愛着障害とこころの健康~抑うつとの関連について~
2026/01/06
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みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
愛着障害を抱えている方の悩み事を臨床でうかがうと、大きく分けて「人間関係の悩み」「気分の不調の悩み」という2つに大別されます。
また気分の不調と対人関係の難しさが悪循環を生んでいるというケースは決して珍しいものではありません。
そして実際に幼少期の人との関わり方(愛着)が、大人になってからの人間関係やこころの反応、特に抑うつとの関係性に影響を与えるという研究は多数見られます。
ここで言う愛着障害というのは、愛着スタイルに関連した問題と言えるでしょう。
愛着スタイルとは、幼いころに主要な養育者との関わりを通じて形成された「人との関係の仕方の傾向」を表す概念です。
これは、こころの中に「人は信頼できるか」「自分は他者に頼っていいか」といった人間関係の内的な枠組みをつくります。
このスタイルは大人になっても消えるものではなく、恋愛関係・親密な関係・友人関係などでの感じ方や行動に影響を与えます。
そして、抑うつに代表される気分の不調にも大きな影響を及ぼします。
そこで、このブログでは愛着障害、もう少し具体的に言うと愛着スタイルと抑うつの関係について論文を踏まえつつシェアしたいと思います。
※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものではありません。
気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。
1.愛着スタイルの主な種類について
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今回参照にしている研究論文では、成人の愛着スタイルを2分的に単純に分けるのではなく、「親密さへの向き合い方」「依存・回避の質」「感情の扱い方」という観点から分類しています。
そのため、一般に言われているタイ着スタイルとは若干異なる視点でタイプ分けがされています。
そして大きな枠組みは以下の4類型です。
✔安全型
✔過度依存型
✔恐怖型
✔回避型
そして、さらに重要な特徴として、回避型は後述する2つに分けて考えることが示されています。
では、それぞれの愛着スタイルを見ていきましょう。
1-1.安全型
● 基本的特徴
安定型の場合、他者との親密さを自然に受け入れられることができ、かつ必要なときに頼ることも、離れることもできるという柔軟性も持っています。
そして自分の感情をある程度言葉にできるため、感情的な負荷がかかりにくい、ということも言えるでしょう。
● 内的体験
安定型の場合、「人は基本的に信頼できる」「自分は支えを受けるに値する」という考えを無理なく自然に持つことができています。
そして「親密さ=危険」という感覚が少ないため、親密な関係を形成しやすいという特徴があります。
● 抑うつとの関係
臨床的な意味での抑うつとの関連は最も低いのが安定型の特徴です。
つまり、何かのストレス時にも支援を利用しやすく、また回復力が高いという特徴があります。
1-2. 過度依存型
※論文では Enmeshed(絡み合った・巻き込まれた)という語が用いられています
※日本語では「とらわれ型」「過剰巻き込み型」と訳されることもあります
● 基本的特徴
特徴として他者との距離が近くなりすぎやすくなり、かつ見捨てられ不安が強いという特徴があります。
また、相手の反応に感情が大きく左右されるため、心理的な脆弱性を持っていると言えます。
● 内的体験
このタイプの方の信念体系として、「一人ではいられない」「相手に嫌われたら自分は価値がない」というものを持っていることが多々見られます。
また親密さを強く求める一方で、不安が常に伴ってしまうため、対人関係やその中での心理的安定性を維持することに難しさがあります。
● 抑うつとの関係
臨床的な意味での抑うつとの関連が強く、特に「慢性的な対人ストレス」「自己評価の低さ」を通じて抑うつが維持されやすいという、ある種の悪循環が見られます。
1-3.恐怖型
● 基本的特徴
このタイプは親密さを求めたいという気持ちがありますが、同時に強い恐れを抱きやすいという特徴があります。
また他者への信頼と不信が同時に存在するという不安定な状態があり、そのため関係が近づくほど不安が高まってしまいます。
