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「うつ病」と「考え方」の深い関係:認知的感情調整の科学的エビデンス~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングの実例より~

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「うつ病」と「考え方」の深い関係:認知的感情調整の科学的エビデンス

「うつ病」と「考え方」の深い関係:認知的感情調整の科学的エビデンス

2025/06/30

みなさん、こんにちは。

神戸市や芦屋市、西宮市などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

さて…

 

「つい同じことを何度も考えてしまう」

「自分のせいだと責めてしまう」

「もうどうしようもない…と感じてしまう」

 

こうした思考パターンは、誰もがストレスを感じた時に経験しうるものですし、うつ病であれば特にそれが顕著になります。

 

しかし、「心の中での考え方」、つまり心理学的言うと「認知的感情調整」のあり方が、実はうつ症状の強さや回復力に大きく関わっていることが、数多くの研究で明らかになっています。

 

今回参考にする論文では、さまざまな背景を持つ複数のグループを対象に、どのような認知的感情調整ストラテジーがうつ症状と関連しているのかを科学的に検証し興味深い結果が発見されました。

 

そこで、本記事ではその研究内容を解説しつつ、どのように自分の「考え方」を見直し、心の健康につなげていくかのヒントもお伝えしたいと思います。

 

1. 認知的感情調整とは?~9つの戦略~


認知的感情調整とは、ストレスや困難な出来事に直面したとき、「心の中でどのように受け止め、どんな風に考え、何を自分に語りかけるか」という心理的な対処法を意味します。


Garnefski & Kraaij(2006)の論文では、この認知的感情調整戦略(『戦略』は『対処方法』とお考え下さい)をネガティブ戦略とポジティブ戦略の二つに分けて分析しています。

 

1-1.ネガティブ戦略(Negative Strategies)


この戦略は、うつ症状や心理的ストレスを強める傾向がある考え方です。

 

この考え方は全てで4つあります。

 

● 自己責任化(Self-blame)
何か問題が起きたとき、過剰に「自分が悪い」「自分のせいだ」と責めてしまう考え方。

 

● 他者責任化(Other-blame)
うまくいかないことや嫌な出来事があると、「あの人のせいだ」「社会や環境のせいだ」と他者や状況に責任を押し付けるパターン。

 

● 反すう(Rumination)
過去の失敗や嫌な気持ち、傷ついた出来事を何度も繰り返し思い出し、心の中でグルグルと考え続けてしまう。

 

● 破局化(Catastrophizing)
「もう終わりだ」「最悪の事態になるに違いない」と、出来事を極端にネガティブに捉えてしまう考え方。

 

1-2.ポジティブ戦略(Positive Strategies)


こちらは、ストレスの軽減や心の回復を助けるとされる考え方です。

 

具体的には以下のものを指します。

 

● 受容(Acceptance)
「起きてしまったことは仕方がない」「現実として受け止めよう」と、出来事そのものを受け入れる姿勢。

 

● 視点の切り替え(Putting into Perspective)
「この程度で収まってよかった」「これよりもっとひどい状況もある」「もっとひどい状態もありえた」と、問題を相対化して大きく捉え直す考え方。

 

● ポジティブ転換(Positive Refocusing)
問題にとらわれすぎず、意識的に別の楽しいことや自分の好きなことに目を向けて気分転換する。

 

● 肯定的再評価(Positive Reappraisal)
困難な出来事や失敗から「自分が成長できることは何か」「どんな意味があったのか」を見いだそうとする。

 

● 計画(Planning)
「どうやってこの問題を乗り越えようか」「次はどんな行動をとれば良いか」と、前向きに現実的な対応策や行動計画を立てる。

 

1-3.なぜこの区分が大切なのか?


論文では、ネガティブ戦略を多く使う人ほど、うつ症状が強くなる、つまり悪化する傾向があることが明らかになりました。

 

一方で、ポジティブ戦略をうまく使う人ほど、心の健康が保たれやすいという傾向が示されています。

 

そのため、「自分がどんな思考パターンを持ちやすいか」を知ることで、日常のセルフケアやカウンセリング、またカウンセリングでの認知行動療法などで「考え方のクセ」を意識的に見直すことが、心の健康維持やうつ症状の予防・回復に役立つのです。

 

2. 抑うつ症状と認知的戦略(対処法)の関係~科学的エビデンス~


Garnefski & Kraaij(2006)の研究で最も注目すべき点は、「どのような考え方(認知的感情調整戦略)を使うかによって、うつ症状の強さや心の健康が大きく左右される」という明確な科学的知見が得られたことです。

 

2-1.ネガティブ戦略の効果と影響


まず、「反すう(Rumination)」「自己責任化(Self-blame)」「破局化(Catastrophizing)」といったネガティブ戦略について、次のような強い傾向が見られました。

 

● 反すう(Rumination)


「どうしてあの時こうしたのだろう」「なぜ自分はうまくできないのか」と、過去の出来事やネガティブな感情を何度も繰り返し考えるパターンです。


研究では、反すうを多く使う人ほど、抑うつ症状が強いことが一貫して認められました。

 

つまり、思考がグルグルと堂々巡りし、気分が沈みやすくなるのです。

 

● 自己責任化(Self-blame)


