疲労感とうつ気分はなぜ重なりやすいのか~うつ病の症状の「つながり」とは?~
2026/04/17
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
うつ病というと、多くの方は「気分が落ち込む病気」というイメージを持っているのではないでしょうか?
もちろんそれは間違っていませんし、気分の落ち込みは重大な症状です。
そして、うつ病を抱えている方の多くは易疲労感、つまり疲れやすさという身体的な症状のしんどさも抱えています。
しかし実際には、うつ病には、興味や喜びの低下、疲労感、眠りの問題、集中しにくさ、自分を責める気持ち、最悪の選択肢を考えるなど、さまざまな症状が含まれます。
そのため、うつ病の症状は抑うつ気分等の感情に関連するものと、疲労感に代表される身体的なものとに大別することができるといえるでしょう。
そして、それらはただ並んでいるだけではなく、お互いに影響し合っている可能性があります。
そこでこのブログでは、先述したうつ病の症状、抑うつと疲労感を中心に、それらのつながりについてみていきたいと思います。
※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものでも効果を保証するものでもありません。
※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。
1.うつ病は「ひとつの症状」ではなく、症状どうしのつながりである
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先述しましたように、うつ病というと、「気分が落ち込む病気」というイメージを持つ方が多いと思います。
もちろんそれは大切な特徴ですが実際には、うつ病のつらさは気分の落ち込みだけでできているわけではありません。
疲れやすさ、集中しにくさ、楽しめなさ、自分を責める気持ち、眠りの乱れなど、いくつもの症状が重なり合って苦しさを作っていることがあります。
そこで今回の内容では、うつ病を「症状の合計点」ではなく、症状どうしがどうつながっているかという視点から見る考え方とその必要性についてシェアしたいと思います。
1-1.この研究は何を見ようとしたのか
今回参考にした研究は、うつ病の症状がどのようにつながりやすいのかを調べた、複数の研究をまとめたものです。
ここでのポイントは、「うつ病というひとつの病気があって、そこから全部の症状が一斉に出ている」とだけ考えるのではなく、症状どうしが影響し合っている可能性に注目していることです。
例えば、疲労感が強くなることで集中しにくくなり、集中できないことで仕事や家事がうまく進まず、そのことがさらに気分の落ち込みや自信の低下につながる、という流れは十分ありえます。
このように、症状をバラバラに見るのではなく、つながりとして見ると、うつ病の苦しさは少し立体的に理解しやすくなります。
1-2.いちばん中心に現れやすかったのは「疲労感」と「抑うつ気分」
このレビューで特に注目されたのは、疲労感と抑うつ気分でした。
複数の研究を通してみると、この二つは比較的中心に現れやすい症状として見つかっていました。
これは、一般の方にとっても実感しやすいのではないでしょうか
うつ病というと「気分が落ち込むこと」がまず思い浮かびますが、実際にはそれと同じくらい、あるいはそれ以上に、「疲れて動けない」ことが生活を止めてしまうことがあります。
例えば…
朝から体が重い。
少し動いただけで消耗する。
考えるためのエネルギーが湧かない。
何かを始める前から、すでにぐったりしている。
こうした疲労感が続くと、外出や仕事、家事、人とのやり取りまで負担になりやすくなります。
そして、できないことが増えると、気分はさらに落ち込みやすくなるという悪循環が生じてしまいます。
つまり、疲労感は単なる「体のだるさ」ではなく、うつ病の苦しさを支える重要な症状のひとつとして見たほうがよいといえるでしょう。
1-3.うつ病の症状は、大きく2つのまとまりに分かれて見えやすい
この研究では、うつ病の症状には大きく分けて2つのまとまりがあるように見えると整理されていました。
ひとつは、以下のような感情や自己評価に近いまとまりです。
抑うつ気分
無価値感
興味や喜びの低下
最悪の選択肢を考える
もうひとつは、身体面や認知面に近いまとまりです。
疲労感
集中困難
動きが遅くなる、あるいは落ち着かない感じ
睡眠の問題
体重の変化
この見方は、うつ病の理解のためには非常に有益です。
というのは、うつ病になると「私はただ気分が落ち込んでいるだけ」というものではないことを明確に示しているからです。
またうつ病は実際には、感情面が強く出るタイプのつらさと、身体や頭の働きのしんどさが強く出るタイプのつらさがあり、その出方には個人差があります。
例えば「何も楽しくない」「自分には価値がない」という苦しさが前に出る方もいます。
一方で、「疲れて頭が回らない」「考えがまとまらない」「何も進まない」というしんどさが前景に出る方もいます。
この違いを理解するだけでも、必要な支援はかなり変わってきます。
逆に言えば、こうした違いに着目しなければ有益な支援には結びつかないんですね。
1-4.特に結びつきが強く見られた症状の組み合わせ
この研究で、特に強くつながりやすかったのは、抑うつ気分と興味や喜びの低下でした。
つまり、気分が落ち込むことと、「何をしても楽しくない」「好きだったことにも手が伸びない」という状態は、かなり結びつきやすいということです。
また、抑うつ気分は無価値感や最悪の選択肢を考えてしまうという問題とも結びつきやすく、疲労感は集中困難や動きの変化と結びつきやすい傾向がありました。
さらに、疲労感と興味や喜びの低下もつながりやすく、感情面の苦しさと身体面の苦しさをつなぐ橋のような役割をしている可能性がありました。
これは日常感覚に置き換えると次のようになります。
気分が落ち込むと、楽しいことに向かうチカラがなくなる。
楽しいことが減ると、ますます気分が落ち込む。
疲れて動けないと、何もできなかった感覚が増え、達成感も減り、さらに気持ちが沈みやすくなる。