● 内的体験
このタイプの方は「本当はつながりたい」というニーズを持ちつつも、「傷つくくらいなら距離を取りたい」という自己防衛が働きます。
そのため、親密さというものは当事者の方にとっては救いでありながら、同時に脅威でもあります。
● 抑うつとの関係
不安と回避が同居するため対人関係が不安定になりやすく、それによって慢性的な苦痛を抱えやすいという傾向があります。
そのため、抑うつに繋がりやすいということが言えます。
1-4.回避型
ここからが、この論文の非常に重要なポイントで、回避型をひとまとめにせず、質的に異なる2タイプに分けています。
具体的には以下の下位分類となります。
(1) 怒り回避型
● 基本的特徴
親密さを避けるのは回避型の特徴としてあるのですが、他者への怒り・敵意を生じやすい、あるいは伴っているという特徴もあります。
そして他者を「信用できない存在」と見なしやすいため、自立や自己完結を強く主張せざるを得ないという問題も生じやすいと言えます。
● 内的体験
このタイプは誰にも頼ることがなく、かつ人は自分を傷つけるという信念を持っています。
そのため、他者は脅威となりやすく、そのため怒りによって距離を保つという手段が取られがちです。
● 抑うつとの関係
回避型の中で、抑うつと最も強く関連します。
具体的には、他者への怒り・被害感が慢性的なストレスとなり、抑うつを維持しやすいというメカニズムを持っています。
つまり、怒りを伴う回避というものが抑うつのリスク要因となっているんですね。
(2) 引きこもり回避型
● 基本的特徴
敵意や怒りは比較的少ないのですが、親密さは避けるという特徴があります。
また内向的であり感情表現も乏しく、かつ対人関係そのものから距離を取ってしまいがちになります。
● 内的体験
そもそも対人関係の回避傾向があるため、一人の方が楽という感覚を持ち、かつ感情を動かさない方が安全、つまり期待しないことで傷つかないようにするという自己防衛手段が取られがちです。
● 抑うつとの関係
対人関係の回避がベースにあるので臨床的な意味での抑うつとの関連は比較的弱いのが特徴です。
これは回避はしているため、感情的な葛藤や対人ストレスが少ないためだと言えるでしょう。
2.愛着スタイルと抑うつの関係とは?
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この研究では、成人の愛着スタイルが臨床的な抑うつとどのように結びつくのかを、長期的な視点から検討しています。
そしてその結果、愛着スタイルによって、抑うつへの脆弱性に明確な差があることが示されました。
2-1.不安型・恐れ回避型・怒り回避型は、抑うつと関連しやすい
抑うつとの関連で注目する必要があるのは、過度依存型や恐怖型、そして怒り回避型といった、不安・恐れ・敵意を内包する愛着スタイルです。
これらのスタイルは、12か月間にわたる抑うつの発症・持続と有意に関連していました。
つまり、「一時的に気分が落ち込む」レベルではなく、臨床的に意味のある抑うつ状態が続きやすい傾向が示されたんですね。
2-2.抑うつに結びつきやすい「内側の体験」
また研究が示しているのは、次のような内的体験の質が、抑うつと深く関係しているという点です。
● 他者への信頼の低さ
→対人関係において「どうせ分かってもらえない」「裏切られるかもしれない」という前提がある場合が多くみられます。
● 自己価値の低さ
→「自分は大切にされる存在ではない」「愛される条件を自分は満たしていない」という考えも同時に持っています。
● 見捨てられ不安の強さ
→上記の要素によって、関係が揺らぐたびに強い不安や絶望感が生じやすくなります。
これらが重なると、当然ですが人間関係そのものが慢性的なストレス源になってしまいます。
つまり、本来であれば安心できるはずの関係の中でさえ、緊張・不安・怒りが生じやすくなり、その積み重ねが抑うつ状態を引き起こし、維持する要因になってしまいます。
特に、過度依存型では「つながりへの渇望」と「拒絶への恐怖」の板挟みが生じます。
また恐怖型では「近づきたい」と「近づくのが怖い」という矛盾が存在しています。
加えて怒り回避型では「他者への不信や敵意を抱えたまま距離を取る」状態が続くため、感情の安定が得られにくくなってしまいます。。
2-3.回避そのものが、必ずしも抑うつを生むわけではない
