双極症の心理療法はなぜ役立つのか~再発予防・自己理解・支えの意味について~
2026/04/14
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
双極症(双極性障害)の支援では、薬物療法だけでなく、心理療法やカウンセリングも非常に役立ちます。
ただ、素朴な疑問として双極症になぜ心理療法やカウンセリングが有効なのでしょうか?
そして、心理的支援のどの部分が役立っているのか、そしてなぜ変化が起きるのでしょうか?
結論から申し上げますと、双極症の心理療法には、変化に関わりそうな要素がいくつかあります。
例えば、服薬の継続、人から支えられること、考えに振り回されにくくなること、自尊感情が育つことなどです。
そこで今回は、「双極症(双極性障害)に心理療法や心理カウンセリングはなぜ有効か?」というテーマをお伝えしたいと思います。
※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものでも効果を保証するものでもありません。
※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。
1.双極症の心理支援は「何が支えになるのか?」
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双極症への心理的支援というと、「どの療法が効くのか」に目が向きやすいかもしれません。
しかしが実際には、名前のついた療法そのものよりも、その中に含まれているどんな要素がその人の支えになっているのかを見ていくことが大切です。
今回の研究から見えてきたのは、双極症の支援では、気分の波そのものだけでなく、考えとの付き合い方、人とのつながり、自分の見方、再発の前触れへの気づきなど、いくつもの要素が関わっている可能性があるということです。
1-1.「有効な要素」と「変化の仕組み」とは何でしょうか
双極症に対する心理支援を理解する上で、「有効な要素」と「変化の仕組み」を分けて考える必要があります。
まず「有効な要素」とは、心理支援の中で実際に役立っている部分のことです。
例えば、医師や心理カウンセラー等の支援者との関係、生活リズムを整える工夫、周囲の人からの支え、再発のサインに早く気づくことなどが含まれます。
一方で、「変化の仕組み」とは、「なぜ少し楽になったのか」「なぜ安定しやすくなったのか」という内側の変化のことです。
例えば、自分の考えに振り回されにくくなった、自分を責めすぎなくなった、人に頼ってよいと感じられるようになった、という変化です。
この視点が大切なのは、双極症の支援が「とにかく話を聞いてもらえばよい」というものではないからです。
そのため、何が変化につながっているのかを見ていくことで、支援はより具体的になります。
1-2.何が変化に関係するか?
この研究では、双極症の心理的支援において、どんな要素が役立っていそうかが検討されました。
「これが決定的に効く」と言い切れる単純な回答はありません
しかし変化に関わる候補として挙がっていたのが、考えをコントロールできる感覚、自尊感情、人からの支え、前向きな非言語的ふるまい、心的外傷後の成長などです。
ここからは、薬以外の要素に絞って各要素を見ていきたいと思います。
1-3.人からの支えは、症状だけでなく「孤立」を和らげるチカラに
研究の中で、比較的注目されていたのが人からの支えです。
双極症では、気分の波そのものもつらいのですが、それ以上にしんどいのが「ひとりで抱え込むこと」です。
落ち込みの時期には孤立しやすくなり、調子が上がってくる時期には周囲から理解されにくくなることがあります。
そのため、支援の中で「話を聞いてもらえる」「状態の変化に気づいてもらえる」「困ったときに相談できる」という人間関係は、とても大きな意味を持ちます。
ただ、ここでいう支えは、単なる励ましではありません。
「最近少し無理をしていないか」
「眠れているか」
「いつもと違う変化が出ていないか」
…というものを一緒に見てもらえることも含まれます。
双極症では、こうしたつながりが、再発予防や早めの対処につながる可能性があります。
1-4.「考えに振り回されにくくなること」は大きな支えに
研究では、考えをコントロールできる感覚も候補として挙げられていました。
これは、「嫌な考えが浮かばないようにする」という意味ではありません。
むしろ、考えが浮かんでも、それにすぐ飲み込まれず、少し距離を取れる感覚に近いものです。
たとえば、落ち込みの時期には以下のような考えが強くなりやすいことがあります。
「もうだめだ」
「自分には価値がない」
一方、調子が上がっているときには、以下の考えに引っぱられることがあります。
「今なら何でもできる」
「休まなくても大丈夫だ」
双極症は、こうした相反する考えが浮かんできます
そして双極症を抱える当事者の方は、どうしてもその両極端な考えに振り回され、ツラい思いを経験することになります。
そのためこうした考えを、そのまま現実そのものとして受け取るのではなく…
「今、自分はこう感じているな」
「少し極端になっているかもしれない」
…と見直せることは、とても大切です。
