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双極症に対する心理的支援の意義~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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双極症の心理的支援はなぜ役立つのか~支え・自己理解・考え方の変化を考える~

双極症の心理的支援はなぜ役立つのか~支え・自己理解・考え方の変化を考える~

2026/05/07

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

双極症(双極性障害)の支援では、薬物療法が重要な土台になります。


そのうえで、心理療法やカウンセリングも、再発予防、自己理解、生活の安定、人間関係の整理に役立つことがあります。

 

ただし、ここで大切なのは、単に「どの心理療法が効くのか」と考えるだけでは十分ではないということです。


本当に見ていきたいのは、心理療法の中のどの要素が、その人の変化を支えているのかです。

 

結論から言うと、Serbetciら(2024)のレビューでは、双極症に対する心理的介入の有効性は一定程度知られているものの、どの要素が効いているのか、どのような仕組みで変化が起こるのかについては、様々な要因が絡んでいるということです。

 

研究では、人からの支え、対人関係療法、考えに対するコントロール感、自尊感情、外傷後成長、治療の継続などが候補として挙げられています。

 

そこでこのブログでは、双極症に対する心理療法についてシェアしたいと思います。

 

※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものでも効果を保証するものでもありません。

※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。

 

1.双極症の心理療法は「何が支えになるのか」を丁寧に見ること

 

 

双極症の支援では、薬物療法が多くの場合中心となります。

 

一方、心理療法やカウンセリングは、気分の波を理解し、生活を整え、人間関係の負担を減らし、自分を責めすぎない見方を育てる助けになるという意義を持っています。


そして双極症の支援では、人からの支え、対人関係への適切な介入、考えとの距離の取り方、自尊感情、治療を続けることなど、複数の要素が関わっている可能性があります。

 

その点を詳細に見ていきたいと思います。

 

1-1.この研究は何を調べたものか

 

いつものように研究論文の紹介をサラッと行いますね。

 

Serbetciら(2024)の論文は、双極症に対する心理的介入について、どのような要素が役立っているのか、そしてどのような仕組みで変化が起きるのかを調べたものです。

 

この研究の特徴は、「双極症に心理療法は効くのか」という問いから一歩進んで、なぜ役立つのか、何が変化を支えているのかを整理しようとしている点です。

 

1-2.「有効な要素」と「変化の仕組み」とは何か

 

タイトルの表現は少し専門的な言葉ですが、簡単に言えば、「有効な要素」とは、心理療法の中に含まれている「役立っている可能性のある部分」のことです。

 

例えば心理カウンセラーとの関係や、気分の波を理解すること、生活の振り返りに考え方の整理、自己否定の軽減などが含まれます。

 

一方で、「変化の仕組み」とは、「なぜよくなったのか」という内側の変化です。

 

例えば、考えに振り回されにくくなった、自尊感情(自己肯定感)が回復した、つらい体験を別の意味で捉えられるようになった、というような変化です。

 

心理療法の名前だけを見ても、その人に何が役立っているのかはわかりません。


大切なのは、実際に当事者の方のの生活や気分の安定に、どのような変化が起きているのか、これです。

 

では、以下「有効な要素」を見ていきたいと思います。

 

1-3.人からの支え~孤立しすぎないことが安定につながる~

 

研究では、役立つ要素の候補として、人からの支えが挙げられています。

 

双極症では、気分の波そのものだけでなく、孤立感や理解されにくさも大きな負担になります。


落ち込みが強いときには、人に会う力が減り、連絡を返すことも難しくなることがあります。


反対に、調子が上がっているときには、本人は「元気になった」と感じていても、周囲から見ると活動量が増えすぎていることがあります。

 

そのため、本人の状態を一緒に見てくれる人、安心して相談できる人、変化に気づいてくれる人の存在は、とても大きな意味を持ちます。

 

ここでいう支えは、ご本人の状態を理解してくれる方を意味します。

 

「最近、睡眠が短くなっていないか」


「予定を詰め込みすぎていないか」


「落ち込みが深くなっていないか」


「ひとりで抱え込みすぎていないか」

 

こうしたことを一緒に確認できる関係も、重要な支えになります。

 

1-4.対人関係への適切な介入~人間関係と気分の波を分けずに見る~

 

双極症では、気分の波と人間関係が互いに影響し合うことがあります。


そのため、心理的支援では、対人関係に対する適切な介入も大切な要素になります。

 

例えば、落ち込みが強いときには、連絡を返せなくなったり、相手の言葉を否定的に受け取りやすくなったりします。


すると、家族やパートナー、友人、職場との関係に距離ができることがあります。

 

一方で、調子が上がっているときには、普段より話しすぎたり、予定を増やしすぎたり、衝動的に行動したりすることがあります。


その結果、周囲とのすれ違いやトラブルが起きやすくなることもあります。

 

ここで大切なのは、人間関係の負担を、気分の波や生活上の役割の変化と結びつけて整理する、ということです。

 

これによって支援の方向性が見えやすくなります。

 

例えば…


「どの関係で負担が増えやすいのか」


「どの場面で気分が揺れやすいのか」


「どんな伝え方なら誤解が減るのか」


「誰にどのタイミングで相談するとよいのか」


…といったものを整理していくことが役立ちます。

 

つまり、双極症の支援では、症状だけを見るのではなく、人間関係の中で何が起きているのかを丁寧に見ることが大切なんですね。

 

1-5.考えに対するコントロール感~考えに飲み込まれにくくなる~

 

研究では、変化の仕組みの候補として、考えに対するコントロール感も挙げられています。

 

