強迫症(強迫性障害)の原因と認知行動療法によるアプローチ
2026/07/11
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
強迫症(強迫性障害)を抱えている方は、「鍵を閉めたはずなのに、何度確認しても安心できない」「手を洗っても、まだ汚れている気がして不安が残る」「縁起の悪い考えが浮かぶと、何か悪いことが起きるのではないかと怖くなり、打ち消さずにはいられない」といった苦しさを抱える状態に至ってしまいます。
また、「大丈夫だ」と頭ではわかっていても、確認や洗浄、心の中の儀式をやめると強い不安や違和感がこみ上げてくるため、自分の意思だけでは止められないことも特徴的なものです。
その結果、日常生活に多くの時間とエネルギーを使い、疲れ果ててしまう方も少なくありません。
さらに、「どうして自分はこんなことをしてしまうのだろう」「性格がおかしいのではないか」と自分を責めてしまい、症状そのものだけでなく、自己否定や孤立感にも苦しむことがあります。
結論から言うと、強迫症(強迫性障害)は、強迫観念によって不安や不快感が高まり、それを下げるために強迫行為を行い、その結果として一時的に安心することで、症状が繰り返されやすくなるこころの病です。
ただ、強迫症には有効性が示されている治療があります。
特に、認知行動療法の中でも曝露反応妨害法、いわゆるERPは、強迫症に対する代表的な心理療法として知られています。
もちろん、ERPは無理に怖いことをさせる治療ではありません。
ご本人の状態を丁寧に確認しながら、不安に少しずつ向き合い、強迫行為をしなくても時間とともに不安が下がることを体験的に理解していく治療です。
そこで、この記事では強迫症の原因、症状が続く仕組み、認知行動療法でできること、医療機関との連携について解説したいと思います。
※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものでも効果を保証するものでもありません。
※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。

1-1.強迫症(強迫性障害)とは何か
強迫症は、主に「強迫観念」と「強迫行為」から成り立ちます。
強迫観念とは、自分の意思に反して繰り返し浮かぶ考え、イメージ、衝動のことです。
これはご本人にとっては不快で、怖く、ばかばかしいと思っていても、頭から離れないものです。
一方、強迫行為とは、その不安や不快感を打ち消すために繰り返してしまう行動や心の中の儀式です。
たとえば、汚れが気になって何度も手を洗う、戸締まりや火の元を何度も確認する、物の配置を何度も整える、悪いことが起こらないように特定の言葉を心の中で繰り返す、といったものです。
ご本人は、多くの場合「やりすぎだ」と感じています。
それでも、やめると強い不安や違和感が出るため、繰り返さずにはいられなくなってしまいます。
1-2.強迫症の代表的な症状
強迫症の症状は、人によって大きく異なります。
代表的なものには、次のようなものがあります。
(1)汚染への不安と洗浄
これは手や物が汚れている、病気になる、誰かに感染させてしまうと感じ、手洗い、入浴、洗濯、掃除を繰り返すものです。
(2)確認への強迫
鍵、ガス、電気、火の元、書類、メール送信などを何度も確認します。
一度確認しても「見落としたかもしれない」という不安が残るのが特徴です。
(3)加害への不安
誰かを傷つけてしまったのではないか、事故を起こしたのではないか、失礼なことをしたのではないかと心配し、確認や謝罪を繰り返すという状態です。
(4)不完全感や左右対称へのこだわり
物の位置、順番、数字、左右対称、手順などが「しっくりこない」と感じ、納得できるまで繰り返すというものです。
(5)縁起や宗教的・道徳的な強迫
縁起の悪い考え、罰が当たるのではないかという不安、不道徳な考えが浮かんだことへの罪悪感から、打ち消し行為を行うという状態です。
(6)頭の中で行う強迫行為
強迫行為は、目に見える行動だけではありません。
心の中で数を数える、言葉を繰り返す、記憶をたどる、安心できる考えに置き換えるなど、内的な儀式として行われることもあります。
1-3.強迫症の原因は一つではありません
