境界性パーソナリティ症ではなぜ人間関係に振り回される?愛着と自己主体感の関係~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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境界性パーソナリティ症ではなぜ人間関係に振り回される?愛着と自己主体感の関係

境界性パーソナリティ症ではなぜ人間関係に振り回される?愛着と自己主体感の関係

2026/09/12

境界性パーソナリティ症ではなぜ人間関係に振り回される?愛着と自己主体感の関係

境界性パーソナリティ症の方の多くは、「相手のちょっとした態度で、自分の気持ちが大きく変わってしまう」という悩みを抱えておられます。

 

パートナーから返信が来ないと、「嫌われたのではないか」と不安になる、少し距離を取られると、「見捨てられる」と感じる、反対に、相手が優しくしてくれると急に安心する…。

 

そのため、「相手が関わってくれれば大丈夫なのに」「相手が自分を必要としてくれれば安心できるのに」と感じることがあります。

 

しかし、相手の態度に自分の心の安定をすべて預けてしまうと、相手の行動が変わるたびに自分の気持ちも大きく揺れるというリスクが生じます。

 

Hashworthら(2021)の研究では、境界性パーソナリティ症の特徴が強い人ほど、「自分には自分の心理状態や人生を動かす力がある」という感覚が弱く、不安定な愛着との関連も強いことが示されました。

 

そのため境界性パーソナリティ症への心理支援では、見捨てられ不安や感情の揺れだけでなく、「相手がどうするか」とは別に、「自分には何を選べるのか」という感覚を取り戻していくことも重要だと考えられます。

 

そこでこのブログでは境界性パーソナリティ症を考える上で重要な「自己主体性」と「愛着」を深堀していきたいと思います。

 

1.「自分で自分を動かしている感覚」とは

 

この研究で重要になるのが、「自己主体感」という考え方です。

 

自己主体感とは、簡単に言えば、「自分の人生や自分の状態に対して、自分自身も影響を与えることができる」と感じられることです。

 

例えば、「相手が怒っているから、私はもう駄目だ」ではなく、「相手が怒っていることと、自分が次にどう行動するかは別の問題だ」と考えられることを指します。

 

あるいは、「返信が来ないからどうすることもできない」ではなく、「不安ではあるけれど、返信を待つ間に自分ができることもあると考えられることと言い換えることもできるでしょう。

 

この違いが自己主体感です。

 

ただし、自己主体感が高いということは、「何でも自分で解決できる」という意味ではありません。

 

自分では変えられないことと、自分で選べることを区別できることが重要なんですね。

 

2.境界性パーソナリティ症では愛着の問題が関係することも

 

Hashworthら(2021)の研究では、境界性パーソナリティ症の特徴が強い方では、安定した愛着が少なく、特に「恐れ型」と「とらわれ型」と呼ばれる不安定な愛着が強くみられました。

 

ここでいう愛着とは、不安になったときに、大切な人とのつながりを通して安心を取り戻そうとする心の仕組みの事を指します。

 

成人になると、恋人や配偶者などのパートナーが重要な愛着対象になることがあります。

 

そのため、境界性パーソナリティ症では、単に「人間関係が苦手」というより、恋人や配偶者と言った大切な相手だからこそ感情が激しく動くということが生じやすくなります。

 

3.「とらわれ型愛着」では「相手の評価」が自分の価値になりやすい

 

とらわれ型の愛着では、自分に対する評価が低い一方で、他者からの評価を強く求める傾向があります。

 

そのため、「相手が必要としてくれるなら、自分には価値がある」「相手が離れるなら、自分には価値がない」という状態になりやすくなります。

 

すると、パートナーの態度がそのまま自分自身の評価につながります。

 

例えば、返信が遅いという出来事があったとします。

 

それだけの出来事が、境界性パーソナリティ症の方にとっては「大切にされていない」「必要とされていない」「自分には価値がない」というところまで広がってしまうことが珍しくありません。

 

この状態では、安心するために何度も気持ちを確認したり、相手の愛情を試したりする行動が起こることが多くみられます。

 

4.「恐れ型愛着」では「近づきたい」と「怖い」が同時に起こる

 