これは、「嫌な考えを完全に消せる」という意味ではありません。


むしろ、考えが浮かんでも、それにすぐ飲み込まれず、少し距離を取れる感覚に近いものです。

 

双極症では、気分の状態によって考え方が大きく変わることがあります。

 

例えば、落ち込んでいるときには…


「自分は何もできない」


「また迷惑をかけている」


「これからもよくならない」


…といった考えが強まりやすくなります。

 

一方で、調子が上がっているときには…


「今なら何でもできる」


「寝なくても大丈夫」


「この勢いで全部進めたい」


…という考えが強くなることがあります。

 

こうした考えを無理に否定する必要はありません。


大切なのは、「今の気分状態が、この考えを強くしているかもしれない」と見直せることです。

 

つまり、考えに対して少し距離を取れるようになると、行動の選択肢も増えやすくなりますし、症状の悪化を防ぐ効果も期待できます。


すぐに予定を増やす前に一度立ち止まり、また自己否定が強いときに、すべてを事実として受け取らないという小さな距離が、生活の安定につながることがあります。

 

1-6.自尊感情~調子を崩しても、自分の価値まで否定しない~

 

研究では、自尊感情も変化に関わる候補として挙げられています。

 

双極症の方の中には、気分の波そのものだけでなく、気分の波が起きた後の自己否定に苦しむ方は少なくありません。

 

「また調子を崩してしまった」


「自分は周りに迷惑をかけている」


「普通に生活できない自分はだめだ」

 

双極症を抱えていると、このような考えが強くなることがあります。

 

ここでいう自尊感情とは、いつも自信満々でいることではありません。


むしろ、調子を崩したときにも、自分の価値を全部否定しないチカラです。

 

そのため、「自分がだめだから」ではなく…


「今は症状が強く出ている」


「生活リズムが崩れていた」


「早めに調整するサインだった」


…と理解できるようになることは、回復にとって大きな支えになります。

 

このように、症状と自分自身を少し分けて見られるようになると、自己否定が和らぎやすくなります。


これは、双極症と長く付き合っていくうえで、とても重要な視点です。

 

1-7.外傷後成長~苦しみに対して、回復の意味を見つける~

 

研究では、外傷後成長も変化の仕組みの候補として挙げられています。

 

外傷後成長とは、つらい体験を通して、その後の人生で新しい意味や価値を見出すような変化を指します。


ただし、これは「つらい経験には必ず意味がある」と無理に考えることではありません。


また、「苦しんだから成長しなければならない」という話でもありません。

 

双極症の経過の中で、入院、休職、人間関係の変化、自己イメージの揺らぎなどを経験する方もいます。


そうした体験は、とても苦しいものです。

 

しかし、時間をかけて整理していく中で…


「自分の限界に早く気づくことの大切さがわかった」


「助けを求めることを覚えた」


「無理をしすぎる生き方を見直すきっかけになった」


「自分に合う生活を考えるようになった」


…と感じる方もいます。

 

これは、つらい体験の後に、その人なりの回復の意味を見出していくプロセスとして理解することと言えるでしょう。

 

1-8.治療を続けること~生活を守るための選択肢として考える~

 

研究では、複数回検討されていた変化の仕組みとして、治療を続けることが挙げられています。

 

双極症では、治療を継続することがとても重要です。


特に、調子が安定してくると、治療の必要性を感じにくくなることがあります。

 

また、薬への抵抗感、副作用への不安、通院の負担、「自分はもう大丈夫」という感覚などから、治療が揺らぐこともあります。

 

ここで大切なのは、治療をただ「続けなければならない」と押しつけることではありません。


ご本人にとって、治療継続がどのような意味を持つのかを整理することです。

 

治療を続けることは、単なる義務ではありません。


再発を防ぎ、自分の生活を守るための選択肢として理解できると、継続しやすくなることがあります。

 

よくある質問:双極症の心理療法とカウンセリング


Q1. 双極症に心理療法やカウンセリングは意味がありますか?

 

はい、意味があります。


双極症では薬物療法が重要な土台になりますが、心理療法やカウンセリングは、気分の波の理解、人間関係の整理、自己否定の軽減、生活の安定に役立つことがあります。

 

Q2. 双極症の心理療法では何を扱いますか?

 

双極症の心理療法では、気分の波、再発の前触れ、生活リズム、人間関係、考え方のクセ、自己否定、治療の継続などを扱います。

 

単に話を聞くだけではなく、日常生活の中で安定を保つための方法を一緒に整理していきます。

 

Q3. 双極症の心理療法で「人からの支え」が大切なのはなぜですか?

 

双極症では、調子が落ちているときに孤立しやすく、調子が上がっているときに無理をしやすくなることがあります。

 

人からの支えがあると、変化に早く気づいたり、相談したり、生活を調整したりしやすくなります。

 

Q4. 双極症で自己否定が強いとき、カウンセリングは役立ちますか?

 

役立つ可能性があります。


双極症では、調子を崩した後に「自分はだめだ」「また迷惑をかけた」と感じやすい方がいます。

 

カウンセリングでは、症状と自分自身を少し分けて見られるようにし、自尊感情を支える視点を育てていきます。

 

Q5. 双極症の心理療法は、薬の代わりになりますか?

 

いいえ、薬の代わりとして考えるものではありません。


双極症では薬物療法が重要な土台になります。

 

心理療法やカウンセリングは、薬物療法を補いながら、生活の安定、自己理解、人間関係、再発予防を支えるものとして考えるのが適切です。

 

参考論文

Serbetci, D., et al. (2024). Active components and mechanisms of action of psychological interventions in bipolar disorder: A systematic literature review.

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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