨床でも研究でも参照されることが多いのが、次の2つの枠組みです。
1-1.心理的ウェルビーイング~キャロル・ライフが提唱する枠組み~
キャロル・D・ライフ(Carol D. Ryff)は、ウェルビーイング研究を代表する心理学者の一人です。
彼女は「幸福=気分が良いこと」だけに寄せず、「人生全体の心理的な機能の良さ」としてウェルビーイングを整理しました(いわゆる『よく生きる』の側面に焦点があるモデルです)。
このモデルが臨床や支援の現場で役立つのは、「今の気分が上がった・下がった」だけでなく、「人生の土台となる力(自律・目的・関係・自己受容など)」を見立てやすいからです。
1-2.キャロル・D・ライフの6次元~心理的ウェルビーイングの中身~
キャロル・D・ライフの枠組みでは、ウェルビーイングは主に次の6つの次元で捉えられます。
(1)自律性
これは周囲の期待や評価に流されすぎず、自分の判断で選べるチカラを指します。
ただ、ここでの自律は決して「わがまま」ではなく、自分の軸を持って選べることを意味しています。
この領域は「反対されると一気に揺らぐ」「人の顔色で決めてしまう」が続くと、自律性は弱まりやすく疲弊してしまうというものです。
(2)環境制御力
環境制御力とは、生活や環境を「扱えている」と感じられるチカラや実感を指します。
具体的には予定、仕事量、人間関係、体調管理などを、完璧でなくても調整できる感覚が、それに相当します。
これは「何をしても回らない」「振り回されている」が続くと消耗しやすくなる領域でもあります。
(3)人格的成長
これは変化や学びを通して、自分が育っている感覚と言えるでしょう。
ここで言う成長というものは大きな成功体験だけではなく、「前より少しやれることが増えた」ということも成長として捉えられます。
一方、停滞感が強い状態は、ここが弱まっていることがあります
(4)人生の目的
「何のために生きているか」が言葉になる・方向性が感じられるという大切な領域です。
しかし目的は壮大な使命でなくてよく、日々の行動がつながっている感覚が重要となります。
虚しさが強いとき、ここにズレが生じているケースは多くなってしまいます。
(5)積極的な他者関係
この領域は、信頼、親密さ、相互性のある関係を育てる場です。
そのため、「依存しない強さ」と捉えるよりも、「適度に頼り合える柔らかさ」がここでは大事となります。
この領域では、人間関係のストレスが続くと損なわれてしまいます。
(6)自己受容
これは良い面だけでなく、弱さや過去も含めて「自分として扱える」感覚を指します。
自己否定が強いと、何を達成しても満足しにくくなります
そのため、自己受容は「反省しない」ではなく、自分を敵にしないという方向性といえるでしょう。
1-3.このモデルのポイント~「気分」よりも「生き方の機能」~
この枠組みの特徴は、ウェルビーイングを気分の上下で測るのではなく、先述した6つの領域によって、人生を支える心理機能として捉えるところにあります。
そのため、例えばですが「気分は落ち込んでいるけれど、目的と関係性が保たれている」という感覚が保たれている状態というものがウェルビーイングとして位置づけられているのです。
そのため、逆に言えば「気分は悪くないが、目的がなく虚しい」というう状態はウェルビーイングが損なわれていると言えるということにになります。
このように、先にご紹介した枠組みはウェルビーイングの状態を立体的に見立てやすくなります。
1-4.ウンセリングでの使い方~見立て→介入の方向が立つ~
心理支援では、6次元を「診断」としつ使うのではなく、回復や成長の地図として使います。
具体的に言えば…
✔自律性が弱い → 境界線、自己主張、意思決定の練習
✔環境制御力が弱い → 問題解決、生活設計、タスクの小分け
✔人格的成長の機能不全 → 学び直し、スモールステップ、振り返り
✔人生の目的が希薄 → 価値観の探索、意味づけ、方向性の再設定
✔他者関係が弱い → 関係の再構築、安心できるつながりの回復
✔自己受容の困難 → 自己批判の緩和、セルフコンパッション、再評価
このように「何を増やせばウェルビーイングが戻るか」を具体化できるのが、Ryffの枠組みの強みです。
1-5.PERMAとは?
PERMAは、ウェルビーイングを日常に落とし込みやすい形で整理したモデルで、P(ポジティブ感情)・E(没頭)・R(関係性)・M(意味)・A(達成)の5要素から捉えます。
Ryffの枠組み比べると、PERMAは「今日の生活にどう取り入れるか」、「習慣として増やせる要素」に焦点が当たりやすいという特徴があります。
つまり、ウェルビーイングの「普段使い」で役立つものなんですね。
一方、先述したRyffの枠組みは「人生の機能がどう整っているか」「生き方の軸がどうなっているか」を見立てるのに向いています。
2.PERMAの「普段使い」の方法~今いちばん弱っている要素を回復させる~
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先述しましたPREMAの枠組みは、ウェルビーイングを日常において役立つものです。
PERMAの5要素は、理想論として全部を高くするというより、現実にはこう働きます。
まず落ち込みが強い時期はP(小さな良さ)やR(安心できるつながり)で「回復の余白」を確保します。
一方、不安や反すう(ぐるぐる思考)が強い時期はE(没頭)で「思考の渦から一時的に離れる足場」を作ります。
また虚しさが強い時期であればM(意味)を「条件付き」から外して「方向性」を取り戻します。
最後に自己評価が揺れる時期であればA(達成)を「証明」ではなく「積み上げ」に戻していきます。
このようにPERMAは、いまの自分の症状・生活状況に合わせて、重点配分を変える道具だと言えるでしょう。
では、その「使い方」を順を追って解説したいと思います。
2-1.P:Positive Emotion(ポジティブ感情)
● 何を指す?
