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不安症からの回復を考える~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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不安症からの回復を考える~不安をなくすより、不確実さと付き合う~

不安症からの回復を考える~不安をなくすより、不確実さと付き合う~

2026/05/12

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

不安症、具体的に言えば全般不安症では、ひとつの心配が終わっても、また別の心配が浮かんでくることがあります。


仕事、健康、家族、お金、人間関係、将来のこと…。


不安症というものは、頭では「考えすぎかもしれない」とわかっていても、「でも、もしも……」という考えが止まらなくなるものです。

 

全般不安症の支援では、単に不安を減らすだけでなく、不確実さにどう向き合うかが大切になります。

 

Wilsonら(2023)の論文では、全般不安症に対する心理療法は、不確実性への不耐性、心配、不安、抑うつを大きく減らす効果を示しました。

 

また、不確実性への不耐性を直接扱う時間が長いほど、不確実性への不耐性と心配の改善が大きくなる傾向も示されています。

 

そこで今回は不安症(全般性不安症)のトリートメントにおいて重要な不確実性への不耐性についてシェアしたいと思います。

 

※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものでも効果を保証するものでもありません。

※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。

 

1.全般不安症と「不確実さに耐えにくい心」

 

 

全般不安症では、ただ不安が強いだけでなく、「わからない状態がつらい」「確実な答えがないと安心できない」という感覚が強くなるという特徴を持っています(これは全ての不安症に共通する特徴でもあります)


このような傾向は、心理学では不確実性への不耐性と呼ばれます。

 

これは心配や心配を続けることで一時的に安心できる状態に至っても、実際には不安が長引くことがあります。


そのため、全般不安症の支援では、不安の内容そのものだけでなく、不確実さとの付き合い方を見直していくことが大切です。

 

1-1.この論文は何を調べた研究なのか

 

毎回恒例の、論文の解説をサラッと…

 

Wilson, Abbott, & Norton(2023)の論文は、全般不安症の成人を対象に、心理療法が不確実性への不耐性をどの程度改善するのかを調べた系統的レビューとメタ分析です。

 

この研究の特徴は、全般不安症の症状だけでなく、症状を維持する要因の一つとされる不確実性への不耐性に注目している点です。


つまり、「不安がどれくらい減ったか」だけでなく、「わからないことに耐えにくい心の傾向がどのように変化したか」を見ている研究です。

 

1-2.不確実性への不耐性とは何か

 

不確実性への不耐性とは、簡単に言えば、結果がはっきりしないこと、先が読めないこと、確実な答えがないことを強く苦痛に感じる傾向です。

 

たとえば、次のような形で現れます。

 

「結果が出るまで落ち着かない」


「少しでも悪い可能性があるなら、それをつい考え続けてしまう」


「大丈夫という確証がないと安心できない」


「考えておかないと、悪いことが起きたときに対処できない気がする」


「曖昧な返事や予定変更がとても苦手」

 

こうした傾向は誰しもが持っているものですが、全般性不安症の場合、それが心理的苦痛を伴う程度にまで強くなってしまいます。

 

このような状態では、不安や心配が単なる考えごとではなく、安心を得るための手段のようになります。


しかし、確実な答えを探し続けても、現実には100%の安心が得られないことも多く、その結果、心配が長引きやすくなってしまいます。

 

1-3.なぜ不確実さが不安を強めるのか

 

全般不安症では、不安や心配が「問題解決」のように感じられることが珍しくありません。

 

つまり、当事者の方は心配や不安を「問題の解決を考えている」という認識が存在しています。

 

このような感覚があると、不安や心配をやめること自体が怖くなります。


というのは、心配している間は、何か対策をしているように感じられるからです。

 

しかし実際には、心配を続けても、不確実さが完全になくなるわけではありません。


むしろ、考えれば考えるほど新しい不安材料が見つかり、「まだ安心できない」という状態が続くことがあります。

 

例えば…

 

健康不安では、少し体調が悪いだけで検索を続ける。


仕事の不安では、ミスの可能性を何度も確認する。


人間関係の不安では、相手の表情や返信の文面を繰り返し読み返す。

 

こうした行動は、一時的には安心につながるかもしれません。


しかし長期的には、「確実でないと安心できない」という感覚を強めてしまうという結果に繋がります。

 

つまり、思い悩むということが習慣になり、そして定着化してしまうのです。

 

1-4.心理療法は不確実性への不耐性を減らすのか

 

Wilsonらのメタ分析では、心理療法は不確実性への不耐性を減らす可能性が示されました。


また、不確実性への不耐性だけでなく、心配、不安、抑うつについても改善が見られました。

 

ここで重要なのは、心理療法は不安を完全になくすものではないということです。


むしろ、不確実な状況に出会ったときに、すぐに心配や確認に走るのではなく、別の対応を少しずつ選べるようにしていく支援です。

 

つまり、「不安をゼロにする」よりも、不安があっても生活を進められるようになることが現実的かつ効果的なトリートメントである、ということなんですね

 

1-5.不確実性を直接扱う認知行動療法

 

この論文では、不確実性への不耐性を直接扱う認知行動療法も検討されています。

 

不安に対する認知行動療法、つまり不確実性への不耐性に対するトリートメントは、次のような内容が含まれます。

 

心配に気づくこと。


心配が本当に役に立っているのかを見直すこと。


問題解決の方法を整理すること。


不安なイメージに向き合うこと。


再発を予防すること。


不確実さに関する考えを行動実験で確かめること。

 

例えば、次のような支援が考えられます。

 

