心配をやめたいのにやめられないのはなぜ?全般不安症と「最悪に備える心配」の正体
2026/09/11
心配をやめたいのにやめられないのはなぜ?全般不安症と「最悪に備える心配」の正体
不安症、特に全般性不安症の方の場合、「自分でも考えすぎだと分かっています。でも、考えないようにすると余計に不安になります」という状態に陥ってしまう場合があります。
家族に何かあったらどうしよう、仕事で失敗したらどうしよう、病気だったらどうしよう、将来お金に困ったらどうしよう…。
このように不安症を抱えていると、一つの心配が終わっても、また別の心配が浮かんできます。
しかし周囲から「そんなに考えても仕方がないよ」「心配しすぎだよ」と言われても、ご本人にとっては簡単に止められるものではありません。
むしろ、「心配していないと、本当に悪いことが起きそう」「最悪のことを考えておいた方が、何かあったときに耐えられる」という心理状態が生じることは珍しくありません。
こうした心理状態があるがゆえに、「心配を手放せない」という状態になってしまうんですね。
Llera & Newman(2014)は、こうした全般不安症の心配について興味深い研究を行いました。
そして全般不安症の方は、心配によって不安をなくしているのではなく、ある程度不安な状態を保つことで、「安心しているところから突然悪い気分に落ちること」を避けている可能性が浮かび上がってきました。
この考え方を、感情的コントラスト回避モデルと呼びます。
そこで、このブログでは全般性不安症のような不安症を抱えている場合、どうして心配が手放せないのか、ということをシェアしたいと思います。
1.心配しているのに、なぜ心配を続けるのか
改めて考えてみると、心配というのは不思議な行動です。
心配すればするほど気持ちはつらくなります。
それなのに、「考えないようにしよう」としても、また心配は浮かび上がってきます。
そもそも、もし心配がただ苦しいだけなら、本来はやめたくなるはずですよね。
それでも心配が続くということは、心配には何らかの「役割」がある可能性があるということになります。
Llera & Newmanは、その役割を、「突然強い感情に襲われることを防ぐためではないか」と考えました。
つまり、心配していることで気分は悪くなるものの、その状態を維持しておけば、悪い出来事が起きたときに受けるショックを小さく感じられるという考え方です。
2.「最初から覚悟していた方が楽」という感覚
例えば、大切な検査結果を待っているとします。
心配せずに過ごしていて、突然悪い結果を知らされた場合、「まさか」という大きなショックを受ける可能性が高いですよね。
一方で、何日も前から、「きっと悪い結果だ」「最悪のことも考えておこう」と不安な状態を続けていた場合、実際に悪い結果を聞いても、「やっぱりそうだった」と感じるかもしれません。
この場合、ショックや悲しみがなくなるわけではありません。
しかし、「安心している状態から、一気に悪い感情に落ちる感覚」は小さくなります。
この「感情の落差」を避けることが、慢性的な心配の一つの機能ではないかと考えるのが感情的コントラスト回避モデルです。
3.研究でも「心配しておく方が役に立つ」という結果に
Llera & Newman(2014)は、全般不安症の方と、不安症のない方を比較しました。
参加者には、心配する、リラックスする、感情的に中立なことを考えるといった状態を作ってもらい、その後、恐怖や悲しみを引き起こす映像を見てもらいました。
その結果、心配をしていた場合には、すでにネガティブな感情が高くなっていたため、その後に嫌な映像を見ても、感情が急激に悪化する幅が小さくなりました。
つまり、元々ネガティブな感情を持っていたため、ネガティブな情報が入っても、ネガティブ感情の上昇は小さかったんですね。
また、全般不安症の方は、心配しておくことを「その後のつらい感情に対処するために役立った」と感じる傾向がありました。
一方、不安症のない方では、心配することはそれほど役立つ方法とは感じられていませんでした。
つまり、全般不安症の方にとって心配は、単なる苦しい症状ではなく、本人の中では「自分を守る方法」になっている可能性があるのです。
4.「心配しておいてよかった」という学習が生じるメカニズム
たとえば、明日の仕事について、「大きな失敗をするかもしれない」と一晩中考えていたとします。
そして実際にトラブルが起きた場合、「やっぱり心配しておいてよかった。覚悟していたから耐えられた」という感覚を得る可能性があります。
では、逆に何も起こらなかった場合はどうでしょうか。
今度は、「あれだけ心配して準備したから失敗しなかった」と考えることになります。
すると、悪いことが起きても「心配しておいてよかった」となり、悪いことが起きなくても「心配したから防げた」という図式が成立します。
この状態になると、心配が不要だったことを学ぶ機会が少なくなります。
その結果、「心配を手放せない」という状態になりやすくなります。
5.安心すること自体が怖くなることも
全般不安症の方の中には、「リラックスしようとすると逆に落ち着かない」と感じる方は珍しくありません。
普通に考えれば、不安が強いならリラックスできた方が楽なはずですよね。
しかし、「安心したときに限って悪いことが起こりそう」「油断してはいけない」「気を抜いたら対応できなくなる」と感じている場合、リラックスすることそのものが不安になります。
つまり、不安が怖いだけではなく、安心した後に不安になることが怖いという状態です。
これはご本人にとって非常に疲れる状態です。
というのは、常に少し緊張している必要があるため、心が休まる時間が少なくなってしまうからです。
6.「考えすぎないようにする」だけでは難しい理由
こうした心配に対して、「考えないようにしましょう」と伝えても、なかなかうまくいきません。
