アダルトチルドレンはどう回復していくのか~「自分を取り戻す」プロセス~
2026/05/16
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、
親にアルコール問題があった、あるいは機能不全に陥った家庭で育つと、子どもは安心して子どもでいることが難しくなることがあります。
親の機嫌を読む。家庭内の空気を先回りして察する、問題が起きないように気を張る、家族の中で早く大人にならざるを得ない…。
そのような環境で育った方は、大人になってからも、人間関係で緊張しやすかったり、自分の気持ちがわかりにくかったり、必要以上に責任を背負ってしまったりすることがあります。
そこで考えるべきは、当事者の方がどうアダルトチルドレンから回復するか、ということです。
アダルトチルドレンの回復は、過去を忘れることでも、親を無理に許すことでもありません。
それよりも崩れた日常の中で生き延びてきた自分を理解し、現実を受け止めながら、自分自身の人生を少しずつ取り戻していくプロセスが必要です。
Kim(2023)の研究では、アルコール使用障害の親を持つ、あるいは機能不全家族の元で育ったアダルトチルドレンの回復力は、曝露、気づき、行動、適応という4つの段階を通して発達すると示されています。
そこで今回は、アダルトチルドレンの回復についてシェアしたいと思います。
※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものでも効果を保証するものでもありません。
※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。
1.アダルトチルドレンの回復は「過去をなかったことにする」のではなく、自分の人生を取り戻していくプロセス
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アダルトチルドレンの回復とは、傷つかなかったことにすることではありません。
問題を抱える親の元で身につけた生き方を理解し、今の自分に合う形へ少しずつ変えていくことです。
その過程では、過去への気づき、自分を守る行動、そして新しい生活への適応が大切になります。
1-1.この論文は何を調べた研究なのか
いつものように論文を参考にしたブログですので、論文の内容をサラッとお伝えしますね。
Kim(2023)の論文は、問題を抱える親の元で育った成人した子ども、つまりアダルトチルドレンが、どのように回復力を育てていくのかを調べた質的研究です。
この研究の特徴は、アダルトチルドレンを「問題を抱えた人」としてだけ見ていない点です。
親の問題による影響を受けながらも、その中でどのように自分を保ち、回復力を育て、自分らしい人生へ向かっていくのかを丁寧に見ています。
1-2.アダルトチルドレンとは何か
アダルトチルドレンとは、親のアルコール問題や依存症、虐待、過干渉、情緒的な不安定さなど、安心しにくい家庭環境で育ち、大人になってもその影響を抱えている人を指して使われるものです。
親が問題を抱える家庭では、子どもは次のような経験をしやすくなります。
親の機嫌が日によって大きく変わる。
家庭内で安心できる時間が少ない。
親の問題を子どもが支えようとする。
家族の秘密を外に話せない。
自分の気持ちより、家族の状態を優先する。
こうした環境では、子どもは「自分がどう感じているか」よりも、「家の中で何が起きそうか」を読む力を発達させやすくなります。
それは生き抜くためには必要な力だったかもしれません。
しかし大人になってからは、過剰な緊張、人に頼れない、自分の感情がわからない、相手の反応を気にしすぎる、といった困りごとにつながる可能性を高めてしまいます。
1-3.回復力とは「強い人になること」ではない
レジリエンス、つまり回復力という言葉は、「どんなことにも負けない強さ」のように受け取られることがあります。
しかし、アダルトチルドレンの回復力は、頑張って強くなることではありません。
むしろ、次のような力に近いものです。
自分が傷ついてきたことに気づく。
親の問題を自分の責任にしすぎない。
自分の感情を少しずつ言葉にする。
過去の家庭環境と今の自分を分けて考える。
自分の生活を自分のものとして整えていく。
Kim(2023)の研究では、アダルトチルドレンの回復力は、一気に完成するものではなく、段階を経て育っていくものとして示されています。
具体的には、曝露、気づき、行動、適応という4つの段階です。
第1段階:曝露~崩れた日常の中で生きてきた経験~
研究で示された最初の段階は、曝露です。
つまり、家庭の問題に「曝されている」状態です。
これは、親が抱える問題による不安定な環境にさらされてきた段階と理解できます。
臨床的に言えば、子ども時代に次のような経験をしてきた方が少なくありません。
家庭の中で何が起こるかわからない。
親の態度によって家庭の空気や雰囲気が変わる。
普通の会話が突然怒りや混乱に変わる。
家族の問題を外に隠さなければならない。
自分の安心より、家族の安定を優先する。
このような環境では、子どもは「今日は大丈夫か」「親の機嫌はどうか」「自分が何とかしなければ」と考えるようになります。
これは混乱した日常の中で、自分を守るための適応でした。
ただ、この適応が長く続くと、大人になってからも緊張が抜けにくくなります。安全な場面でも身構えたり、人の表情を過剰に読んだり、自分の気持ちを後回しにしやすくなります。
第2段階:気づき~「自分の問題」だけではなかったと理解する~
次の段階は、気づきです。
これは、これまで当然だと思っていた家庭のあり方や、自分の生き方を見直し始める段階です。
アダルトチルドレンの方の中には、大人になるまで、自分の家庭がどれほど不安定だったのかに気づきにくい方がおられます
というのは、子どもにとって家庭は「最初の世界」だからです。
そのため、たとえ苦しくても、それが当たり前になってしまうんですね。
そのため気づきの段階では、次のような理解が生まれてきます。
「自分が悪かったわけではないのかもしれない」
「親の飲酒問題を、子どもの自分が背負いすぎていた」
「人の機嫌を読みすぎるのは、家庭環境の影響かもしれない」
