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AIに悩みを相談しても大丈夫?心理カウンセラーが考える「肯定してくれるAI」の落とし穴~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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AIに悩みを相談しても大丈夫?心理カウンセラーが考える「肯定してくれるAI」の落とし穴

AIに悩みを相談しても大丈夫?心理カウンセラーが考える「肯定してくれるAI」の落とし穴

2026/08/24

AIに悩みを相談しても大丈夫?心理カウンセラーが考える「肯定してくれるAI」の落とし穴

1.AIに相談すると「気持ちが楽になる」だけでよい?

 

心理カウンセリングを行っていると、自分の悩みや人間関係について、カウンセラーだけでなくAIにも相談しているというケースを耳にする機会が増えてきました。

 

AIは時間を気にせず話すことができ、言葉を選ばなくても長い相談を受け止めてくれます。

 

また人には話しにくいことでも入力しやすく、「自分の気持ちを分かってもらえた」と感じることもあるでしょう。

 

しかしその一方で、私は心理相談にAIを使う際には、注意すべき点もあると考えています。

 

特に問題になるのが、AIが相談者の気持ちだけでなく、判断や行動まで必要以上に肯定してしまうことです。

 

Chengら(2026)の研究では、AIがユーザーに過度に同意したり肯定したりする「sycophancy(迎合・追従)」が、人の判断に実際に影響することが示されました。

 

つまり、AIは悩みを言語化したり考えを整理したりする補助として利用できますが、自分の判断が正しいかを確認するためだけに使うと、かえって視野を狭くしてしまう可能性がある、ということなんですね。

 

そこで今回のブログでは、AIに相談をする際の危険性と賢い使い方、そして心理カウンセリングとの違いについてシェアしたいと思います。

 

2.「迎合するAI」とは何か

 

研究でいうsycophancyとは、AIがユーザーに対して過度に同意したり、褒めたり、行動を肯定したりすることを指します。

 

つまり生成AIがユーザーの意見や誤った前提に過剰に同調・肯定してしまう現象をさします。

 

たとえば人間関係の問題について相談したとき、「その状況で腹が立ったのですね」と気持ちを理解することと、「あなたは何も悪くありません。相手がおかしいです」と判断することは別です。

 

心理カウンセリングでも、相談者の感情を理解し、そう感じるに至った背景を丁寧に扱います。

 

しかし、気持ちを受け止めることと、ご相談者の考えや行動を無条件に正しいとすることは同じではありません。

 

むしろカウンセリングでは、「別の見方はないだろうか」「相手の立場から見るとどうだろうか」「自分の行動が問題の維持に関わっていないだろうか」といった検討も必要になります。

 

3.AIは人間よりも相談者を肯定しやすかった

 

Chengらは、11種類の主要なAIモデルについて、一般的な相談、人間関係上の問題、不適切な行動を含む相談などを分析しました。

 

その結果、AIはユーザーの行動を人間より平均49%多く肯定していました。

 

さらに、人間側では相談者に問題があると判断されたケースでも、AIは51%のケースで相談者側を肯定していました。

 

「49%」という数字は、AIが49%の相談ですべて間違っていたという意味ではありません。

 

これは同じような相談に対する人間の回答と比較すると、AIのほうが相談者を肯定する頻度が約1.5倍高かったという意味です。

 

もちろん、人間の多数意見が必ず正しいわけでもありません。

 

しかし、少なくともAIを「自分とは違う中立的な意見を聞くための存在」と考えている場合には注意が必要であることを、この研究結果は示しています。

 

4.AIに肯定されると「自分のほうが正しい」と感じやすくなる

 

研究者たちはさらに、3つの事前登録実験、合計2,405人を対象として、迎合的なAIとのやり取りが人の判断を変えるのかを調べました。

 

その結果、迎合的なAIとやり取りした参加者では、自分の判断や行動のほうが正しいという確信が強まり、人間関係であれば相手との関係を修復しようとする意図が低下しました。

 

初期の実験では、仮想的な対人トラブルについて迎合的AIの回答を読んだ場合、「自分は正しい」という判断がおよそ62%高くなり、謝罪や行動修正などの関係修復への意図は28%低くなりました。

 

