境界性パーソナリティ障害と幼少期トラウマの関係とは
2026/01/15
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みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
非常に残念なことですが、幼少期の不適切な養育や周囲の大人たちの当事者の方に対する対応、交友関係等によって、いわゆる「発達性トラウマ」を抱えている方は決して珍しいものではありません。
また一方で、対人関係に対する不信や感情の爆発、人との距離感が極端になりがちになってしまうという方もおられます。
後者の方の場合、境界性パーソナリティー障害の可能性は否定できません。
もちろん、安易に境界性パーソナリティー障害と決めつけることは妥当ではなく、医師による診断が必要不可欠です。
ただ、境界性パーソナリティー障害のような感情の不安定さや自己イメージの揺れ、人間関係の激しい変動を持っておられる方は非常に多くみられます。
そして、その発症に関して、心理学・精神医学では多くの研究がなされてきましたが、特に注目されているのが幼少期のトラウマ体験の影響です。
そこで、このブログではいつものように研究論文を参考にしつつ、境界性パーソナリティ障害と幼少期の虐待・トラウマの関係をシェアしたいと思います。
※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものではありません。
※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。
1.境界性パーソナリティ障害とトラウマ体験
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境界性パーソナリティ障害の場合、生育期のいわゆる「逆境体験」に直面した方が多いという傾向があります。
つまり、幼少期のトラウマが境界性パーソナリティ障害に関係しているということですね。
そのトラウマと境界性パーソナリティ障害との関係についてみていきたいと思います。
1-1.幼少期トラウマの頻度~境界性パーソナリティ障害との関連~
今回参照にした研究で行われた調査の結果、境界性パーソナリティ障害と診断された方の約81%が、幼少期または青年期に重大なトラウマ体験を報告していました。
これは、他の診断群よりもはるかに高い割合です。
その一例をあげると…
✔身体的虐待:約71%
✔性的虐待:約67%
✔家庭内暴力の目撃:約62%
ここで注意が必要なのは、上記のような典型的な虐待だけでなく、いわゆる毒親等による不適切な養育も境界性パーソナリティ障害に至ってしまう可能性があるということです。
また特徴的なのが、複数のトラウマ体験が重複しているケースも多々見られるということです。
これらは統計的に境界性パーソナリティ障害との関連が有意に見られたという点が重要なポイントです。
1-2.なぜ幼少期トラウマが影響するのか?
(1)発達段階での感情と安全基盤の形成
幼少期は、心の基盤がつくられる大切な時期です。
安全な関係性や一貫したケアがあることは、子どもにとって「世界は安全だ」「自分は愛されるべき存在だ」という感覚を育ててくれます。
しかし、虐待や家庭内暴力、無視・不安定な環境にさらされた子どもは、そうした安全基盤を構築できず、不安・分裂・自己価値の低さが根付いてしまうことにつながります。
(2)多重トラウマの累積効果
また、トラウマの種類が複数にわたるほど、またより早い時期に起きるほど、境界性パーソナリティ障害との関係が強いことが研究で示されています。
幼少期から生育期における逆境体験は複数の問題が絡む傾向があります。
例えば、家庭内暴力が頻繁に生じている家庭であれば、その親の怒りの矛先が子供に向かいやすくなる、というように範囲が広がりがちになるんですね。
そして幼児期から繰り返し虐待が起きていた方は、青年期だけで起きたトラウマに比べて、より深刻な心理的影響を受けやすくなります。
これは、青年期でのトラウマ体験は人としての成長がある分だけ対処がしやすいことに対して、子供のころの場合は対処する術がない、あるいは限られているので、その分だけ深刻になりやすいんですね。
これは、発達の初期段階での体験がその後の心の統合や感情調整に深く影響することを意味しています。