「自分の感情がわからないのは、ずっと抑えてきたからかもしれない」
この気づきは、痛みを伴うこともあります。
というのは、過去を理解することは、同時に「本当はつらかった」と認めることでもあるからです。
しかし、この段階は回復にとって重要です。
なぜなら、自分を責めるだけの見方から、「自分はそうならざるを得ない環境で生きてきた」と理解する見方へ変わることで、回復の入り口が開けるからです。
第3段階:行動~自分を守るために動き始める~
気づきの次に大切になるのが、行動です。
これは、これまでの生き方を少しずつ変え、自分を守るための選択を始める段階です。
たとえば、次のような行動が考えられます。
親との距離を見直す。
自分の気持ちを言葉にする練習をする。
信頼できる人に相談する。
家族の問題を一人で背負いすぎない。
自分の生活リズムや安心できる時間を作る。
必要であればカウンセリングを利用する。
アダルトチルドレンの方にとって、行動を変えることは簡単ではありません。
なぜなら、長年身につけてきた「我慢する」「空気を読む」「自分を後回しにする」という生き方は、かつて自分を守ってくれた方法でもあるからです。
だからこそ、行動の変化は小さくて構いません。
いきなり大きな決断をする必要はありません。
まずは、「今日は自分の疲れを無視しない」「嫌なことを嫌だと心の中で認める」「一人で抱えず誰かに話す」といった小さな行動から始めることが大切です。
第4段階:適応~自分らしい生活を作っていく
研究で示された4つ目の段階は、適応です。
これは、過去を完全に消すという意味ではなく、過去の影響を理解しながら、今の自分に合った生活を作っていく段階です。
Kim(2023)の研究では、アダルトチルドレンの回復プロセスの中心には、「自分の日常生活を保とうとすること」がありました。
さらに、回復の中心的な意味として「日常生活の崩壊の中で現実を受け入れ、自分自身になること」が示されています。
これは、とても重要な視点です。
回復とは、過去の問題を否定することではありません。
また親の問題をなかったことにすることでもありません。
自分が生きてきた現実を見つめながら、それでも今の自分の人生を作っていくことです。
適応の段階では、次のような変化が起こることがあります。
親の問題と自分の人生を分けて考えられる。
自分の感情や欲求を以前より大切にできる。
人間関係で過剰に背負いすぎない。
助けを求めることを弱さではなく選択肢として見られる。
自分に合う距離感や生活の形を作れる。
この段階は、終着点というより、何度も行きつ戻りながらを繰り返し深めていくプロセスです。
実際、研究でも適応段階は終わりではなく、人生の危機の中で繰り返されるものとして示されています。
1-4.アダルトチルドレンの回復で大切なこと
アダルトチルドレンの回復では、「早く前向きになる」ことよりも、自分に何が起きてきたのかを丁寧に理解することが大切です。
親を責め続けることが目的ではありません。
しかし、親をかばい続けて自分の傷つきを否定する必要もありません。
大切なのは、次のような視点です。
自分が背負わなくてよかった責任に気づく。
家族の問題と自分の価値を分ける。
過去の適応を責めず、今に合う形へ変える。
安心できる関係を少しずつ作る。
自分の人生を自分のものとして取り戻す。
これは簡単な道のりではありません。
けれど、回復は「完全に傷つかなくなること」ではなく、「傷ついてきた自分を理解しながら、自分らしい生活を作っていくこと」と考えると、効果的なケアにつながります。
まとめ
Kim(2023)の研究は、問題のある親の元で育ったアダルトチルドレンどもが、どのように回復力を育てていくのかを質的に明らかにした研究です。
研究では、回復力の発達には、曝露、気づき、行動、適応という4つの段階があると示されました。
中心にあるのは、「日常生活の崩壊の中で現実を受け入れ、自分自身になること」、そして「自分の日常生活を保とうとすること」です。
アダルトチルドレンの回復は、過去をなかったことにすることではありません。
親の問題を自分の責任にしすぎず、過去の中で身につけた生き方を理解し、今の自分に合った形へ変えていくことです。
そのプロセスは、ゆっくりで構いません。
まずは自分を責めるところから、自分を理解するところへ進めましょう。
そして家族の問題に飲み込まれるところから、自分の人生を取り戻すところへ進めましょう。
その一歩一歩が、回復力を育てる大切な過程になります。
よくある質問
Q1. アダルトチルドレンとは何ですか?
アダルトチルドレンとは、親のアルコール問題、依存症、虐待、不安定な家庭環境などの影響を受け、大人になってからも人間関係や自己理解に困難を抱える方の事です。
Q2. 親の抱える問題は、大人になってからも影響しますか?
影響することがあります。
例えば、人の機嫌を読みすぎる、自分の感情がわかりにくい、必要以上に責任を背負う、人に頼ることが苦手になるなどの形で現れることがあります。
Q3. アダルトチルドレンの回復とは何ですか?
アダルトチルドレンの回復とは、過去を忘れることではなく、親の問題と自分の人生を分け、自分らしい生活や人間関係を少しずつ作っていくことです。
Q4. アダルトチルドレンのレジリエンスとは何ですか?
レジリエンスとは、困難な経験を抱えながらも、自分を理解し、支えを得て、生活を立て直していくチカラです。
Kim(2023)の研究では、アダルトチルドレンの回復力は、曝露、気づき、行動、適応という段階を通して育つと示されています。
Q5. アダルトチルドレンはカウンセリングで相談できますか?
はい、相談できます。
親の抱える問題による影響、人間関係のつらさ、自己否定、過剰な責任感、感情のわかりにくさなどは、カウンセリングで扱える大切なテーマです。
参考論文
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こころのケア心理カウンセリングRoom
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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