愛着の傷つきは大人になってどう現れるのか~未解決状態と対人関係の関係~
2026/05/10
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、
愛着障害がある場合、対人関係でとてもツラい状況に置かれがちになります。
そして愛着障害は主に対人関係での困難さとして表れることが特徴です。
人と親しくなりたい気持ちはあるのに、いざ相手が近づいてくると怖くなってしまうという状態が、まさにその典型例です
また、違ったパターンとして本当は支えてほしい、わかってほしいと思っているにもかかわらず、相手の優しさを素直に受け取れず、疑ったり身構えたりしてしまうこともあります。
そして、大切な話になると、急に頭が真っ白になったり、言葉がうまく出てこなくなったりして、話がまとまらなくなることも珍しくありません。
こうした体験があると当事者の方は自分を責めがちになってしまいます。
しかし、愛着研究の視点から見ると、そこには無秩序愛着や未解決状態というテーマが関係していることがあります。
無秩序愛着とは、安心を求める気持ちと恐れが同時に動き、人との関係の中で心や行動がまとまりにくくなる状態です。
また未解決状態とは、喪失や虐待などの体験が心の中で十分に整理されず、それに関わる話題や連想に触れたときに、思考や語りが一時的に崩れやすい状態です。
Jacobvitz & Reisz(2019)の研究では、大人の無秩序化を理解するうえで、恐れが中心的な役割を持つことを示しています。
そこで今回は愛着障害の無秩序愛着型と未解決状態についてシェアしたいと思います。
※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものでも効果を保証するものでもありません。
※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。
1.無秩序愛着と未解決状態とは何か~人間関係で起こる「近づきたいのに怖い」を理解するために~
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冒頭でお話しした人間関係に対するツラい思考や感情は、単なる「性格の問題」や「人間関係が苦手」という言葉だけでは説明しきれないことがあります。
愛着研究の視点では、そこに無秩序愛着や未解決状態が関係している場合が珍しくないことを示しています。
1-1.この論文は何を扱っているのか
いつものように、今回参考にしている論文の内容をサラッとご紹介しますね。
Jacobvitz & Reisz(2019)の論文は、大人の無秩序愛着と未解決状態について整理した論文です。
研究では、喪失や虐待などの体験に結びついた恐れが、心の中で十分に整理されないまま残ることで、大人になってからの人間関係や心のまとまりに影響する可能性が論じられています。
この論文で大切なのは、無秩序愛着を単なる「対人関係の不器用さ」や「感情の不安定さ」として見ないことです。
その背景には、安心を求める気持ちと、傷つくことへの恐れが同時に動くような複雑な心の働きが存在しています。
つまり、無秩序愛着や未解決状態は、人間関係の中で起きる混乱を、より丁寧に理解するための視点です。
1-2.無秩序愛着とは何か
無秩序愛着とは、愛着に関わる場面で、近づきたい気持ちと怖い気持ちが同時に動き、行動や感情がまとまりにくくなる状態です。
例えば、次のような形で現れることがあります。
「わかってほしい」と強く思う。
でも、相手が近づくと急に怖くなる。
助けてほしいのに、差し出された支えを疑ってしまう。
関係を壊したくないのに、強く責めたり、急に距離を取ったりしてしまう。
この状態では、安心を求める相手が、同時に恐れを刺激する相手にもなりやすくなります。
そのため、本人の中では「つながりたい」と「離れたい」が同時に起こります。
つまり、外から見ると矛盾した行動に見えても、内側では強い混乱が生じているということになります。
大切なのは、これを「依存的」「感情的」と単純に片づけないことです。
ご本人の中では、つながりたい気持ちと、傷つくことへの恐れがぶつかっているという苦痛に満ちた状態が生じているのです。
1-3.未解決状態とは何か
未解決状態とは、主に成人愛着面接という方法の中で捉えられる愛着研究上の概念です。
具体的には、未解決状態とは過去の喪失や傷つき体験が心の中で十分に整理されておらず、それを思い出させる出来事に触れたときに、感情や考えが急にまとまりにくくなる状態です。
ここでいう「未解決」とは、単に「まだ悲しい」「まだ思い出すとつらい」という意味だけではありません。
より正確には、過去の喪失や被害体験が、現在の心のまとまりに影響し、特定の話題に触れたときに、考えや言葉の流れが乱れやすくなる状態です。
未解決状態は、過去の出来事を直接思い出しているときだけに現れるわけではありません。
例えば、返信が遅い、相手が黙る、少し注意される、予定が変わる、距離を置かれるといった日常の小さな出来事が、過去の喪失や傷つき体験を連想させることがあります。
その結果、今の出来事以上に強い不安、怒り、混乱が起こり、言葉が出なくなったり、相手を責めたり、急に距離を取ったりしてしまうことがあります。
端的に言えば、未解決状態とは、過去の傷つきが現在の人間関係の中で急によみがえり、いま起きていることを落ち着いて受け止めにくくなる状態です。
つまり、特定の記憶や恐れに触れたときに、心の統合が一時的に崩れるような現象と理解することができるでしょう。
1-4.無秩序愛着と未解決状態はどうつながるのか
無秩序愛着と未解決状態は、同じものではありません。
ただし、深く関係しています。
無秩序愛着は、人との関係の中で起こる混乱のパターンです。
