不安を伴う双極症の理解とセルフケア
2026/02/06
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
双極症(双極性障害)はどうしても気分の波が発生します。
ただ、その気分の波は双極症によるものだけではない可能性があります。
というのは、双極症に不安症状が併存していること(いわゆる『併存不安』)が、症状全体の重さや日常機能、回復のプロセスに深い影響を与している可能性があるからです。
そこで、このブログではいつものように研究論文の知見をもとに、双極症と併存不安についてシェアしたいと思います。
※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものではありません。
※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。
1.不安が双極性障害にもたらす影響

この研究では、米国の大規模臨床プロジェクト(STEP-BD)に参加した 500名以上の双極症の方が対象となり、うつ・躁の症状に加えて 不安障害が併存しているかどうか、そしてそれが日常生活や治療経過にどう影響するかが検討されました。
そして結論として、以下のものが確認されました。
✔ 双極症に加えて不安症状を持つ方は症状がより重く、日常生活の機能低下が大きい
✔ うつや躁のエピソードの回復が遅く、再発しやすい傾向がある
✔ 最悪の選択肢を選んでしまうリスクが高い
これは「単に不安が強い」というだけではなく、双極性障害そのものの経過や治療に影響を与えるほど大きな要因だということが結論付けられれています。
1-1.不安が併存すると何が起きるのか?
双極性障害は抑うつ状態と躁状態が繰り返される心の病ですが、それに不安が乗っかることによって、さらに当事者の方の心理的精神的な負担が大きくなります。
具体的には、以下のような問題が生じやすくなります。
1-1.症状が複雑になる
双極性障害に不安症状が加わると、当然ですが当事者の方が経験する症状はさらに複雑になります。
具体的には…
①気分が落ち込むだけでなく、将来や対人場面への不安が強くなる
↓ ↓ ↓
②不安が強いと落ち込むときの回復が遅くなる
↓ ↓ ↓
③不安によって睡眠や活動がさらに乱れる
…といった悪循環が生じやすくなります。
このため、症状全体が重く見え、当事者の方にとっては回復が進みにくいような感覚を抱くことが少なくありません。
また私の心理臨床の話しになりますが、不安と双極症が混ざることで「先の見えにくさ」が増してしまい、気分の波に振り回される感覚が強まってしまう方は決して珍しくありません。
1-2.日常生活への影響が大きい
研究では、不安がある当事者の方は仕事や勉強へのモチベーションが低くなってしまう、あるいは家族や友人との関係にネガティブな影響がでるという問題が生じやすくなることが示されています。
また、それだけではなく、自分の役割を果たせないと感じやすいなど、社会的機能が低下しやすいという結果が示されました。
実際に当事者の方とお話ししていると、「いつも胸の奥がざわざわして落ち着かない」「不安で外出や人との会話が億劫になる」といった声が多く聞かれます。
1-3.回復が遅く、最悪の選択を考える、あるいは選んでしまう可能性が高まる
この論文の重要な点は、単に不安があるというだけでなく、それが最悪の選択肢を考える、あるいは選んでしまうリスクも関係している可能性が示唆されたことです。
元々、双極症は最悪の選択肢を考える、あるいは選択するリスクの高い心の病です。
それに不安が乗っかると、当然リスクは高くなります。
不安が強い状態というのは、自分の思考や感情が制御しにくくなり、将来への希望を持つことが難しくなります。
そして、苦痛の回避が先行しやすいといったストレス耐性が下がってしまう状態も生じさせます。
こうした状態は、最悪の選択肢に対するリスクを高める因子と重なってしまいます。
2.不安を伴う双極症と向き合うセルフケアの視点

双極性障害の治療では薬物療法が重要な柱になりますが、心理的な支援も非常に役立ちます。
特に「不安」が強く関わっている場合、その存在を見過ごすと気分の波に飲み込まれやすくなります。
そこで、ここでは心理カウンセリングの視点をセルフケアに応用し、日常で取り組める具体的な方法をシェアしたいと思います。
2-1.不安と気分のつながりを「自分で見える化」」する
まず最初に大切なのは、「不安」と「気分の落ち込み(あるいは高揚)」がどのように絡み合っているかを知ることです。
不安は双極症に併存するので単独で起こるのではなく、次のようなループを作りやすい特徴があります。
