全般不安症で心配が取らまらない理由~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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全般不安症ではなぜ心配が止まらない?「感情をうまく扱えない」という視点から考える

全般不安症ではなぜ心配が止まらない?「感情をうまく扱えない」という視点から考える

2026/10/08

全般不安症ではなぜ心配が止まらない?「感情をうまく扱えない」という視点から考える

全般不安症の方は、常に不安や心配事が頭から離れないという悩みを抱えがちになります。

 

そして、「自分は考えすぎる性格なのでは」「もっと気持ちを切り替えられればいいのに」と思いを抱いている方も大勢います。

 

しかし、全般不安症の心配には、単なる「考えすぎ」だけでは説明できない心理的な役割がある可能性があります。

 

Menninら(2005)は、全般不安症では、感情が強く生じやすく、その感情を理解したり受け入れたり、うまく扱ったりすることに困難があるため、「心配を使って感情をコントロールしようとしている」のではないかと考えました。

 

そのため、不安や心配だけを見るのではなく、「その心配の下にどんな感情があるのか」を見ることが大切になってくるんですね。

 

そこで今回は全般性不安症(全般性不安障害)と感情調節の観点からシェアしたいと思います。

 

1:全般不安症は「心配が多い」だけではない

 

全般不安症では、慢性的な心配が中心的な症状です。

 

例えば、仕事、健康、家族、お金、将来…。

 

そして一つの心配が落ち着いても、別の心配が始まることも珍しくありません。

 

例えば、「明日の会議が怖い」という感情があるとします。

 

その怖さをそのまま感じる代わりに、「何を聞かれるだろう」「準備不足ではないか」「失敗したらどうしよう」「上司にどう思われるだろう」と頭の中で考え続けてしまうとします。

 

この時、「心配する言ことで感情から距離を取る」という方法が生じやすくなります。

 

ここでいう「心配することで感情から距離を取る」とは、感情がなくなるという意味ではありません。

 

例えば、本当は「失敗して評価されなくなるのが怖い」と感じているときを考えてみましょう。

 

その怖さや傷つきそうな気持ちを直接感じるのはツラいですよね。

 

その代わりに、「失敗したらどうしよう」「もっと準備した方がよいのでは」と考え続けることに意識を向けるということです。

 

つまり、「怖い」「悲しい」「傷つきたくない」と感じることから、「どうしよう」と考えることへ移ることで、感情そのものを直接味わわずに済むわけです。

 

そのため、「大切な人に嫌われるのが怖い」という気持ちがあっても、「返信が遅いのはなぜだろう」「何か悪いことを言っただろうか」「もう一度連絡した方がいいだろうか」と考え続けている間は、「嫌われるかもしれなくて悲しい、怖い」という感情そのものには十分に触れずに済みます。

 

このように心配は、感情をなくすというより、感情を直接感じる代わりに頭の中で考え続ける方法として機能するんですね。

 

この場合、一時的には、その方が感情を扱いやすく感じるかもしれません。

 

しかし、心配によって感情との接触を避け続けると、「怖さや悲しさがあっても、自分はそれを受け止められる」という経験が得られにくくなります。

 

そのため、「感情が出る→その感情を直接感じるのがつらい→『どうしよう』と心配する→一時的に感情そのものから意識が離れる→また感情が出る→再び心配する」という循環が続く可能性があります。

 

このように従来から、心配には「つらい感情や鮮明なイメージから距離を取る役割」があると考えられてきました。

 

しかしMenninらは、「そもそも、なぜ感情から距離を取りたくなるのか」というところに注目しました。

 

そこで示したのが、感情調節不全モデルです。

 

全般不安症では、感情そのものが強く、理解しにくく、怖く感じられ、しかもどう扱えばよいか分かりにくいという問題が生じます。

 

そのために心配という認知活動を使って、感情をコントロールしようとするのではないか、と考えました。

 

そして感情調整不全モデルには4つの特徴があります

 

特徴1:感情が強く生じやすい

 

このモデルの最初の特徴は、感情反応が強く生じやすいことです。

 

具体的には「感情強度の高さ」です。


著者らは、全般不安症の人では感情反応が、「起こりやすく、速く、強い」可能性を示唆しています。

 

例えば、上司から少し厳しいメールが届いたとします。

 

ある方なら、「少し気になるな」で終わるかもしれません。

 

しかし別の方では、「怒らせたのでは」「評価が下がったのでは」「仕事を失うのでは」と、強い不安につながることがあります。

 

これは「感情的すぎる」という性格評価ではありません。

 