(3)心理的な影響の現れ方
研究では、境界性パーソナリティ障害を持つ方の多くは、現在の精神症状としてトラウマ体験を直接パーソナリティ障害に「結び付けて認識」することが少ないという点が示されています。
つまりこれは…
「幼少期の体験が今の苦しみの原因」だと本人が自覚していないケースが多い
ということです。
これは、トラウマという経験が断片化された記憶や感情パターンとして現在の行動・感受性に影響を与えていることを示唆しています。
例えば感情が突然爆発したり、人との間で信頼関係が築きにくい、また見捨てられることへの過敏な恐れや自己評価の揺れが激しいといった反応は、「子供のころの体験を忘れている」わけではなく、その体験が統合されずに心の奥で作用している場合があるのです。
トラウマの記憶はどうしても当事者の方にとって苦痛なものであるため、体系的な記憶ではなく、断片的なものになる傾向があります。
そして、断片的である、つまり統合されていないがゆえに、その経験が「1つのまとまった体験としての記憶」になりにくいという事なんですね。
1-3.発達的適応としての解釈
境界性パーソナリティ障害というものは、トラウマに対する「適応のひとつ」として理解するという視点が重要になってきます。
つまり幼少期の慢性的なストレスに対する、「生き延びるための」心の戦略が大人になってもそのまま維持されてしまい感情・対人関係・自己像の不安定さという形で現れている、ということです。
この視点を持つことによって、境界性パーソナリティ障害が「過去の体験が心の仕組みとして刻まれた結果」として理解することができるようになります。
2.セルフケアとしての「癒しと統合」~自分を立て直すためのやさしいプロセスとは?~
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先述しましたように、子供のころのつらい体験(トラウマ)が背景となり、境界性パーソナリティ障害の反応に代表される、感情が大きく揺れたり、人との距離感がうまく取れなかったりすることがあります。
ここで大切なのは、そうした反応は生き延びるために身につけた心の反応であるという視点です。
この視点があるだけでも、自分自身への優しさにつながり、それ自体がセルフケアとしての機能を果たします。
また回復のプロセスにおいて重要なのは、トラウマ体験を「統合していくこと」にあります。
つまり、その体験を「それはつらかったものである」と妥当なものとして扱うこと(体験の検証・バリデーション)が重要です。
その点を踏まえて、子供のころのトラウマを抱えている方のセルフケアをシェアしたいと思います。
2-1.過去の体験を「否定しない」~まずは、自分の感覚を信じ直す~
先ほど体験の検証が重要であるとお伝えしましたが、セルフケアの第一歩は、過去を無理に思い出すことでは決してありません。
むしろ、「あのときの自分は、精一杯だった」、「あれをつらいと感じた自分はおかしくない」「私は大げさでも、弱いわけでもない」といった視点から過去を捉えなおすことです。
トラウマがあると、心はそれ自体が苦痛であるため、「つらかった」と感じること自体を封じたり、逆に突然あふれさせたりします。
そのため、日常でツラいと感じた場合は、それを否定せず、「トラウマを経験した私にとって、そう感じるのは自然」と扱うことが、心を落ち着かせる方向に働きます。
2-2.「今の反応」と「昔の体験」をゆっくり結び直す~自己理解のために~
トラウマの影響は、過去の記憶としてだけでなく、いまの反応の形で現れてきます。
例えば、ちょっとした言葉に強く傷ついてしまう、見捨てられる感じが急に襲ってくる、怒りや不安が一気に噴き出すといったものですね。
またトラウマが重たい場合は「離人感」、つまり自分が自分でない感じ(ぼーっとする、現実感が薄い)も生じやすくなります。
こうした反応に対しては、「心が危険を察知したアラーム」として扱うのが効果的です。
というのは、トラウマの経験がある場合、脳の「危機察知モード」が常に過敏に働いているため、ちょっとしたネガティブな出来事に対しても、脳が過敏に反応するからです。
そのため、セルフケアのコツとして、「反応に名前をつける」ということをなさってみてください。
具体的には、ネガティブな反応が出たら、心の中で短くラベルを貼ります。