✔落ち込む → 将来への不安が強まる → 行動が減る → さらに落ち込む
✔不安で眠れない → 疲労が溜まる → 気分が不安定になる
✔対人不安が高まる → 人を避ける → 孤立感が強まり気分が落ちる
セルフケアとして有効なのは、この「ループ」を紙に書き出すことです。
具体的には…
✔ きっかけは何だったか
✔ そのときどんな考えが浮かんだか
✔ どんな行動を取ったか
✔ その結果、気分はどうなったか
という流れの「見える化」ですね。
この流れを整理するだけでも、「ただしんどい」状態から「構造が見える」状態へと変わります。
そして構造が見えると、対処の糸口が生まれてきます。
2-2.気分の波を前提にした行動設計
双極症では、気分の波を完全にゼロにすることは難しく、そこをゴールにするのは現実的ではありません。
確かに気分の波を最小化することはできますが、しかしどうしても波そのものは残ってしまう場合が珍しくありません。
そのためセルフケアでは、「安定したときにどう動くか」だけでなく、「不安や落ち込みがあるときにどう最小限を保つか」を考えておくことが重要です。
例えば…
✔不安が強い日は「完璧にやる」のではなく「最低限で良いとする」
✔外出が難しい日は、5分だけ外気に触れる
✔気分が安定している日に、翌週のスケジュールを緩めに設計する
ポイントは「避け続けないこと」と「無理をしないこと」のバランスです。
不安を完全に避けようとすると生活範囲が縮小しますが、過度に頑張りすぎると反動が来てしまいます。
そのため、こうした活動によって小さな成功体験や達成感を積み重ねることで、「不安があっても動けた」という感覚が育ちます。
それが、回復の実感につながります。
2-3.不安が高まる場面への具体的対処
不安はどうしても抽象的に感じられますが、実際には「特定の状況」で高まることが多いものです。
そのためセルフケアでは、その状況ごとに具体的な対策を準備します。
● 対人不安がある場合
会話の前に「今日は3つ程度の質問くらいにする」と決めておく
会議等がある場合は事前に話題をメモしておく
会話後に「できたこと」を振り返り達成感を感じる。
● 身体的な不安が強い場合
✔呼吸を4秒吸って6秒吐くペースで整える
✔足裏の感覚や椅子の接触感に意識を向ける
✔不安を「消そう」とせず「波として観察する」
● 先の見えない不安が強い場合
✔「今できること」と「今は考えなくてよいこと」を分ける
✔24時間以内にできる行動だけに焦点を当てる
✔不安は「ゼロにする対象」ではなく、「扱い方を選ぶ対象」とする
不安を無理にゼロにしようとすると、かえってツラくなってしまいます。
また、自己否定の感情や考えも浮かびやすくなります。
そのため、「不安との付き合い方」を作る方が効果が見込めます
2-4.セルフケアの土台としての生活リズム
双極症においては、睡眠と生活リズムの安定は最重要の課題です。
睡眠や生活リズムが崩れると、メンタルに大きな影響を与えます。
そのため、以下の工夫を行ってください。
✔ 就寝・起床時間を固定する
✔ 眠れないときは眠たくなるまでリラックスして過ごす
✔ カフェインや刺激の強いSNS等の情報を夜に減らす
不安は睡眠不足で増幅される特徴を持ちます。
そのため、まずは身体のリズムを守ることが、気分と不安の安定につながります。
2-5.「ひとりで抱え込まない」というセルフケア
セルフケアは「自分だけで頑張る」という意味ではありません。
調子の波を家族や信頼できる人に共有したり、主治医やカウンセラーに、不安の変化を具体的に伝える、あるいは不安が強いときは早めに相談するということが大切です。
助けを求めることは立派なセルフケアであり、症状を安定化させる工夫です。
最後に
双極症に不安が重なると、つらさは二重構造になってしまいます。
しかし、気分と不安の関係を理解し、小さな調整を積み重ねることで、波は「完全に消えなくても扱えるもの」へと変わっていきます。
セルフケアの目的は、不安をなくすことではありません(もちろん、それに越したことはありませんが)。
不安があっても生活を維持し、少しずつ自分のペースを取り戻すことです。
今日できることを、ほんの少しだけ。
その工夫によって安定へ進んでいけるようにしてくださいね。
参考論文
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こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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