HSPはストレスに弱い?~研究が示す身体症状との関係について~
2026/02/11
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
日々の臨床の中でHSP(Highly Sensitive Person)の特性による悩みを訴える方は決して珍しいものではありません。
HSP特性が高い方は、ストレスを感じやすいだけでなく、身体症状を多く報告する傾向があることが研究で示されています。
そして重要なのは、その影響は「ストレスが高い時だけ」に起きるのではなく、感受性そのものが健康感に独立して関連している可能性がある、という点です。
これは、「敏感だから気にしすぎている」という単純な話ではありません。
感覚処理感受性という気質が、ストレス知覚と身体の不調の両方に関係している可能性を示す科学的知見なんですね。
そこで、このブログではHSPの方が持つ大変さ、特に心身の不調についてシェアしたいと思います。
※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものではありません。
※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。
1.HSP(Highly Sensitive Person)の生きづらさを「科学する」
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まずは、少しマニアックなお話を…
HSPの方が持つ「敏感さ」は、性格の個人差として語られることはあっても、日常のストレス感や体の不調の感じやすさと、どの程度関係しているのかは、十分に整理されていませんでした。
そこで本研究は、HSP尺度(感覚処理感受性=刺激に敏感で、刺激で疲れやすい特性)に注目し、次の点を確かめようとしました。
✔HSP特性が高い方ほど、日常を「ストレスフル」と感じやすいのか
✔HSP特性が高い方ほど、身体症状(体の不調)を多く報告しやすいのか
さらに一歩踏み込み、「ストレスが高いときだけ」HSPの方の体調が悪くなるのか(=ストレスとHSPが『掛け算』で効くのか)、それとも ストレスとHSPはそれぞれが『足し算』で影響するのか を検討しました。
1-1.HSPの「掛け算」「足し算」
とても大事なポイントなので、少し解説しますね。
この研究で言っている「掛け算」と「足し算」は、HSP(敏感さ)とストレスが、体調にどう影響するかの違いを表しています。
(1)掛け算モデルとは?
掛け算モデルとは、「HSPの方は、ストレスが高いときに『特に』体調が悪化する」という考え方です。
つまり…
✔ストレスが低いとき → それほど差は出ない
✔ストレスが高いとき → HSPの方だけ極端に悪くなる
というパターンです。
これはイメージとしては、「敏感さ × ストレス = 体調悪化」という関係です。
別の言い方をすると、「敏感で、しかもストレスが高いときに爆発的に悪くなる」というタイプの説明です。
(2)足し算モデルとは?
一方で、この研究の結果は「掛け算」ではありませんでした。
研究で示されたのは、「HSPもストレスも、それぞれが独立して体調に影響している」という形でした。
つまり…
✔ストレスが高いと一般的には体調は悪くなりやすい
✔HSPが高い方も体調不良を感じやすい
✔でも「HSPだからストレスのときだけ特別に悪くなる」というわけではない
…ということです。
これはイメージとしては、「敏感さ + ストレス = 体調への影響」という関係です。
以上の内容を別の角度から整理してみましょう。
● 掛け算タイプ
→「HSPの方は忙しい時だけ急に崩れる」
● 足し算タイプ
→「HSPの方は、もともと体調を感じやすく、そこにストレスが加わるとさらに影響が出る」
…という違いです。
1-2.「掛け算」「足し算」モデルの重要性
この論文では…
✔ HSPが高い方ほど体調不良を報告しやすい
✔ しかし、一般にストレスが高い方ほど体調不良を報告しやすい
✔ 「HSP × ストレス」で急激に悪化する証拠は見つからなかった
これはつまり、敏感さはストレスの「増幅装置」というより、独立した要因として体調と関係している、という理解になります。
この、「掛け算」「足し算」の視点は非常に重要です。
というのは、もし掛け算なら「ストレスを減らせばほぼ解決」という発想になります。
しかし足し算なら、 「ストレス管理」だけでなく 「刺激の多さ」「身体感覚への敏感さ」そのものへの配慮が必要になるからです。
ここが臨床的にとても重要なポイントです。
1-3.改めて、HSP(Highly Sensitive Person)とは?
