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トラウマからの回復のための心理療法の視点~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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トラウマからの解放~「力・抵抗・解放」の心理療法的アプローチとは~

トラウマからの解放~「力・抵抗・解放」の心理療法的アプローチとは~

2026/01/30

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

皆さんは「トラウマとは何か?」と考えた時、どのようなものを想像されるでしょうか。

 

多くの治療モデルでは、トラウマとは「出来事によって心が傷ついた状態」として語られます。

 

そして、ある意味でそれは間違いないものです。

 

しかし、今回参考にした露文ではその見方を超えて、「トラウマ経験の中にこそ、力と抵抗、解放のプロセスが埋め込まれている」と論じています。

 

一般的なトラウマ治療は症状の軽減を目的としがちですし、それは非常に重要です。

 

しかしこの論文の視点はトラウマを抱えておられる方の人生史や社会的文脈を深く見据える必要性を強調しています。

 

そして、それが後述する「パワー(力)・抵抗・解放」なんですね。

 

そこで、このブログでは上記の概念を用いてトラウマからの解放についてシェアしたいと思います。

 

※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものではありません。

※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。

 

1.トラウマと力の構造を「パワー(力)・抵抗・解放」から考える

 

 

トラウマを考えた場合場合、「パワー(力)・抵抗・解放」という観点から考えると理解しやすくなるだけでなく回復にも寄与します。

 

そこで、順番にこれら3つの概念をご説明していきますね。

 

1-1.パワー(力)とは何か~「強さ」ではなく「生き延びる力」~

 

トラウマを経験すると、「自分には力がない」「自分は弱い」「あの時から何かが壊れた」と感じてしまうことは珍しいことでも、また特別なことでもなく、トラウマ経験者は誰しもが大なり小なり感じるものです。

 

そして、ここで言う「パワー(力)」は、いわゆる「強くなること」や「耐え続ける」だけを意味しません。

 

ここで言う「パワー」とは、次のようなものを指します。

 

✔安全を確保しようとするチカラ

 

✔自分を守るために距離を取る・安全を選択するチカラ

 

✔今はトラウマについては話さない、という選択をするチカラ

 

✔体が自動的に反応して危険を避けようとするチカラ

 

✔トラウマの出来事生き延びてきたチカラ

 

トラウマの後に起きる反応(固まる、動けない、言葉が出ない、急に涙が出る、体が緊張する、息が浅くなる、視線を合わせられない等)は、当事者の方の意思とは別に生じることがほとんどです。

 

これらは、身体と心が自分自身を守るために働いている結果であると言えます。

 

つまり、トラウマによって生じる身体的あるいは自動的に浮かんでくるものは確かに症状ともいえるのですが、一方で「トラウマ後を生き延びるためのチカラ」なのです。

 

1-2.「沈黙」や「言葉にならない反応」も、力の表れ

 

カウンセリングや一般的な会話の場で、コミュニケーションに難を感じる方はトラウマを経験された方では一般的に生じやすいものです。

 

具体的には「うまく話せない」、あるいは「何を言えばいいか分からない」ということはトラウマを経験された方の多くが直面するものです。

 

また、これ以外にも「途中で頭が真っ白になる」「体がこわばる(緊張する)」、「視線に耐えられなくなる」ということもあるでしょう。

 

またカウンセリングで意図せずトラウマに触れてしまった場合に「話題を変えたくなる」ということも所持やすくなります。

 

こうしたことが起きると、「人に迷惑をかけている」等と考えてしまい、自分を責めてしまう方も大勢おられます。

 

しかし、こうした反応は当事者の方の責任ではなく、「自分が自分の安全を守ろうとしているチカラ」の証拠なんですね。


仮に会話の最中に沈黙が流れても、それは危険を感じたときに心身が出す大切なサインであることがあります。

 

カウンセリングの臨床では、この反応を「直すべき問題」として急いで押しのけるよりも、必要ならいったん立ち止まりながら…

 

✔今ここは安全か

 

✔何が起きると苦しくなるか

 

✔どんなペースなら話せそうか

 

✔身体はどんな反応をしているか

 

という感覚を一緒に確かめていきます。

 

ここで大切なのは、トラウマによって生じる反応を「敵」にしないことです。


つまり、自分自身が取ってしまう反応を、自分自身の敵ではなく、あなたの味方として理解し直す、ということです。

 

この姿勢こそが、回復の土台になります。

 

1-3.抵抗は創造的プロセスである~「邪魔」ではなく「自分を守る知恵」~

 

心理療法の世界では心理カウンセラーに対して抱く「抵抗感」や「抵抗」という言葉が、まるで「治療の妨げ」のように扱われることがあります。

 

このように扱われるのは、抵抗がケアのプロセスを止めてしまう、あるいは逆行してしまうことにつながるからです。

 