強迫症の原因は、単純に一つに決められるものではありません。
「親の育て方が原因」「本人の性格が繊細だから」「ストレスだけが原因」といった説明は、強迫症の理解としては不十分であるだけでなく妥当性に欠けます。
現在は、生物学的要因、認知の特徴、脳が持つ学習の仕組み、ストレス、生活環境などが複雑に関わると考えられています。
(1)脳や神経の働き
強迫症では、不安、危険の検出、確認、行動のブレーキに関わる脳のネットワークや神経伝達の働きが関係すると考えられています。
そのため、強迫症は単なる気の持ちようではありませんし、それで解決されるものでもありません。
というのは、脳や神経の働きによって、ご本人が「やめたい」と思っていても、不安や違和感が強くなり、確認や洗浄をやめることが非常に難しくなってしまうからです。
(2)不安を下げる行動が、かえって症状を維持する
強迫行為は、ご本人にとって一時的には役に立っています。
確認すると少し安心する。
手を洗うと不安が下がる。
儀式をすると悪いことが起きない気がする。
しかし、この一時的な安心が、強迫症の悪循環を作ります。
不安が出るたびに強迫行為をすると、脳は「強迫行為をしたから危険を避けられた」と学習します。
その結果、次に同じ不安が出たときも、また確認や洗浄をしたくなります。
つまり、強迫行為は短期的には安心をもたらしますが、長期的には強迫観念を強めることがあります。
(3)責任感や完全性へのこだわり
強迫症では、責任を過大に感じやすいことがあります。
「自分が確認しなかったせいで事故が起きたらどうしよう」
「少しでも汚れが残っていたら大変なことになる」
「悪い考えが浮かんだということは、自分にその気があるのではないか」
このように、可能性が低いことでも、自分の責任として強く感じてしまう場合があります。
また、「完全に安心できないと動けない」「100%大丈夫でなければ危険」と感じることもあります。
しかし、現実には100%の確実性を得ることはできません。
そのため、確認しても確認しても安心が続かなくなります。
(4)ストレスや生活上の負担
これは本当に見落とされがちですが、ストレス、疲労、睡眠不足、生活の変化、人間関係の負担などは、強迫症状を悪化させることがあります。
つまり、もともとの不安の感じやすさや強迫的な反応のパターンがあり、そこにストレスが加わることで症状が強くなる、というものです。
1-4.強迫症の悪循環
強迫症は、次のような流れで繰り返されやすくなります。
まず、強迫観念が浮かびます。
「鍵を閉め忘れたかもしれない」
「手に菌がついているかもしれない」
「誰かを傷つけたかもしれない」
すると、不安、恐怖、罪悪感、違和感が急激に高まります。
その不快感を下げるために、確認、洗浄、打ち消し、回避、安心の確認などを行います。
すると、一時的に安心します。
しかし、その安心は長く続きません。
しばらくすると、また「本当に大丈夫だったのか」と不安が戻ります。
この繰り返しによって、強迫観念と強迫行為の結びつきが強くなります。
1-5.認知行動療法で何をするのか
強迫症に対する認知行動療法では、強迫観念を完全に消すことだけを目標にしません。
むしろ、強迫観念が浮かんでも、強迫行為に頼らずにやり過ごせる力を育てていきます。
具体的に認知行動療法では、主に次のようなことを行います。
(1)症状の仕組みを理解する
まず、本人の強迫観念と強迫行為を丁寧に整理します。
さらに、その不安を下げるために確認、洗浄、打ち消し、回避など、どのような行動をしているのかを整理します。
そして、その行為によって生活にどの程度の影響が出ているのかを見ていきます。
このように整理することで、本人の症状がどのような悪循環の中で続いているのかが見えやすくなります。
(2)認知的なアプローチ
認知的なアプローチとは、強迫症に関連する「考え」にアプローチをするものです。
認知的なアプローチでは、不安を強めている考え方を検討します。
たとえば、「少しでも可能性があるなら危険だ」「確認しなかったら自分の責任だ」「嫌な考えが浮かぶこと自体が危ない」といった考えです。
ここで大切なのは、強迫観念を無理に打ち消すことではありません。
「その考えは本当に事実なのか」
「可能性と確率を混同していないか」
