愛着障害と感情コントロールの関係とは?~愛着タイプと感情の乱れについて~
2026/02/20
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
愛着障害、つまり成育の中で不適切な養育があった場合、その後に感情のコントロールが難しくなるというケースは珍しくありません。
そして多くの場合、もちろん感情調節の困難さは愛着障害に起因するものなので性格上の問題では決してなく、いままで接してきた人(大人)との関係の経験によって形成された心のパターンが関係しています。
結論から言いますと、愛着障害の方で感情が乱れやすい背景には「関係の安心感」が影響している可能性があります。
そして、特に愛着障害の感情調節の問題は対人関係において如実に表れる傾向があります。
そこで、今回もいつものように研究論文を参照にしつつ、愛着のスタイル(人との距離の取り方の傾向)が、感情の調整のしやすさや心理的なストレスの感じ方と深く関連していることをシェアしたいと思います。
1.愛着と感情調整の心理学~なぜ人間関係で不安や苦しさが生まれるのか~

では早速、愛着障害と感情調節困難についての関係を見ていきたいと思います。
まずは、そもそも「愛着とは何か」ということから始めたいと思います。
1-1.愛着とは何か~人との距離の取り方の土台~
愛着とは、簡単に言えば「人との心理的な距離の取り方のクセ」のようなものです。
私たちは生まれた直後から、周囲の大人との関係の中で安心や不安を経験しながら成長します。
そして、その過程で「人は信頼できる存在なのか」「自分は受け入れられる存在なのか」という感覚が少しずつ形づくられていきます。
この感覚は単なる考えではなく、「人と関わるときの無意識の前提」として心の中に残ります。
そして、それが大人になってからの恋愛や対人関係にも影響を与え続けるんですね。
ただ重要なのは愛着は固定された性格ではなく、経験によって形成された傾向です。
そのため、環境や人との関わりによって変化する可能性も十分にあります。
1-2.成人に見られる主な愛着の傾向
研究では、成人の愛着には大きく分けていくつかの傾向があることが知られています。
● 安定型
✔人を信頼しやすい
✔親密さに安心感を持てる
✔感情の調整が比較的安定している
安定型の方は、人との関係の中で安心を感じやすく、問題が起きても比較的落ち着いて対処しやすい傾向があります。
● 不安型
✔見捨てられ不安が強い
✔相手の反応に敏感
✔感情の揺れが大きい
不安型の方は、人との距離が近くなるほど不安が強まりやすく、「嫌われていないか」「離れていかないか」を確認したくなることがあります。
● 回避型
✔親密さを避ける傾向がある
✔感情を抑え込みやすい
✔自立を強く重視する
回避型の方は、人に頼ることや感情を見せることに抵抗を感じやすく、距離を取ることで安心を保とうとする傾向があります。
研究では特に、不安型と回避型の傾向が強い場合、感情をうまく扱う難しさと関連しやすいことが示されています。
1-3.感情調整とは何か~感情に飲み込まれないチカラ~
感情調整とは、「感情を感じながらも生活を維持できる能力」のことを指します。
ここで重要なのは、感情調整とは「感情をなくすこと」ではないという点です。
というのは、不安や悲しみ、怒りなどの感情は自然なものであり、消すべき対象ではないんですね。
ネガティブな感情が問題になるのは、感情に圧倒されてしまう、あるいは行動がコントロールできなくなる、生活の維持が難しくなってしまう、という状態にまで至ってしまった状態を意味します。
つまり感情調整とは、感情を消すことではなく、感情に飲み込まれずに扱える状態を指します。
研究では、感情調整の困難さが高いほど、不安の強さや抑うつの程度、心理的な苦痛が高まりやすいことが確認されています。
1-4.愛着から感情、そして苦しさへ
今回参照にしている論部で非常に重要な点は…
愛着 → 感情調整 → 心理的苦痛
という流れが確認された点です。
つまり…
愛着の不安定さがある
↓
感情調整が難しくなる
↓
心理的ストレスが増える
↓
愛着の不安定さが増す
…という構造に愛着障害を持っておられる方は陥りやすいということです。
これは私たち心理カウンセラーにとっての臨床において、とても重要な意味を持ちます。
なぜなら、感情の問題だけを直接変えようとしても十分ではなく、人との関係に対する安心感の部分にアプローチする必要があることを示しているからです。
1-5.不安型愛着の特徴~感情が大きく揺れやすい理由~
不安型傾向が強い方では、次のような心理が起こりやすくなります。
✔拒絶への敏感さ
✔相手の反応への過剰な注意
✔ネガティブな感情の増幅
その結果として、不安が長く続く、あるいは気分の波が激しくなる、相手に確認を求める行動が増えるといった状態が生じやすくなります。
これは「性格上の脆弱性」として理解するよりも、関係の安全性を確かめようとする自然な反応として理解する方が妥当であることを示しています。
1-6.回避型愛着の特徴~感情を抑えることの代償~
回避型傾向では、感情を抑えこむ、または親密さを避ける、自立を強調するという傾向が見られます。
一見すると落ち着いて見えることもありますが、内側ではストレスの蓄積や感情の処理の難しさや孤立感が生じていることがあります。
感情を抑えることは短期的には有効でも、長期的には負担が大きくなる場合が珍しくないので注意が必要です。
1-7.なぜ愛着が感情調整に影響するのか
では、なぜ愛着障害が感情調節に影響するのでしょうか?