さらに、自分自身が実際に経験した対人トラブルをAIと話す実験でも、自分が正しいという認識は約25%高くなり、関係を修復しようとする意図は約10%低下しました。

 

つまり、これは単に「AIに褒められて少し気分が良くなった」という話ではありません。

 

AIからどのような返答を受けるかによって、出来事そのものの捉え方や、その後に相手へどう行動するかまで変わる可能性があるということです。

 

5.心理相談では「自分が正しいか」だけを確認すると問題が起こりやすい

 

これは、心理的な相談をAIにする際に特に注意したいところです。

 

例えば人間関係で傷ついているとき、私たちはどうしても次のような答えを求めたくなるものです。

 

✔「私は悪くないですよね」
✔「相手がおかしいですよね」
✔「この判断で間違っていませんよね」

 

それ自体は自然な心理です。

 

しかし、そこでAIが繰り返し自分の立場だけを肯定すると、確証バイアス、つまり自分がすでに信じている考えに合う情報だけを受け入れる傾向が強化される可能性があります。

 

実際、研究では迎合的AIほど、対人トラブルの「もう一人の当事者」について触れたり、その人の視点から考えるよう促したりすることが少ないことも示されました。

 

一方、心理カウンセリングではご相談者を否定するためではなく、問題をより正確に理解するために、複数の視点を検討します。

 

というのは、「あなたが傷ついたこと」と「あなたの解釈が必ず正しいこと」は別だからです。

 

6.問題なのは「肯定してくれるAIほど信頼したくなる」こと

 

さらに興味深い結果があります。

 

迎合的なAIは利用者の判断を偏らせる可能性があったにもかかわらず、参加者はそのAIの回答を約9%高品質と評価しました。

 

また、AIへの信頼も高くなり、「同じような相談をするときにもう一度利用したい」という意図は13%高くなっていました。

 

つまり…

 

自分を肯定してくれる

良い相談相手だと感じる

もっと相談したくなる

 

…という循環が生じる可能性があります。

 

ここで論文タイトルにある「dependence(依存)」を、アルコール依存症などと同じ医学的な意味で捉えるべきではありません。

 

今回の研究で直接確認されたのは、主にAIへの信頼や再利用意図の上昇です。

 

したがって、より正確には、迎合的なAIを繰り返し頼りたくなる条件が形成される可能性があると理解するのがよいでしょう。

 

7. 心理的な悩みをAIに相談するときに注意したいこと

 

AIへの相談で注意したいのは、人間関係について判断が偏ることだけではありません。

 

不安や抑うつ、強迫的な悩みなどについて相談するときにも、AIとのやり取りがかえって問題を維持する場合があります。

 

例えば、不安になるたびに「大丈夫でしょうか」とAIへ確認し、そのたびに安心するという行動を繰り返しているとします。

 

その場では不安が軽くなるかもしれません。

 

しかし、「不安になったら確認しなければならない」というパターンが強くなれば、長期的には不安を維持する要因になることがあります。

 

また、過去の出来事や人間関係について何度もAIと検討することが、問題を整理するためではなく、同じことを繰り返し考え続ける「反すう」になってしまう場合もあります。

 

AIはいつでも返答してくれるという利点がありますが、それは同時に、安心確認や反すうを際限なく続けられるという特徴にもなります。

 

さらにAIは、入力された文章だけをもとに回答します。

 

そのため、相談者の生活状況、症状の経過、表情や行動、周囲との関係などを総合的に評価する心理アセスメントとは異なります。

 

そのため、AIは自分の考えを言葉にしたり心理学的な情報を調べたりする補助として利用することはできますが、心理状態を正確に判断してもらうことや、心理療法そのものの代わりとして利用することには慎重である必要があります。

 

8.心理カウンセリングとAI相談の大きな違い

 

心理カウンセリングでは、ご相談者にとって心地よい回答だけを返すことが目的ではありません。

 

もちろん、安全な関係を作り、気持ちを理解することは重要であるため、それは非常に重視されます。

 

しかし同時に、以下の検討も行います。

 

✔「その考えは事実と一致しているだろうか」
✔「ほかの可能性はないだろうか」
✔「今の行動は長期的に望む人生につながっているだろうか」
✔「相手にはどのように見えているだろうか」

 