一方、恐れ型愛着では、「人とつながりたい」という気持ちがありながら、「信頼すると傷つけられるかもしれない」という恐怖も強くなります。

 

すると、「そばにいてほしい」と思って近づいたにもかかわらず、親密になると急に怖くなり、相手を遠ざけることがあります。

 

しかし、本当に相手が離れると今度は見捨てられる不安が強くなってしまいます。

 

その結果…

 

近づく → 怖くなる → 遠ざける → 相手が離れる → 見捨てられ不安が強くなる → また近づく

 

…という悪循環が生じることにつながります。

 

そのためご本人にとっても、「自分でも何をしたいのか分からない」という状態になることがありますが、それは当然ですが単なる気まぐれではありません。

 

この場合は、安心を求める気持ちと、傷つけられることを避けようとする気持ちが同時に働いていると考える必要があるでしょう。

 

5.境界性パーソナリティ症では自己主体感が低い傾向がみられた

 

Hashworthらの研究では、境界性パーソナリティ症の特徴が強いグループでは、そうでないグループと比較して、自己主体感が低い傾向が確認されました。

 

これは、「自分の状態は自分よりも周囲の出来事や他人によって決まる」と感じやすいことを意味します。

 

ただし、「境界性パーソナリティ症だから主体性がない」という意味ではありません。

 

また、この研究は一時点で両者の関係を調べた研究なので、自己主体感が低いことが境界性パーソナリティ症の原因だと証明したわけでもありません。

 

むしろ、長年にわたり強い感情の揺れや不安定な人間関係を経験することで、「自分ではどうすることもできない」という感覚が強くなった可能性が考えられます。

 

そのため重要なのは、現在の自分の中でどの程度「選べる感覚」が残っているかを見ることです。

 

6.「相手を変えること」が心の安定の条件になると苦しくなる

 

例えば、「パートナーが連絡を増やしてくれれば安心できる」という状態を考えてみましょう。

 

確かに連絡が増えれば、一時的には安心できるかもしれません。

 

しかし、それだと「安心できるかどうかを決める力が、すべて相手側にある」ということになります。

 

すると次に連絡が減ったとき、再び不安になります。

 

もちろん、相手に希望を伝えることは必要です。

 

問題なのは、「相手が変わらなければ、自分は何もできない」という状態になることです。

 

そのため、境界性パーソナリティ症の場合はパートナー等に対して過大な要求や確認行動が増えるということになります。

 

そのため心理カウンセリングでは、「相手に何を求めるか」と「自分自身でできること」を分けるということが重要になります。

 

7.「確認しない」ことより「確認するかどうかを選べる」こと

 

境界性パーソナリティ症において見捨てられ不安が強いと、「私のこと好き?」「別れるつもりはない?」と確認したくなることがあります。

 

ここで目標を、「確認してはいけない」とすると、別の苦しさが生じます。

 

しかし自己主体感という視点から大切なのは、「確認したい衝動が起きても、そのまま行動するかどうかを自分で選べること」です。

 

例えば、「今、ものすごく確認したくなっている」と気づきます。

 

その上で、「少し待つ」「まず気持ちを整理する」「別の方法で不安を落ち着かせる」という選択肢を持つことが大切になります。

 

この「選択肢がある・選択肢を選べる」という感覚そのものが、自己主体感につながります。

 

8.相手の気持ちを「確定しない」ことも重要

 

境界性パーソナリティ症では、強い不安が生じると…

 

✔「返信がない=嫌われた」

✔「表情が冷たい=怒っている」

✔「距離を取った=別れたいと思っている」

 

…というように、相手の気持ちを一つに決めてしまうことが珍しくありません。

 

このようなときには、「自分は今どう感じているのか」「実際に確認できる事実は何か」「相手が何を考えているか、本当に分かっているのか」を分けて考えることが役に立ちます。

 

例えば、「私は今、捨てられるような怖さを感じている。でも、相手が本当に別れようと思っているかはまだ分からないと考えられるようになれるようになると、どうでしょう?

