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双極症の認知機能の問題について~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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双極症Ⅱ型と認知機能の低下~記憶力・集中力・仕事への影響とは~

双極症Ⅱ型と認知機能の低下~記憶力・集中力・仕事への影響とは~

2026/06/13

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

双極症Ⅱ型というと、うつ状態と軽躁状態の波が注目されることが多いかもしれません。

 

しかし、実際の相談場面では、気分の波だけでなく仕事の段取りや判断、集中、記憶が以前より難しくなり、ミスの増加によって自信を失いやすくなるという問題も生じやすくなります。

 

そのため双極症Ⅱ型では、気分症状だけでなく、認知機能の問題にも目を向ける必要があります。

 

認知機能とは、記憶力、注意力、判断力、計画を立てる力、考えを切り替える力など、日常生活や仕事を支える心の働きです。

 

もちろん、すべての双極症Ⅱ型の方に同じような認知機能の低下が起こるわけではありません。

 

しかし、「頭が働かない」「仕事の処理が遅くなった」「以前のように考えられない」と感じる場合、病状や疲労、睡眠、薬、残っている抑うつ症状などを含めて丁寧に見ていく必要があります。

 

そこで今回は双極症Ⅱ型の認知機能の問題についてシェアしたいと思います。

 

※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものでも効果を保証するものでもありません。

※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。

 

1.双極症Ⅱ型と認知機能の困りごととは?

 

 

双極症Ⅱ型の場合、「気分は少し落ち着いてきたのに、頭が働かない」「以前のように仕事を処理できない」「会話や説明が頭に残らない」といった認知機能の困りごとが生じることが珍しくありません。

 

つまり、双極症Ⅱ型では、気分の波、睡眠、疲労、薬の影響、残っている抑うつ症状などが重なり、注意力や記憶力、段取りを立てる力に影響することがあるのでs。

 

1-1.この論文は何を調べた研究なのか

 

毎回恒例の論文解説です(笑)

 

今回取り上げるSoléら(2011)の論文は、双極症Ⅱ型の患者さんに認知機能の低下が見られるのかを整理したシステマティックレビューです。

 

この論文では、双極症Ⅱ型の神経心理学的研究を整理し、どのような認知機能の困難が見られるのか、また双極症Ⅰ型や健康な人と比べてどのような違いがあるのかが検討されました。

 

その結果、双極症Ⅱ型では、ワーキングメモリ、実行機能の一部、とくに抑制制御、また言語記憶に困難が見られる可能性が示されました。

 

1-2.認知機能とは何か

 

認知機能とは、日常生活を送るために必要な「考える力」全般を指します。

 

たとえば、注意を向ける、情報を覚える、必要なことを一時的に頭に置く、計画を立てる、優先順位を決める、衝動を抑える、考えを切り替える、状況に合わせて判断する、といった働きです。

 

これらは、仕事、家事、人間関係、学習、金銭管理、通院、服薬管理など、生活のあらゆる場面に関係しています。

 

ここで誤解していただきたくないのは、「双極症による認知機能の低下=頭の悪さ」では決してない、ということです。

 

こたえは本当にシンプルで、認知機能の低下は双極症の症状の1つであり、双極症の改善によって認知機能も回復していくからです。

 

ただ、認知機能がうまく働きにくくなると気分がある程度安定していても、生活のしづらさが残ることがあります。

 

例えば、仕事が進まない、会話の内容を追いきれない、メールや書類の処理に時間がかかる、ミスが増える、といった困りごとです。

 

1-3.ワーキングメモリの困りごと

 

Soléらのレビューでは、双極症Ⅱ型においてワーキングメモリの困難が見られる可能性が示されています。

 

ワーキングメモリとは、必要な情報を一時的に頭の中に置きながら作業する力です。

 

例えば、上司から言われた指示を覚えながらメモを取る、会話の内容を追いながら返答する、複数の予定を頭の中で整理する、文章を読みながら意味を理解する、といった場面で使われます。

 

ワーキングメモリが弱くなると、「聞いたはずなのに抜ける」「同時に複数のことを考えられない」「話の途中で何を言おうとしたか忘れる」といった困りごとが起こりやすくなります。

 

このような場合は、口頭指示を文字に残す、作業手順を見える化する、一度に扱う情報量を減らす、チェックリストを使うなどの工夫が役立つことがあります。

 

1-4.実行機能と抑制制御の難しさ

 

