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自閉症スペクトラム症(アスペルガー障害)とは何か?~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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自閉スペクトラム症は「欠けたもの」ではない

自閉スペクトラム症は「欠けたもの」ではない

2026/04/24

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

自閉スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害・アスペルガー障害)について調べると、「社会性の障害」「コミュニケーションの欠陥」「こだわりの問題」といった説明に多く出会います。

 

そして、実際に上記の困りごとがあり、支援が必要な場面があるのは事実です。

 

しかし自閉スペクトラム症を「直すべき欠陥」としてだけ見ると、本人の強み、環境との相性、そして本人が大切にしている生き方を見失いやすくなります。

 

つまり、自閉スペクトラム症を「異常だから矯正する」という一方向の見方から離れ、本人の尊厳、環境調整、本人の声、そして多様な生き方を中心に置いて研究や支援を組み立て直す必要があるんですね。

 

そこで今回のブログは研究論文を参考に、自閉症スペクトラムとの向き合い方についてシェアしたいと思います。

 

※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものでも効果を保証するものでもありません。

※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。

 

1.自閉スペクトラム症を「直す対象」だけで見ないために

 

 

自閉スペクトラム症を理解するときに大切なのは、「困りごとがある」という事実と、「その人を欠点だけで定義しない」という視点の両方を持つことです。

 

近年は、神経多様性という考え方から、自閉スペクトラム症を「正常から外れたもの」としてだけではなく、人の自然な多様性の一つとして捉え直そうとする流れが強まっています。

 

1-1.自閉症スペクトラムに対する視点

 

これまでの見方では、自閉スペクトラム症は「正常からの逸脱」や「欠けているもの」として理解されやすい傾向がありました。

 

そのため、支援や研究も「どうすれば普通に近づけるか」という方向に引っぱられやすい傾向がありました。


しかし、今回参考にした論文では、その見方だけでは本人の苦しさや強み、そして本当に必要な支援を十分に捉えきれないと指摘しています。

 

1-2.誤解されやすいこと1:自閉スペクトラム症は「欠点の集まり」ではない

 

一般には、自閉スペクトラム症というと、苦手さや困りごとばかりが注目されやすいです。

 

もちろん、対人関係、感覚の過敏さ、生活のしづらさなど、実際に支援が必要なことは少なくありません。


ただ、それだけで当事者の方を見てしまうと、本来持っている力が見えにくくなります。

 

例えば、細かいことによく気づける、特定の分野に深く集中できる、独自の視点を持ちやすい、物事を丁寧に見られる、といった特徴は、場面によっては大きな強みになります。


そのため、最初から自閉症スペクトラム症を「問題」としてだけ見てしまうと、その人の資源まで「欠点の裏返し」として扱われやすくなります。

 

心理カウンセリングや周囲の当事者の関わり方でも、この点はとても大切です。

 

困りごとを支援することは必要ですが、それと同時に、「何が難しいか」だけでなく「どんな力を持っているか」も見ていくことが、その人の生きやすさにつながります。

 

1-3.誤解されやすいこと2:しんどさは本人の中だけにあるとは限らない

 

自閉スペクトラム症の困りごとは、本人の特性そのものだけで起きているとは限りません。


実際には、本人と環境のかみ合わせが大きく影響しています。

 

例えば、以下のようなものは当事者の方の特性と言うよりも環境が当事者の方に与える影響として考えられますよね。


音や光の刺激が強すぎる


曖昧な説明が多い


暗黙のルールを察することが求められる


周囲が特性を誤解している

 

逆に言えば、環境が変わることで困りごとが大きく軽くなることもあります。


静かな場所で過ごせる、説明が具体的である、見通しが立てやすい、特性を理解してもらえるという条件がそろうだけでも、その方の力の出方はかなり変わります。

 

この視点は支援において非常に役立ちます。

 

ご本人が「自分がダメだから苦しい」と思っていても、実際には「環境が合っていないから苦しい」ことがあります。


支援は本人を変えることだけではなく、環境との相性を整えることでもあるのです。

 

1-4.誤解されやすいこと3:本人の気持ちより周囲の見方のほうが正しいわけではない

 

これは本当に重要です。

 

自閉スペクトラム症については、これまで本人の声よりも、親、教師、支援者、研究者など周囲の見方が優先されやすい傾向がありました。

 

つまり、周りの方が当事者に対して、その特性を「欠点」として考え、そしてそれに対してある種の「矯正を行う」という構造になりがちでした。


もちろん周囲の観察も大切ですが、本人が何に困り、何を望み、何を大事にしたいのかが抜け落ちると、支援はずれやすくなります。

 

例えば、周囲は「もっと社交的になったほうがよい」と思っていても、本人にとって本当に苦しいのは対人そのものではなく、感覚刺激の強さや、曖昧な会話の負担かもしれません。


また、「就職して自立すること」が成功の形と見なされやすくても、本人にとっては安心して暮らせることや、理解のある人間関係のほうが重要な場合もあります。

 

そのため、これからの理解や支援では、本人を抜きにして「何がよいか」を決めないことが大切です。

 

1-5.「神経多様性」という視点とは?