HSP尺度は、次のような幅広い項目を含みます。
✔強い光・音などで圧倒されやすい
✔内面世界が豊かで、物事を深く感じる
✔芸術や音楽に強く心を動かされる
✔痛みに敏感なほうだと感じる
研究論文ではこの特性を、いろいろな敏感さの「寄せ集め」というより、中心には 「感覚処理感受性」という一本の軸(刺激への敏感さ+刺激で疲れやすい)があるものとして扱っています。
1-4.研究デザイン
測ったものはシンプルで、主に次の3領域です。
✔HSP特性:HSP尺度(27項目、1〜5の評定平均)
✔主観的ストレス:PSS(過去1か月のストレス感を尋ねる10項目)
✔身体症状の自己報告
→CHIPS(『過去2週間の身体症状』がどれくらい『困りごと』だったか)
→PILL(身体症状がどれくらいの頻度で起きたか)
そして、主な結果は以下の通りです。
(1)HSPが高い方ほど、ストレスを感じやすい傾向
HSP得点が高い方ほど、PSS(主観的ストレス)も高い方が多く、両者にははっきりした関連がありました
これは、敏感な方ほど、日常をストレスフルに感じやすい傾向があると言い換えることができるでしょう
(2)HSPが高い方ほど、身体症状を多く報告しやすい傾向
HSPが高い方は、CHIPS(過去2週間の身体症状の困りごと)やPILL(身体症状の頻度)といった身体症状の自己報告も高い傾向があり、HSPと身体症状の間にも明確な関連が確認されました。
1-5.さストレスを差し引いても、HSPは体調を予測した
統計的には、ストレスや性別の影響を先に考慮しても、HSP得点は身体症状の説明に「上乗せ」で影響を与えていました。
研究では総括として、HSPは主観的ストレスよりも、身体症状の説明力が強い側面があると述べています。
つまり、ストレスを感知するよりも、まずは身体に「出てしまう」というものですね。
2.HSPの方が実践しやすいセルフケア

研究では、HSP特性が高い方ほど日常をストレスフルに感じやすく、身体症状の報告も多い傾向が示されています。
だからこそ大切なのは、頑張って耐えることではなく、影響が出にくいように「設計する」ということです。
2-1.刺激管理(環境を整える)
この目的は刺激の「総量」を減らす、ということです。
HSPの方は「一つ一つの刺激が強い」のではなく、刺激の積み重ねで消耗しやすいという特徴があります。
そのためポイントとなるのは、刺激をゼロにすることではなく、総量をコントロールすることです。
実践ステップ
(1)1日の中に「回復時間」を先に入れる
✔仕事や予定の合間に5〜10分の「刺激遮断時間」を確保
✔目を閉じる/静かな場所に移動する/スマホを見ない
→「疲れたら休む」ではなく、「疲れる前に休む」に切り替えます。
2-2.刺激の種類を把握する
次の中で自分が疲れやすいものにチェックをつけていきましょう。
□ 音(人混み、会話、テレビ)
□ 光(蛍光灯、画面の明るさ)
□ 人間関係(気遣い、空気を読む)
□ 情報量(SNS、ニュース)
このように「何で疲れているのか」を言語化できるだけで、負担は下がります。
2-3. 予定は「7割」で止める
まず、スケジュール帳を見て「余白」があるか確認してください。
そして1日の予定は「最大でも7割」埋める程度にしましょう。
HSPの方は「普通の量」が「過多」になりやすい傾向がありますので注意が必要です。
次に、身体感覚の再評価をしましょう
目的は不安の拡大を防ぐというものです。
HSPの方は身体の変化に敏感です。
それ自体は悪いことではありませんが、しかし…
「少し動悸がする」
→「何か重大な問題かも」→ 不安増大→ さらに身体症状増加
…という悪循環に入りやすいのです。
この悪循環を解決するために以下の手順を踏みます。
実践ステップ
(1)ラベリング(名前をつける)
例:
「いま心拍が少し早い」
「少し胃が重い」
※評価せず、実況するだけにするのがコツです。
(2)3つの問いを使う
① これは危険サインか、それとも疲労サインか?
② 昨日も似た状態はあったか?
③ 休息で変化する可能性は?
ここでは「即断」ではなく、あくまでも「観察」に切り替えるということが大切です。
(3)身体感覚を「情報」と捉える
「不調=問題」ではなく「不調=回復が必要という通知」という再解釈が不安を減らす効果を発揮してくれます。
2-4.自己批判を緩める
ここでの目的は、二次的なストレスを減らすことにあります。
HSPの方が最も消耗するのは、刺激そのものよりも…
✔「自分は弱い」
✔「気にしすぎ」
✔「もっと頑張るべき」
という自己批判であり、外部からの刺激に対する自己否定で生じる「二次被害」といえます。
実践ステップ
(1)言い換え練習
×「自分は弱い」
→ ○「刺激処理が深いタイプだ」
×「気にしすぎ」
→ ○「細部まで気づく力がある」
(2)友人に言うなら何と言うか?
自分が同じ状態の友人にかける言葉を書いてみましょう。
そして、それを自分にも適用します。
そうすると自分の客観化だけでなく、自分に対する優しさに繋がります。
2-4.「特性」という枠組みを使う
HSPは性格の欠陥では決してなく、単なる神経系の処理傾向として考えるのが妥当です。
眼鏡をかける人が「視力が悪い自分は弱い」と責めないのと同じように、刺激に敏感な特性も「調整すべき条件」であって「否定すべき欠点」ではありません。
まとめ
もしも「人より疲れやすい」「すぐ体調を崩す」「敏感すぎるのかもしれない」と感じているなら、それは性格の問題ではなく、神経系の特性かもしれません。
自分の中で何が起こっているかという理解は、自己否定を減らしてくれます。
そしてセルフケアの「設計」は、回復を助けます。
敏感さは欠点ではありません。
正しく扱えば、それは大きな強みになります。
ぜひ、上手くHSPの特性と付き合ってくださいね。
参考論文
The Highly Sensitive Person: Stress and physical symptom reports
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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