「不安を下げるために確認していることで、かえって不安が長引いていないか」
「100%の確実性を求めることで、生活が狭くなっていないか」
このように、強迫観念との関わり方を少しずつ変えていきます。
(3)行動的なアプローチ
行動的なアプローチでは、強迫行為や回避を少しずつ減らす練習をします。
代表的な方法が、曝露反応妨害法です。
曝露とは、不安を感じる状況に少しずつ向き合うことです。
反応妨害とは、不安を下げるための強迫行為を控えることです。
たとえば、確認強迫であれば、鍵を一度確認したあと、再確認せずにその場を離れる練習をします。
汚染への不安であれば、ご本人と相談しながら、あえて不安を感じるものに触れ、その後の過剰な手洗いを控える練習をします。
もちろん、いきなり最も怖いことを行うわけではありません。
本人が取り組める段階を一緒に作り、無理のない範囲から進めます。
1-6.曝露反応妨害法は何を目指すのか
曝露反応妨害法の目的は、我慢を強いることではありません。
そして、我慢が暴露妨害法の目的ではありません。
大切なのは、次のことを体験的に理解することです。
不安は、強迫行為をしなくても時間とともに下がる。
不安があることと、本当に危険であることは同じではない。
確認や洗浄を減らしても、思っていたほど大変なことは起きない。
100%安心できなくても、生活を進めることはできる。
強迫観念が浮かんでも、それに従わなくてよい。
この理解が進むと、強迫観念に振り回される時間が少しずつ減っていきます。
1-7.曝露反応妨害法は怖い治療なのか
曝露反応妨害法と聞くと、「怖いことを無理やりさせられるのではないか」と不安になる方もいます。
これは当然の反応です。
しかし、適切な認知行動療法では、ご本人の同意を大切にしながら進めます。
いきなり難しい課題に取り組むのではなく、不安の強さを確認し、取り組みやすい段階から練習します。
つまり、ご本人にとって取り組みやすい段階から安全に進めていくんですね。
そして当然ですが、ご本人に我慢や忍耐を強いるものではありません
また、心理カウンセラーは「大丈夫だからやってください」と押しつけるのではなく、なぜその練習が必要なのか、どのように進めるのかを説明し、ご本人と一緒に計画を立てます。
このように不安をゼロにしてから行動するのではなく、不安があっても強迫行為をしない経験を少しずつ積むことが、回復の方向になります。
1-8.医療機関での治療と薬物療法
強迫症では、精神科や心療内科での診断と治療が重要です。
医療機関では、強迫症の診断、重症度の評価、併存するうつ病や不安症、発達特性、双極症などの確認、薬物療法の検討が行われます。
また薬物療法では、SSRIなどの薬が用いられることがあります。
症状が強く、認知行動療法に取り組む余力がない場合には、薬物療法によって不安や強迫症状の強さを下げ、心理療法に取り組みやすくすることが功を奏する場合が多々あります。
一方で、薬だけで十分に改善しない場合もあります。
そのため、強迫症では、薬物療法と認知行動療法を必要に応じて組み合わせることが大切です。
1-9.カウンセリングでできること
心理カウンセリングでは、強迫症に対して認知行動療法を通した改善が期待できます。
心理カウンセリングを通して行われる認知行動療法では、まず強迫観念と強迫行為の内容を丁寧に整理します。
つまり何が怖いのか、何を避けているのか、どの行為が安心を作っているのかを一緒に確認します。
そのうえで、認知的なアプローチによって、不安を強める考え方や責任感の偏りを見直していきます。
さらに、行動的なアプローチとして、曝露反応妨害法を段階的に行います。
そしてご本人が取り組める課題を設定し、不安があっても確認や洗浄を少しずつ減らせるように支援します。
また、家族が強迫行為に巻き込まれている場合には、家族への説明も重要になります。
たとえば、「大丈夫?」と何度も確認され、そのたびに家族が安心させると、一時的には本人の不安が下がります。しかし長期的には、安心確認が強迫症状を維持することがあります。
そのため、本人を責めずに、家族も巻き込まれ方を少しずつ変えていくことが大切です。
1-10.受診や相談の目安
次のような状態がある場合は、精神科・心療内科、または強迫症に対応できる心理カウンセリングへの相談をおすすめします。
