恋人や夫婦のケンカのコミュニケーション:「要求―撤退パターン」~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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恋人や夫婦と話し合うほどケンカになるのはなぜ?「要求―撤退パターン」の心理

恋人や夫婦と話し合うほどケンカになるのはなぜ?「要求―撤退パターン」の心理

2026/11/08

恋人や夫婦と話し合うほどケンカになるのはなぜ?「要求―撤退パターン」の心理

夫婦や恋人と話し合いをしようとすると、いつも避けられてしまう、気持ちを分かってほしくて質問しているだけなのに、相手が黙り込んでしまう、話し合おうとするほどケンカになり、二人の距離が広がってしまう…。

 

大切なパートナーとの関係で、このような経験をされる方は珍しくありません。

 

また一方で、相手から何度も質問されたり、気持ちを問いただされたりすることが苦しくなり、つい黙り込んだり、話し合いを避けたりしてしまう方もいるでしょう。

 

実は、恋愛関係では、一方が話し合いや変化を強く求め、もう一方がそれを避けようとすることで、互いの行動が悪循環を生み出す場合があります。

 

心理学では、これを「要求―撤退パターン(Demand–Withdraw Pattern)」と呼びます。

 

この悪循環を改善するために大切なのは、どちらが悪いのかを考えることだけではありません。

 

二人がどのような気持ちで行動し、その行動がお互いにどのような影響を与えているのかを理解することが解決の糸口になります。

 

そこでこのブログでは、心理カウンセラーの立場から、要求―撤退パターンが生じる心理的な仕組みと、パートナーとの関係を改善するためのコミュニケーションについてシェアしたいと思います。

 

1:要求―撤退パターンとは?恋愛や夫婦関係で起こるすれ違い

 

要求―撤退パターンとは、パートナーとの意見の対立や問題が生じたとき、一方が話し合いや相手の変化を求める一方で、もう一方が話し合いを避けたり、心理的な距離を取ったりする相互作用です。

 

例えば、パートナーの連絡が少なくなったことに不安を感じ、次のように尋ねたとします。

 

「最近、どうして連絡してくれないの?」「もう私のことが好きではないの?」「ちゃんと気持ちを教えてほしい」。

 

しかし、相手は「またその話なの?」「今は話したくない」と答え、黙り込んでしまいます。

 

すると、話し合いたい側は「どうして向き合ってくれないのだろう」と不安になり、さらに質問を重ねるかもしれません。

 

一方、質問される側は「何を答えても責められる」と感じ、ますます距離を取ろうとすることがあります。

 

その結果、次のような悪循環が生じます。

 

話し合いを求める → 相手が避ける → 不安や怒りが強まる → さらに追及する → 相手がますます距離を取る

 

ここで重要なのは、話し合いを求めること自体が問題なのではないという点です。

 

また、気持ちを落ち着かせるために、一時的に話し合いを中断することも、必ずしも悪いことではありません。

 

問題になるのは、こうした対応が繰り返され、二人の間で問題を解決することが難しくなってしまう場合です。

 

2:心理学研究では、恋愛や夫婦関係への影響が報告されている

 

2014年、Schrodtらは、要求―撤退パターンに関する研究を統合したメタ分析を発表しました。

 

その結果、要求―撤退パターンと、パートナー関係の満足度やコミュニケーション上の問題との間には、比較的強い関連が認められました。

 

また、関係に問題を抱えているカップルでは、こうしたパターンと関係上の問題との関連が、より強い傾向にありました。

 

注目したいのは、男性と女性のどちらが要求する側になるかによって、関連の強さに大きな違いが見られなかったことです。

 

つまり、問題となるのは性別そのものではなく、二人の間で繰り返されるコミュニケーションのあり方だと考えられます。

 

では、そもそもなぜ、このような悪循環が生じるのでしょうか。

 

3:なぜ要求―撤退パターンが生じるのか?3つの心理的な仕組み

 

ここでは、要求ー撤退パターンが生じる仕組みについて解説します。

 

(1)個人差:不安への対処方法や愛着傾向が異なる

 

まず考えられるのが、二人の心理的な特徴や、不安への対処方法の違いです。

 

例えば、パートナーとの関係が不安定になったと感じると、相手の気持ちを確認することで安心しようとする方がいます。

 

その結果、「今、私のことをどう思っているのだろう」「もう好きではないのかもしれない」と考え、相手の気持ちを何度も尋ねることにつながります。

 

その背景には、見捨てられ不安や、親密な関係における愛着不安が関係している場合が珍しくありません。

 

一方、感情的な対立が苦手で、強く問いただされると、話し合いから離れることで自分の気持ちを落ち着かせようとする方もいます。

 

このような場合、一方は「話し合うことで安心したい」と考え、もう一方は「話し合いから離れることで落ち着きたい」と考える可能性が高くなります。

 

