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目標設定の危険性~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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夢は持っていい。ただし「目標の扱い方」を間違えると危険

夢は持っていい。ただし「目標の扱い方」を間違えると危険

2026/03/21

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

これからの人生で何かしらの事を成し遂げたいという方は大勢おられます。

 

しかし、「将来の目標を立てたのに、焦りが強くなった」「達成できない自分を責め続けてしまう」という状態が発生しがちです。

 

目標は本来、前に進むための道具のはずです。

 

ところが現実には、目標が「自分を追い詰める装置」になってしまう人も少なくありません。

 

改めて目標の性質を考えてみると、目標は「薬」のようなもので効果はありますが副作用もあります。

 

だから「持つか否か」より「扱い方」が重要になってくるんですね。

 

目標設定にはパフォーマンスを高める効果がある一方で、過剰に処方すると体系的な副作用が起こり得る、と整理した論文が有名です。

 

Ordóñezら(2009)の研究では、目標設定の副作用として視野の狭窄、不正行為、リスクの歪み、文化の腐食、学習の阻害、内発的動機の低下などを論じています。


そこで、このブログでは「目標の功罪」についてシェアしたいと思います。

 

1.目標は「効く」が「副作用」もある~ゴール設定の科学と、こだわりが不安になる仕組み~

 

 

目標は人生や仕事を前に進める強力な道具です。

 

一方で、目標の立て方・運用の仕方を誤ると、視野が狭くなったり、判断が偏ったり、やる気が削がれたりすることがあります。

 

そこで、ここでは目標設定の「効き目」と「副作用」を整理し、なぜ目標にこだわりすぎる人が増えるのかを心理的な観点からシェアしたいと思います。

 

1-1.そもそも目標設定には「効き目」もある

 

目標の議論が極端になりやすいのは、「目標は良いもの」「目標は悪いもの」と二択で語られやすいからです。

 

まず押さえたいのは、目標設定には確かに効き目があるという点です。

 

目標設定研究(ゴール設定理論)の文脈では、適切な条件がそろうと、具体的で難易度が高い目標は「頑張れ」といった曖昧な励ましよりもパフォーマンスを高めやすい、と整理されています。


この効果が生まれる理由は、以下のように目標が行動を次の方向に整えるからです。

 

注意を集める:何に集中すべきかが明確になる

 

努力量を増やす:やるべきことが見えると取り組みやすい

 

粘り強さが出る:途中でやめにくくなる

 

工夫が生まれる:達成のための戦略を探しやすくなる

 

ただし、ここで重要なのは「適切な条件がそろうと」という前提です。

 

例えば、目標が現実離れしていたり、測り方が雑だったり、健康を無視する構造だったりすると、目標は効き目より副作用が目立ち始めます。

 

つまり問題となるのは、目標そのものではなく、「過剰な処方(強すぎる目標)や設計ミス(偏った指標・運用)」がある場合です。

 

1-2.「目標の副作用」~なぜ逆効果が起きるのか~

 

Ordóñezら(2009)が整理した重要点は、目標が「注意と行動」を強く方向づけるからこそ、偏りが生まれるという点です。

 

目標は強いライトのようなもので、照らしている場所はよく見えますが、照らしていない場所は暗くなります。

 

その「暗くなる部分」が副作用として現れやすいのです。

 

ここでは代表的な副作用を、個人の生活にも置き換えてみていきたいと思います。

 

① 視野が狭くなる:目標以外が「見えなくなる」

 

目標に集中するほど、目標外の重要事項(健康、学習、人間関係、長期リスク)が後回しになりやすくなります。

 

これは頑張りの足りなさではなく、注意資源が有限だから起きます。


例えば「資格取得」「売上」「体重」のように単一指標で走ると、睡眠や食事が崩れる、家族との会話が減る、燃え尽きが増える、といった形でツケが出やすくなります。

 

そのため、目標は達成できたのに生活全体としては不安定になることもあります。

 

これが「目標というライトの影の部分」です。

 

②達成が「目的化」する

 

目標達成が評価や報酬と結びつくほど、「手段に無理が生じやすい」という問題が起こります。

 

組織だけでなく個人でも、数字のために無理をする、辻褄合わせをする、都合の悪い情報を見ないふりをする、といった形が生まれやすくなります。


たとえば「毎日SNS投稿」を目標化すると、質より量になり、体調が悪くても休めないという事態が生じやすくなるでしょう。

 

また「1日◯時間勉強」を死守しようとして、睡眠を削るというリスクも高くなります。

 