こうした悪循環が、症状どうしのつながりとして見えていると考えるとイメージしやすいと思います。
1-5.うつ病を理解するときに大切なこと
この研究での大切な点は、うつ病を「ただ気分が落ち込む病気」と一括りにしないことです。
実際には、疲労感、集中困難、楽しめなさ、無価値感、睡眠の乱れなどがつながり合いながら、その人のしんどさを形づくっていることがあります。
だからこそ、支援では「うつ病だからこう」と決めつけるのではなく…
今その人にとって何がいちばん苦しいのか
どの症状が他の症状を引っぱっていそうか
どこから支えると少し動きやすくなるのか
…という点を丁寧に見ていくことが大切です。
うつ病の理解は、診断名だけで終わるものではありません。
症状のつながり方を見ることで、その人の苦しさはより具体的に理解しやすくなります。
その視点は、支援の方向を考えるうえでも、大きな助けになります。
2.セルフケアのために大切にしたい視点
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セルフケアのうえで大切なのは、自分のうつ状態をひとまとめにしすぎないことです。
つまり…
「今の自分は疲労感が強いのか」
「自分を責める気持ちが強いのか」
「何も楽しめないことがつらいのか」
「集中できなさが生活を止めているのか」
…と少し細かく見ていくことで、セルフケアはずっと具体的かつ効果的になります。
うつ状態のつらさは、人によって出方が違います。
だからこそ、「こうすればよくなるはず」と一つの方法に当てはめるよりも、今の自分にとって何がいちばん負担になっているのかを見つけることが大切です。
また、セルフケアでは疲労感を軽く見ないことも重要です。
うつ状態というと、どうしても「気分の落ち込み」に意識が向きやすいのですが、実際には、疲労感が生活全体を止めてしまっていることがあります。
「何もする気が出ない」
「体が動かない」
「少しのことでもすぐ消耗してしまう」
…と感じるとき、それはうつ病の身体症状が出ている可能性があると考える必要があります。
そしてそれは、今の心身の状態の中で、とても重要なサインのひとつかもしれません。
そのためセルフケアでは、気持ちだけを何とかしようとするのではなく…
どんな疲れが出ているのか
どの時間帯に特につらいのか
何をすると消耗しやすいのか
少しでも負担を減らせる工夫はあるか
を丁寧に見ていくことが役立ちます。
自分の状態を細かく見ることは、自分を支えるための手がかりを見つけることです。
うつ状態のセルフケアでは、「何とか頑張る」のではなく、「今の自分に何が起きているのかを具体的に知る」ことが、回復への大切な一歩になります。
まとめ
うつ病は、ただ「気分が落ち込む病気」とひとことで言い切れるものではありません。
疲れやすさ、楽しめなさ、考えにくさ、自分を責める気持ちなど、いくつもの症状が重なり合いながら、その方の毎日を苦しくしていることがあります。
今回ご紹介した研究は、そうしたうつ病の症状を「ひとつのかたまり」ではなく、互いにつながり合うものとして見る視点の重要性が示されています。
この見方を知ることで、「自分はなぜこんなにつらいのだろう」と感じている方も、少し違った形で自分の状態を理解しやすくなるかもしれません。
大切なのは、症状をひとまとめにせず、今の自分にとって何が特につらいのかを丁寧に見ていくことです。
疲労感が強いのか、楽しさを感じにくいのか、考えがまとまりにくいのか。そこが見えてくると、支援の方向も少しずつ具体的になります。
もし、うつ症状で苦しんでいるなら、まずは自分を責めないことが大切です。
確かにうつ病の症状はツラいものです。
しかし、それらはあくまでも「うつ病が生み出したもの」であり、自分自身の弱さや足りなさではありません。
つらさには、それぞれつながりや背景があります。
だからこそ、一人で抱え込まず、自分の状態を整理しながら、必要な支援につなげていくことが大切です。
よくある質問
Q1. うつ病は「気分が落ち込む病気」と考えるだけでは不十分なのですか?
はい、不十分なことがあります。
うつ病では、気分の落ち込みだけでなく、疲れやすさ、楽しめなさ、集中しにくさ、自分を責める気持ちなど、いくつもの症状が関わります。
最近の研究では、こうした症状がバラバラにあるのではなく、互いに影響し合っている可能性があると考えられています。
Q2. うつ病で疲労感が強いのはよくあることですか?
はい、よくあります。
うつ病というと「気分の落ち込み」が目立つように思われやすいですが、実際には疲労感やだるさが強く出る人も少なくありません。
研究レビューでも、疲労感はうつ病の中で比較的中心に現れやすい症状の一つとして扱われています。
Q3. うつ病で「何も楽しくない」と感じるのはなぜですか?
「何も楽しくない」と感じるのは、うつ病でよく見られる症状の一つです。
これは、単に気分が落ちているからだけではなく、興味や喜びを感じる力そのものが弱くなっている状態と考えられます。
研究では、気分の落ち込みと「楽しめなさ」は、とくに結びつきやすい症状としてよく見られています。
Q4. うつ病の症状は、人によって違うのでしょうか?
はい、かなり違います。
うつ病といっても、疲労感が強い人、自己否定が強い人、眠れなさがつらい人、集中しにくさが目立つ人など、症状の出方はさまざまです。
だからこそ、うつ病をひとまとめにせず、その人にとって何が一番つらいのかを丁寧に見ることが大切です。
Q5. うつ病のカウンセリングでは、どんなことを相談するとよいですか?
気分の落ち込みだけでなく、疲れやすさ、楽しめなさ、考えがまとまらないこと、自分を責めやすいこと、眠りの問題なども相談して大丈夫です。
うつ病は一つの症状だけで成り立っているわけではないため、生活の中で何が特につらいのかを整理していくことが、支援の役に立ちます。
参考論文
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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