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うつ病の症状に対する理解とケア~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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うつ病は「症状の合計点」だけでは見えない~症状ネットワーク研究から考えるケアとは~

うつ病は「症状の合計点」だけでは見えない~症状ネットワーク研究から考えるケアとは~

2026/05/14

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

うつ病は、ひとつの症状だけで成り立っているわけではありません。


気分の落ち込み、疲労感、楽しめなさ、集中困難、自責感などが互いに影響し合い、悪循環を作ることがあります。


そのため、うつ病を理解するときには、「どの症状が強いか」だけでなく、症状同士がどのようにつながっているかを見ることが大切です。

 

そこで今回は、うつ病の症状を理解するために、その結びつきについてシェアしたいと思います。

 

※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものでも効果を保証するものでもありません。

※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。

 

1.うつ病を「症状のつながり」として見るセルフケアの視点

 

 

うつ病というと、「気分が落ち込む病気」と考えられやすいかもしれません。


しかし実際には、疲労感、楽しめなさ、集中しにくさ、睡眠の乱れ、自責感など、さまざまな症状が関わっています。

 

そして、それらの症状はバラバラに存在しているのではなく、互いに影響し合っていることがあります。


例えば、疲労感が強くなると活動量が減り、活動量が減ると楽しめる経験が少なくなり、その結果として気分の落ち込みがさらに強まる…という悪循環が生じることも多々あります。

 

このように、うつ病を理解するときには、症状を一つずつ見るだけでなく、症状どうしがどのようにつながっているのかを見ることが大切です。

 

1-1.この論文は何を調べた研究なのか

 

いつものように、論文の内容をサラッと…

 

Malgaroli, Calderon, & Bonanno(2021)の論文は、うつ病の症状ネットワークに関する研究をまとめた系統的レビューです。

 

この研究の特徴は、うつ病を「症状の合計点」としてだけではなく、症状どうしのつながりとして理解しようとしている点です。

 

例えば…


疲労感が強い

↓ ↓ ↓
動くのがつらくなる

↓ ↓ ↓
活動量が減る

↓ ↓ ↓
楽しめる体験が減る

↓ ↓ ↓
さらに気分が落ち込む


…というように、症状が互いに影響し合う可能性を見ています。

 

1-2.うつ病の症状に対する「ネットワーク分析」とは何か

 

ネットワーク分析とは、簡単に言えば、症状をバラバラに見るのではなく、症状同士のつながりを見る方法です。

 

うつ病では、次のようなつながりが起こることがあります。

 

疲労感が強くなる。

↓ ↓ ↓
すると、動くのがつらくなる。

↓ ↓ ↓
動けないことで、達成感が減る。

↓ ↓ ↓
楽しめる体験も少なくなる。

↓ ↓ ↓
その結果、気分の落ち込みが強くなる。

 

このように、一つの症状が別の症状を強めることで、うつ病の状態が維持されることがあります。


ネットワーク分析は、こうした症状同士の関係を見える形にしようとする方法です。

 

1-3.うつ病を「ひとつの塊」として見すぎない

 

うつ病は診断名としては一つでも、実際の症状の出方は人によってかなり違います。

 

ある方は、気分の落ち込みや自責感が強いかもしれません。


また別の方は、疲労感や集中困難が前面に出るかもしれません。


さらに別の方は、睡眠の問題や楽しめなさが一番つらいかもしれません。

 

このレビューでも、うつ病の測定や診断には大きな多様性があり、症状をどう測るかによって結果が変わりうることが指摘されています。


つまり、「うつ病だからこう」と一括りにするよりも、自分の中でどの症状が強く、どの症状がどのようにつながっているのかを見ていくことが大切です。

 

1-4.中心になりやすい症状~疲労感と抑うつ気分~

 

このレビューで特に重要だったのは、疲労感と抑うつ気分が比較的中心的な症状として示された点です。

 

うつ病というと、どうしても「気分の落ち込み」に注目しがちです。


しかし実際には、疲労感が生活を大きく止めていることも少なくありません。

 

たとえば、次のような状態です。

 

「朝から体が重い」


「少し動いただけで疲れる」


「考えるだけで消耗する」


「休んでも回復した感じがない」

 

こうした疲労感が強いと、活動量が下がり、人と会う機会も減り、楽しい体験も少なくなります。


すると、さらに気分が落ち込みやすくなります。

 

その疲労感を「弱さ」として考えるべきではありません。


疲労感はうつ病の症状ネットワークの中で、重要な位置を占める可能性があるのです。

 

1-4.抑うつ気分と楽しめなさは結びつきやすい

 

レビューでは、抑うつ気分と興味・喜びの低下の結びつきが、もっとも頻繁に見られた症状間のつながりとして示されています。

 

これは、日常の感覚としても理解しやすいと思います。


気分が落ち込むと、以前は楽しめていたことに手が伸びなくなります。


そして、楽しめる体験が減ると、ますます気分が落ち込みます。

 

例えば…


「友人と会う気になれない」


「趣味をしても楽しくない」


「何をしても意味がない感じがする」


…という状態が続くと、生活の中の喜びや達成感が減っていきます。

 

その結果、うつ病の悪循環が強まりやすくなります。


この視点から見ると、うつ病のセルフケアでは、気分だけを何とかしようとするのではなく、楽しめなさや活動の減少にも目を向けることが重要になります。

 

1-5.症状は大きく2つのまとまりに見えやすい

 

レビューでは、症状のつながりを整理すると、大きく2つのまとまりが見えやすいことも示されています。

 