双極症Ⅱ型では、実行機能の一部にも困難が見られる可能性があります。

 

実行機能とは、目標に向かって行動を調整する力です。

 

具体的には、計画する、優先順位をつける、衝動を抑える、途中で修正する、注意を切り替えるといった働きです。

 

実行機能がうまく働きにくいと、何から手をつければよいかわからない、締め切りまでの見通しが立たない、一つの作業から次の作業に切り替えにくい、途中で混乱して止まってしまう、といったことが起こります。

 

また、抑制制御の難しさも重要です。

 

抑制制御とは、「今はやらない」「少し待つ」「一度考える」というブレーキの働きです。

 

これが弱くなると、思いついたことをすぐ言ってしまう、予定を入れすぎる、疲れているのに活動を止められない、相手の言葉に強く反応してしまうことがあります。

 

ただし、これは単に「衝動的な性格」という意味ではありません。

 

気分状態、睡眠不足、ストレス、軽躁的な高まり、認知機能の状態が重なって、ブレーキが効きにくくなっているのです。

 

1-5.言語記憶の困りごと

 

Soléらのレビューでは、研究のおよそ半数で言語記憶の低下が見られたとされています。

 

言語記憶とは、言葉で聞いたこと、読んだこと、説明されたことを覚えておく力です。

 

言語記憶に困りごとがあると、説明を聞いたのに覚えていない、本や資料を読んでも内容が残りにくい、会議の内容を後から思い出しにくい、人との約束や会話の細部が抜ける、といったことが起こりやすくなります。

 

このような状態が続くと、「自分は能力が落ちたのではないか」と不安になることにもつながります。

 

しかし、言語記憶の困りごとは、疲労、睡眠、抑うつ症状、薬の影響、ストレス、注意力の低下などとも関係します。

 

そのため、一つの要因だけで決めつけず、生活全体の状態を見ながら整理することが大切です。

 

1-6.気分が安定していても困りごとが残ることがある

 

双極症Ⅱ型では、うつ状態や軽躁状態のときに認知機能が落ちることは想像しやすいかもしれません。

 

しかし重要なのは、気分がある程度安定している時期にも、認知機能の困りごとが残る場合があることです。

 

ご本人は「気分は前より落ち着いているのに、なぜ仕事ができないのだろう」と悩むことがあります。

 

しかし、気分の安定と認知機能の回復は、必ずしも同じペースで進むわけではありません。

 

復職や社会復帰を考えるときには、気分だけでなく、集中力、記憶力、疲労感、睡眠、作業量、対人負荷も一緒に見ていくことが大切です。

 

1-7.仕事や復職への影響

 

認知機能の困りごとは、仕事や復職に大きく影響します。

 

例えば、メール処理に時間がかかる、会議の内容についていけない、同時に複数の仕事を抱えると混乱する、ミスを防ぐ確認作業に時間がかかる、指示を受けても後から抜け落ちる、といった悩みです。

 

このような状態で以前と同じ働き方に急に戻ろうとすると、負担が大きくなり、再発や悪化につながる可能性があります。

 

そのため、復職では段階的な調整が重要です。

 

最初からフルパフォーマンスを求めない、業務量を少しずつ増やす、口頭指示だけでなく文字で確認する、複数業務を同時に抱えすぎない、休憩を予定に組み込む、睡眠リズムを安定させる、といった工夫が役立ちます。

 

1-8.認知機能の問題と自己否定

 

認知機能の困りごとは、自己否定につながりやすいものです。

 

以前はできていたことができない。簡単な作業に時間がかかる。人の話が頭に入らない。忘れ物やミスが増える。判断が遅くなる…。

 

このようなことが続くと、「自分はだめになった」「もう働けない」「能力が落ちた」と感じやすくなります。

 

しかし、ここで必要なのは、自分を責めることでも否定する事でもありません。

 

認知機能の困りごとは、病状、睡眠、疲労、ストレス、薬、生活リズム、残っている抑うつ症状など、さまざまな要因と関係しているのです。

 

そのため、「自分の能力がすべて失われた」と考える前に、どの場面で、どの機能に、どの程度の負荷がかかっているのかを整理することが大切です。

 

1-9.セルフケアで大切にしたい視点

 

双極症Ⅱ型のセルフケアでは、気分の波だけでなく、認知機能の困りごとも丁寧に見ることが大切です。

 

