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「理想の自分」と「現実の自分」のズレが抑うつや不安に与える影響とは?~神戸市、芦屋市、西宮市のカウンセリングの実例より~

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「理想の自分」と「現実の自分」のズレが抑うつや不安に与える影響とは?

「理想の自分」と「現実の自分」のズレが抑うつや不安に与える影響とは?

2025/02/27

みなさん、こんにちは。

神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

私たちは、自分自身に対する理想像を持ち、社会の期待に応えようと努力します。

 

しかし、その「理想の自分」と「現実の自分」のギャップ」が大きくなりすぎると、心理的ストレスが生じ、うつや不安を引き起こす要因となることが、心理学研究により明らかになっています。

 

本記事では、「Self-Concept Discrepancy Theory: A Psychological Model for Distinguishing among Different Aspects of Depression and Anxiety」 という論文を踏まえて、自己概念のズレがメンタルヘルスにどのような影響を及ぼすのか、またそれをどのように調整していくべきかについて詳しく解説します。

 

1. 自己概念のズレとは?

 

自己概念(Self-Concept)とは、「自分がどのような人間であるか」についての認識やイメージのことを指します。

 

これは、単なる性格の認識だけでなく、「理想の自分」「現実の自分」「義務の自分」といった異なる側面を持ち、私たちの思考や行動に大きな影響を与えています。

 

しかし、この自己概念がズレることで、心理的なストレスや葛藤を生み、結果としてうつ症状や不安症状につながることがあります。

 

そこで、このブログでは自己概念のズレがどのように生じ、それがメンタルヘルスにどのような影響を与えるのかを詳しく解説していきます。

 

1-1. 自己概念とは?


自己概念は、自分自身に対する評価や信念の集合体であり、「自分がどんな人間であるか」「どうあるべきか」「他者からどう見られているか」という認識を含みます。これには以下の3つの側面が関係しています。

 

● 理想の自己(Ideal Self)


「こうありたい」と願う自分の姿のことを指します。

 

これは、個人の目標や夢、憧れなどを反映しており、次のような要素が含まれます。

 

✔ 仕事やキャリアの成功

→「もっと成果を出したい」「リーダーとして活躍したい」
✔ 対人関係の向上

→「社交的になりたい」「もっと周囲と上手く関わりたい」
✔自己成長の欲求

→「もっと知識を増やしたい」「より健康的な生活を送りたい」

 

● 現実の自己(Actual Self)


「実際の自分がどのような状態であるか」を示します。

 

これは、現在の自己評価や実際の経験をもとに形成され、理想の自己とは異なることが多くあります。

 

✔仕事の悩み

→「努力しているのに成果が出ない」「仕事に対する自信が持てない」
✔対人関係の課題

→「人付き合いが苦手」「もっと積極的になりたいのにできない」
✔生活の現実

→「もっと規則正しい生活をしたいが、つい夜更かししてしまう」

 

● 義務の自己(Ought Self)


「社会や周囲から期待されている自分の姿」を指します。

 

これは、家族や友人、職場、社会全体の価値観によって形成されます。

 

✔社会的期待へのプレッシャー

→「上司からもっと成果を求められている」「家族を支えなければならない」
✔道徳的・倫理的な義務感

→「親としてこうあるべき」「社会人として責任を果たさなければならない」
✔文化的な価値観の影響

→「結婚や出産はすべきもの」「人の役に立つことが大事」

 

1-2. 自己概念のズレが生じる理由


この3つの自己概念が大きくズレると、「思い描いた自分になれない」「社会の期待に応えられない」と感じ、ストレスや焦り、不安を抱えやすくなります。

 

特に、次のような状況では自己概念のズレが強くなり、精神的な負担が大きくなります。

 

● キャリアや人生の転機


・転職や昇進、退職などのライフイベントが起こると、「理想の自己」と「現実の自己」のギャップを強く感じることがあります。


・「この仕事で良かったのか?」「もっと成功しているはずだったのに」といった後悔や迷いが生じることがあります。

 

● 社会的期待とのズレ


・「結婚しなければならない」「親の期待に応えなければならない」といった社会的圧力を感じることで、「義務の自己」とのズレがストレスの要因になります。


・特に日本社会では「空気を読む」「他人に迷惑をかけない」といった価値観が強いため、自分の気持ちよりも周囲の期待を優先することで自己概念のズレが生じやすいです。

 

