心理療法と薬物療法の組み合わせがうつ改善に効果的な理由
2026/02/03
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
うつ病を長く抱えている方の中には、「これはいつまで続くのだろう?」と不安に感じる方も少なくありません。
また、うつ病治療の中心は薬物療法ですが、「薬を飲み続けていても改善されない」と悩まれる方もおられます。
薬物療法を受ける・受けないの判断は個人の選択となりますが、私は薬物療法は非常に役に立つものだと考えています。
抗うつ薬は、脳の働きを整え、強い落ち込みや不安をやわらげるという意味で非常に重要な治療法です。
しかし一方で、気分が落ち込む背景にある考え方のクセや、行動パターン、人間関係のストレスまでは、薬だけで解決するのは難しいというのが実情です。
そこで一つの選択肢として考えたいのが、薬物療法と心理療法を併用することです。
つまり、薬で土台を整えながら、カウンセリングで思考や行動のパターンを見直していくというアプローチですね。
このように身体と心の両面からアプローチすることで、回復の道筋がより安定する可能性があります。
そこで今回のブログでは薬物療法と心理療法の併用について、研究論文を踏まえつつシェアしたいと思います。
※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものではありません。
※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。
1.「薬物療法+心理療法」の意義とは?

今回参考にした論文では、抗うつ薬単独の治療と抗うつ薬+心理療法を組み合わせた治療を比較したランダム化臨床試験を系統的にまとめたものです。
そして、研究の結果以下のポイントが明らかになりました。
1-1.薬物療法+心理療法はどう違うのか?
● 併用治療は改善率が高い
薬物療法だけの場合と比較して、抗うつ薬に心理療法を組み合わせると改善率が高くなるという結果が出ています。
これは、うつ症状の軽減だけでなく、うつ病を抱えている方自身が治療に前向きに関わっていく力を高める作用が心理療法にあることを示唆します。
● 継続率が向上する
うつ病において治療を継続することは非常に大切ですが、薬物療法単独の場合、治療を途中でやめてしまう人が一定数おられます。
特に離脱しやすい時期というのは症状がある程度良くなったときで、この時自己判断で治療が中断されることになります。
その結果、うつ病の残存症状が残ってしまい、結果として元通りの生活を取り戻すことができなかった、あるいは再発リスクが高くなるという弊害が生じます。
しかし心理療法の併用治療の方の場合は治療の中断率が低くなるというデータも示されていました。
つまり、治療が継続されることによって増悪や再発のリスクを下げることに繋がるということを意味しています。
1-2.なぜ心理療法を併用すると効果が高くなるのか?
薬物療法は脳内の神経伝達物質のバランスを整える役割を果たしますが、心理療法は思考・行動・感情の癖や背景にある意味づけを扱うという役割を担います。
つまり、薬物療法が「生物学的側面」へのアプローチであるのに対し、心理療法は「心理社会的側面」へのアプローチということになるんですね。
この両方に働きかけることで気分の落ち込みや回避的な行動、自責感やネガティブな思考パターン、そして対人関係の困難といった面を 包括的に支えることができる ようになります。
1-3.心理カウンセリングが果たす役割
うつ症状があると、どうしても日々の生活に負担が生じがちになります、
そして、その結果社会的なつながりや役割まで影響を受けることがあります。
そのため、心理カウンセラーは心理療法を通して次のような視点でうつ病を抱えている方に寄り添います。
✔いま感じているつらさの意味を共に探る
✔日常の行動パターンを見直す視点を提供
✔自分自身の価値や強みに気付くサポート
✔感情を安全に表現できる場をつくる
心理療法は単に「話すだけ」の時間ではありません(特に私のように認知行動療法を専門にするカウンセラーはそうです)。
日常行動への気づきと変化、そして自分と他者との関係性を再構築するプロセスでもあります。
つまり、単に症状の改善を目指すだけでなく、「うつ病前の日常を取り戻す」ことが目的になるということを意味します。
2.当事者から見える具体的な効果

うつ病の治療で、抗うつ薬(薬物療法)と心理療法を組み合わせると、当事者側の体感として「良くなり方」や「続けやすさ」に違いが出ることが期待できます。
研究的においても、抗うつ薬だけの治療より、併用治療のほうが改善に至る確率が高いことが示されています。
以下、その効果についてみていきたいと思います。
2-1.症状の改善が早く感じられる(改善に『到達』しやすい)
まず押さえておきたいのは、併用治療は「気分が少し上がる」以上に、研究上は反応(response:臨床的に意味のある改善)の割合が高い、という点です。
今回参考にした論文では、ランダム化比較試験をまとめた結果として、併用治療は抗うつ薬単独より反応が起こりやすいことが示されました。
