依存症は「意志の弱さ」ではない~依存症の仕組みと支援の受け方~
2026/01/28
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、今日のテーマは依存症です。
依存症は、特定の物質や行為によって一時的に楽になったり高揚したりする経験が繰り返され、「やめたいのにやめられない」「やめるとつらい」が強くなっていく状態です。
重要な点は、依存症というものは「快楽そのもの」というより、生活の優先順位が依存対象に吸い寄せられ、悪影響が出ても続いてしまうところにあります。
そこで今回は、依存症ついてシェアしたいと思います。
※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものではありません。
※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。
1.依存症とは何か~アルコールだけではない「やめたくても止まらない」状態~

依存症は当事者の方にとって大きな負担を生じさせるという意味で問題なのですが、周囲の方も巻き込んでしまうということも見逃せません。
またいったん依存症になってしまった場合、セルフケアでの解決に限界があるということも注目するべき点です。
その依存症ですが、具体的には以下のようなものが多くみられます。
✔強い欲求(クレービング):頭から離れない、我慢が苦しい
✔コントロールの低下:量・時間・頻度を決めても守れない
✔続けることの代償:仕事・学業・家族関係・健康・お金が崩れる
✔やめたときの反動:落ち着かなさ、焦り、イライラ、眠れない等(内容は個人差があります)
その依存症をもう少し深堀していきましょう。
1-1.依存症の種類~アルコールやギャンブルだけじゃない~
依存症(または依存問題)は、次最近は「物質」だけでなく、行為(プロセス)の問題も注目されています。
依存症、あるいは依存問題は概ね以下の通りです。
(1)物質への依存(例)
アルコール、ニコチン、違法薬物、処方薬の乱用 など
これらは依存症と聞いてイメージしやすいものですが、最近では市販薬の乱用が問題となっています。
(2)行為(プロセス)への依存(例)
ギャンブル、ゲーム、SNS/スマホ、買い物、過食、性的行動 など
このプロセスに対する依存は、名称や診断枠は分野によって扱いが異なることがありますが、「やめたいのに止まらない」困りごとは臨床でよく見られる共通点です。
(3)人間関係にまつわる依存的パターン(例)
特定の相手に「必要とされること」や「見捨てられないこと」へ過剰にしがみつく
この場合、典型的な例は共依存(相手の問題行動を支える・コントロールしようとして疲弊する)と言えるでしょう。
ただ、人間関係に関連する依存は医学的な「依存症」とは切り分けて扱われることもありますが、生活を壊すレベルの固定化が起きるため、依存としての支援対象になり得ます。
1-2.なぜ止められないのか~脳と学習と「感情回避」~
依存は「意志のチカラ」では片づきにくい特徴があります。
というのは、依存症というものは「脳が快に乗っ取られている」状態と言えるものであり、多くの場合、次の3つが絡みます。
(1)報酬系(ごほうび回路)の学習
→脳が「これ=楽になる近道」と覚えてしまう
(2)ストレス・不安・孤独などの軽減(負の強化)
→つらさを下げる手段として定着する
(3)抑制・判断の機能が働きにくくなる
→疲労、睡眠不足、飲酒後、強い感情時などに特に起こりやすい
これらは全て脳の機能に生じる問題であり、その結果、「やらないと不安」「やらないと落ち着かない」という感情が脳によって生じます。
その結果、依存対象が「感情調整の道具」になってしまうという状態が依存を維持継続させてしまうんですね。
1-3.セルフケアは大事、でも「限界」がある
セルフケア(生活改善、誘惑の回避、代替行動、記録など)は回復に役立ちますし依存症ケアにおいては必須とも言えます。
しかし、依存問題が進むほどセルフケアだけでは限界が生じてしまいます。
セルフケアの限界が起きる主な理由としては、以下のものが挙げられます。