なぜなら、ご本人にとって心配には、「悪いことに備える」という役割があるからです。
心配をやめることは、単に考える量を減らすことではありません。
ご本人にとっては、それは「何の準備もせずに危険を待つこと」のように感じられるリスクが高くなるんですね。
そのため心理カウンセリングでは、「その心配は正しいですか?」と内容だけを検討するのではなく、「心配しておくことで、何から自分を守ろうとしているのか」という視点が重要になってきます。
7.心配の内容より「心配する理由」を確認する
例えば、「子どもが事故に遭ったらどうしよう」という心配がある場合、事故が起こる確率だけを話し合っても、十分な結果を得ることは難しいのが実情です。
そこで心理カウンセリングでは…
✔「もし心配しないで過ごしたら、何が怖いでしょうか」
✔「安心しているときに悪いことが起きたら、何が一番つらいですか」
✔「心配していることで、少し準備できている感覚がありますか」
✔「何も心配していなかったときに問題が起きたら、自分を責めそうですか」
…といったことを確認します。
すると、「突然ショックを受けるのが怖い」「油断した自分を責めそう」「準備していないと何もできなくなりそうといった、心配の背景にある恐怖が見えてくることがあります。
8.目標は「一切心配しない人になること」ではない
不安をゼロにすることを目標にすると、それ自体が新しい不安につながることがあります。
そもそも、誰でも将来について心配することはあります。
大切なのは、「心配し続けなければ自分を守れない」という状態から少しずつ離れることです。
悪い出来事は、どれだけ心配していても完全には防げません。
そして、予想していなかった出来事が起きれば、感情が大きく動くこともあります。
そこで必要になるのは、「感情が大きく動かないように準備し続けること」ではなく、「予想していないことが起きて感情が動いても、自分はそこから対処できる」という経験です。
9.心配を減らすことより「感情の変化に耐えられること」
感情的コントラスト回避モデルから考えると、全般不安症への支援では、「安心できるようになること」だけでは足りない場合が多いということが言えます。
そのため、「安心しているときに予想外のことが起きても、その感情の変化に耐えられる」という感覚を育てることが重要になります。
例えば、「心配していなかったから失敗した」のではなく、「予想外のことは起きた。でも、その後で対応することはできた」と経験できることです。
これは、不確実な未来を完全に予測しようとする生き方から、「分からないことがあっても、その都度対応できる」という生き方への変化でもあります。
10.心配を責めるのではなく、まず役割を理解する
心配が止まらないと、どうしても自分を責めがちになってしまいます。
しかしLlera & Newman(2014)の研究から考えると、心配は単に悪い癖というより、強い感情から自分を守るために身についた方法である可能性があります。
そのため、まず「心配をなくす」のではなく、「この心配は、自分を何から守っているのだろう」と考えることに意味があります。
そして、心配しなくても悪い出来事に対応できる経験を少しずつ増やしていくことが大切になってきます。
全般不安症からの回復では、未来を完全に予測できるようになることではなく、未来が分からなくても、自分は対応できるという感覚を育てていくことが大切です。
よくある質問
Q1.あらかじめ想定していないと、何か起こった時に対応できないのではないかと不安です
その感覚自体が、全般不安症では珍しくありません。
心配することで「備えている」という安心感が生まれている可能性があります。
まずは無理に心配を止めるより、「心配しなかった場合に何が一番怖いのか」を整理してみることが役立ちます。
Q2.心配して準備することと、病的な心配はどう違うのでしょうか?
具体的な問題について必要な準備を行い、準備が終われば心配も落ち着くのであれば、一般的な心配の範囲であることが多いでしょう。
一方、答えが出ない問題を何度も考え続けたり、一つ解決してもすぐ別の心配へ移ったりする場合には、心配そのものが問題を維持している可能性があります。
Q3.リラックスしようとすると、かえって不安になります。
そのような反応が起こることは珍しくありません。
「安心すると油断してしまう」「落ち着いた後に悪いことが起きる方が怖い」という感覚があると、リラックス自体が不安になる場合があります。
その場合は無理にリラックスしようとするより、その不安が何を意味しているのかを確認することが大切です。
Q4.私は心配性な性格なので、変えることは難しいでしょうか?
性格だけで決まるものではありません。
心配がどのような場面で生じ、何を避ける働きをしているのかを理解することで、心配への対応方法を変えていくことは可能です。
そのため「心配が浮かばない人」になることより、「心配に振り回されにくくなること」を目指す方が現実的かつ効果的です。
Q5.心配が止まらないときは、すぐにカウンセリングを受けた方がよいでしょうか?
心配のために眠れない、仕事や家事に集中できない、何時間も考え続ける、不安のために生活範囲が狭くなっているといった状態が続く場合には、一度心理カウンセラーへ相談する意義はあります。
また心理的負担が強いという場合は、必要に応じて、精神科や心療内科での評価も検討してください。
参考文献
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こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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