これを当事者の方のの言葉に置き換えると、次のようになります。
✔薬で一番つらい底が少し持ち上がって、日常の最低限の活動が回り始める
✔心理療法で、しんどさが強くなる『パターン』が見えてくる
✔やる気が出ない日でも、できる行動の選び方が分かってきて、結果として「前より進めているという実感が出る
つまり、体感として改善されていくということが生じるんですね。
ただ、ここで大事なのは心理療法は「気分を上げる魔法ではない」ということです。
心理療法で期待できる効果とは、気分が揺れても生活を動かすための設計(思考・行動の調整)を一緒に作れる点です。
例えば、薬で体力や睡眠が少し整う→心理療法で行動が整う、という順で「変化が見えやすくなる」ということが言えるでしょう。
2-2.自分自身の内面を理解する助けになる(回復を『説明できる』ようになる)
薬物療法と心理療法の組み合わせによって、当事者の方は「どのような回復があったか」という自己理解、つまり自分自身の内面を理解できるようになっていきます。
また論文では、検証されたのは症状スコアだけでは捉えにくい領域(満足度、社会機能、ウェルビーイング等)にも影響しうるということも指摘されています。
実際のカウンセリング現場でクライエントが得やすい「自分自身の内面の理解」は、例えばこういうものです
✔落ち込む前のパターンとして睡眠が乱れて、予定を避けて、自己否定が強まっていくという状況が理解できるようになった
✔「失敗したら終わりの考えに対して、活動が消極的になりやすい、自己肯定感が下がるということが減っていった
✔人間関係で無理をすると、反動で何もできなくなる周期があることが理解でき、対処がしやすくなった
薬物療法だけだと、症状の波が軽くなっても「なぜ波が起きるのか」「何が引き金なのか」が言語化されないままになりやすいことがあります。
ここに心理療法が入ると、「波の構造(引き金→思考→行動→結果)」が整理され、回復を「再現できる方法」に落とし込めることが増えていきます。
この「理解できる=対処できる」という感覚が、次の「治療を続ける力」にもつながりやすくなっていくんですね。
2-3.ケアを続けやすくなる
併用治療の強いポイントとしてこの論文が示しているのが心理療法があることによって「続けやすさ」が変わってくるというものです。
うつ病の治療で途中離脱が生じるのは、いくつか理由があります。
まず、効果がすぐに実感できないというもの。
そして気分の波があるといううつ病の症状ににって気力が落ちて継続が難しくなるというもの。
最後に、うつ病による自己肯定感の低下ゆえに治療に対して希望が持てなくなるというもの。
これに対して薬物療法と心理療法の組み合わせの場合、治療の継続が難しくなった際のフォローアップがやりやすくなります。
当事者の方の体験としては、次のようになります。
✔「話す場がある」ことで、しんどさがピークの時期でも「孤立している感じ」が弱まる
✔「振り返り」があることで、効果が見えにくい週でも「何ができたか」を拾い直せる
✔つまずき(寝不足、対人ストレス、仕事の負荷など)を一緒に調整でき、治療のレールに戻りやすい
2-4.併用治療を考えるときの注意点(万能ではない理由)
もちろん、併用治療が「誰にでも必ず効く」わけではありません。
論文でも、研究間の違い(対象者、治療の場、期間など)によって効果にばらつきが出る可能性が述べられており、個別の条件が結果に影響することが前提になります。
現実に影響しやすい要素は、たとえば次のようなものがありあす。
✔症状の重さ・併存症状
抑うつが強い、消えたくなるという思いが強い、強い不安やパニックがある等で、どこからケアを行うかという優先順位は変わってきます。
✔環境要因(ストレス負荷)
職場・家庭のストレスが現在進行形だと、治療は「症状軽減」だけでなく「環境調整」も必要になってきます
✔サポートネットワーク
支えてくれる人がいるか、孤立が強いかで、回復のペースや支援設計を工夫する必要があります。
✔生活リズム・睡眠の質
これは本当に重要で、睡眠が崩れていると、薬も心理療法も効果が出にくくなる、あるいは増悪するというケースは珍しくありません
だからこそ、ケアの進め方は「一般論」ではなく、当事者の方の症状・生活・環境に合わせた最適化が重要です。
最後に
うつ症状や気分の落ち込みを抱えていると、体調だけでなく生活全体が圧迫されてしまうことがあります。
心理カウンセリングは、そうしたつらさに寄り添いながら、回復につながるよう様々な要素を検討し、そしてケアを進めるというプロセスを提供します。
また、薬物療法との併用は、エビデンス(科学的根拠)にも支持されています。
ひとりで抱え込まず、まずは専門家に話してみるということも選択肢に入れておいてくださいね。
参考論文
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こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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