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認知行動療法によるうつ病の急激回復~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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うつ病が急激に改善されるとき~「心のジャンプ」がおきる要因とは?~

うつ病が急激に改善されるとき~「心のジャンプ」がおきる要因とは?~

2025/11/26

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

日々、うつ病の方の臨床をしている中で、急激に症状が改善されるケースが散見されます。

 

この現象を「サドンゲイン(sudden gain:急激な改善)」と言います。

 

このサドンゲインとは、あるセッションから次のセッションにかけて、不安や抑うつが大きく減り、その後の経過も安定するという現象です。

 

こうした劇的な改善は全ての方に当てはまるものではありませんが、治療プロセスの中に起きる「変化のきっかけ」として研究されています。

 

もちろん、こうしたケースは比較的例外的に生じるものですので、急激な症状の改善を期待すると逆にうつ病の症状はツラくなってしまうでしょう。

 

そのため、うつ病の回復が遅いという状況であっても、決して焦る必要はありません。

 

実際にほとんどの方が、地道なアプローチの積み重ねによってうつ病から回復されて行かれます。

 

ただ、サドンゲインがなぜ起こるのか、ということを理解することは、うつ病の回復という観点から有益だと思います。

 

そこで今回は研究論文(Lemmens et al, 2021)を元に、なぜサドンゲインは起きるのか、そしてそこにはどのようなメカニズムが隠されているのかを考えてみたいと思います。

 

※なお、このブログはサドンゲインという現象の解説であり、心理療法がサドンゲインを生じさせることを保証するものではない点にご注意ください。

 

1. サドンゲインとは ~心が一段ジャンプするような突然の改善~

 

 

サドンゲイン(Sudden Gains)とは、うつ病に対する認知行動療法(CBT)の途中で 「あるセッションと次のセッションと間で、症状が一気に良くなる」 という現象のことです(少し補足をすると、他の研究ではサドンゲインは認知行動療法以外の心理療法でも発生することが示されています)。

 

ここで言う「良くなる」とは、ぼんやりした気分の浮き沈みではなく、うつ症状の評価尺度(BDIなど)で表されるほど、大きく数値が下がるほどの変化を指します。

 

1-1.サドンゲインは「数字で確認できるほどの大きな変化」

 

少し前の論文(Tang & DeRubeis, 1999)ですが、この研究ではサドンゲインは「1回のセッションと次のセッションの間にうつ症状のスコアが平均11点も改善した」と報告されています。

 

11点というのは、「気分が少し良い気がする」レベルではなく、気持ちの重さ、絶望感、意欲の低下などが、明確な数値として、そしてうつ病を抱えているご本人の体感でも改善を実感するレベルです。

 

1-2.サドンゲインは「気まぐれな変化」ではない

 

先述したような「急に調子が良くなった」というと、「たまたま良い日だったのでは?」という可能性も否定できません。

 

しかし研究では、サドンゲインを経験した方は、治療後も長期的に良い状態が続きやすいということが分かっています。

 

これは、偶然の気分変化ではなく、心理的な転換点が生じているということが言えるでしょう。

 

2. なぜサドンゲイン(急激な改善)は起こるの?~セッション前後に起きる変化のパターン」を読み解く~

 

 

心理臨床に携わる者として、うつ病等の精神疾患を抱えておられる方が1日も早く回復されることを常に願っています。

 

そうした立場の私として、このサドンゲインという現象は日々の臨床で散見するという意味でも、そして心の病を抱えておられる方の回復という観点でも非常に興味深いものです。

 

そのサドンゲインは先述しましたように「偶然の好調」ではなく…

 

✔セッションの内容

✔そこで起きた気づき

✔日常での小さな行動変化

 

…と言うものが重なった結果生まれる心理的ジャンプだと言えます。

 

今回参考にしている論文(Lemmens et al,2021)では、認知行動療法のセッション録画を使い…

 

✔サドンゲイン直前のセッション(pre-gain)