未解決状態は、その背景にある喪失や虐待などの記憶が、十分に整理されていない心の状態です。
この2つをつなぐ大切なキーワードが、恐れです。
過去に大切な人を失った経験や、親密な相手から傷つけられた経験が十分に整理されていない場合、現在の人間関係でも、似た感覚が刺激されやすくなります。
例えば…
話しをしていた相手が少し黙る。
SNSの返信が遅れる。
表情が冷たく見える。
距離を置かれたように感じる。
このような場面で、現在の出来事以上に強い恐れが動くことがあります。
この時、ご本人の中では「今の相手」と「過去の傷つき」が重なり、現在の関係を落ち着いて見にくくなるのです。
未解決状態は、直接その体験を話しているときだけに現れるわけではありません
ここはとても重要です。
未解決状態は、喪失や虐待そのものを直接話しているときだけに影響するとは限らず、過去の体験を連想させる場面でも、心のまとまりが崩れやすくなることがあります。
例えば…
別れを思わせる話題。
拒絶されたように感じる場面。
相手の沈黙。
怒った表情。
急な予定変更。
「大切にされていない」と感じるやりとり。
こうした日常の出来事が、過去の喪失や被害体験と結びつき、強い不安や怒り、混乱を引き起こすことがあります。
ご本人にとっては、「なぜこんなに反応してしまうのかわからない」と感じるかもしれません。
しかし、未解決状態の視点から見ると、現在の出来事が、過去の未整理な記憶や恐れを呼び起こしている可能性があります。
1-5.大人の人間関係にはどう影響するのか
無秩序愛着や未解決状態は、大人の人間関係にも影響することがあります。
特に恋愛や夫婦関係では、次のような形で現れることがあります。
相手に近づきたいのに、近づくと怖くなる。
愛されたいのに、相手の好意を疑う。
見捨てられたくないのに、先に相手を突き放す。
安心したいのに、安心できる関係ほど不安になる。
些細なすれ違いが、強い怒りや恐怖につながる。
これは「人を愛せない」という意味ではありません。
むしろ、つながりたい気持ちがあるからこそ、関係の中で恐れも強く刺激されるのです。
親密な関係は、本来であれば安心をもたらすものです。
しかし、過去の傷つきが未整理なまま残っていると、安心したい相手との関係の中でこそ、恐れが強く動くことが珍しくありません
1-6.親子関係にはどう影響するのか
未解決状態は、親子関係にも影響することがあります。
親自身の中に未整理な恐れが残っていると、子どもの泣き声や甘え、怒り、依存的な反応に対して、落ち着いて応答することが難しくなる場合があります。
たとえば、親自身が不安や恐れに圧倒されると、子どもの不安を受け止める余裕がなくなります。
その結果、急に怖い表情をしたり、過度に混乱した反応をしたり、近づいたり離れたりが極端になることがあります。
ここでも大切なのは、親を責めることではありません。
それよりも、親自身の未解決な恐れを理解し、支援することが、親子関係の安定にもつながるという見方が重要です。
まとめ
無秩序愛着とは、人との関係の中で「近づきたい」と「怖い」が同時に動き、心や行動がまとまりにくくなる状態です。
未解決状態とは、喪失や虐待などの体験が十分に整理されず、それに関わる話題や連想に触れたときに、思考や語りが一時的に崩れやすくなる状態です。
どちらも、本人を責めるための言葉ではありません。
むしろ、人間関係の中で起きる強い混乱や不安を理解するための視点です。
大切なのは、「なぜこんな反応をしてしまうのか」と自分を責めることではなく、どのような場面で恐れが刺激され、どのような関係の中で心がまとまりにくくなるのかを丁寧に見ていくことです。
そうすることで、人間関係の苦しさを少しずつ理解しやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 無秩序愛着とは何ですか?
無秩序愛着とは、安心を求める気持ちと恐れが同時に動き、人との関係の中で心や行動がまとまりにくくなる状態です。
大人では、親密な相手に近づきたいのに怖くなる、支えを求めたいのに相手を避けてしまう、という形で現れることがあります。
Q2. 未解決状態とは何ですか?
未解決状態とは、喪失や虐待などの体験が心の中で十分に整理されず、それに関わる話題に触れたときに、思考や語りが一時的に崩れやすくなる状態です。
精神科の診断名ではなく、成人愛着面接などで用いられる愛着研究上の概念です。
Q3. 未解決状態は日常会話にも影響しますか?
影響することは大いにあります。
直接、喪失や虐待について話していなくても、それを連想させる沈黙、拒絶、別れ、怒りの表情などによって、強い不安や混乱が引き起こされることがあります。
Q4. 無秩序愛着があると恋愛は難しくなりますか?
恋愛や夫婦関係で揺れが起こりやすく、不安定な関係の原因となることが珍しくありません。
相手に近づきたいのに怖くなる、見捨てられたくないのに先に距離を取る、相手の反応を脅威として受け取りやすい、という形です。
ただし、理解と支援によって関係の持ち方は変えていける可能性は十分になります。
Q5. 無秩序愛着や未解決状態は治せますか?
「治す」というより、まずは自分の反応の背景を理解し、どの場面で恐れが刺激されるのかを整理することが大切です。
安全な関係の中で、過去と現在を分けて捉え、感情を言葉にしていくことが、少しずつ統合を助ける可能性があります。
参考論文
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こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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