結果として生活が崩れ、長期的な成果(本質の理解や健康)が損なわれます。

 

こうなると、目標が「道具」ではなく「守るべき窮屈なルール」になってしまっています。

 

③ リスク選好が歪む:無謀か過度に保守か、両極に振れやすい

 

目標が強いと、判断のバランスが崩れることがあります。

 

つまり、目標に届かない不安が強いと、挽回のために大きな賭けに出る(無謀)か、失敗が怖くて挑戦を避ける(過度に保守)か、どちらにも振れやすくなります。


例えば、期限が迫ると一発逆転の方法に飛びつく/逆に「失敗したら終わり」と動けなくなる、といった状態です。

 

こうした極端さは、目標そのものより「目標が脅威になってしまっている状態」で起きやすいのが特徴です。

 

④ 学習が阻害される:本質より「点を取る」が優先になる

 

目標が短期の達成指標に固定されると、学習・試行錯誤・フィードバックが軽視されやすくなります。

 

その結果として、伸びしろがあるのに伸びない状態が起きます。


本来、上達には「失敗→修正→再挑戦」のサイクルが必要です。

 

しかし短期目標が強いと、失敗を避けるために難しい課題に取り組まなくなる、評価されやすい作業だけを繰り返す、という「学習の回避」が起きやすくなります。

 

その結果、点数は取れても、実力が育ちにくいという本末転倒な結果が生じやすくなります。

 

これは勉強でも仕事でも起こります。

 

⑤ 内発的動機が下がる:楽しかったことが「義務」に変わる

 

目標は外発的動機(評価、報酬、達成感)を高める一方で、内発的動機(好き・面白い・探究心)を傷つける可能性がある、と研究では論じられています。


「好きで始めたのに、いつの間にか苦しい」「達成できないと価値がない」と感じる方は、ここに引っかかりやすいんですね。

 

つまり、好きだった活動が「ノルマ化」すると、楽しさが薄れ、自己否定が増える、ということです。

 

これは長期的には継続を難しくし、結局成果からも遠ざかってしまいます。

 

1-3.「目標にこだわる」方が増える心理~夢ではなく「不安」がエンジンになる~

 

臨床的には、目標が「ワクワクの未来」ではなく、「不安を抑える装置」として機能しているケースがあります。

 

ここを理解すると、目標へのこだわりがなぜ手放しにくいのかが見えてきます。

 

具体的には、以下の通りです。

 

● 不確実さに耐えられず、数値や期限で安心したい

 

未来は曖昧です。

 

だからこそ数字や期限を置くと、脳は「管理できる」と錯覚しやすいという性質を持っています。

 

そのため目標が「安心の材料」になります。

 

しかし、現実は思い通りにならないので、安心は長続きしません。

 

● 評価されない不安を、成果で埋めたい

 

「価値がないと思われたくない」「認められたい」という不安が強いと、目標達成は自己価値の証明になります。

 

その反面、達成できないと自己価値が崩れたように感じやすくなりますので、目標が重荷になってしまいます。

 

● 失敗を避けるために、完璧な計画に固執したい

 

行動より計画に時間をかけることで、不安を下げようとすることがあります。

 

計画は必要ですが、完璧さを求めすぎると「結果が出ない」ことに対する注目が増え、結果として不安はむしろ強くなります。

 

このように、目標が希望ではなく「不安を抑える装置」になると、達成しても安心が続きにくいのが特徴です。

 

そのため、次の目標、次の数字、次の評価へと、終わりがなくなってしまいます。

 

まとめ

 

目標設定にはパフォーマンスを高める「効き目」がありますが、扱い方を誤ると副作用も起こり得ます。

 

目標は注意と行動を強く方向づけるため、視野が狭くなり(健康・学習・関係性が後回しになる)、達成が目的化して無理やごまかしが増え、リスク判断が極端になり、学習が浅くなり、内発的動機が削がれることがあります。

 

さらに臨床的には、目標が「夢」ではなく「不安を抑える装置」として機能していると、達成しても安心が続かず、こだわりが強まって苦しくなりやすい点も重要です。

 

だからこそ、目標は万能視せず、道具として適切に設計・運用し、生活全体のバランスを崩さない形で活用することが大切です。

 

ぜひ、「目標を上手く使う」という意識を持ってくださいね。

 

参考論文

Ordóñez, L. D., Schweitzer, M. E., Galinsky, A. D., & Bazerman, M. H. (2009).Goals gone wild: The systematic side effects of overprescribing goal setting.

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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