何か問題が起きた時、過度に「すべて自分の責任だ」と思い込む傾向です。

 

これも強い抑うつ症状と関連し、「自分を責める」ことで無力感や自尊心の低下につながります。

 

● 破局化(Catastrophizing)

 

「もう終わりだ」「このまま最悪のことが起こる」と、事態を極端に悲観的に考えることを指します。

 

破局化もまた、うつ症状を強め悪化させる認知的パターンであると示されています。

 

● 総括


ネガティブ戦略を多用する人ほど、うつ症状が強まりやすいという傾向は、今回の研究全体を通して最も一貫していた重要な発見です。

 

これは逆に言うと、こうした思考パターンを意識して減らすことが、うつ症状の緩和や再発予防に役立つことを示しています。

 

2-2.ポジティブ戦略の効果とその限界


一方で、ポジティブ戦略のうち、特に「肯定的再評価(Positive Reappraisal)」の効果が明確に示されました。

 

● 肯定的再評価(Positive Reappraisal)


つらい出来事に対して「ここから学べることは何か」「自分が成長できた部分は?」と建設的に捉え直すことです。


研究では、この戦略を多く使う人ほどうつ症状が少なく、より健康的な心理状態であることが分かりました。

 

この考え方は、心の柔軟性やレジリエンス(回復力)の向上にもつながります。

 

● 計画(Planning)や視点の切り替え(Putting into Perspective)も有効


問題を冷静に分析して計画を立てたり、「これより大変な状況もあり得た」と相対化したりすることで、不安や落ち込みを和らげやすくなることが報告されています。

 

2-3.ポジティブ戦略の限界や注意点


● 「受容(Acceptance)」には注意が必要


一見ポジティブなストラテジーに思える「受容」ですが、論文では「必ずしも良い適応につながるとは限らない」と指摘されています。


例えば、うつ病の方が、「ただ諦めてしまう」「無力感に陥る」という受け身的な受容になってしまい、逆にうつ症状が強くなるケースもあるのです。


これは…

 

✔受容が「前向きな受け入れ」である場合

✔需要が「諦め」である

 

…という受容の質によって効果が大きく変わるということです。

 

2-4.その他の戦略について


他者責任化(Other-blame)は、精神科外来患者を除いて抑うつ症状と強く結びついてはいませんでした。

 

つまり他者責任化は他のネガティブ戦略よりも悪影響は「比較的」低いという結果でした。


しかし、あくまでも「比較的」のレベルであり、他人や環境のせいばかりにしてしまうと、問題解決が進まない、対人関係がこじれるなどのリスクもあります。

 

そのため、決して有効な戦略ではないということが示されています。

 

2-5.まとめ


この論文は、「どんな考え方のクセを持っているか」が、うつ症状の強さや心の健康と深く関わっていることを科学的に裏付けました。

 

具体的には…

 

✔ネガティブ戦略(反すう・自己責任化・破局化)→ うつ症状を強める

✔ポジティブ戦略(肯定的再評価など)→ うつ症状を和らげるが、受容の使い方には注意が必要

 

…ということになります

 

3.臨床での応用~自分の「考え方」を見直すことは大切ですが…~


この研究からわかる最大のメッセージは、「うつ症状がある時、普段の「考え方」そのものが回復への大きなヒントになりうる」ということです。

 

しかし、うつ病の状態では、セルフケアだけでは効果が限定的になりやすいという点にも注意が必要です。

 

(1)「考えのクセ」に気づくセルフケア


例えば…

 

「自分はよく自分を責めがち」

「同じことでぐるぐる考えてしまう」

「つい最悪のシナリオばかり思い浮かべてしまう」

 

…など、自分の思考パターンに気づくことはセルフケアの第一歩です。

 

(2)肯定的再評価を意識する


「この経験から何を学べるか?」

「自分なりの成長や意味はあるだろうか?」

 

…と問いかけるトレーニングを重ねることで、気分の落ち込みが和らぐことが期待できます。

 

(3)計画や視点の切り替えの工夫


困難に直面した時、「どう乗り越えよう?」「他にも見方があるのでは?」と考えるクセを意識することもセルフケアの一つです。

 

3-1.セルフケアだけでなく、専門家と一緒に取り組むことの意義


ただし、うつ病の状態では「考え方を変えよう」と思っても、思考のクセが強固で一人ではなかなか抜け出せない場合が多いのが実情です。

 

そのため…

 

「分かっているけど変えられない」

「セルフケアをしても効果が薄い」

 

…と感じる方も少なくありません。

 

そのような時こそ、心理カウンセラーとの対話や認知行動療法のサポートを受けることで、より効果的に考え方のクセを見直し、回復を促すことができます。


心理カウンセラーとともに取り組むことで、自分では気づきにくい思考パターンや感情のクセにも目を向けやすくなり、具体的なセルフケア方法だけでなく、セッションでの専門的なケアによって回復が期待できます。

 

ただ、セルフケアも大切です。

 

セルフケアに取り組みながら、必要に応じて心理カウンセラーのカウンセリングのサポートも検討してくださいね。

 

参考論文

Relationships between cognitive emotion regulation strategies and emotional problems: Comparison between five samples

 

 

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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