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うつ病で考えがまとまらないとき~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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うつ病の「集中できない・考えがまとまらない」との向き合い方

うつ病の「集中できない・考えがまとまらない」との向き合い方

2025/12/24

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

うつ病といえば、気分の落ち込みや体のだるさというものが注目されがちです。

 

しかし、うつ病の症状で見落としてはならないのが「考えがまとまらない」「集中できない」「本を読んでも頭に入ってこない」という認知的なものがあります。

 

うつ病の臨床では、こうした「考えることに対する難しさ」で悩んでいる方は珍しくありません。

 

こうした場合、当事者の方は「自分の弱さの問題」と考えがちになる傾向がありますが、これらはうつ病の一部として起こりうる症状です。

 

実際い研究でも、うつ病では注意、実行機能、記憶、処理速度など複数の領域で認知の不調が生じうることが報告されています。

 

そこで、このブログでは論文の結果を踏まえて、うつ病における認知症状の「実態」と「出やすい領域」をわかりやすくまとめ、心理療法(認知行動療法など)とセルフケアの観点から回復の道筋をシェアしたいと思います。

 

1. うつ病の認知症状は「珍しくなく、回復後も残りうる」

 

 

うつ病で多く報告される症状の中でも、認知症状(考える力の不調)は発生する確率が非常に高いものです。

 

研究論文では、認知の問題が…

 

✔抑うつエピソード中に85–94%の時間

✔寛解期でも39–44%の時間

 

…という中でみられるという報告をされています。

 

そのため、気分が落ち着いた後も「残りやすい症状」として注意をする必要があります。

 

ここがとても重要で、気分の波が落ち着いても「仕事や家事の段取りが戻らない」「判断が遅い」などが続くと、当事者の方は、「まだ治っていない」「自分はダメだ」と受け取りやすくなってしまいます。

 

しかし実際には、回復プロセスの中で認知症状だけが遅れて回復することも十分にありえます。

 

さらに論文は、こうした認知症状が、生活機能やQOL(生活の質)に影響し、再発リスクとも関係しうることが報告されているんですね。


そのため、うつ病のケアについては「気分」だけでなく「生活機能(生活の回りやすさ)」まで含めてケアすることが、回復においては重要となります。

 

2. どの認知領域に不調が出やすいのか~4つの代表領域~

 

 

うつ病の症状として「頭が上手く働かない」という認知的領域での症状が珍しくないことをご説明しました。

 

次は、具体的にどのような形で症状が現れやすいのかをご説明したいと思います。

 

論文が示す、うつ病で目立ちやすい認知の不調は主に次の4領域です。

 

2-1.注意(集中の維持・注意の切り替え)

 

これは、例えば「読書や会話が続かない」、「うっかりやミスが増える」「マルチタスクが崩れる」というような形で現れます。

 

また注意が落ちると、当然ですが日常生活は一気に難しくなります。

 

またご本人の体感としては「頭がぼんやり」「もやがかかっているみたい」などの表現が多くみられます。

 

2-2.実行機能(段取り・計画・抑制・柔軟性)

 

これも具体例から入るとイメージしやすいかと思います。

 

例えば「何から手を付ければいいかわからない」、あるいは「優先順位がつけられない」というものが典型例ですよね。

 

また「イレギュラーな状況に対する対応が難しくなる(予定変更で混乱してしまう)」というものも見られます。

 

ここで言う実行機能とは「生活を運転するチカラ」と考えると分かりやすいでしょう。

 

この実行機能が弱ると、意欲がないように誤解されやすい、あるいは当事者の方がそう捉えがちになることで、問題は複雑化します。

 

2-3.記憶(覚える・思い出す)

 

当事者の方が一番困るのは、恐らくこれではないでしょうか?

 

分かりやすいのが、直前に見たはずの情報が抜け落ちたり、約束や手順が抜けてしまう、名前や単語が出にくいといったものですね。

 

これは「物忘れ=物覚えの悪さ」では決してなく、ストレス・睡眠・注意の低下が重なると起こりやすいうつ病の症状です。

 

2-4.処理速度(考える・理解するスピード)

 

これは「具体的な困りごと」として、よく挙げられる症状です。

 

具体的には連絡等の返答に時間がかかってしまう、メール作成後にどっと疲れる、判断が遅くなっているため、自責が生じるというものです。

 

このように処理速度が落ちると、当事者の方は「自分が以前の自分でない」という感覚になりやすくなります。

 

3. 認知面での症状があると、なぜ回復がつらく感じるのか

 

 

うつ病に伴う認知面での症状があると、多くの方が「治っていない感じがする」「前に進めていない気がするという、強い停滞感を抱きやすくなります。

 

その理由はシンプルで、認知面での症状が感情そのものよりも、生活の回り方に直接影響するからなんですね

 

そして、それらは悪循環という形で表れやすくなります。

 