「いま、警戒が強い」
「いま、見捨てられセンサーが鳴ってる」
「いま、昔の怖さが混ざってるかも」
これだけでも、反応に飲み込まれにくくなり、自分自身を保つことができやすくなります。
2-3.「断片化した心」をまとめ直す
トラウマのある方は、心の中が常に揺さぶられやすい状態にあります。
例えば「平気な自分」と「崩れる自分」が極端に入れ替わったり、「好き」と「嫌い」が同時に出て苦しくなったりするというものですね。
これは、心が危険を避けるために、感情や記憶を「分けて保管してきた」結果として起こります。
回復とは、その分かれていた部分を、少しずつ「ひとつの自分の体験」として扱えるようになることです。
そこでセルフケアとしては断片化された記憶や相反する感情の統合を図っていくのですが、まずは矛盾する考えや感情の「共存」を認めるということが重要になります。
つまり、ここでいう統合は、「矛盾をなくすこと」ではなく、「そう感じる部分もある」「別の感じ方をする部分もある」「どちらも自分の中にいていい」と、共存を許すことを意味します。
これにによって断片化された記憶や感情、そして思考の統合につながります。
2-4.セルフケアの限界
セルフケアはとても役立ちますが、トラウマの影響が強いときは、専門的な支援が必須となります。
では、セルフケアではなく専門的な支援が必要な状態とは、どのようなものなのかと言えば、以下の通りとなります。
(1)日常生活が明らかに回らなくなっている
これは、例えば仕事や家事、対人関係が継続できない、あるいは睡眠や食事が崩れ、体調も悪化している、欠勤・欠席が続いてしまうというケースです。
こうした場合は、セルフケアの前に「生活の立て直し」が必要になってきます。
(2)最悪の選択肢を考える、あるいは自傷がある、衝動が生じた場合のコントロールが難しい
このレベルになった場合は、どうか医療機関等の支援を受けてください。
例えば…
自分を傷つけたくなる・傷つけてしまう
最悪の選択肢をつい考えてしまう
衝動的に危険な行動をしてしまう
この領域は早めの専門支援が非常に重要です。
先述した状況にある場合は、医療機関での安全確保や、心理支援での危機対応(セーフティプラン等)が必要な段階だとご判断し支援を仰いでください
(3)フラッシュバックや解離が強い
これは突然、過去の場面がよみがえり現実が遠のいたり、体が固まり動けなくなる、あるいは記憶が抜ける、時間が飛ぶ感じがあるというものです。
この場合、自己流で思い出そうとするほど悪化する危険性が大です。
4)アルコール・過食・ギャンブル・SNSなどが止められず生活が壊れてきた
トラウマ由来の苦痛を抑えるために、依存的な対処が強まることは決して珍しい現象ではありません。
そしてこの場合は、つらさやしんどさの逃げ場がそこしかない状態になっている可能性があるため、専門的な支援が必要となります。
(5)対人関係が激しく揺れ、孤立や破綻が続く
人間関係において近づきたいのに壊してしまう、あるいは不安や怒りが強く、関係が安定しない、そしていつも同じパターンで終わってしまうという場合は何かしらの支援が役に立ちます。
というのはセルフケアだけだと「気づいてはいるけど変えられない」が続きやすいので、関係性の中で安定的で安全な人間関係を構築するためのカウンセリングがあった方が解決が速いと言えます。
まとめ~決して「自分を敵にしないこと」~
癒しと統合のプロセスは、「過去を掘り返して理解する」より前に、まず「いまの反応を否定しない」ということから始まります。
そして自分の感覚を妥当なものとして扱い、バラバラな心を責めず、少しずつまとめ直すという、自分を守る方向のアプローチが大切でs。
そして、もし一人では抱えきれないと判断される場合は、専門的なケアを活用することが、回復を早め、生活を守るための現実的な選択肢になります。
自分自身の特性によって生きづらさを感じる場面も多々あるかと思います。
しかし、絶対に自分を敵にしてはいけません。
むしろ守り、そして理解するべき存在です。
そうした観点で、自分を振り返り、そして適切なケアをしてくださいね
参考論文
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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