好きなのに関係が苦しくなる、境界性パーソナリティ症と愛着の関係
2026/07/22
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
境界性パーソナリティ症(境界性パーソナリティ障害)を抱えておられる方にとって、恋愛は安心を与えてくれる半面、苦しみも同時に運んでいきます。
連絡がないと嫌われたと感じてしまう、相手の気持ちが不安で何度も確認行動を取ってしまい、何かトラブルがあると、すぐに別れ話をしてしまう…
境界性パーソナリティ症の方の中で、このような苦しさを抱えている方は少なくありません。
そして自分でも「考えすぎだ」とわかっているのに、不安や怒りが急激に大きくなり、自分では止められない、というある種の衝動性を抱えておられる方もおられます。
こうした反応は「性格の問題」や「恋愛への依存」だけで説明できるものではありません。
境界性パーソナリティ症の場合、大切な相手に対する過敏性があります
その結果、愛着に関する警報が強く働いてしまうんですね。
愛着のパターンは、自分の反応を理解するための手がかりになります。
しかし、自分の反応に気づき、感情との付き合い方や相手との伝え方を改善することで、関係のパターンを少しずつ変えていくことは可能です。
そこで今回は境界性パーソナリティ症の愛着、特に恋愛や夫婦等と言ったパートナーシップで生じやすい問題についてシェアしたいと思います。
※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものでも効果を保証するものでもありません。
※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。

1-1.恋愛における愛着スタイルとは
境界性パーソナリティ症の恋愛等において、愛着スタイルは非常に密接に関係しています。
そこで、まずは愛着の問題から見ていきたいと思います。
愛着とは、不安や危険を感じたときに、大切な相手とのつながりを求める心の仕組みです。
そして成人の恋愛における愛着は、主に「愛着不安」と「愛着回避」という二つの側面から考えられます。
● 愛着不安
愛着不安が強いと、相手から見捨てられたり、愛されなくなったりすることを強く恐れます。
返信が遅いだけで「気持ちが冷めたのではないか」と感じる、相手の表情や声の変化に敏感になる、愛情を何度も確認する、といった反応が現れることがあります。
本当は安心したいのですが、安心を求める行動が強くなりすぎると、何度も連絡する、相手を試す、怒りをぶつけるといった事態に至ってしまいます。
● 愛着回避
愛着回避が強いと、相手に頼ることやありのままの自分を見せることに抵抗を感じやすくなります。
つまり親密になりたい気持ちがあっても、「近づいたら嫌われる」「頼ったら傷つけられる」と感じ、距離を取るということにつながります。
そして、つらいときにも一人で抱え込み、相手から気持ちを尋ねられると、かえって閉じこもってしまうという行動が生じることもあります。
● 近づきたいのに遠ざけてしまう(愛着不安+愛着回避)
愛着不安と愛着回避の両方が強くなると、「離れられるのは怖いけれど、近づくことも怖い」という状態になりやすくなります。
相手に強く近づいた直後に、「どうせ裏切られる」と突き放す。
別れを恐れてしがみついたあとに、相手への怒りが強くなる。
このような矛盾した反応は、本人にとっても理解しにくく、大きな苦しさにつながります。
1-2.境界性パーソナリティ症と愛着に関する研究
Smith et al.(2020)は、恋愛における愛着スタイルと境界性パーソナリティ症の特徴との関係を調べた研究を統合し、メタ分析を行いました。
その結果、境界性パーソナリティ症の特徴は、愛着不安と比較的強く関連し、愛着回避とも関連していました。
また、愛着不安と愛着回避の両方が高い、混乱した愛着パターンとの関連も示唆されています。
境界性パーソナリティ症では、見捨てられることへの強い恐れ、感情の急激な変化、不安定な自己イメージ、衝動的な行動、親密な関係の不安定さなどが現れることがあります。
それが研究によって示された結果となりました。
1-3.恋愛の苦しさを強める悪循環
境界性パーソナリティ症の恋愛やパートナーシップでは、特有の悪循環が生じやすい傾向があります。
例えば、恋人から数時間返信が来なかったとします。
まず、「嫌われた」「他の人と一緒にいる」「別れようとしている」という考えが浮かびます。
すると、不安、怒り、悲しみが急激に大きくなります。
その苦しさを下げるために、何度もメッセージを送る、相手のSNSを確認する、別れをほのめかして反応を見る、といった行動を取ることにつながります。
その結果、一時的には相手から反応があり、安心できるかもしれません。
しかし、こうしたやりとりは相手の疲労感を大きくします。
そして、相手が疲れて距離を取ると、「やはり自分は見捨てられる」という感覚が強くなります。
このように、見捨てられ不安を下げるための行動が、結果的に関係を不安定にし、さらに見捨てられ不安を強めることにつながるんですね。
そのため大切なのは、自分を責めることではなく、この悪循環に早く気づくことです。
1-4.自分でできる5つのケア
では、境界性パーソナリティ症の方が恋愛やパートナーシップにおいて安定した自分でいるためにはどうすればよいか、5つのセルフケアをご紹介します。
1.「愛着の警報が鳴っている」と名前をつける
強い不安が出たときは、「本当に捨てられる」と結論を出す前に、「今、私の愛着の警報が鳴っている」と言葉にしてみてください。
感情は大切な情報ですが、感情の強さがそのまま事実の確かさを表すわけではありません。
つまり、「怖いと感じていること」と「実際に関係が終わること」を、いったん分けて考えることが大切です。
2.感情が強いときは行動を少し待つ
怒りや不安が最も強いときに連絡すると、後悔する言葉を送ってしまうことがあります。
そのため、感情が強くなったらいったん行動は止めるようにしてみましょう。