 

神経多様性とは、人の神経発達には自然な多様性があるという考え方です。


これは、「典型的な発達だけが正しい」「そこから外れるものは劣っている」という見方をとりません。

 

ただ、こう言うと「神経多様性というのは、困りごとを『なかったこと・存在しないもの』にしていなか?」という誤解を招くかもしれません。


けれど、そうではありません。


神経多様性は、「支援は不要」と言っているのではなく、支援が必要であることと、その人の尊厳を守ることは両立すると考えます。

 

つまり、苦しさや不自由さにはきちんと支援を行いながらも、その人を「欠けた存在」として扱わないということです。


この視点は、自己否定を減らし、より現実的で温かい支援につながります。

 

1-6.誤解されやすいこと4:「よい人生」は「普通に近づくこと」だけでは決まらない

 

自閉スペクトラム症のある方の生活の質を考えるとき、つい「仕事が上手く行っているか」「一人で生活しているか」「一般的な人間関係を築けているか」といった基準で見てしまいがちです。


けれど、それだけでは十分ではありません。

 

本人にとっての「よい人生」とは…


自分に合う環境で過ごせること


感覚の違いを理解してもらえること


無理をしすぎずに働けること


安心できる人間関係があること


自分の特性を否定せずに生きられること


…といった要素にも大きく左右されます。

 

そのため「普通に見えること」を目標にしすぎると、かえって自己否定が強くなることがあります。


一方で、自分に合う生き方を見つけていくと、生活の質は大きく変わります。


大切なのは、「普通に近づくこと」そのものではなく、その人にとって無理の少ない、納得できる生き方をつくることです。

 

まとめ

 

自閉スペクトラム症との向き合い方で大切なのは「欠点」だけで見るのではなく、その人の特性、環境、関係性、本人の価値観を含めて理解する必要があるということです。

 

自閉スペクトラム症は、困りごとを伴うことがあります。

 

だから支援は大切です。


しかし支援とは「普通に矯正すること」を目的とするものでは決してありません。


その人の強みを見つけること、環境を整えること、本人の声を大切にすること、そしてその人なりのよい人生を一緒に考えることも、同じくらい重要です。

 

つまり自閉スペクトラム症のある方を「問題のある人」としてではなく、理解されることで生きやすくなりうる人として見ることで、当事者の方にとって適切な接し方が出来るようになっていきます。

 

よくある質問


Q1. 神経多様性とは何ですか?

 

神経多様性とは、人の神経発達には自然な多様性があるという考え方です。

 

この観点からすると、自閉スペクトラム症を「正常からの逸脱」だけでなく、多様なあり方の一つとして捉えます。

 

つまり、典型的な神経発達が他より優れているとは限らず、すべての人が尊厳と尊重を受けるべきという視点です。

 

Q2. 神経多様性の考え方は「自閉スペクトラム症は障害ではない」と言っているのですか?

 

今回参考にした研究論文では、神経多様性の視点は自閉スペクトラム症の生物学的な側面を否定していないと明記されています。

 

そのうえで、困難の一部は環境や社会の側にもあるため、本人を直すことだけに焦点を当てるのは不十分だと示しています。

 

Q3. 神経多様性は「支援が少なくてよい人」のための考え方ですか?

 

いいえ。

 

論文では、この立場は支援ニーズが大きい人も含めたすべての自閉スペクトラム症の人を含むと明記されています。

 

価値や尊厳は、社会的にどれだけ貢献できるかとは切り離して考えるべきだ、とされています。

 

Q6.当事者の方に対する接し方や支援においては、この考え方をどう活かせますか?

 

カウンセリングや周囲の方の当事者支援では、「どこが欠けているか」という観点だけで見ないことが大切です。

 

どんな環境だと苦しいのか, どんな配慮があると力を発揮しやすいのか, 本人がどんな生き方を望んでいるのかを一緒に整理することが大切になります。

 

参考論文

Pellicano, E., & den Houting, J. (2022). Annual Research Review: Shifting from “normal science”

 

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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