 

この「分からないまま考えられる力」は境界性パーソナリティ症の回復において非常に大きな意味を持ちます。

 

9.回復とは「誰にも頼らないこと」ではない

 

境界性パーソナリティ症からの回復を、「人に依存しないようになること」と考えるのは妥当ではありません。

 

人は誰でも誰かに頼ります。

 

そのため重要なのは、頼らなければ何もできない状態から、頼ることも自分で選べる状態へ変わることです。

 

パートナーに安心させてもらうこともあってよいのです。

 

ただ、「相手が安心させてくれなければ、自分は完全に崩れてしまう」という状態から、「相手に助けてもらうこともできるし、自分自身でも少し対処できる」という状態を増やしていく。

 

この違いは非常に大きいものです。

 

10.「自分には何が選べるか」を少しずつ増やしていく

 

Hashworthら(2021)の研究から考えると、境界性パーソナリティ症への心理支援では、愛着の問題とともに、「自分には、自分の人生や行動を動かす力がある」という感覚を育てることにも意味があると言えます。

 

相手が連絡するかどうかは、自分には決められません。

 

相手がどのような気分でいるかも、自分には決められません。

 

しかし、「自分がどのタイミングで連絡するか」「不安が強くなったとき、まず何をするか」「相手を責める前に一度立ち止まるか」「自分の気持ちをどのような言葉で伝えるか」は、自分で選べることができます。

 

境界性パーソナリティ症の支援やセルフケアでは、このような小さな選択を積み重ねていくことが大切になってきます。

 

目標は、「相手がいなくても平気になること」ではありません。

 

そうではなく、「大切な人との関係を持ちながら、それでも自分自身の人生を自分で選べる部分を増やしていくこと」ということです。

 

Hashworthら(2021)の研究は、境界性パーソナリティ症と愛着の不安定さ、そして自己主体感が密接に関連している可能性を示しています。

 

もし今、「相手の態度によって自分の一日がすべて決まってしまう」「見捨てられそうになると、自分では自分を止められない」と感じているのであれば、単に「依存しすぎている」と自分を責めるのではなく、「私は今、何を自分で選べるだろう」という問いから始めることが、回復への一つの手がかりになっていきます。

 

よくある質問

 

Q1.パートナーから返信がないと、何も手につかなくなります。境界性パーソナリティ症だからでしょうか?

 

その反応だけで境界性パーソナリティ症とは判断できません。

 

ただ、見捨てられ不安が強い場合には、返信の有無が安心感と強く結びつくことがあります。

 

大切なのは、返信がない時間に何を考え、何を恐れ、どのような行動を取りたくなるのかを整理することです。

 

Q2.相手に何度も「好き?」と確認するのはやめた方がよいですか?

 

確認すること自体が悪いわけではありません。

 

ただ、確認しなければ安心できない状態が続くと、確認する回数が増えていくことがあります。

 

まず「確認したくなったときに、すぐ行動する以外の選択肢を持てるか」を考えることが大切です。

 

Q3.パートナーに依存しないように、一人で何でもできるようになった方がよいのでしょうか?

 

その必要はありません。

 

人とのつながりは大切です。目標は誰にも頼らないことではなく、「頼ることを含めて、自分で選べること」です。支えてもらいながら、自分自身でも感情に対応できる範囲を少しずつ広げていきます。

 

Q4.相手が本当に冷たい場合でも、「自分の愛着の問題」と考えなければいけませんか?

 

いいえ。すべてを自分の愛着の問題として片づける必要はありません。

 

実際に相手が無視する、威圧する、傷つけるといった問題があれば、それは別に検討する必要があります。

 

自分の不安による解釈と、実際に相手が取っている行動の両方を見ることが重要です。

 

Q5.境界性パーソナリティ症でも、人間関係は安定するようになりますか?

 

可能です。

 

症状や対人関係のパターンは固定されたものではありません。

 

心理療法やセルフケアでは、感情の調整、見捨てられ不安への対応、相手の気持ちを決めつけないこと、衝動的な行動の前に立ち止まることなどを重視します。

 

このように自分で選べる行動が増えることが、人間関係を安定させる重要な一歩になります。

 

参考文献

Hashworth, T., Reis, S., & Grenyer, B. F. S.(2021)Personal Agency in Borderline Personality Disorder: The Impact of Adult Attachment Style.Frontiers in Psychology, 12, 669512.DOI: 10.3389/fpsyg.2021.669512

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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