● 過去の失敗や挫折


・「理想の自己」を持っていたものの、過去にうまくいかなかった経験があると、「現実の自己」とのギャップが強調されます。


・例えば、「将来は起業して成功したい」と思っていたが、実際にはうまくいかず、「自分には才能がないのかもしれない」と落ち込むことがあります。

 

● 自己批判の強さ


・「もっと頑張らなければならない」「完璧でなければいけない」という完璧主義的な思考が強いと、常に「現実の自己」に不満を抱き、「理想の自己」との乖離がストレスを生む原因になります。


・また、「義務の自己」のプレッシャーに対し、「もっと努力すべきだった」「周囲に迷惑をかけてしまった」と強く自責の念を抱くことも、自己概念のズレを強める要因になります。

 

1-3.まとめ


自己概念は私たちの思考や行動に大きな影響を与えますが、「理想の自己」「現実の自己」「義務の自己」のズレが大きいほど、ストレスや不安を感じやすくなります。


特に、社会の期待や自分自身の価値観との間で葛藤が生じると、「こんなはずではなかった」と強い失望感を抱くことがあります。

 

しかし、自己概念のズレを理解し、適切に対処することで、心のバランスを取り戻し、ストレスを軽減することが可能です。


次の章では、「自己概念のズレがうつや不安症にどのように影響を与えるのか」について、論文の内容をもとに詳しく解説していきます。

 

2. 「自己概念のズレ」とメンタルヘルスの関係


自己概念のズレは、単なる一時的なストレスではなく、長期的にうつ病や不安症を悪化させる要因となることが研究で示されています。

 

この研究では、自己概念のズレがどのようにうつ症状や不安症状と関連しているのかを詳しく分析し、特に「理想の自己」「義務の自己」と「現実の自己」とのギャップがメンタルヘルスに及ぼす影響を明らかにしました。

 

2-1. うつ症状との関連


「理想の自己」と「現実の自己」のギャップが大きくなると、理想と現実の落差に対する失望感が強まり、うつ症状が悪化しやすくなることが指摘されています。

 

2-1-1.うつを引き起こす自己概念のズレ


●「なりたい自分になれない」ことで失望感が増す


✔「もっと仕事ができるはずだったのに…」
✔「理想のライフスタイルを送るはずだったのに…」
✔「こんなはずじゃなかった」という感覚が続く

 

● 過去の失敗を引きずり、「どうせ自分はダメだ」と自己否定のループに陥る


✔「あの時もっと頑張っていればよかった」
✔「他の人は成功しているのに、自分は何をやってもダメだ」

 

● 無気力感が強まり、意欲が低下する


✔「どうせ何をやっても意味がない」と考えるようになる
✔ 以前は楽しめていた趣味や活動に対しても関心を失う
✔ 仕事や家事などの日常生活をこなすことが億劫になる

 

2-1-2.義務の自己とのズレもうつ症状を悪化させる


「義務の自己」とのギャップが広がることで、社会的な期待に応えられないという罪悪感やプレッシャーが増し、うつのリスクがさらに高まるとされています。

 

● 「周囲の期待に応えられない」ことへの罪悪感や自己否定


✔「親の期待に応えられない自分はダメな人間だ」
✔「社会人として責任を果たせていない」
✔ 「結婚や昇進など、一般的な成功ルートに乗れなかった」

 

● 自己批判が強まり、抑うつ状態が悪化する


✔「もっと努力するべきだった」
✔「自分は怠け者だ、こんなことではいけない」
✔「他の人が当たり前にできることが、自分にはできない」

 

こうした心理状態が続くことで、気分の落ち込みや自己肯定感の低下が進み、うつ病の発症や悪化につながるリスクが高まります。

 

2-2. 不安症との関連


「義務の自己」と「現実の自己」のズレが大きい場合、特に不安症状が強くなることが指摘されています。

 

社会の期待や周囲の評価を気にするあまり、慢性的な不安が高まり、完璧主義的な行動が助長されるという特徴があります。

 

2-2-1.不安を引き起こす自己概念のズレ


● 「失敗してはいけない」「期待に応えなければならない」という強いプレッシャー

 

✔「仕事でミスをしたら評価が下がるかもしれない」
✔「親や上司をがっかりさせたくない」
✔「周りからどう思われるかが怖い」

 

● 不安が強くなることで、完璧主義的な行動が助長される


✔「少しのミスも許されない」と思い込む
✔「もっと準備しなければ」と、過剰に慎重になる
✔「完璧にこなせなかったら意味がない」と考え、行動を避けるようになる

 

