「自分に自信が持てない」とき、うつ病や不安障害はなぜ起こりやすいのか?
2025/05/18
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて、日々のカウンセリングの臨床でよく耳にするのが、「自分に自信が持てない」「自己評価がとても低い」「何をやってもダメな気がする」といった悩みです。
こうした自尊感情の低さは、単なる気分や性格の問題だけでなく、心の健康全般にどのような影響をもたらすのでしょうか?
そこで今回は、Sowislo博士とOrth博士による「自尊感情の低さはうつ病や不安障害を引き起こすのか?」というテーマの大規模なメタ分析論文を踏まえつつ、自尊感情とうつ・不安の関係について、最新の科学的知見を解説します。
1.自尊感情とは~自分をどう評価していますか?~
まず「自尊感情(self-esteem)」とは、自分自身の価値や能力に対する全体的な評価、いわば「自分をどれだけ肯定的に捉えているか」という感覚です。
高い自尊感情を持つ方は、失敗や批判を経験しても自己価値を見失いにくく、逆に低い自尊感情の方は、ちょっとした失敗や周囲の反応に大きく心を揺さぶられる傾向があります。
この「自分に対する評価」は、実は心の健康を守る「土台」として非常に重要な役割を担っています。
2.低い自尊感情はうつや不安を引き起こすのか?~メタ分析が示す「心のリスク」の真実~
私たち心理カウンセラーが日々向き合う相談の中で、「自分に自信がない」「自分を好きになれない」といった悩みは非常に多いものです。
こうした「自尊感情」の低さが、果たして本当にうつ病や不安障害を引き起こすのでしょうか…?
2-1.科学が導いた結論~低い自尊感情は明らかな「リスク因子」~
結果は非常に明確でした。
「自尊感情が低い状態の方ほど、その後、うつ症状や不安症状が出やすい」ことが統計的に裏付けられました。
これは単なる「気分の問題」ではなく、科学的なエビデンスに基づく「リスク因子」だと考えられます。
● 具体的には…
例えば、ある時点で自己評価が低い方は、その数ヶ月後や数年後にうつ症状が強くなっている確率が高い、という結果が繰り返し示されています。
これは一過性のものではなく、長期的にも継続した傾向です。
● うつ病だけでなく不安障害も
また、うつ症状だけでなく、「不安症状」との関係も明確です。
自尊感情が低い方は、将来、不安障害を発症するリスクも高いという結果になりました。
2-2.年齢・性別を超えて見られる傾向
この効果は、子ども・思春期・大人・高齢者といった年齢層に関わらず一貫して認められています。
つまり「自分に自信が持てない」「自己評価が低い」という状態は、どんな方にとっても、心の健康にとって明らかなリスクになるのです。
2-3.うつ・不安の「前触れ」としての自尊感情
このように、自尊感情の低さは、いわば「心の健康が崩れるサイン」や「前触れ」としても捉えることができます。
つまり、日常生活の中で、「最近自分に自信が持てない」「失敗ばかり気になる」「なんとなく自分がダメだと感じる」という状態が続いている場合は、将来的にうつ病や不安症状が現れやすくなるリスクが高いと考えられるのです。
3.自尊感情とうつ・不安の関係は「双方向的」~負のスパイラルに注意~
Sowislo & Orth(2013)のメタ分析論文が強調しているもうひとつの重要なポイントは、「自尊感情の低さ」と「うつ・不安症状」が単に一方通行の因果関係でつながっているのではなく、双方向的に影響し合う関係であるという点です。
3-1.自尊感情の低さが心の病のリスクを高める
まず、自尊感情が低い方は、物事がうまくいかなかったり、日常のストレスや困難に直面したときに、「やっぱり自分はダメだ」「どうせ自分にはできない」といった否定的な自己評価にとらわれやすくなります。
このようなネガティブな思考のクセは、落ち込みや不安、絶望感を強めるきっかけとなり、うつ病や不安障害の発症リスクを高めます。
3-2.うつや不安症状が自尊感情をさらに低下させる
一方で、うつ病や不安障害にかかることで、日常生活のさまざまなことがうまくできなくなったり、人間関係での失敗や孤立感を感じたりすると、「こんな自分じゃだめだ」「人に迷惑をかけてばかりだ」といった自己批判や自己否定が強まります。
結果として、自尊感情はさらに低下し、「自分を肯定する感覚」をますます失いやすくなります。
3-3.双方向の悪循環~負のスパイラルとは?~
このような関係は、しばしば「負のスパイラル」として現れます。
例えば…
① ちょっとしたミスやトラブルで自分を強く責める
② 自信をなくし、チャレンジや人付き合いを避ける
③ その結果、孤独感や絶望感が強まる
④ さらに自己評価が下がり、うつや不安の症状が悪化する
…といった流れです。
こうした悪循環が繰り返されると、「自分はいつも失敗する」「何をしてもうまくいかない」という「無力感」が慢性化し、うつ病や不安障害が長引いたり再発しやすくなったりします。
まさに、「自尊感情の低下とうつ・不安」はお互いを強め合い、なかなか抜け出せない「心の落とし穴」をつくってしまうのです。
3-4.科学的にも裏付けられる「慢性化」のメカニズム
Sowislo & Orth(2013)の論文では、この双方向の関連性が多くの縦断研究で確認されています。
うつや不安が自尊感情の低下を招き、逆に自尊感情の低さがうつや不安の発症・悪化を促進するという、「悪循環」が時間の経過とともに深まることが科学的に示されています。
また、年齢や性別に関係なく、この「双方向の悪循環」は広く見られる現象であり、決して特殊なケースではありません。
誰もがストレスや困難を感じやすい場合には、こうしたスパイラルに陥るリスクが高まることに注意が必要です。
3-5.悪循環から抜け出すには
このような負のスパイラルに気づいたら、まずは「今の自分は本当に悪循環の中にいるのかも」と客観的に捉えてみることが第一歩です。
その上で、自分を責めすぎない・孤立しない・小さな達成や感謝に目を向ける・信頼できる方や専門家に相談するなど、少しずつ「自己評価」と「気分」を切り離す工夫をすることが大切です。
また、カウンセリングや認知行動療法(CBT)、セルフコンパッション(自分への思いやり)の実践など、専門的なサポートを受けることで、悪循環を断ち切りやすくなります。
4.自尊感情が低い方の特徴~セルフチェックポイント~
自尊感情が低い方には、以下のような特徴が見られることが多くみられます。
✔些細なミスや失敗を「自分の価値の否定」と感じやすい
✔他人の評価に過敏で、批判や否定的な言葉を強く引きずる
✔何事にも自信が持てず、「どうせ自分なんて……」と思いがち
✔人と比較して落ち込みやすく、成功を素直に喜べない
✔過去の失敗やトラウマにとらわれやすい
もしこれらに心当たりがあっても、「自分が弱い」「ダメな人間」だと責めないでください。
多くの方が同じような悩みを抱えていますし、自尊感情は必ず変化するものです。
まとめ~自分を大切にすることが、心の健康への第一歩~
自尊感情は、心の健康の「バロメーター」とも言えるものです。
「自分に自信が持てない」と感じたら、無理にポジティブになろうとする必要はありません。
まずは「自分を責めない」「今の自分を認める」ことから始めてみましょう。
そして、うつや不安の症状が強いときは一人で抱えず、カウンセラーや信頼できる方に相談することも大切です。
一歩ずつ、前へ進んでいって自尊心を育ててくださいね。
参考論文
Does Low Self-Esteem Predict Depression and Anxiety? A Meta-Analysis of Longitudinal Studies
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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