✔サドンゲイン直後のセッション(post-gain)

✔それ以外の通常セッション(control)

 

…の3つを比較し、「なぜある人にだけ急改善が起きるのか」を分析しました。

 

その結果、意外な一貫したパターンが見えてきました。

 

2-1.セッションの中で 「認知・行動・対人面の変化の兆し」が起きている

 

サドンゲインを経験する人のセッションには、次のような変化が見られました。

 

● 認知の変化:考え方の枠が大きく揺れる

 

サドンゲイン直前のセッションのセッションでは、次のような「認知の転換(認知再構成の芽)」が確認されました。

 

✔「前までは絶対に◯◯だと思い込んでいたけれど…」

✔「視点を変えてみると、別の可能性もある気がする」

✔「自分の考えが事実とは限らないと気づいた」

 

これは認知行動療法の中心となる「認知の枠組みの揺れ」であり、「心の硬い部分が少し動き始めた瞬間」と言い換えることができると思います。

 

● 行動の変化:小さなチャレンジが芽生える

 

この研究論文で特に強調されたのは、行動面の変化が、サドンゲインのもっとも強い予測因子であった、という点です。

 

✔「少し散歩してみた」

✔「不安だったけど友達に連絡してみた」

✔「避けていた作業を5分だけやってみた」

✔「考え込む代わりに体を動かしてみた」

 

こうした「ほんの小さな行動」であっても、「動けた!」という成功体験が、認知(考え)の変化を後押しし、 結果として急激な改善につながりやすいというメカニズムが示されています。

 

● 対人面の変化:関係についての気づきが生まれる

 

また、対人関係、特に対人関係における自分自身や他者に対する見方が変わるというケースも多く見られました。

 

✔「完璧じゃなくていいかもしれない」

✔「頼ってみるのも悪くないかも」

✔「自分ばかり責めていたかもしれない」

 

対人関係は大きく分けて「自分」「他者」「関係性」の3つから成り立っています。

 

そしてサドンゲインが生じるときは「自分」「他者」「関係性」を捉えなおす気づきがあることが多く、それがサドンゲインの土台となっていました。

 

2-2.「セッション間の変化」が最も重要だった

 

これは論文を読んでいて「なるほどなぁ~」と思ったところです。

 

この研究で示された内容の1つとして、「セッション外で何が起きていたか」が、改善に大きく関わっていた点です。

 

サドンゲインを経験した方の多くは…

 

✔セッションでの気づきを試す

✔行動実験や宿題を実行する

✔自分の気持ちを書き出す

✔小さな目標に挑戦する

✔誰か(カウンセラーも含む)に相談してみる

✔生活リズムを少し整える

 

…等々の、日常生活の中で「自分から変えてみる動き」を取っていました。

 

つまり、認知行動療法で言うところの「行動活性化」と呼ばれるものですね。

 

これにより、心理的に次のような連鎖が起こります

 

✔行動を変える
①小さな成功が得られる

② 自己評価が変化する
③ 認知(考え)の枠も変化する
④うつ症状が大きく改善する

 

つまり、サドンゲインとは…

 

セッション内の気づき × セッション外の行動変化の掛け算

 

ということができるでしょう。

 

2-3.サドンゲインは「準備されたジャンプ」

 

論文の結論として言えることは、サドンゲインは、単なる偶然の回復ではなく、心理的準備が整ったときに起きる「心のジャンプ」であるということです。

 

そして、そのジャンプの裏側には…

 

✔小さな行動

✔認知の揺れ

✔カウンセラーとの関係性の安定

✔日常の積み重ね

 

という目に見えない「下準備」が必ず存在します。

 

そのため、うつ病を抱えている方も心理カウンセラーも、焦らずに「ゆっくり積み重ねること」が大切なのです。

 

その結果として、いつかのタイミングでサドンゲインという転換点がやってくることになります。

 

3. サドンゲインにつなげるためのセルフケア

 

 