(1)クレービング(強い欲求)に支配されてしまっている状態だと、理屈より衝動が勝ってしまいます。
→疲労・ストレスや孤独な時ほど衝動的な行動に走りやすくなってしまいます。
(2)「否認」が入りやすい
→これは「自分は大丈夫」「次こそ止められる」「そもそも自分は依存症ではない」という自分自身に対する見積もりの甘さや依存に対する否認がある場合です。
それらが存在する場合、それによって適切なケアが行われないという問題に至ります。
(3)依存を誘発する環境が変わらない
→家・職場・交友関係がトリガーだらけだと、再燃しやすくなります。
そのため、環境整備は依存症ケアにおいては必須となります
(4)併存問題(不安、抑うつ、発達特性、トラウマなど)の存在
→依存症以前に別の心理的な問題が存在しているという背景にあると、依存が「自己治療」として固定化されやすくなります。
つまり、依存症が他の心の病気等の症状の緩和として用いられてしまうんですね。
この場合は背景にある心理的な問題からの回復も併せて行うことになります。
(5)一人だと修正が遅い
→スリップ(一次的な依存対象の再利用)の後の立て直しが間に合わず、連鎖しやすいという課題があります。
こうした問題があるがゆえに、依存症はご本人の努力だけでなく、治療・心理支援・環境調整・仲間の支えを組み合わせるのが必要となります。
1-4.イネーブラーとは~善意が「依存を支えてしまう」構造~
イネーブラー(enabler)とは、依存症を抱えているご本人を助けたい気持ちから、結果的に周囲の方が依存行動が続く条件を整えてしまうという関わりを指します(これを『イネーブリング』と言います)。
よくあるイネーブリングの例は以下の通りです。
✔借金の肩代わり、失敗の後始末を繰り返す
✔体裁を守るためにご本人に代わって嘘をつく(欠勤理由を代わりに説明する等)
✔境界線が曖昧なまま、「叱責→許す→また同じ」というサイクルを繰り返す
✔周囲の方が「監視役」になってしまい疲弊し、関係が消耗する
では、イネーブリングをしない代わりに、どのような関わりが望ましいのでしょうか?
代わりに目指したい関わりは以下のようなものです。
✔後始末は減らし、支援への接続を増やす(受診、自助グループ、相談窓口)
✔ルールを明確にする(お金は貸さない・飲酒したくなったら炭酸水を飲む、など具体的に)
✔本人の責任と家族の責任を分ける(守るべきは家族の生活と安全)
これらの関りは、依存症を抱える方の回復に役立つだけでなく、周囲の方の負担の軽減という意味で重要です。
1-5.スリップとリラプス~回復で起こり得る「つまずき」~
依存症の回復は一直線ではなく、「揺れ」はどうしても発生します。
そこで役立つのが、スリップ・リラプスの区別です。
✔スリップ(slip)
→一時的な再使用・再行為(単発、短期間)
✔リラプス(relapse)
→元のパターンに戻っていく再発(頻度・量・生活破綻が再拡大)
大事なのは、スリップもリラプスも「終わり」と解釈して諦めるのではなく、「何が引き金だったか」を特定して回復計画を更新することです。
こうすることで、スリップもリラプスも失敗ではなくなり、再発予防の設計を現実に合わせるための「データ」になり得ます。
まとめ
依存症は、アルコールや薬物だけでなく、ギャンブル・買い物・SNSなど多様です。
また、依存がやめられない背景には、脳の学習・感情回避・環境要因が絡み、セルフケアには限界が生まれます。
回復で考えたいのは、イネーブラー(善意が支える構造)を理解し、スリップ・リラプスを「設計の更新」として扱いながら、治療・心理支援・自助グループ・環境調整を組み合わせることが大切です。
依存症の回復にはセルフケアも重要ですが、医師や心理カウンセラーの支援があった方が効果的ですし、何よりもご本人や周囲の方の負担軽減となります。
どうか、上手く依存症と向き合い、回復を目指してくださいね
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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