また同じ回避型であっても、引きこもり回避型のように、強い不安や敵意を伴わず、静かに距離を取るタイプでは、抑うつとの関連が比較的弱い傾向が見られました。
このタイプは感情表現が少なく親密さを求めず、また他者に大きな期待を持たないという特徴を持ちまます。
これによって対人関係での葛藤や感情的摩擦が少ないという結果が生じます。
そのため、強い見捨てられ不安や怒りや被害感、そして自己価値の揺らぎといった要素が比較的少なく、抑うつに直結しにくいと解釈されています。
ただ、このスタイルが健康的かと言えば違ってきます。
確かに抑うつには繋がりにくいのですが、同時に親密な人間関係の形成にも繋がりにくいという問題を発生させます。
3.愛着スタイルを知るメリットと変化の可能性
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愛着スタイルは決して一生変わらない性格でもありません。
愛着理論の初期研究では、幼少期の養育環境が(今振り返ってみると)過度に重視されていました。
しかしその後の研究では、成人期以降の経験や人との関係によって、愛着スタイルは修正・変化しうることが強調されていいます。
近年のレビュー研究でも、人生の中での重要な出来事や、安定した対人関係、心理療法的な体験が、愛着のあり方に影響を与えることが示されています。
3-1.愛着スタイルを「知る」こと自体の大きなメリット
自分自身の愛着スタイルを理解することには、それ自体に重要な意味があります。
というのは、多くの方は人間関係がうまくいかないときに、自分の性格や努力不足という方向で考えてしまい、自分を責めることに繋がりがちになります。
しかし愛着スタイルという枠組みで自分を見直すと、それは「性格の問題」というよりも、これまでの環境に適応するために身につけてきた関係のパターンだったということが見えてきます。
この視点を持つだけでも、自己理解が深まり、過剰な自己否定が和らぐという効果が期待できます。
3-2.なぜ愛着スタイルは変わりうるのか
別の視点から考えると、愛着スタイルは「人との関係における予測モデル」とも言えるでしょう。
つまり、人は信頼できる存在なのか、自分は大切にされる存在か、また親密さは安全なのか、それとも危険なのかという予測ですね。
そして、こうした問いに対する「答え」が、これまでの養育者や周囲の大人や交友関係といった経験から形づくられてきました。
しかし、形成された愛着スタイルは、新しい体験によって「更新される」性質を持っています。
つまり、安全で一貫した関係を繰り返し体験し、感情を表現しても拒絶されない経験を積んだり、あるいは助けを求めても大丈夫だった、という実感を得ことで前提が変わっていくんですね。
3-3.心理療法が愛着スタイルに与える影響
最後に心理療法に触れたいと思います。
心理カウンセリング(心理療法)は愛着スタイルが変化する重要な場のひとつと言えます。
そもそも心理療法の関係というのは安定していており、予測可能であり、また評価や拒絶が少ないという性質を持っています。
この性質によって心理療法そのものが「安全な対人関係のモデル」になりやすい特徴があります。
その中で当事者の方は、不安を感じても関係が壊れないことや感情を言葉にしても否定されないこと、そして依存しても見捨てられないことを、体験として理解できるようになっていきます。
その結果、不安が減少し自己肯定感が育まれ、回避という手段を取る必要性も少なくなっていきます。
また対人関係での恐怖が減り、親密な関係に対する不安感も解消されやすくなります。
まとめ
愛着スタイルを知ることは、単に「自分をラベリングするため」ではありません。
単純なラベリングではなく、なぜこれまでそう生きてきたのかを理解し、そしてこれからどう生きたいかを理解するための「地図」を手に入れることです。
過去の関係が今の自分を形づくったとしても、これからの関係が、これからの自分をつくっていくことは十分に可能です。
その可能性を知ること自体が、すでに変化の第一歩だと言えるでしょう。
まずは自分を知ること、そしてその上で適切なケアを行ってくださいね。
参考論文
Adult attachment style. I: Its relationship to clinical depression
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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