痛みや不調も「こころ」から?身体症状を伴ううつ病について
2025/05/28
みなさん、こんにちは。
神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
さて…
「最近、ずっと体がだるい」
「肩こりや頭痛が治らない」
「胃の調子もずっと悪い」
…こうした体の不調が長引いている方も多いのではないでしょうか。
実は、これらの身体的な症状の背後に「うつ病が隠れている」ことが珍しくありません。
うつ病というと、「気分が落ち込む」「やる気が出ない」といった心の症状だけを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、実際にはうつ病が原因で、さまざまな身体症状が現れる場合があるのです。
うつ病は、心の不調と同時に体にも影響を及ぼす病気であり、心理的ケアによって心と体の両面からの回復が大切となります。
そこで今回は、医学論文「The Link Between Depression and Physical Symptoms」を踏まえつつ、うつ病と身体症状の関係、そして心理カウンセリングがどのように回復をサポートできるのか、そのメカニズムについてわかりやすく解説します。
1. うつ病の「身体症状」~痛みやだるさも心から来る?~
うつ病というと「気分の落ち込み」「やる気が出ない」といった感情面ばかりが注目されがちですが、実際には「体の症状」、例えば…
✔頭痛
✔肩や関節、腰の痛み
✔胃腸の不調
✔慢性的な疲労感
✔睡眠や食欲の変化
✔しびれやだるさ
…など、さまざまな「身体的な不調」として現れることが非常に多いのです
しかも、うつ病の方の7割近くが「体の不調だけ」を訴えて病院を受診したという調査結果もあり、痛みやだるさなどの「身体症状」が主なきっかけとなって初めてうつ病が見つかることも多々あります。
このようなケースでは、うつ病と気づかれにくく、長く苦しむ方も少なくありません。
2. 体の痛みとうつ病の「深い関係」
「なぜうつ病になると、体の不調や痛みが現れるのか?」
実はこの現象には、最新の医学・神経科学の分野で解明されてきた「心と体の深い結びつき」があります。
2-1.神経伝達物質の異常がもたらす連鎖
うつ病の発症には、「セロトニン」「ノルアドレナリン」「ドーパミン」など、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れが大きく関与しています。
これらの神経伝達物質は、単に気分や感情を調整するだけでなく、実は「痛みの知覚」や「体の状態の調整」にも重要な役割を果たしています。
以下、脳内伝達物質とうつ病の身体症状の関係を簡潔に見ていきましょう。
セロトニン
→脳だけでなく脊髄や全身の神経系で、痛みの“抑制”や“調節”に関わっている。
→セロトニンが不足すると、痛みへの耐性が低下し、わずかな刺激でも強い痛みとして感じやすくなる
ノルアドレナリン
→セロトニンと同様に、痛みのコントロールや交感神経系の働きを調整し、心身のバランスを保っているが、そのバランスが崩れてしまう
うつ病では、これらの神経伝達物質の分泌や伝達がうまくいかなくなることで…
「気分が落ち込む」
「やる気が出ない」
といった心の症状だけでなく…
「慢性的な痛み」「体のだるさ」「胃腸の不調」など、さまざまな身体症状も現れやすくなるということが明らかになっています。
2-2.痛みの「感受性」が高まる
また、うつ病の状態では、脳内の「痛みを抑える回路」がうまく働かなくなり、普段なら感じないような痛みも強く意識されやすくなります。
これを「痛覚過敏」と呼びます。
実際、うつ病の方の多くが、原因の分からない頭痛・筋肉痛・腰痛などの「慢性疼痛」を経験していることが数多く報告されています。
2-3.心と体が「悪循環」に陥るメカニズム
このような脳内の異常だけでなく、「痛みやだるさが続くこと自体」がさらに気分を落ち込ませ、「自分はもう治らない」「体がおかしいのでは」といった不安や無力感を強めます。
その結果…
「痛みや不調→不安・抑うつ→さらに痛みが強まる」
という「悪循環」に陥りやすくなるのです。
2-4.心と体はつながっている
うつ病による神経伝達物質の異常は、単なる「気分の病」ではなく、脳の働きを通じて体の状態にも強い影響を及ぼします。
「心の不調が体の症状として表れる」
「体の痛みや不調が、さらに心を苦しめる」
…こうした心身相関を理解し、両面からのケアがうつ病では重要となってきます。
3. 身体症状の「悪循環」~放置すると回復が遅れ、再発のリスクも~