「確実にわかるまで確認する」のではなく、確認を少し減らす。


「悪い結果を考え続ける」のではなく、今できる具体的な行動を一つ選ぶ。


「心配していれば安全」と考えるクセに気づく。


「不確実なままでも実際には対処できた経験」を増やす。

 

これは、単なる前向き思考ではありません。


不確実さをなくすのではなく、不確実さが残っていても健全に行動できるようにする支援です。

 

1-6.一般的な認知行動療法との違い

 

Wilsonらのレビューでは、不確実性への不耐性を治療全体を通して直接扱う認知行動療法は、一般的な認知行動療法よりも、治療直後の不確実性への不耐性と心配の軽減において効果が大きいとされました。

 

この結果は、臨床的にも現実的です。


不確実性への不耐性を直接扱うことは、心配の悪循環を変えるうえで有望です。


一方で、その効果を保つためには、日常生活の中で練習を続けていくことが必要になります。

 

「不確実さに強くなる」とは、短期間で完全に不安が消えることではありません。


日常の小さな不確実さに少しずつ触れながら、「わからないままでも何とかなる」「確実でなくても行動できる」という経験を積み重ねることです。

 

1-7.確実さを扱う時間が長いほど効果が大きい可能性

 

この研究では、不確実性への不耐性を直接扱う時間が長いほど、不確実性への不耐性と心配の改善が大きくなる可能性も示されました。

 

これは、全般不安症のカウンセリングを考えるうえで重要です。


心配の内容を一つひとつ解決しようとしても、次の心配がまた出てくることがあります。

 

健康の心配が落ち着いたと思ったら、仕事の心配が出てくる。


仕事の心配が落ち着いたと思ったら、人間関係の心配が出てくる。


人間関係の心配が落ち着いたと思ったら、将来の心配が出てくる。

 

このように、心配の対象だけを追いかけていると、終わりがなくなってしまうことがあります。

 

だからこそ、心配の内容だけでなく、「不確実さそのものが苦手」という土台に目を向けることが大切になってきます

 

1-8.不確実さへの支援で大切な視点

 

不確実性への不耐性に働きかける支援では、「安心できる答えを見つけること」よりも、安心できない状態に少しずつ慣れることが大切になります。

 

たとえば、次のような練習があります。

 

返信が来るまで何度もスマホを確認しない。


体調について検索し続ける時間を減らす。


仕事のミス確認を一回で終える。


予定が少し曖昧でも、その場ですべて決めようとしない。


「絶対に大丈夫」と言い切れなくても、次の行動に進む。

 

こうした練習は、最初は不安を伴います。


ですが、少しずつ経験を重ねることで、「不確実さがあっても、自分は対応できる」という感覚が育っていきます。

 

ここで大切なのは、いきなり大きな不安に飛び込むことではありません。


日常の小さな場面から、少しずつ練習していくことです。

 

1-9.心配をなくすより、心配との関係を変える

 

全般不安症で苦しむ方は、「不安や心配を完全になくしたい」と感じるものです。


それは自然な気持ちです。


というのは、不安や心配が続くと、心も体も疲れてしまうからです。

 

ただ、現実の生活には不確実なことが必ずあります。


将来のこと、人の気持ち、健康、仕事の結果、家族の問題…。


どれも100%確実に予測することはできません。

 

そのため、不安症で大切なのは、不安や心配を一切なくすことではありません。


大切なのは、心配に生活を支配されないようにすることです。

 

つまり「不安や心配が浮かんだら、必ず答えを出さなければならない」という状態から、「不安や心配は浮かんでいる。でも今できる行動を選べる」という状態に変えていくことです。

 

不安があるから何もできないのではなく、不安があっても、できることを選べ、そして健全に行動できる。


この感覚を育てることが、全般不安症の支援では大切になります。

 

よくある質問(FAQ)


Q1. 不確実性への不耐性とは何ですか?

 

不確実性への不耐性とは、結果がはっきりしないことや、先が読めないことを強く苦痛に感じる傾向です。

 

「わからないままだと落ち着かない」「確実に安心できるまで考え続けてしまう」という形で現れることがあります。

 

Q2. 全般不安症では、なぜ心配が止まらなくなるのですか?

 

全般不安症では、不確実な状況に対して「考えておかないと危険」「心配していれば備えられる」と考える傾向があります。

 

しかし、それによって不安による心配が一時的な安心の手段になり、結果として心配をやめにくくなることがあります。

 

Q3. 心理療法で不確実性への不耐性は改善しますか?

 

改善する可能性があります。

 

Wilsonら(2023)のレビューでは、全般不安症に対する心理療法が、不確実性への不耐性、心配、不安、抑うつを有意に減らすことが示されました。

 

Q4. 不確実性への不耐性には、どんな支援が役立ちますか?

 

認知行動療法では、心配の役割を見直す、確認行動を減らす、不確実な状況に少しずつ触れる、行動実験を行うなどの方法が使われます。

 

目的は、不確実さを完全になくすことではなく、不確実さが残っていても健康的な行動ができるようにしていくことです。

 

Q5. 不安を完全になくすことが目標ですか?

 

いいえ。現実の生活には不確実なことが必ずあるため、不安を完全になくすことだけを目標にするのは現実的ではありません。

 

大切なのは、不安や心配が浮かんでも、それに生活を支配されず、今できる行動を選べるようになることです。

 

参考論文

Wilson, E. J., Abbott, M. J., & Norton, A. R. (2023). The impact of psychological treatment on intolerance of uncertainty in generalized anxiety disorder: A systematic review and meta-analysis. Journal of Anxiety Disorders.

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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