例えば、すぐに答えを出さず20分だけ待つ、メッセージを下書きに保存する、深呼吸をして別の部屋へ移動するなど、感情と行動の間に少し時間を作ります。
目的は、不安を完全に消すことではありません。
反射的、衝動的な行動を抑えて、感情がある状態でも自分が望む行動を選び直すことです。
3.事実と解釈を分けて書く
次は、紙やスマートフォンに、「確認できる事実」と「自分の解釈」を分けて書いてみます。
例えば、事実は「3時間返信がない」だったとします。
そして解釈は「嫌われた」「浮気している」「別れようとしている」が浮かんだとします。
この際、解釈を否定する必要はありません。
ただし、それ以外の可能性も一つだけ考えてみてください。
「仕事中かもしれない」「疲れて眠っているかもしれない」と考えることで、一つの結論に飲み込まれにくくなります。
4.相手を試すのではなく、希望を伝える
どうしても恋愛関係で境界性パーソナリティ症特有の愛着の問題が発動すると、相手を責める言動になりがちです。
この場合、まず自分が何を求めているのかを自覚し、それを適切な方法で伝えます。
例えば、「返信が長くないと不安が強くなるので、忙しいときは短く知らせてもらえると助かる」と、状況、気持ち、希望を分けて伝えるという方法が有効です。
このように、相手を試して愛情を確認するのではなく、自分の希望を直接伝えることが、安定した関係につながります。
5.安心できる場所を恋人だけにしない
恋人が唯一の安心できる相手になると、関係のわずかな変化が非常に大きな危機に感じられます。
そのため、友人、家族、趣味、仕事、運動、相談先など、心を支える場所を少しずつ増やしていきましょう。
これは恋人を大切にしないという意味ではありません。
そもそも境界性パーソナリティ症の場合、愛着の問題があるがゆえに、常に愛着が不足している状態が続いています。
その不足分を相手にだけ求めるのは無理がありますし、関係を不安定にするリスクを高めます。
そのため、関係を長く保つためにも、一人の相手だけにすべての安心を求めないことが役立ちます。
1-5.セルフケアだけで難しいときはカウンセリングへ
自分の反応の仕組みを理解するだけでも、感情に飲み込まれにくくなることがあります。
しかし、強い見捨てられ不安や感情の変化は、頭で理解しただけでは変わりにくいこともあります。
カウンセリングでは、どのような場面で愛着の警報が強くなるのかを整理し、感情の調整、衝動への対処、相手の気持ちを決めつけずに考えるアプローチ、自分の希望を適切に伝える方法の習得などを行います。
境界性パーソナリティ症に対しては、弁証法的行動療法、メンタライゼーションに基づく治療、スキーマ療法など、構造化された心理療法が用いられています。
カウンセリングの目的は、「不安を感じない人」になることではありません。
不安や怒りが生じても、それだけで関係を壊す行動を取らず、自分と相手の両方を守れる選択肢を増やすことです。
同じ恋愛パターンを何度も繰り返している、感情が強くなると自分では止められない、相手との関係によって生活全体が不安定になるという場合は、一人で抱え込まず、心理カウンセラーへの相談を検討してください。
自傷行為や「最悪の選択肢を考える」という場合は、セルフケアだけで対処せず、精神科・心療内科などの医療機関へ早めに相談することが重要です。
まとめ
恋愛で見捨てられ不安が強くなる背景には、愛着不安や愛着回避が関係していることがあります。
Smith et al.(2020)のメタ分析では、境界性パーソナリティ症の特徴が、特に愛着不安と関連し、愛着回避とも関連することが示されました。
ただし、愛着スタイルは変えられない運命ではありません。
愛着の警報に気づく、感情と行動の間に時間を作る、事実と解釈を分ける、相手を試さず希望を伝える、安心できる場所を増やす…。
こうしたアプローチを積み重ねることで、恋愛関係の悪循環を少しずつ変えていくことができます。
また同時に境界性パーソナリティ症からの回復も適切な支援の下で可能となっていきます。
よくある質問
Q1.恋人から連絡がないと不安になるのは、境界性パーソナリティ症ですか?
連絡がないと不安になることだけで、境界性パーソナリティ症とは判断できません。
診断では、感情、自己イメージ、衝動性、対人関係などを含む幅広い状態を専門家が評価します。
不安によって生活や関係に大きな支障がある場合は、医療機関や心理職へ相談してください。
Q2.愛着スタイルは変えられますか?
愛着スタイルは固定された性格ではありません。
安全な人間関係の経験や心理療法を通して、感情や対人行動のパターンが柔軟になることが期待できます。
また愛着スタイルの問題の場合、完全に不安がなくなることより、不安があっても適切な行動を選べることが重要となってきます。
Q3.相手に安心させてもらうのはよくないのでしょうか?
安心を求めること自体は自然です。
ただし、何度確認しても安心できない、相手を試す、相手の行動を制限するといった状態になると、関係が苦しくなります。
そのため相手への希望を具体的に伝えながら、自分でも感情を整える方法を増やすことが大切です。
Q4.カウンセリングでは恋人も一緒に受けたほうがよいですか?
まずは本人の感情や対人関係のパターンを整理する個人カウンセリングが役立つ場合があります。
一方、二人のコミュニケーションや境界線の問題が中心であれば、カップルでの相談が適することも有益です。
Q5.感情的なメッセージを送ってしまったあとはどうすればよいですか?
まず自分を責め続けるのではなく、何が引き金になり、どのような考えや感情が生じたのかを振り返ってください。
そのうえで、相手に対して言い訳を重ねるのではなく、自分の行動を認め、必要な謝罪と今後の具体的な対策を伝えることが大切です。
参考文献
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こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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