心理カウンセリングでは、この「考えに巻き込まれにくくなる感覚」を育てることで、実際の安定につながるように支援することになります。
1-5.自尊感情の回復は、再発予防にも日常生活にも関わる
研究では、自尊感情も重要な候補として挙がっていました。
双極症の方の中には、気分の波そのものよりも、「また不安定になった」「うまく生活できない」「周囲に迷惑をかけている」と自分を責めることで苦しくなる方が少なくありません。
自尊感情というと、「自信満々になること」のように誤解されやすいのですが、そうではありません。
ここで大切なのは、不調があっても、自分の価値まで全部否定しない状態を指します。
少し調子を崩したときに「自分は何もできない人間だ」と考えるのではなく、「今は負担が大きい時期なんだ」と受け止められるだけでも、立て直しやすさは変わってきます。
心理支援では、この自己否定の強さをやわらげ、自分をより現実的に見られるようになることで、症状の安定化や改善を支援することになります。
1-6.前向きな態度や心の回復感も、変化の一部の可能性も
研究では、前向きな非言語的ふるまいや心的外傷後の成長も候補として挙がっていました。
これをシンプルに言い換えると、表情、姿勢、声の調子、人との関わり方などに前向きな変化が見られることや、つらい体験を経たあとに、自分なりの意味づけや成長感が生まれることです。
もちろん、これは「つらい経験は良いことだ」という意味ではありません。
そうではなく、苦しい時期を通ってきた人が…
「自分の限界に気づけた」
「無理をしすぎる傾向がわかった」
「人に助けを求める大切さがわかった」
というように感じられることが、結果的に安定につながる可能性がある、ということです。
1-7.では心理カウンセリングでは何を大切にしたいのか?
双極症のカウンセリングでは、ただつらさに共感するだけではなく、何が不安定さにつながりやすいのか、そして何が安定の助けになるのかを、一緒に具体化していくことを重視します。
例えば…
どんなときに無理をしやすいのか
どんな考えに引っぱられやすいのか
誰にどう助けを求めるとよいのか
自分を責めやすい場面はどこか
再発の前触れは何か
…という点を整理していくことで、支援は「ただ話す場」ではなく、「生活を安定させるための実践的な場」になっていきます。
まとめ
Serbetciら(2024)の系統的文献レビューは、双極症への心理療法について、「何が効いているのか」「なぜ変化が起きるのか」を調べた重要な研究です。
研究では、服薬の継続、考えへの対処感、前向きなふるまい、自尊感情、心的外傷後の成長、人からの支えなどが、変化に関わる可能性を示しました。
けれども、現時点では結果については、さらなる研究の余地があります。
しかし、この研究には大きな意味があります。
双極症の支援を、「どの治療名がいいか」だけで見るのではなく、その人にとって何が実際に支えになっているのかという視点に近づけてくれるからです。
心理カウンセラーとしては、この研究論文を読むと、研究の限界を理解しつつも、服薬、生活リズム、自己理解、支援関係、自尊感情といった要素を丁寧に見ながら、その方に合う支え方を一緒に探していくことが大切だと感じました。
双極症は確かにしんどいものですが、しかし乗り越えられないものではありません。
必要な支援を受け続けながら、改善を目指していってくださいね。
よくある質問
Q1. 双極症に心理療法は本当に意味がありますか?
はい、意味はあります。
このレビュー自体は「効くかどうか」より「何が効いているのか」を調べたものですが、著者らは、双極症に対する心理的介入の有効性自体はすでにある程度確立している、という前提から出発しています。今回の焦点は、その中身と仕組みでした。
Q2. この研究で、特に大事そうだったものは何ですか?
現時点では、服薬の継続、人からの支え、考えへの対処感、自尊感情などが候補として挙がっています。
Q3. 服薬が心理療法の中で大事だと言われるのはなぜですか?
このレビューでは、変化の仕組みとして複数回検討されていたのが服薬の継続でした。
双極症では、薬を安定して続けることが再発予防や症状の安定に関わるため、心理療法の中でそこを支えることが大きな意味を持つ可能性があります。
Q4. 「人からの支え」が有効な要素というのは、どういう意味ですか?
論文では、有効な要素として人からの支えに予備的な支持がありました。
これは、支援者との関係、孤立の軽減、理解される感覚などが、回復や安定に関わる可能性を示しています。
ただし、どの形の支えがどの人にどう効くのかは、まだ今後の研究が必要です。
Q5. カウンセリングでは何を相談すると役立ちやすいですか?
双極症では、気分の波そのものだけでなく、再発の前触れ、生活リズム、服薬の揺らぎ、自己否定、人間関係、無理をしやすいパターンなどを相談できると役立ちやすくなります。
参考論文
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こころのケア心理カウンセリングRoom
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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