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うつ病の症状を理解する~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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眠れない・動けない・考えられない~うつ病を症状ごとに見ると支援が変わる理由~

眠れない・動けない・考えられない~うつ病を症状ごとに見ると支援が変わる理由~

2026/03/28

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

「うつ病」と聞くと、多くの方はひとつのまとまった状態を思い浮かべるかもしれません。

 

そして、うつ病の症状の程度を把握する際にうつ病用の評価尺度のスコアが多く用いられています。

 

つまり、スコアの値でうつ病の「重さ」を測るというものですね。

 

しかし実際には、うつ病はそれほど単純ではありません。

 

確かに、うつ病に関する評価尺度はうつ病のケアを行う際に非常に役立つ有用なツールです。


しかし、同じ「うつ病」と診断されても、ある方は眠れなさがつらく、ある方は強い疲労感に苦しみ、また別の方は集中力の低下や最悪の選択肢を想像し、それにに圧倒されてしまうということがあります。

 

今回参考にしている論文でも、うつ病の重症度を症状の合計点で把握する方法は広く使われている一方で、それだけでは個々の症状の違いや重要な臨床情報を見落としやすいと指摘されています。

 

そのため、うつ病は次のように理解する必要があります。


うつ病を理解するときに本当に大切なのは、「スコアが何点だったか」だけではなく、「どの症状が、どのように、その人の生活を苦しめているのか」を丁寧に見ることです。

 

つまり、うつ病は「点数」だけでは把握できず、大切なのは、いま何に苦しんでいるのかを見ることです


この視点があると、支援の方向性はずっと具体的になります。

 

そこで今回は、うつ病の諸症状に対する視点をシェアしたいと思います。

 

※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものでも効果を保証するものでもありません。

※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。

 

1.うつ病の症状を個別に把握するべき理由

 

 

論文では、多くのうつ病評価尺度が、複数の症状を足し合わせて「重症度」を出して判断することの限界を示しています。

 

確かに評価尺度によって症状の重さの程度を把握するというのは実用的でもあり、また便利な方法でもあります。

 

しかし評価尺度によって把握できるものはそう多くありません。

 

ここから見えるのは「うつ病の症状の多様性」であり、その点を前提としてうつ病のケアを進める必要があるんですね。

 

1-1.うつ病の症状の多様性

 

例えば、うつ病の症状をざっと並べると次のようになります。

 

眠れない


食欲が落ちている


強い罪悪感がある


集中できない


最悪の選択肢を取りたいという気持ちがある

 

眠りすぎる


体が重い


何も楽しめない


動けない


先延ばしが強い

 

もちろん、これ以外にもうつ病の症状はさらに数多くあります。

 

このようにうつ病の症状が多様なので、苦しさの質や日常への影響、そして必要な支援もかそれぞれで違ってきます。

 

これは心理カウンセリングの現場感覚ともよく重なります。


「うつっぽい」という言葉だけでは見えないものが、実はたくさんあります。

 

眠れなさが主な苦しみなのか、朝の立ち上がれなさなのか、頭が回らないことなのか、自己否定なのか。そこを丁寧に見ていかないと、支援はどうしても抽象的になってしまいます。

 

1-2.うつ病は「ひとつのかたまり」ではなく、症状の集まり

 

論文では、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)におけるうつ病の9つの主要症状が整理され、それぞれの症状のなかにもさらに幅があることが示されています。

 

たとえば睡眠の問題には不眠も過眠も含まれ、食欲の問題には食欲低下も食欲増加も含まれます。

 

つまり、ひとつの診断名のなかに、かなり異なる状態が含まれているわけです。

 

この点はとても重要です。


なぜなら、私たちはつい「うつ病ならこういうもの」と一括りに考えやすいからです。

 

ですが実際には、抑うつ気分、興味の低下、疲労感、集中困難等のうつ病の症状は、それぞれ別々に丁寧に理解しケアする必要があります。

 

そして、これらの症状は生物学的背景、日常生活への影響、リスク要因などの面で互いに異なるものです。

 

1-3.症状によって、背景も生活への影響も違う

 

うつ病の症状を考える上で大事なポイントは、うつ病の各症状は、同じ重みではないということです。


研究レビューのなかでは、症状によって生活機能への影響の大きさがかなり異なることが紹介されています。

 

ある研究では、抑うつ気分は機能障害の説明に大きく関わる一方、過眠の寄与はかなり小さいとされました。

 