ここでいう「ポジティブ」とは強い幸福感というより、小さな安心・ほっとする・あたたかいのような「回復に効く感情」を指します。
ここが大事で、Pは「つらさを消す」よりも、つらさの中でも呼吸できるスペースを作ることです。
● 目安(セルフチェック)
✔1日の中で「1ミリでもマシ」を拾える瞬間がある
✔心が完全に真っ黒ではなく、少しグラデーションが戻る
● よくあるつまずき
無理に「前向きにならなきゃ」としてしまうと、「できない自分」への自己批判が増えて逆効果になってしまいます。
また、つらさを否定してPを作ろうとすると、感情が反発してしまうので長続きしません
● 今日できる微調整
これは、「良かった探し」ではなく「体が少し緩むもの」を10秒味わうのが効果的です。
例えば…
✔温かい飲み物の温度
✔ふと肩が下がる感じ
✔静かな音、香り
…といったものです。
ここでは、感情が出ない日は「感情」ではなく身体反応の小さな変化を拾うのがコツです。
2-2.E:Engagement(没頭)
● 何を指す?
シンプルに言うと、時間感覚が薄れる「没頭体験」を指します。
ただ、長時間でなくてOKで、重要なのは「やっているうちに整ってくる」、つまり時間の継続によって徐々に入り込む活動があるかどうかです。
● 目安(セルフチェック)
✔始める前は億劫でも、始めると少し流れに乗れる
✔終えた後に、頭の中のノイズが少し減る
●よくあるつまずき
没頭がゼロになると、脳は特性上空白を埋めるために反すう(ぐるぐる思考)にエネルギーを回しやすくなります。
そのため反すうは「活動不足のアラーム」として出てくるということが言えるでしょう。
● 今日できる微調整
✔5〜10分で終わる没頭を用意する(短くて良い)
✔片付けを1区画だけ
✔同じ曲を1曲だけ集中して聴く
✔メールや文章、日記を200字だけ書く
ここでのコツは「成果」ではなく、没頭に入る「入口」を作ることです。
2-3.R:Relationships(関係性)
● 何を指す?
これは「人に恵まれる」というものだけではなく、つながりを回復・維持するスキルまで含みます。
そのため、人数ではなく「安心と信頼の質」が中心となります。
● 目安(セルフチェック)
✔弱音を言っても、関係が壊れない相手が一人でもいる
✔連絡した後に疲弊するやりとりより、少し回復するやりとりがある
● よくあるつまずき(『数だけ増やす』が逆効果になる理由)
気疲れする関係を増やすと、断れなかったり気を遣い続ける、また関係によって圧迫されるため、自己批判が増えるという形で、むしろ消耗が進んでしまいます。
● 今日からできる「微調整」
✔つながりを増やすより先に、消耗する接点を減らす
✔「話す」が難しい日は、短い接触でOK
✔返信はスタンプだけ
✔近況をシンプルに一文だけ
✔会うではなく「メールや声を聞くだけ」の関り
2-4.:Meaning(意味)
● 何を指す?
これはちょっと抽象的なのですが、人生を何に結びつけて生きたいかという「方向性」をさします。
ポイントは「結果が出たら意味がある」ではなく、「いまの行為そのものが意味とつながる」形にすることです。
● 目安(セルフチェック)
✔うまくいかない日でも「この方向にいたい」は残っている
✔行動が“評価”ではなく“納得”に寄っている
● よくあるつまずき(条件付きの意味)
「成功したら」「回復したら」という状態に意味があると考えてしまうと、今が空白になり、虚しさが強まりやすくなってしまいます。
● 今日できる微調整
✔「どんな人でありたいか」を動詞にする(例:誠実である、優しさにあふれている等)
✔人や物事に対して誠実に関わる
✔学び続ける
✔1つ1つを丁寧に扱う
✔小さくてもよいので貢献する
✔先述した動詞を、今日1回だけ実行できる形に落とす(小さく、具体的に)。
2-5.A:Accomplishment(達成)
● 何を指す?
これは文字通りの達成なのですが、大きな成功である必要はなく、むしろ「昨日より一歩」を数えるということが重要でかつ効果的です
達成は自己効力感(やれる感覚)の土台なのですが自己価値の証明にしてしまうと燃え尽きが生じる可能性が高まって島ます。
● 目安(セルフチェック)
✔できたことを見える形で残している
✔達成がゼロの日を「人格の失敗」にしない
● よくあるつまずき(達成=自己価値の証明)
もっと頑張れと自分を駆り立ててしまったり、休むと価値が下がると考えてしまう、あるいは「できない日=自分はダメ」という発想にいたってしまうと、回復の余白が消えてしまいます。
● 今日できる微調整
✔達成の単位を「1日の成果」ではなく「行動の実行そのもの」にする
✔5分やった
✔1ページ開いた
✔1回断った
✔記録は1行で十分(続くことが優先されます)。
まとめ:PERMAは「不足している要素を1つ回復させる」使い方がうまくいく
5要素を全部完璧にしようとすると、かえって自己批判が増える結果に繋がってしまいます。
おすすめは、週1回だけでもいいので…
✔いま一番弱っているのはどれ?(P/E/R/M/A)
✔その要素に対して、明日できる最小の一手は?(5〜10分)
…という形で、バランスを整える方向に使うことです。
ぜひ、ウェルビーイングを育み、そして「より良い自分」を実現してくださいね。
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こころのケア心理カウンセリングRoom
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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