その抵抗は、例えば大事な話題を避けたくなったり、カウンセリングの予約をキャンセルしたくなるという状態で出てくる場合もあります。

 

あるいは、「もう大丈夫です」と言いたくなったり、カウンセラーと距離を取りたくなる、カウンセリングを早く終わらせたくなる、というケースもあります。

 

こうしたことが起きると、「私は本当に変わりたいと思っているのだろうか?」と自分を責めてしまう人もいます。

 

というのは、トラウマを解決したいと思っているのに、当事者の方の心の中で「回復のプロセスを進める」ということ自体に、原因不明の抵抗を感じるからです。

 

ただ、一見するとこの抵抗は原因不明のように思えるかもしれませんが、実はきちんとした意味があります。

 

そのため、この論文では抵抗を別のように捉えます。


それは…

 

抵抗とは、あなたが自分の尊厳や境界線を守るために生み出してきた創造的な力だ

 

…という見方です。

 

1-4.抵抗は「ケアに消極的」という意味ではない

 

トラウマを抱える方にとって、「話す」「思い出す」「感じる」は、時に危険に近い体験として感じられます。

 

このようにトラウマに関連する記憶はネガティブな考えや感情を想起させることになるため心身は、様々な工夫をします。

 

例えば、トラウマに関連するものに対して近づきすぎないようにする、ということもそうです。

 

また感情が溢れないようにしたり、コントロールを失わないようにする、という工夫もそうです。

 

これらが、いわゆる抵抗という形で表れてしまうんですね。

 

この視点から考えると、治療的抵抗は「治療に従わない行為」ではなく、トラウマを抱えている自分自身の価値・意味・主体性を守る行為である、ということが言えます。

 

たとえば、トラウマの語りを避ける行動は、単なる回避ではなく、「安全感がまだ形成されていない」「発話・話す主体性を奪われた過去の経験と関連している」といった重要な意味があるのです。

 

1-5.抵抗を「敵」にしない進め方

 

上記の理由により、カウンセリングでは、抵抗をなくそうとするよりも、抵抗が教えてくれていることを一緒に探します。

 

例えば、「その話題に近づくと、体はどんな感じになりますか?」という問いかけをおこないます。

 

また、「今は話さないほうが安全だ、と感じる部分があるのかもしれませんね」という事にもなりますし、「今日は『内容』ではなく『安全の作り方』を一緒に整えませんか?」という進め方にもなります。


抵抗はトラウマを経験された方が、トラウマを抱えながら生き延びるために作ってきた大切な方法です。

 

そのため必要なのは、状況に応じて「今の状態に合うケア」へ少しずつ調整していくことです。

 

1-6.解放は治療者とクライアントの共同プロジェクト~「症状を消す」だけがゴールではない~

 

トラウマ治療というと、「フラッシュバックをなくす」「不安を減らす」「眠れるようにする」など、症状の軽減が中心に語られがちです。

 

もちろん、それはとても大切です。

 

ただ、それと同じくらいに重要なのは、トラウマからの解放です。


そして解放とは、トラウマを抱えている方の声と選択が中心になるプロセスだ、という点です。

 

1-7.解放とは「自分の人生の主導権が戻ってくること」

 

トラウマは、しばしば「自分の意思が無視された」「選べなかった」「支配された」「逃げられなかった」という体験と結びつきます。

 

そのため回復には、「主導権を取ることができる」という感覚を取り戻すことが大切になります。

 

例えば、自分の境界線(イヤなものはイヤ)を取り戻すこともそうですし、自分のペースを選べるようになるということも大切です。

 

また、誰に何を話すかを自分で決められることや、「今の生活」を自分の望む方向へ少しずつ動かせるといった、主導権の回復も重要です。


「解放」とは、誰かに治してもらうことも重要なのですが、それよりも自分自身の選択が尊重される形で、ご本人の人生がご本人の手に戻ってくる、ということです。

 

1-8.解放のための共同プロジェクトとは「一緒に地図を作る」こと

 

解放は、医師や心理カウンセラーといった治療者が答えを持っていて導くものではなく、当事者の方の体験・価値観・安全感覚を中心に、二人で共同で「地図」を作り直していく作業に近いと言えます。

 

その地図の中には…

 

✔どんなときに苦しくなるのか

 

✔どんなときに少し楽になるのか

 

✔何が安全で、何が危険に近いのか

 

✔どんな支えがあると進めそうか

 

✔いまは何を優先するのがよいか

 

…と言うものが含まれており、それらを当事者の方と同じペースで整え、そして作成していきます。


そして、これが重要なのですが、その過程そのものが、トラウマが奪ってしまった「選択」と「尊厳」を取り戻す道になります。

 

なぜなら、その「地図」があることによって、自分自身で自由に選択でき、そして人生を進めていくことができるようになるからです。

 

