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社交不安における対人関係の問題~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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会う前に不安、会った後はひとり反省会~社交不安における予期反芻・事後反芻の正体~

会う前に不安、会った後はひとり反省会~社交不安における予期反芻・事後反芻の正体~

2026/04/04

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

人と会う予定があるだけで、前日から頭の中が落ち着かず、そして実際に会話等が終わった後、「あの返しはおかしかったかもしれない」「やっぱり嫌われたかも」と、ひとり反省会をしてしまう…

 

こうした体験は、社交不安のある方にとてもよくみられます。

 

この「会う前のぐるぐる思考」を「予期反芻」、そして「終わった後のぐるぐる(ひとり反省会)」を「事後反芻」と言います。

 

そしてどちらも社交不安を維持する重要な要因と考えられています。

 

今回参考にしたDonohueらの2024年の系統的レビューとメタ分析でも、予期反芻と事後反芻は社交不安障害の認知モデルで重要な維持要因として位置づけられています。

 

そして、それらは心理的介入によって低減しうることが示されています。


予期反芻と事後反芻は、ただ不安な気分が強いというだけではなく、過去の失敗の記憶、否定的な自己イメージ、失敗予測、自己批判的な振り返りが絡み合って起こる思考の流れです。

 

まずはこの仕組みを理解することが、回復の第一歩になります

 

そこで今回は論文を参考にしつつ、会う前・会話前のぐるぐる思考、会った後や会話の後のひとり反省会についてシェアしたいと思います。

 

1.社交不安を長引かせる「予期反芻」と「事後反芻」とは

 

 

人と会う前に不安がふくらみ、終わった後も何度も振り返って苦しくなる…

 

社交不安をお持ちの方の多くはこのような経験をされます。


この背景には、予期反芻と事後反芻という、社交不安を支えやすい思考の流れがあります。


まずはこの2つが何かを知ることで、自分の中で起きていることが見えやすくなります。

 

では、早速詳細を見ていきましょう。

 

1-1.会う前に起きるぐるぐる思考:予期反芻

 

まず、予期反芻とは何かを見ていきましょう。

 

予期反芻は、これから起こる社交場面の前に、頭の中で何度も不安な予測や失敗イメージを繰り返してしまうことです。

 

社交不安の認知モデルでは、これを「出来事の前に起こる不安の反すう」とも呼びます。

 

別の言い方をすれば、「起こる前から、頭の中で不安をふくらませること」ともいえるでしょう。

 

Modini と Abbott のレビューでは、予期反芻には、3つのものが含まれていると指摘しています。

 

まず過去の失敗を思い出すこと、次に否定的な自己イメージを思い浮かべること、そして最後は上手くいかない未来を予測することが含まれると整理されています。

 

例えば、以下のような考えが何度も浮かぶ状態です。


「前も変な間ができた」


「今回も顔がこわばる気がする」


「また頭が真っ白になったら終わりだ」
 

ここで重要なのは、予期反芻は一見すると「未来の心配」のように見えますが、実際には過去の苦しい記憶や失敗の意味づけに強く引っ張られていることです。

 

Modini と Abbott のレビューでも、予期反芻は未来志向の面がある一方、過去の社交場面や過去の失敗の意味に心がとらわれている点で、単なる一般的な心配とは少し異なると説明されています。

 

つまり予期反芻は、ただ「明日が不安」というだけではありません。


過去の失敗記憶を材料にして、これからの場面を悲観的に予測し、自分の注意を失敗のほうへ固定してしまう思考なのです。

 

1-2.予期反芻がつらくなる理由

 

予期反芻が強くなると、まだ何も起きていない段階で、すでに心と身体が緊張し始めます。

 

Clark & Wells 系の認知モデルを整理したレビューでは、予期反芻によって人は否定的で自己注目的な処理モードに入りやすくなります。

 

ここで言う「自己注目的な処理モード」というのは、「相手や場面そのものを見るよりも、『今の自分はどう見られているか』『変に思われていないか』という思考に意識が強く向いている状態の事を指します。

 

つまり、「外の出来事を見るモードではなく、自分をずっと監視しているモード」というものです。

 

さて、話しを元に戻しますが、予期反芻があることによって人は失敗を前提とした状態で社交場面に向かいやすくなるとされています。

 

さらに、話す内容を考えすぎるなどの安全行動が増えたり、その場面自体を避けやすくなったりすることもあります。

 

臨床的には、予期反芻が強い方ほど、実際の場面に入る前にすでにかなり消耗してしまうという現象が所持ます。

 

つまり…


まだ会ってもいないのに疲れてしまう。


まだ話してもいないのに、もう失敗した気分になっている。

 

という状態ですね。


この状態では、相手の表情やその場の流れを自然に受け取る余裕が減り、自分の心拍、表情、言葉づまりばかりに注意が向きやすくなります。

 

1-3.終わった後に続く「ぐるぐる思考・ひとり反省会」:事後反芻

 

次のテーマは事後反芻です。

 

事後反芻とは、社交場面が終わった後に、その出来事を何度も思い返しながら、自分の言動や印象を否定的に振り返り続けることです。

 