つまり、安心するために選んでいる行動が、二人の間で正反対になっているのです。

 

相手が離れようとするほど不安が強まり、近づこうとすると相手がさらに離れてしまう…。

 

この違いが悪循環につながることがあります。

 

ただし、要求する人が必ず愛着不安の強い人で、撤退する人が必ず回避的な愛着傾向を持つとは限りません。

 

大切なのは、相手の性格を決めつけることではなく、二人が不安や対立にどのように対処しているのかを理解することにあります。

 

(2)対立の構造:変化を求める側と現状を維持したい側の違い

 

要求―撤退パターンは、性格や愛着傾向だけで生じるわけではありません。

 

二人のうち、どちらが現状を変えたいと考えているのかも大きくかかわってきます。

 

例えば、恋人との連絡頻度に不満を感じている方がいるとします。

 

その人にとって、連絡頻度を増やすことは重要な問題です。

 

そのため、何度も話し合おうとするかもしれません。

 

しかし、現在の連絡頻度に不満を感じていない相手は、特に変える必要性を感じていないかもしれません。

 

その結果、一方は変化を求め、もう一方は話し合いを避けようとする場合が生じやすくなります。

 

ここで大切なのは、要求する側の問題提起が、必ずしも不適切ではないということです。

 

例えば、相手が約束を繰り返し破っている場合、その改善を求めることには十分な理由があります。

 

一方、変化を求められる側にとっては、これまでの生活や習慣を変えることが負担になっている可能性もあります。

 

また、話し合うテーマによって、要求する側と撤退する側が入れ替わることもあります。

 

連絡頻度については一方が要求する側でも、休日の過ごし方については、もう一方が変化を求める側になるかもしれません。

 

したがって、恋愛や夫婦関係の問題を理解するときには、「どちらが要求する性格なのか」だけでなく、「何について、誰が、どのような変化を求めているのか」を考えることが重要です。

 

(3)複数目標:同じ話し合いでも、求めているものが違う

 

もう一つ重要なのは、パートナー同士が、同じ話し合いの中で異なる目的を持っている場合です。

 

例えば、恋人に「最近、私のことをどう思っているの?」と尋ねたとします。

 

質問する側には、いくつかの目的があるかもしれません。

 

相手の気持ちを知りたい、自分が愛されていると確認したい、関係を以前のように戻したい、自分の寂しさを理解して欲しい…。

 

一方、質問される側にも、さまざまな目的が考えられます。

 

喧嘩を避けたい、自分の気持ちを守りたい、これ以上責められたくない、関係を壊さないために、いったん距離を取りたい…。

 

このように、二人とも関係を大切に思っていたとしても、その場で達成したい目的が異なることがあります。

 

例えば、質問する側は「今すぐ安心したい」と考えていても、相手は「今は落ち着く時間がほしい」と考えている場合も考えられます。

 

その結果、相手が距離を取ろうとすると「向き合ってくれない」と感じ、質問を重ねられる側は「自分の気持ちを尊重してもらえない」と感じる場合が生じやすくなります。

 

ここで必要なのは、相手の発言だけでなく、その言動によって何を実現しようとしているのかを理解することです。

 

例えば、「どうして話してくれないの?」という質問の背景には、「安心したい」「気持ちを理解してほしい」という願いがあるかもしれません。

 

また、「今は話したくない」という言葉の背景には、「少し落ち着いてから、きちんと話したい」という思いがあるかもしれません。

 

このようにお互いの目的を理解できると、相手の行動を単純に「拒絶」や「攻撃」と受け止める以外の見方が生まれます。

 

4:要求―撤退パターンから抜け出すための4つの方法

 

では、この「要求ー撤退パターン」から抜け出す方法を見ていきたいと思います。

 

(1)自分が何を求めているのかを明確にする

 

もし相手を問いただしたくなったときには、まず自分が何を求めているのかを考えてみましょう。

 

例えば、「どうして連絡してくれないの?」という質問の背景には、「もっと安心できる関係になりたい」という希望があるかもしれません。

 

その場合、「連絡が少ないと寂しく感じるので、お互いに無理のない連絡方法を相談したい」と伝えることが有益です。

 

このように、相手を責めることと、自分の希望を伝えることを区別することが大切です。

 

(2)相手の反応をすぐに否定的に解釈しない

 

パートナーが黙り込んだとき、「自分を無視している」「もう愛情がない」と感じることがあるかもしれません。

 

しかし、相手は考えを整理していたり、感情を落ち着かせようとしていたりする可能性もあります。

 

ただし、それは相手の言動からは判断しづらいものです。

 

だからこそ、相手がいま何を考えているのかを理解しようとすることが大切になります。

 

このように、自分が感じた不安と、相手が実際に考えていることを区別することが重要です。

 