●  常に他人の評価を気にするようになり、社交不安が高まる


✔「自分の発言が変に思われたらどうしよう」

✔「周りの人が私のことをどう思っているかが気になる」
✔「人と話すのが怖くなり、外出を避けるようになる」

 

2-3. 自己概念のズレとうつ・不安の悪循環

 

このように、自己概念のズレは単に気分の問題ではなく、長期的にうつ病や不安症を悪化させる要因になりえます。

 

特に、次のような悪循環が生じやすいとされています。

 

理想と現実のギャップに気づく
「理想の自分になれていない」「社会の期待に応えられていない」と感じる

↓ ↓ ↓

自己否定が強まり、不安や抑うつが悪化する
「自分はダメな人間だ」「期待に応えられない」「どうせ変われない」と考えるようになる

↓ ↓ ↓

過剰な努力・完璧主義・回避行動が助長される
「もっと頑張らなければ」と過剰に努力する or 「もうどうせダメだから」と行動を避ける

↓ ↓ ↓

ストレスが蓄積し、さらなる不安・抑うつに陥る
不安が高まり、失敗を過度に恐れるようになり、ストレスが慢性化する

↓ ↓ ↓

うつや不安症の症状が悪化する
意欲が低下し、日常生活の支障が大きくなる

 

この悪循環に陥ると、自己概念のズレがますます広がり、症状の長期化につながる可能性が高くなります。

 

2-4.まとめ


この研究では、自己概念のズレがうつ症状や不安症状と深く関係していることが明らかになりました。

 

特に、「理想の自己」「義務の自己」と「現実の自己」のギャップが大きいほど、精神的な負担が増し、うつや不安を引き起こす要因になると指摘されています。

 

● うつ病との関連
・「なりたい自分になれない」ことで失望感が増す
・自己否定が強まり、抑うつ状態が悪化する

● 不安症との関連
・「失敗してはいけない」「期待に応えなければならない」というプレッシャーが強まる
・完璧主義や対人不安が高まり、慢性的なストレスが増加する

 

このように、自己概念のズレはメンタルヘルスに大きな影響を与えます。次の章では、「自己概念のズレをどう克服し、より健康的な心の状態を取り戻すか」について、具体的な対策を解説していきます。

 

3. 自己概念のズレを調整するためのアプローチ


では、自己概念のズレを減らし、ストレスを和らげるにはどうすればよいのでしょうか?

 

ここでは、具体的なアプローチをご紹介します。

 

3-1. 「理想の自己」とのギャップを調整する


● 現実的な目標設定を行う
→ 「完璧な自分」を求めるのではなく、「少しずつ成長する自分」を認める。
→ たとえば、「1ヶ月で大きな成果を出す」ではなく、「今週は少しずつ新しいことに挑戦する」など、達成可能な目標を設定する。

 

● 過去の失敗を客観的に振り返る


→ 「失敗=価値がない」ではなく、「経験として活かせる」ことを意識する。

 

3-2. 「義務の自己」とのギャップを調整する


● 他者の期待を100%満たす必要はないと考える
→ 「期待に応えなければならない」という思考を少しずつ手放す。
→ すべての期待に応えるのではなく、「自分が大切にしたいこと」を優先する。

 

● 罪悪感を和らげる思考のトレーニング
→ 「少しくらい期待に応えられなくても、自分の価値は変わらない」と考える。

 

3-3. 認知行動療法(CBT)を取り入れる


自己概念のズレが強い場合、認知行動療法(CBT)が有効です。

 

✔ 「すべてうまくやらなければならない」という極端な考えを修正する

✔「この状況でできる最善は何か?」と現実的な視点を持つ

✔「他人と比較するのではなく、自分のペースで進めることを意識する」

 

これらのアプローチを意識することで、自己概念のズレによるストレスを軽減し、より生きやすい考え方を身につけることができます。

 

4. まとめ


自己概念のズレは、私たちが感じるストレスやメンタルヘルスの問題と密接に関係しています。

 

「理想の自己」「現実の自己」「義務の自己」 のギャップを調整することが、うつや不安を軽減するカギとなります。

 

● 現実的な目標を設定する
● 他者の期待にとらわれすぎない
● 認知行動療法(CBT)を活用する

 

もし、「自己概念のズレに苦しんでいる」「なかなか気持ちが晴れない」と感じる場合は、信頼できるご友人や、必要に応じてカウンセリングを受けることを検討してみてください。

 

自分自身の中のギャップをうまく埋めて、よりよい毎日を過ごせるようにしてくださいね

 

参考論文

Self-concept discrepancy theory: A psychological model for distinguishing among different aspects of depression and anxiety

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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