一般的なイメージとしては、ぐるぐる思考(反すう思考)やひとり反省がそれにあたります。

 

2024年の別の系統的レビューでは、事後反芻は、社交場面のあとに、自分のパフォーマンスやふるまいについて、反復的で詳細な自己注目的思考を行うこととして説明されています。

 

事後反芻の内容のほとんどは自己否定的な内容で、例えば…


「表情が固かった」


「相手が少し黙ったのは私が変だったからだ」


「やっぱり私は人付き合いが苦手だ」


というような、否定的自己評価、失敗感、過去の別の失敗記憶の呼び起こしに偏りやすいという傾向を持っています。

 

事後反芻の厄介なところは、反省のように見えて、実際には建設的な学びに向かいにくい点です。


本来の振り返りなら、「次はこうしてみよう」と現実的に整理できるはずです。


しかし事後反芻では、「まただめだった」「やっぱり自分はおかしい」という形で、自己批判と自責の感覚が深まりやすいという傾向があります。

 

1-4.事後反芻が社交不安を長引かせる仕組み

 

事後反芻は、出来事が終わった後の苦しみを増やすだけではありません。

 

研究では、事後反芻は社交不安と関連し、出来事の記憶をより否定的にしやすい可能性や、その後の似た場面への不安を高める可能性が指摘されています。

 

つまり社交不安の高い方は、やりとりを実際以上に否定的だったものとして思い返しやすい、ということなんですね。

 

ここで起こりやすい悪循環は、以下の通りです。


1回の会話の後に事後反芻をする

自分の印象を実際以上に悪く記憶する

「次もきっと失敗する」と感じやすくなる

次の場面の前に予期反芻が始まる

 

このように事後反芻がその後の予期反芻につながりうること、そして両者が社交不安の維持に関わっています。

 

つまり、予期反芻と事後反芻は別々の問題ではなく、前後でつながるひとつの悪循環といえるでしょう。

 

1-5.2つの違いと共通点を整理する

 

予期反芻と事後反芻の違いを、わかりやすく整理すると、次のようになります

 

まず予期反芻は、起こる前のぐるぐる思考です。


そして中心になるのは、「これから失敗するかもしれない」という予測不安です。


ただしその材料は、過去の恥ずかしい記憶や、過去の失敗に対する否定的な意味づけであることが多くみられます。

 

一方の事後反芻は、終わった後のぐるぐる思考、ひとり反省会です。


中心になるのは、「やっぱり失敗した」「変に思われた」という自己批判的な再検討です。


しかも、その振り返りは現実的な自己評価というより、否定的な要素ばかりを拾い集める形になりやすいと考えられています。

 

さらにシンプルに言うと…

 

予期反芻は「まだ起きていないことに、失敗前提で心が巻き込まれること」


事後反芻は「終わったことを、失敗前提で何度も裁き直すこと」


…ということになります。

 

しかし、この2つは似ていますが、時間軸と心の向きが少し違います。


それでも、どちらも自己注目・否定的解釈・反復思考という点で共通しており、社交不安を長引かせやすいという意味で重要です。

 

1-6.ふつうの準備や反省との違い

 

では、普通の準備や反省と、何が違うのでしょうか


準備そのもの、あるいは振り返りそのものが悪いわけではありません。

 

違いは、その思考が役立つ方向に進んでいるか、それとも不安と自己批判を増やす方向に進んでいるか、という点です。

 

つまり予期反芻・事後反芻はいずれも、現実的な問題解決というより、否定的な自己評価や脅威の予測、失敗記憶の再活性化に傾きやすいんですね。

 

例えば…


「明日は資料をこの順で話そう」は準備です。


「きっとまた低い評価をされる、前もそうだったし、たぶん今回もだ」は予期反芻といえます。

 

また…


「次は最初に結論から話してみよう」は振り返りです。


「やっぱり自分はだめだ、あの沈黙も全部自分のせいだ」は事後反芻といえます。

 

つまり、思考の量だけでなく、思考の質が違うんですね。

 

まとめ

 

Donohueら(2024)のレビューとメタ分析を踏まえると、社交不安における予期反芻と事後反芻は、どちらも軽く見てよいものではありません。


予期反芻は、人と会う前に、過去の失敗や否定的な自己イメージを材料にして、失敗を予測し続ける思考です


事後反芻は、人と会った後に、自分の言動や印象を否定的に何度も振り返り、自分を裁き続ける思考です。


そしてこの2つは、前後でつながりながら社交不安を維持しやすいと考えられています。

 

認知行動療法を含む心理学的介入は、これらの反芻を低減する可能性がありますが、まず大切なのは、自分の中で何が起きているのかを言葉にできることです。

 

「私は人前が苦手だ」だけではなく、「会う前に何を考えているのか」、「終わった後に何を繰り返しているのか」が見えてくると、支援の糸口はかなり具体的になります。

 

これは、社交不安で悩む方にとって、とても大切な理解です。

 

もしも対人関係や社交的な場面において不安を感じるということがある場合、その前の不安、その後の反省会を確認してみてくださいね。

 

参考論文

Donohue, H. E., et al. (2024). Psychological interventions for pre-event and post-event rumination in social anxiety: A systematic review and meta-analysis

 

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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