身体症状を伴ううつ病では、体の痛みやだるさなどの不調が強いほど、抑うつ症状も重くなりやすいことがわかっています。
このような症状を「ただの疲れ」「年齢のせい」と放置してしまうと、うつ病自体も慢性化しやすく、治療にも時間がかかる傾向があります。
実際、慢性的な痛みや体調不良が続くことで…
「もう自分は治らないのではないか」
「どうせ努力しても意味がない」
…といった無力感や自己評価の低下が起こりやすくなります。
その結果、生活の質(クオリティ・オブ・ライフ:QOL)は大きく下がり、日常の楽しみや社会的なつながりも失われていくことで、さらにうつの症状が悪化する…。
うつ病の場合は、こうした「心と体の悪循環」に陥るリスクが非常に高いのです。
また、多くの研究で明らかにされているのは、「体の症状だけが残った状態で心の状態が一時的に改善したとしても、再発のリスクが高い」という点です。
身体症状を軽視して「気分だけ」を回復させようとするアプローチでは、うつ病がぶり返しやすく、長期的な回復にはつながりにくくしてしまいます。
3-1.専門医受診の重要性
このような悪循環を断ち切り、本当の意味での「回復」を目指すためには、精神科医や心療内科医といった専門家の診察を受けることが非常に重要です。
身体症状が長引く場合、身体の病気が隠れていないかを医学的にチェックすることも大切ですし、うつ病が原因であれば、薬物療法や最新の治療法、身体症状に特化したケアが必要になることも多いからです。
また、専門医は心理カウンセラー等との連携があると、「心と体の両面からのケア」へのアプローチが可能となります。
痛みや不調、気分の落ち込み…
どちらか一方だけでなく、心身全体をみる「総合的な治療」が、再発防止や長期的な健康回復のカギとなります。
4. なぜ心理カウンセリングが「体の症状」にも効くのか?
身体症状とうつ病において、心理カウンセリングが非常に有効であることは、さまざまな研究で明らかになっています。
では、なぜ心理カウンセリングでのケアが体の痛みやだるさにも効くのでしょうか?
4-1.痛み・不調の「認知的解釈」を変える
カウンセリングでは、「体の痛み=病気・異常」ととらえるだけでなく、「今、心がSOSを出しているサインかもしれない」と意味づけを変えるお手伝いをします。
✔痛みが長く続くと不安や恐怖が増し、さらに痛みが強まるという悪循環
✔気分の落ち込みが痛みを増幅させているという心身相関
✔本当は言いたいことや我慢していることが、体の症状として出ている
…こうした「体と心のつながり」を一緒にひも解いていくことで、不安や恐怖のループから抜け出すきっかけが生まれます。
4-2.「痛み」と「うつ」の脳内回路へのアプローチ
認知行動療法(CBT)やマインドフルネスなどの心理的アプローチは、「痛み」「抑うつ」「不安」に共通する脳内回路を活性化させ、脳のバランス回復を促す効果もあります。
例えば…
✔「痛み」や「だるさ」と距離を置いて観察できるようになる
✔「今、何を感じているか」「本当はどんな気持ちが隠れているか」に気づけるようになる
✔「体験や感情」を柔軟に受け止められるようになる
こうしたアプローチによって、体の症状に対するストレス・不安・怒りなどの感情が和らぎやすくなります。
4-3.「全人的な回復」を目指す
心理カウンセリングは、単なる「症状の緩和」だけではなく、「人生の質(QOL」の回復も大切にします。
身体症状が回復すると「外出できる」「趣味を楽しめる」「人との交流が増える」など、社会的なつながりや日常生活も豊かになっていきます。
まとめ
大切なのは、「気分の回復」だけで満足せず、体の症状も含めた寛解(病気の兆候や症状が軽減または消失すること)を目指すことです。
なぜなら、身体症状が残っている場合、再発リスクが約3倍に高まるとも言われれているからです
「体の痛み」や「だるさ」が続くとき、それは「心のSOS」かもしれません。
先述したように、身体症状をともなううつ病は、決して珍しいことではなく、心のケアによって体も回復できるということが、科学的にも明らかになっています。
「なんとなく体がつらい」
「ずっと体調が悪い」
そんなときは、一度専門医や心理カウンセラーに相談し、1日も早い寛解を目指してくださいね。
参考論文
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こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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