✔確認や手洗いに長い時間を使っている。
✔強迫観念が頭から離れず、仕事や学業に集中できない。
✔家族を確認や儀式に巻き込んでいる。
✔外出や人との接触を避けるようになっている。
✔自分でもやめたいのにやめられない。
✔強迫行為をしないと強い不安や苦痛が出る。
✔うつ状態や最悪の選択肢を考えることがある。
✔生活全体が強迫症状を中心に回っている。
強迫症は、放っておくと生活範囲が狭くなりやすい病気です。
そのため、早めに相談することで、悪循環を小さなうちに見直せる可能性があります。
まとめ
強迫症(強迫性障害)は、強迫観念と強迫行為によって生活に支障が出る病気です。
原因は一つではなく、脳や神経の働き、不安への反応、責任感や完全性へのこだわり、ストレス、学習の仕組みなどが複雑に関係しています。
また強迫行為は、一時的には不安を下げます。
しかし、その安心によって「やはり確認しないと危険だ」「洗わないと不安に耐えられない」という脳の学習が強まり、症状が続きやすくなります。
そのため認知行動療法では、認知的なアプローチと行動的なアプローチを組み合わせます。
特に、曝露反応妨害法では、不安に段階的に向き合いながら、確認や洗浄などの強迫行為を少しずつ減らしていきます。
強迫症は、本人の性格の問題ではありません。
そして適切な治療と支援によって改善が期待できる病気です。
そのため一人で抱え込まず、医療機関や専門家に相談しながら、少しずつ強迫症状に振り回されない生活を取り戻していくことが大切です。
よくある質問
Q1. 強迫症は性格の問題ですか?
強迫症は性格の問題ではありません。
几帳面さや責任感の強さが関係する場合はありますが、それだけで強迫症になるわけではありません。
強迫症では、強迫観念による不安や違和感が強くなり、それを下げるために確認や洗浄などを繰り返してしまいます。
つまり、ご本人の性格的な問題ではなく、治療や支援の対象となるこころの病気です。
Q2. 強迫観念が浮かぶこと自体が危険なのでしょうか?
強迫観念が浮かぶこと自体が、すぐに危険を意味するわけではありません。
多くの人にも、不快な考えやイメージがふと浮かぶことがあります。
強迫症では、その考えを「浮かんだだけで危険」「自分にその気がある証拠」と受け取り、不安が強くなることによって生じます。
そのため治療では、考えを消すことではなく、その考えに巻き込まれすぎない練習を行います。
Q3. 曝露反応妨害法はつらい治療ですか?
曝露反応妨害法では、不安を感じる状況に向き合い、強迫行為を控える練習をします。
そのため、確かに一定の不安は伴います。
ただし適切な治療では、ご本人と相談しながら段階的に進めます。
つまり、確かに不安は少々伴いますが、忍耐や頑張りを求めるものではありません。
Q4. 薬と認知行動療法はどちらがよいですか?
強迫症では、薬物療法と認知行動療法のどちらも有効な治療選択肢です。
症状の強さ、生活への影響、併存するうつや不安、本人の希望、認知行動療法を受けられる環境によって選択は変わります。
症状が重い場合には、薬物療法で不安の土台を下げながら、認知行動療法に取り組むこともあります。薬の開始や変更は、必ず医師と相談してください。
Q5. 家族はどのように関わればよいですか?
家族は、ご本人を責めるのではなく、強迫症の仕組みを理解することが大切です。
ただし、ご本人を安心させるために何度も確認に付き合うと、長期的には症状を維持することにつながります。
そのため家族がどこまで協力し、どこからは強迫行為に巻き込まれないようにするかを、本人と専門家を交えて相談していくことが望ましいと言えるでしょう。
参考文献・参考資料
日本不安症学会・日本神経精神薬理学会. 強迫症の診療ガイドライン 第1版.
厚生労働省. 強迫性障害(強迫症)の認知行動療法マニュアル(治療者用).
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こころのケア心理カウンセリングRoom
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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