(3)話し合いを中断するときは、再開する約束をする

 

感情が高ぶっているときに無理に話し続けると、ケンカが激しくなることは珍しくありません。

 

そのような場合には、いったん話し合いを中断する方法も有効です。

 

ただし、「もう話したくない」と伝えるだけでは、相手の不安が強まるかもしれません。

 

「今は少し気持ちを落ち着かせたいので、30分後にもう一度話そう」といったように、再開する時刻や方法を具体的に伝えることが考えられます。

 

そして、決めた約束を守ることが重要です。

 

(4)お互いの希望を確認し、具体的な解決方法を考える

 

最後に、何が問題になっているのかを整理します。

 

例えば、連絡頻度について意見が異なるのであれば、どの程度の連絡が必要なのか、お互いに負担の少ない方法はあるのかを話し合います。

 

大切なのは、一方が我慢することだけで問題を終わらせないことです。

 

この場合は、相手の希望を理解しながら、自分の希望も伝え、二人が納得できる方法を探していくことが求められます。

 

大切なのは、相手を変えることだけではなく、二人の関わり方を変えることです。

 

恋愛や夫婦関係では、大切な人だからこそ、相手の反応に強く傷ついたり、不安になったりすることがあります。

 

また、関係を大切にしたいという気持ちが強いほど、何とか話し合って解決しようとすることもあるでしょう。

 

しかし、その行動によって相手がさらに距離を取り、自分の不安も強まってしまう場合も残念ながらあります。

 

そのようなときは、二人の間で何が繰り返されているのか、一度整理してみることが大切です。

 

相手に気持ちを理解してほしいという願いも、自分の気持ちを落ち着かせたいという願いも、どちらも大切にされるべきです。

 

そのうえで、自分の気持ちを適切に伝え、相手の気持ちにも耳を傾けることが、よりよい関係を築くための一歩になります。

 

よくある質問

 

Q1.パートナーが黙り込むと、無視されているようでつらくなります。どうすればよいですか?

まず、黙っていることが自分にとってどのような意味を持っているのか考えてみてください。

 

もしかしたら、「拒絶された」「嫌われた」と感じているのかもしれません。

 

しかし、相手が黙っている理由は一つとは限りませんよね。

 

その際は、落ち着いているときに、「返事がないと不安になるので、考える時間が必要なら、そう伝えてほしい」と具体的にお願いする方法が有効です。

 

Q2.恋人に何度も気持ちを確認してしまいます。やめた方がよいのでしょうか?

 

気持ちを確認すること自体が悪いわけではありません。

 

ただし、安心するために何度も同じ質問を繰り返し、一時的にしか安心できない場合には、確認行動が不安を維持している可能性があります。

 

何を不安に感じているのか、確認する以外にどのような方法で不安に対処できるのかを考えてみてください。

 

Q3.パートナーは話し合いを嫌がります。話し合いを求めること自体を控えるべきでしょうか?

 

必要な問題について話し合うことまで諦める必要はありません。

 

ただし、話し合うタイミングや伝え方によって、相手の反応が変わる可能性があります。

 

「今すぐ答えてほしい」と求めるのではなく、落ち着いて話せる時間を相談することが考えられます。問題を先送りにし続けないことも大切です。

 

Q4.いつも自分から謝って仲直りしています。このままでよいのでしょうか?

 

謝ることは、関係を修復する大切な行動です。

 

しかし、喧嘩を終わらせるためだけに、常に一方が謝っている場合には、問題が解決されないまま残っているかもしれません。

 

自分に改善すべき点があれば謝り、そのうえで何が問題だったのか、お互いにどのような行動を変えられるのかを話し合うことが重要です。

 

Q5.自分がコミュニケーションを変えれば、相手も変わってくれるのでしょうか?

 

自分の伝え方や反応を変えることで、二人のやり取りに変化が生じる可能性はあります。

 

しかし、相手が必ず変わるとは限りません。

 

大切なのは、相手を変えることだけを目的とせず、自分がどのような関係を望み、どのような関わり方を大切にしたいのかを明確にすることです。

 

そのため、必要に応じて、カップルカウンセリングなどの専門的な支援を受けることも選択肢になります。

 

参考文献

Schrodt, P., Witt, P. L., & Shimkowski, J. R.(2014)A meta-analytical review of the demand/withdraw pattern of interaction and its associations with individual, relational, and communicative outcomes.Communication Monographs, 81(1), 28–58.

Papp, L. M., Kouros, C. D., & Cummings, E. M.(2009)Demand-withdraw patterns in marital conflict in the home.Personal Relationships, 16(2), 285–300.

Holley, S. R., Sturm, V. E., & Levenson, R. W.(2010)Exploring the basis for gender differences in the demand-withdraw pattern.Journal of Homosexuality, 57(5), 666–684.

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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