理由はとても本質的です。
感情はもともと「人との関係の中で整えられるもの」だからです。
幼少期に「泣いたら抱きしめてもらえる」「不安を受け止めてもらえる」「気持ちを理解してもらえる」という経験を繰り返すことで、人は「感情は扱えるものだ」という感覚を学びます。
逆にその経験が少ない場合、感情を扱う土台が十分に育ちにくくなります。
その結果、大人になってから感情の揺れが大きくなったり、人間関係の中で苦しさが強くなったりすることにつながるんですね。
1-8.感情の問題の背景には関係の経験がある
上記の内容から分かる重要なポイントをまとめると、次の通りになります。
✔愛着は人との距離の取り方の傾向である
✔愛着の不安定さは感情調整の難しさと関連する
✔感情調整の困難は心理的苦痛を高める
✔これは性格の問題ではない
感情の苦しさの背景には、これまでの関係の経験が影響している可能性があります。
そして重要なのは、「愛着は変化し得るもの」だという点です。
安心できる関係経験を積み重ねることで、人との関係の感じ方や感情の扱い方は少しずつ変わっていくことが期待できます。
2.愛着の問題による感情のコントロールの難しさに対するセルフケア

愛着の問題が背景にある場合、感情が不安定になることは決して珍しいことではありません。
そして愛着障害を背景とした感情調節困難は、なかなか第三者から理解されにくいという問題も付きまとってきます。
しかし研究から分かっている重要な点は、愛着に関連する問題は安心できる関係の経験が十分に育たなかったことによる影響として理解する必要があるということです。
つまり、感情のコントロールが難しいのはこれまでの経験の結果であり、また適切な方法によって整えていくことも十分に可能です。
そこでここでは、愛着の問題による感情調節の困難さに対してできるセルフケアの視点を解説しますね。
2-1.安全な関係を少しずつ増やす
感情はもともと、人との関係の中で育まれ整えられるものです。
しかし幼少期・生育期に安心して気持ちを受け止めてもらう経験が少なかった場合、大人になってから感情を一人で抱え込みやすくなります。
そのためセルフケアとして重要なのは、「安全だと感じられる人との関わり」を少しずつ増やすことです。
ここで大切なのは、完璧な理解者を見つけることではありません。
✔話を最後まで聞いてくれる人
✔否定せずに反応してくれる人
✔一緒にいて緊張しすぎない人
このような存在が少しでもいることが、感情を整える力になります。
また、心理カウンセリングも安全な関係体験の一つになります。
2-2.感情を言葉にする習慣をつくる
感情が不安定なとき、多くの場合は「何が起きているのか分からない」という混乱状態になってしまっています。
そのため役立つセルフケアは、感情を言葉にすることです。
ポイントは上手に表現することではありません。
✔今、不安を感じている
✔さみしさがある
✔怒りも少しある
このようにシンプルで十分です。
この効果ですが、いま感じている感情に名前をつけることで、脳の働きが整理され、感情の強さが下がりやすくなることです。
また、直接口に出さずに紙に書くという方法も非常に有効です。
2-3.身体感覚に気づく練習をする
感情は突然爆発するように感じることがありますが、実際にはその前に身体の変化が起きています。
例えば、胸がざわざわする、呼吸が浅くなってしまう、肩に力が入る(緊張する)、胃が重くなるというのが典型例として挙げられると思います。
こうしたサインは、情の前触れですので、身体感覚に気づくことは非常に重要なセルフケアになります。
おすすめは…
✔ゆっくり呼吸を感じる
✔足の裏の感覚に意識を向ける
✔手の温度を感じる
…といったシンプルな方法です。
これは感情を抑えるためではなく、感情に飲み込まれないための方法でもあります。
2-4.「反応」ではなく「選択」を意識する
愛着の問題があると、不安や恐怖が強くなったときに「反射的な行動」を取りやすくなってしまいます。
例えば、すぐに居場所等の確認の連絡をしてしまう、また相手を試すような言動をしてしまう、逆に突然距離を取るといった反射的な言動です。
しかし感情が高まっているときほど、「少し待つ」ことが役立ちます。
そのため、数分でも良いので「今は感情が強い状態だ」と気づくだけで反応的な言動を抑えることがやりやすくなります。。
これは感情を我慢することではなく、自分を守るための時間を作る行動です。
2-5.自分を責めないことが回復を早める
最も大切なセルフケアは、自分を責めないことです。
愛着の問題による感情の揺れは、性格のせいでも人間的な弱さや欠陥ではありません
それはこれまでの逆境体験による影響です。
そして経験によって作られたということであれば、経験によって変えていくことができます。
まとめ
愛着の問題による感情調節の困難さに対して役立つセルフケアをご紹介しましたが、感情の揺れがあることは決して異常ではありません。
むしろそれは、人とのつながりを求める心があるという意味も持ちます。
問題なのは、感情調節が難しいがゆえに、感情に巻き込まれた言動からいかに自分や大切な関係を守るか、ということです。
もし一人で難しいと感じる場合は、専門家のサポートを受けることも有効な選択肢ですが、まずは理解される経験そのものが、回復の一歩になります。
取り組みやすいところからセルフケアを行い、感情調節が上手くなるようにしていきましょう。
参考論文
Adult Attachment, Emotion Dysregulation,and Symptoms of Depression and Generalized Anxiety Disorder
----------------------------------------------------------------------
こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
----------------------------------------------------------------------
この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
プロフィールはこちら