一つは、感情や自己評価に近いまとまりです。


ここには、抑うつ気分、無価値感、興味や喜びの低下、最悪の選択肢を考えてしまう、などが含まれます。

 

もう一つは、身体面や認知面に近いまとまりです。


ここには、疲労感、集中困難、精神運動の変化、睡眠や体重の変化などが含まれます。

 

この整理は、うつ病を理解するうえで役立ちます。


うつ病の苦しさは、気分だけではありません。

 

体が動かない。


頭が回らない。


集中できない。


眠れない。


食欲が変わる。

 

こうした身体面・認知面の症状も、生活に大きな影響を与えます。


一方で、「自分には価値がない」「何も楽しくない」「消えてしまいたい」といった感情面・自己評価の苦しさも非常に大きな問題です。

 

この2つのまとまりを分けて見ることで、自分が今どこで一番つらくなっているのかを整理しやすくなります。

 

1-6.セルフケアにどう活かすか

 

この研究から得られるセルフケアの視点は、うつ病を一人ひとり異なる症状のつながりとして理解することです。

 

例えば、ある方は労感が中心になって活動量が下がり、その結果として気分が落ち込んでいるかもしれません。


別の方は、無価値感が強く、人との関わりを避け、そのことで孤立感が深まっているかもしれません。


さらに別の方は、睡眠の乱れから集中力が下がり、仕事の失敗感が増え、さらに自己否定が強まっているかもしれません。

 

このように見ていくと、セルフケアの方向性も具体的になります。

 

つまり「気分を上げよう」とだけ考えるのではなく…


「疲労感をどう扱うか」


「楽しめる活動をどう少しずつ戻すか」


「自責感にどう距離を取るか」


「睡眠や生活リズムをどう整えるか」


「集中できない状態で、仕事や家事をどう調整するか」


…というように、具体的に考えやすくなります。

 

セルフケアでは、いきなり大きな変化を目指す必要はありません。


まずは、自分の症状のつながりを観察することから始めるだけでも意味があります。

 

1-7.うつ病を症状のつらなりとして見ることの大切さ

 

うつ病の評価では、質問紙や診断基準が用いられることもあり、そしてそれはケアにおいて役立ちます。


確かに、症状の強さを把握するためには、点数化することも大切です。

 

しかし、点数だけでは見えないものがあります。


同じ点数でも、疲労感が中心の人と、無価値感が中心の人では、必要なセルフケアが異なります。


例えば、同じ「中等度のうつ」でも、睡眠の問題が強い人と、楽しめなさが強い人では、日常生活で困っていることが違います。

 

だからこそ、うつ病を考えるときには…


どの症状が強いのか


どの症状が別の症状を強めているのか


どこから悪循環を弱められそうか


…と言う点を見ていくことが大切です。

 

例えば、睡眠の乱れが全体を悪化させているなら、まず睡眠リズムを整える工夫が役立つかもしれません。


また疲労感が強すぎるなら、活動量を増やす前に、休息の取り方を見直す必要があるかもしれません。


楽しめなさが中心なら、負担の少ない小さな活動から再開することが手がかりになるかもしれません。

 

まとめ

 

Malgaroli, Calderon, & Bonanno(2021)のレビューは、うつ病を「症状の合計点」ではなく、症状どうしのつながりとして見る重要性を示した研究です。


レビューでは、疲労感と抑うつ気分が比較的中心的な症状として示され、抑うつ気分と興味・喜びの低下の結びつきが頻繁に見られました。

 

うつ病は、人によって症状の出方が異なります。


だからこそ、「うつ病だからこう」と一括りにせず、自分にとって何が一番つらいのか、どの症状がどの症状を強めているのかを丁寧に見ることが大切です。

 

症状を一つひとつ丁寧に見ていくことは、回復への具体的な道筋を見つける手がかりになります。

 

よくある質問(FAQ)

 

Q1. うつ病のネットワーク分析とは何ですか?

 

うつ病のネットワーク分析とは、気分の落ち込み、疲労感、楽しめなさ、集中困難などの症状が、どのようにつながっているかを見る方法です。

 

症状をバラバラに見るのではなく、互いに影響し合う関係として理解します。

 

Q2. うつ病で中心になりやすい症状は何ですか?

 

Malgaroliら(2021)のレビューでは、疲労感と抑うつ気分が比較的中心的な症状として示されました。

 

ただし、すべての方にとって同じ症状が中心になるわけではありません。

 

人によって、楽しめなさ、自責感、睡眠の問題などが大きな負担になることもあります。

 

Q3. うつ病で疲労感が強いのはよくあることですか?

 

はい、うつ病では疲労感が強く出ることがあります。

 

疲労感があると、活動量が減り、楽しめる体験も減りやすくなります。その結果、気分の落ち込みがさらに強まることがあります。

 

Q4. うつ病は点数だけで判断できますか?

 

点数は症状の強さを把握するうえで役立ちますが、それだけでは十分ではありません。

 

同じ点数でも、疲労感が中心の人、無価値感が中心の人、睡眠の問題が中心の人では、必要な支援が違うことがあります。

 

Q5. カウンセリングでは、この考え方をどう活かせますか?

 

カウンセリングでは、どの症状が一番つらいのか、どの症状が別の症状を強めているのかを一緒に整理します。

 

例えば、疲労感が活動低下につながっているのか、自己否定が孤立を深めているのかを見ていくことで、支援の焦点が具体的になります。

 

参考論文

Malgaroli, M., Calderon, A., & Bonanno, G. A. (2021). Networks of major depressive disorder: A systematic review. Clinical Psychology Review.

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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