認知行動療法でも、相談者の考えをカウンセラーが否定するのではなく、証拠や別の解釈を一緒に検討します。

 

良い心理支援とは、何でも肯定してもらうことではなく、自分では気づかなかった視点まで含めて考えられるようになることだと私は考えています。

 

9.AIへの相談そのものが悪いわけではない

 

一方で、今回の研究から「AIには心理的な相談をしてはいけない」と結論づけるべきではないと考えられます。

 

AIは、頭の中にある考えを書き出す、気持ちを言語化する、心理学的な知識を調べる、カウンセリングで相談したい内容をまとめるといった用途では便利な道具になり得ます。

 

大切なのは、AIの回答を「客観的な判定」と考えないことです。

 

例えば人間関係について相談するときには…

 

✔「私の立場を肯定するだけでなく、相手の視点からも検討してください」

✔「私の考えに問題がある可能性も含めて指摘してください」

✔「私に都合のよい解釈になっていないか検討してください」

 

…といった使い方をすることで、一方向の肯定を減らせる可能性があります。

 

ただし、これによって専門的な心理アセスメントや心理療法そのものを代替できるわけではないという点には注意が必要です。

 

10.AIは「答えをもらう場所」より「考える材料を増やす場所」として使う

 

心理的な問題についてAIを利用するときに、私は一つの基準が役立つと思います。

 

それは、AIに「自分が正しいことを確認してもらう」のではなく、「自分では考えなかった可能性を増やしてもらう」ために使うことです。

 

例えば人間関係の問題には、たいてい一つの視点だけでは説明できない部分があります。

 

自分が傷ついていることも事実かもしれません。

 

その一方で、自分の考え方や行動にも修正できる部分があるかもしれません。

 

心理カウンセリングが目指すのも、相談者を一方的に肯定することではありません。

 

その人の苦しさを丁寧に扱いながら、必要なときには別の視点を加え、自分自身でよりよい選択ができるようになることです。

 

Chengらの研究は、AIが身近な相談相手になりつつある時代だからこそ、「自分を気持ちよく肯定してくれる回答」と「自分にとって本当に役立つ回答」は、必ずしも同じではないことを教えてくれています。

 

よくある質問

 

Q1.AIに悩みを相談しないほうがよいのでしょうか?

 

必ずしもそうではありません。

 

考えを整理したり、心理学的な情報を確認したりする用途では役立つことがあります。

 

ただし、AIの回答を中立的な判定や専門家による心理評価と同じものと考えないことが重要です。

 

Q2.AIが「あなたは悪くない」と言ってくれると安心します。それではいけないのでしょうか?

 

安心すること自体に問題があるわけではありません。

 

ただ、「傷ついた気持ちは理解できる」ということと、「自分の判断や行動には一切問題がない」ということは別です。

 

特に人間関係の問題では、この二つを分けて考える必要があります。

 

Q3.AIと心理カウンセラーでは何が違うのでしょうか?

 

心理カウンセラーは、相談者の言葉だけでなく、これまでの経過、行動パターン、心理状態、生活上の影響などを踏まえて問題を検討します。

 

また、ご相談者にとって重大な問題であれば、十分な配慮をしつつ必要であれば一緒に検討することがあります。

 

つまり「気持ちよく答えてくれること」だけが心理支援ではありません。

 

Q4.人間関係についてAIに相談するときは、どう質問すればよいでしょうか?

 

「私に同意するだけでなく、別の解釈も示してください」「相手の立場から見るとどう考えられますか」「私の考え方や行動に問題がある可能性も指摘してください」といった聞き方が一つの方法です。

 

ただし、AIの回答だけで重要な判断を決めないことも大切です。

 

Q5.AIばかりに相談したくなる場合は問題でしょうか?

 

AIをよく利用すること自体で問題とは判断できません。

 

ただ、人に相談しなくなる、AIから自分を肯定する回答が得られるまで繰り返し質問する、重要な意思決定をほぼAIだけに委ねるようになっている場合には、利用方法を見直す必要があると言えます。

 

実際に今回の研究でも、迎合的なAIほど信頼され、再利用したいという意図が高くなることが示されています。

 

参考文献

Cheng et al.(2026)Sycophantic AI Decreases Prosocial Intentions and Promotes Dependence

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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