3-1.悪循環(1)

 

まずは最初の悪循環についてです。

 

これは集中力の減退より生じます。

 

具体的には…

 

集中できない→仕事が遅れる・ミスが増える→自己否定が強まる→集中力に影響を与える

 

…と言うものですね。

 

集中力が落ちると、以前なら普通にできていた作業に時間がかかり、どうしても小さなミスも増えやすくなります。

 

すると、「前はできていたのに」「やっぱり自分は回復していないんだ」、そして自責の念として「こんなこともできないなんて」といった自己評価の低下が起こりやすくなります。

 

ここで重要なのは、能力が落ちたというより、「うつ病によって能力を発揮できない状態」にあるという点です。


しかし当事者の方の体感としては、「自分の価値が下がった」ように感じやすく、これが回復の実感を遠ざけてしまいます。

 

3-2.悪循環(2)

 

次の悪循環はいかのようなものです。

 

判断できない→先延ばし→不安が増える→判断力に影響を与える

 

うつ病の認知的な症状の中でも、特に回復を妨げやすいのが「決められない」「選べない」という状態です。

 

例えば、何から手をつけるべきか分からなかったり、正解が分からず動けなくなってしまう、間違えるのが怖くて行動が止まる…

 

その結果、行動が先延ばしになり、やるべきことが後回しになり溜まり続けます。

 

すると今度は「やらなきゃ」というプレッシャーが生じますが、しかし作業に着手しにくい状態なので、「またできなかった」という後悔が生じる場面が発生します。

 

その結果「このままで大丈夫だろうか」という不安が積み重なります。


そして不安が強まることで、さらに判断しづらくなるという循環が生まれます。

 

これは実行機能(段取り・選択・切り替え)の負荷がうつ病によって高まっている状態と理解する方が適切です。

 

3-3.悪循環(3)

 

最後にご紹介する悪循環はいかのようなものです。

 

段取りが崩れる→生活が荒れる→さらに疲弊する→その結果、段取りを維持しにくくなる

 

うつ病の認知面での症状があると、どうしても生活リズムが乱れがちになります。

 

そして食事や睡眠が不規則になり、片付けや家事も後回しになりがちになります。

 

そして、こうした部分から日常の「土台」が崩れやすくなります。

 

生活が整わない状態が続くと、身体的な疲労が抜けにくくなりますし、そもそも回復に必要な休息が取れないという状態が発生しやすくなります。

 

その結果、自分を責める材料が増えるという形で、心身の消耗が加速してしまいます。

 

そしてこの段階では、「気分は少し良くなってきたのに、なぜか毎日がしんどい」といったズレた感覚を持ちやすくなります。

 

4.何に着目してケアを進めるか

 

 

ここまでの悪循環をまとめると、うつ病の認知面での症状がある状態では、気分は少し持ち直してきていますが、しかししかし生活がうまく回らないといった状態が生じます。

 

その結果、気分はマシになったものの「回復していない」と感じてしまうという構造が生じやすくなります。

 

つまり、つらさの正体は抑うつ気分そのものではなく、「生活機能の回復が追いついていない」ことである場合が少なくありません。

 

このズレがあると、「もう良くなっているはずなのに」「なぜ自分だけ戻れないのか」、そして「回復している実感がない」といった焦りや落胆が生まれやすくなります。


そして、こうした認知(考え)は、それ自体が回復を妨げる新たな負荷になります。

 

4-1.だから心理療法では「生活機能」を同時に立て直す

 

このような背景から、心理療法では気分の改善だけを目標にせず、認知面での症状がある前提で、生活をどう回すかを一緒に考えるということを目指します。

 

この場合、「できない自分」を責めない構造を作るという視点がとても重要になります。

 

具体的には…

 

①作業を極端に小さく分ける

②判断を減らす仕組みを作る

③段取りを外在化する(紙・メモ・チェックリスト)

④回復の評価基準を「集中できたか」ではなく「ひとまず作業を続けられたか」に置く

 

…といった支援が、認知症状がある時期の回復感を支える役割を果たします。

 

4-2.まとめ

 

うつ病の認知面での症状があると回復がつらく感じるのは、以下の構造があるからです。

 

つまり、認知面での症状が生活の回り方を直接崩してしまい、生活が崩れると「治っていない」と感じやすくなり、そしてその評価がさらに心身を疲弊させる、というものです。

 

だからこそ、回復とは「気分が上がること」だけではなく、「生活が少しずつ回り直すこと」だと捉える視点が、自分を追い詰めすぎないための大切な助けになります。

 

うつ病の困難は気分だけではなく生活面にも及びます。

 

気分だけではなく、生活も崩してしまうのがうつ病、だから両方共の回復を目指すということを、ぜひ目指してくださいね。

 

参考論文

Cognitive impairment in depression: recent advances and novel treatments

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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