また、興味や喜びの低下は社会活動への影響が大きく、疲労感は家事や日常管理への支障と強く関係していました。

 

これは支援を考えるうえで非常に実践的です。


例えば、同じ「うつ病」と言っても、不眠が中心なら、翌日の集中力低下や疲労感への連鎖を考える必要があるでしょう。


また強い罪悪感が中心なら、自己批判や対人回避との関係を見ることが求められます。

 

そして興味や喜びの低下が中心なら、生活の楽しみや報酬の枯渇に注目することとなります。

 

このように、症状によって見るべきポイント、ケアするべきポイントが変わってきます。

 

1-4.きっかけとなる出来事も、症状ごとに違う可能性がある

 

うつ病は、ライフイベントが症状全体を一様に悪化させるのではなく、出来事の種類によって増えやすい症状のパターンが異なってきます。

 

ここからわかるのは、同じ「最近つらくなった」という状態でも、その背景にある出来事と、表面に出てくる症状は一人ひとり違うということです。

 

そのため心理カウンセリングでは、「何があったのか」「それ以降、何が一番つらくなったのか」「生活のどこに支障が出ているのか」を丁寧にたどることが、とても大切になります。

 

1-5.症状は単独ではなく、つながって悪化する可能性がある

 

うつ病の症状を考える上で、うつ病の症状同士の因果的なつながりにも注目する必要があります。

 

たとえば不眠は、精神運動面の不調、認知機能の低下、疲労感、気分の落ち込み等と関連しうると整理されています。

 

この視点は臨床的にとても有用です。


例えば、次のような悪循環がうつ病の症状では想定されます。

 

「眠れない」

「日中に頭が回らない」

「仕事や家事が滞る」

「自分はだめだと感じる」

「さらに気分が落ちる」


この場合、単に「うつ病が悪化している」とまとめるだけでは不十分であり、どの症状が起点になり、どの症状が後から強まっているかを見ることで、介入の優先順位が見えやすくなります。

 

1-6.うつ病支援で大切な症状に対する理解

 

うつ病支援でで最も大切なことは、うつ病の重たさの程度をスコアで理解することも重要ですが、点数での判断で終わりにせず…


どの症状が強いのか。


どの症状が長引いているのか。


どの症状が生活機能を最も下げているのか。


どの症状が他の症状を引っ張っているのか。


という個別の症状が持つ特徴に目を向けることで、支援はずっと具体的になります。

 

1-7.うつ病ケアで大切にしたい視点

 

ここまでのお話を整理すると、次のようになります。

 

もしも、これを読まれている方がうつ病を抱えている、あるいは身近な方がうつ病を抱えているのであれば、以下の内容を意識してください。

 

まず、「うつ病ですね」で話を終えないことです。


診断名や重症度は大切ですが、それだけではその人の苦しみは見えません。

 

まずは、当事者の方が今一番困っている症状は何かを言葉にしていくことが、支援の土台になります。

 

次に、「どの症状が生活を止めているか」を見ることです。


例えば、眠れないせいで午前中が動けないのか、疲労感のせいで家事が止まるのか、集中困難のせいで仕事が進まないのか、絶望感のせいで将来が描けないのか…。

 

そこが見えると、支援の焦点が定まります。

 

そしてもうひとつは、「症状の連鎖」を見ることです。


眠れないことが気分を悪化させているのか。


反すうが絶望感を強めているのか。


疲労感が活動性の低下を招き、さらに自己評価を下げているのか。


このつながりを一緒に見つけることは、回復の入り口になります。

 

1-8.うつ病の支援で、当事者の方に「寄り添う」ということ

 

うつ病の支援というと、どうしても「うつ病に効く一般的な対応」を探したくなるものです。

 

もちろん一般的な知見も大切です。

 

しかし支援はもっと個別化する必要があり、そのためには症状ごとの理解が必要不可欠です。

 

たとえば同じ落ち込みでも、以下のような場面においては日常での工夫も、周囲のサポートの仕方も変わります。

 

眠れない苦しさが前景にある方


疲労感と無気力が中心の方


罪悪感と自己否定が強い方


集中困難で仕事が立ちゆかない方


最悪の選択肢を考えてしまう方

 

「うつ病だからこう」という見方ではなく、「この方は今、何に最も苦しんでいるのか」という問いを持つことが、より丁寧で、より実際的な支援につながっていきます。

 

参考論文

Fried, E. I., & Nesse, R. M. (2015). Depression sum-scores don’t add up: why analyzing specific depression symptoms is essential.

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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