つまり地図は「心の見取り図」であり、その心の地図を使って、上手く日常を、そして人生を生きていくということにつながるんですね。

 

2.トラウマ理解を改めて考える~「心の傷」だけでは足りない理由~

 

 

トラウマという言葉を聞くと、多くの方は「心にできた深い傷」を思い浮かべるのではないでしょうか。

 

もちろん、トラウマ体験が強い苦痛や症状を生み出すことは事実です。

 

しかし最近では、トラウマを個人の内面だけの問題として捉えるのは不十分ではないかという視点が広がっています。

 

2-1.トラウマは「心の中」だけで起きているのではない

 

従来の心理学・心理臨床では、トラウマは主に以下の2つで説明されてきました。

 

一つは、強い出来事によって生じた心の傷というもの。

 

もう1つは記憶や感情の処理がうまくいっていない状態、というものです。

 

確かにこれらは間違っていないのですが、新しい視点では、トラウマは社会との関係の中で生まれ、維持されるものでもあると考えます。

 

具体的には、次のような要素です。

 

● 社会構造の中での抑圧

 

差別、貧困、性別による不平等、性暴力、家庭内暴力、いじめなど、社会的な力の不均衡が存在する環境では、トラウマ的な出来事のリスクは高まります。

 

トラウマは、偶然起きた出来事だけでなく、チカラの偏りがある構造の中で起こることが多いのです。

 

● 社会的な意味づけの欠如

 

トラウマ的な体験を語っても十分に理解されない、あるいは「もう終わったこと。考えても仕方がない」と否定されるといった経験は、出来事そのもの以上に深い孤立を生みます。

 

トラウマは「何が起きたか」だけでなく、それがどのように当事者の方が受け止められたかによっても形作られます。

 

そのため、「その出来事の意味は何だったのか?」という問いが非常に大きな意味を持つのです。

 

● 対人関係の不均衡

 

トラウマ的な出来事のほとんどは、加害者と被害者、支配する側とされる側という二極的な立場を生みます。


そして、その関係の中で力が偏っているとき、人は自分の意思や尊厳を守ることが難しくなります。

 

トラウマは、こうした関係性の中での力の問題とも深く関わっています。

 

2-2.PTSD治療への問い直し

 

現在の臨床では、PTSDの治療としてトラウマ記憶の統合やフラッシュバックの軽減、不安症状の緩和といったアプローチが主流です。

 

これらはとても重要ですし、効果もあります。

 

しかし同時に、「症状を減らすこと」に焦点が当たり過ぎていないか?という問いもあります。

 

というのは、もしトラウマが社会的な文脈と結びついているなら、記憶処理だけでは十分ではない可能性があるからです。

 

そのため、先述した「その出来事の意味は何だったのか?」という問いが重要になるのです。

 

2-3.セラピーを「意味を創り直す場」として捉える

 

この新しい視点では、セラピーを次のように捉え直します。

 

✔クライアントが自分の物語を語る場

 

✔社会的文脈を含めて体験を理解し直す場

 

✔自分の中にあった「抵抗の力」を再発見する場

 

トラウマ体験の中で、当事者の方は無力だったわけではありません。


その瞬間、ご本人なりに「耐える」「守る」「生き延びる」という選択をしてきました。

 

その行為は、消極的な反応ではなく、尊厳を守ろうとした抵抗でもあります。

 

セラピーは、そうした力を再発見し、「私は回復できない人間なのではない」という理解を取り戻すプロセスでもあるのです。

 

2-4.解放とは何か

 

ここでいう「解放」とは、症状がゼロになることではありません。

 

ここでの解放とは、自分の体験を自分の言葉で語れること、出来事を社会的な文脈の中で理解できること、自分の中の力や抵抗を認められることを意味します。

 

こうしたプロセスを通して、人は少しずつ「奪われた意味」を取り戻していきます。

 

それは、単なる治療ではなく人生の物語を書き直す作業でもあるのです。

 

まとめ

 

トラウマを心の傷だけで理解するのではなく、社会構造や関係性の中で捉えセラピーを意味創造の場とする。

 

この視点は、トラウマ理解を大きく変えます。

 

トラウマを抱えている当事者の方がいま感じている苦しさは、多くの場合、それは力の不均衡の中で生じた傷です。

 

そして同時に、それは当事者の中にはすでに「抵抗し、生き延びてきた力」があることを意味します。

 

トラウマを抱えていても、それに支配されるべき理由はありません。

 

どのような理由があってトラウマを抱えるに至ったとしても、人生をより良く進めていくことはできます。

 

その道筋をケアを通して見出だしてくださいね。

 

参考文献

Power Resistence and Liberation in Therapy with Survivors of Trauma: To Have our Hearts BrokenTaiwo Afuape

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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