まず強調しなければならないのは、繰り返しになってしまいますがサドンゲイン(急激な改善)は誰にでも起きるわけではない、ということです。

 

確かに私の臨床でもサドンゲインは散見されますが、残念ながらうつ病の全ての方に当てはまるわけではありません。

 

しかし、サドンゲインの「メカニズム」はうつ病の回復へのヒントとなります。

 

そこで、ここではサドンゲインにつなげるためのセルフケアをご紹介します。

 

サドンゲインを研究したこの論文が教えてくれる一番大切なメッセージは、「心の回復はゆっくりだけではない。あるとき急に軽くなることもある」という希望です。

 

そしてそのサドンゲインは偶然の気まぐれではなく、日々積み重ねているアプローチや気づきの結果として起きるものだということです。

 

ただ、サドンゲインの研究始まったばかりであり、そのプロセスにはさらなる研究が必要な段階です。

 

その点も踏まえつつ、自分でできるセルフケアを3つご紹介します。

 

3-1.セッションや日常で出てくる「気づき」を大切にする

 

うつや落ち込みが続いていると、自分の考え方が持っているクセに気づく余裕がなくなりやすくなります。

 

そしてその結果、自己否定的な考え方で自分を責めるという結果につながります。

 

もし、自己否定的な思考が浮かんだとき、それに「気づく」こと自体がセルフケアの第一歩となります。

 

ただ、いきなり大きく変えようとする必要はありません。


ただ、「今、自分はこう思ったんだな」と気づくだけで十分です。

 

つまり、「巻き込まれずに気づき観察する」というスタンスですね。

 

3-2.日常の中で「小さな行動の変化」を積み重ねる

 

行動の変化はうつ病のケアにおいて決定的な意味を持ちます。

 

確かに、うつ病の症状が重たい場合は、動くこともツラいと感じることでしょう。

 

しかし、その中でも少しだけ行動する、少しだけ行動に変化をつけるということでも効果は見込めます。

 

ただし、急に行動の量を増やしたり行動の内容を変える必要はありません。


むしろ、小さくて簡単な行動のほうがよいのです。

 

というのは、小さくて簡単な行動は継続しやすいので、心の改善を後押ししてくれます。

 

例えば…

 

✔決まった時間にちゃんと起きる

✔5分だけ散歩する

✔誰かに短いメッセージを送って他者と繋がる

✔小さな家事をひとつだけやってみる

✔ベッドのカーテンを開けて光を入れてみる

 

 

ここでは決して「完璧な行動」を求めないでください。


それよりも、「できる範囲の小さな一歩」のほうが、実はずっと効果的です。

 

こうした行動を積み重ねることで、「思ったよりできた」という経験が少しずつ増え、それが大きな改善のきっかけにつながっていきます。

 

3-3.自分にとって「安心できる関係」を大切にする

 

心が回復に向かうとき、「安全で安心できる他者とのつながり」はとても大切な土台になります。

 

特にうつ病の場合は孤独感や孤立感を感じやすくなるため、なおのこと繋がりが大切になります。

 

そのため、信頼できる友人やパートナー、心理カウンセラーといった方と繋がるように意識してみてください。


ここで大切なのは、「この人の前なら少し力を抜ける」と思える存在がひとりでもいるということです。


そうした存在がいることで、心は変化を受け取りやすくなります。

 

しかし、もしも、「誰にも頼れない」と感じるときは、まずは 「自分が安心できる場所や時間」 をつくるところから始めていきましょう。

 

まとめ

 

サドンゲイン(急激な改善)は…

 

「突然に見えるけれど、実は毎日の積み重ねの先に起きること」

 

ということができます。

 

小さな行動を少しずつ積み重ねていくと、心が軽くなる日が、ふっと訪れることがあります。

 

その瞬間が、心の回復の大きな一歩になるでしょう。

 

参考論文

Therapy Processes Associated With Sudden Gains in Cognitive Therapy for Depression: Exploring Therapeutic Changes in the Sessions Surrounding the Gains

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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