まず、どの場面で集中力が落ちやすいのか、記憶の抜けはどのような場面で起こるのか、段取りが難しくなるのはどの仕事かを記録する事から始めましょう。

 

また、睡眠不足や疲労、軽躁的な予定の入れすぎ、残っている抑うつ症状が関係していないかも確認してください。

 

そのうえで、生活の中に具体的な工夫を入れていきます。

 

タスクを小さく分ける、予定を詰めすぎない、口頭指示を文字に残す、チェックリストを使う、作業時間と休憩時間を分ける、疲労のサインを記録する、睡眠リズムを整える、調子がよい日にやりすぎない、といった工夫です。

 

また、双極症Ⅱ型では医療や心理カウンセラーとの連携も重要です。

 

連携があることで、薬物療法、睡眠管理、再発予防、心理教育、セルフケアを組み合わせながら、安定した生活を目指すことが出来るようになります。

 

1-10.家族や職場に理解してほしいこと

 

双極症Ⅱ型の認知機能の困りごとは、外から見えにくいことがあります。

 

本人が話せている、表情が明るい、気分が落ち着いているように見える、普通に受け答えできている…。

 

このように見えると、周囲は「もう大丈夫」と思いやすくなります。

 

しかし、会話ができることと、長時間働けることは同じではありません。

 

また気分が安定して見えることと、注意力や記憶力が十分に戻っていることも同じではありません。

 

そのため家族や職場には、一度に多くの指示を出さない、重要なことは文字で残す、予定や業務量を急に増やさない、疲労がたまると認知機能が落ちやすいことを理解する、本人のミスを人格の問題として責めない、といった理解が大切です。

 

まとめ

 

Soléら(2011)のシステマティックレビューは、双極症Ⅱ型においても認知機能の困りごとが見られる可能性を示しています。

 

特に、ワーキングメモリ、実行機能の一部、抑制制御、言語記憶などが重要なテーマになります。

 

双極症Ⅱ型は、単に「軽い双極症」と考えるべきではありません。

 

気分の波だけでなく、記憶力、集中力、判断力、段取りを立てる力、仕事や生活への影響を含めて理解する必要があります。

 

認知機能の困りごとの理解で大切なのは、自分を責めることではなく、どの場面で困りごとが起こるのかを具体的に把握し、医療や心理カウンセラーと連携しながら、生活リズム、仕事量、休息、環境調整、セルフケアを組み合わせていくことです。

 

よくある質問


Q1. 双極症Ⅱ型でも認知機能が低下することはありますか?

 

あります。

 

双極症Ⅱ型では、ワーキングメモリ、実行機能、注意、言語記憶などに困りごとが見られることがあります。

 

ただし、すべての人に同じように起こるわけではなく、気分状態、睡眠、疲労、薬、併存症などの影響も考える必要があります。

 

Q2. 気分が安定していても、仕事がうまくできないことはありますか?

 

あります。

 

気分が落ち着いていても、集中力、記憶力、判断力、段取りの力がすぐに戻るとは限りません。

 

復職や仕事の再開では、気分だけでなく、認知的な負荷にどの程度耐えられるかを見ることが大切です。

 

Q3. 双極症Ⅱ型の認知機能低下は治りますか?

 

回復は十分に可能です。

 

睡眠リズムの安定、再発予防、薬物療法の調整、心理教育、生活環境の工夫、認知的負荷の調整によって、生活上の困りごとが軽くなることがあります。

 

気になる場合は、主治医や心理カウンセラーに相談することが大切です。

 

Q4. 双極症Ⅱ型で仕事を続けるためには何が大切ですか?

 

予定を詰めすぎないこと、業務量を段階的に調整すること、口頭指示を文字で残すこと、チェックリストを使うこと、睡眠リズムを守ることが大切です。

 

また、調子がよい日に頑張りすぎると、その後に疲労や気分の落ち込みが出ることがあるため、安定したペースを意識する必要があります。

 

Q5. カウンセリングでは双極症Ⅱ型の認知機能の困りごとを相談できますか?

 

相談できます。

 

カウンセリングでは、集中力の低下、記憶の抜け、段取りの難しさ、仕事上のミス、自己否定、疲労管理などを整理し、生活に合った工夫を一緒に考えていきます。

 

ただし、双極症Ⅱ型では医療的な管理も重要なため、主治医との連携を前提に進めることが大切です。

 

参考論文

Solé, B., et al. (2011). Are bipolar II patients cognitively impaired? A systematic review.

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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