同じ出来事でも、感情のスイッチが入りやすく、その反応が強くなりやすい可能性があるということです。

 

研究でも、全般不安症の特徴がある人では、ネガティブな感情反応が強い傾向がみられました。

 

特徴2:「何となくつらいけれど、何を感じているのか分からない」

 

二つ目は、感情を理解する難しさです。

 

具体的には「感情理解の困難」です。


これは、感情に気づかないというより、「何かつらい。でも、これは不安なのか、怒りなのか、悲しみなのか、自分でもよく分からない」という状態です。

 

これは、「感情は強く感じているのに、それが何なのかうまく整理できない」という状態です。

 

例えば、「仕事のことが不安です」と感じているとします。

 

しかし丁寧に見ていくと、その中には…

 

✔「失敗したら見放される」という恐れ

✔「努力しているのに評価されない」という悲しみ

✔「なぜ自分ばかり」という怒り

 

というものがが混ざっているかもしれません。

 

これらをうまく区別できないと、全部まとめて「心配」として考え続けることが起こりやすくなります。

 

特徴3:「不安になること自体が怖い」

 

三つ目が、このモデルで特に重要な「感情への否定的反応」です。

 

これは単に不安になるだけではありません。

 

「不安になることが怖い」という二次的な反応によるものです。

 

例えば、「こんなに不安になったら自分は壊れてしまう」「落ち込んだら元に戻れなくなる」「怒りを感じたら、自分をコントロールできなくなる」と考えているとします。

 

つまり、不安があることより、「不安を感じている自分」がさらに怖くなるという状態です。

 

Menninらの研究では、不安だけでなく、悲しみや怒りといった感情についても、全般不安症の人はその感情を否定的に捉えやすい傾向がみられました。

 

場合によっては、「安心すると気が緩んで悪いことが起きそう」というように、ポジティブな感情さえ警戒されることがあります。

 

特徴4:感情を「消さなければ」と思うほど、扱いにくくなることも

 

四つ目が、「不適応的な感情管理」です。

 

感情が強く、何を感じているのか分かりにくく、しかも「この感情は危険だ」と思えば、当然、「何とかしてこの感情を消したい」となります。

 

しかし、感情を完全に抑え込もうとすると、かえってその感情に注意が向き続けることにつながります。

 

そのため、感情を感じないようにするという方法を取ることにつながります。

 

✔不安にならないようにする。

✔悲しくならないようにする。

✔怒りを感じないようにする。

 

こうした努力が強くなりすぎると、「感情を感じること自体が問題」になってしまいます。

 

そこで使われやすい方法の一つが、「心配し続けること」です。

 

2:心配は「感情を考えに変える」方法になることがある

 

例えば「明日の会議が怖い」という感情があるとします。

 

その怖さをそのまま感じる代わりに、「何を聞かれるだろう」「準備不足ではないか」「失敗したらどうしよう」「上司にどう思われるだろう」と頭の中で考え続けると、どうなるでしょう。

 

すると、「怖い」という直接的な感情から、「考える」という認知活動へ移ることができます。

 

一時的には、その方が扱いやすく感じるかもしれません。

 

しかし、心配によって感情との接触を避け続けると、「この感情があっても大丈夫だった」という経験が得られにくくなります。

 

そのため、「感情が出る→心配する→一時的に感情から距離を取る→また感情が出る→再び心配する」という循環が続く可能性があります。

 

3:「心配をやめる」だけではうまくいかない理由

 

全般不安症の方に、「考えても仕方ないですよ」「もっと考えないようにしましょう」と伝えても、なかなか心配はとまらないものです。

 

これは本人がそのことを理解していないから、とは言えません。

 

心配が、感情に対処するための方法として機能しているのであれば、「心配だけを取り上げても、その下の感情が残る」からです。

 

そこでカウンセリングでは、「何を心配していますか」だけでなく…

 

✔「そのことを考えると、どんな感情が出てきますか」

✔「その感情を感じることの何が怖いのでしょうか」

✔「その感情が出たとき、普段どのように対処していますか」

 

…というところまで確認することが大切になります。

 

4:カウンセリングでは「感情をなくす」のではなく「扱えるようにする」

 

感情調節不全モデルから考えると、目標は、「不安にならない人になること」ではありません。

 

むしろ…

 

① 不安に気づく。

② 「これは不安だ」と名前をつける。

③ その感情が何を伝えているのか考える。

④ 不安があること自体を危険視しない。

⑤ 不安があっても必要な行動を選ぶ。

⑥ 必要なら落ち着かせる方法を使う。

 

…といった形で、感情を扱う力を広げていくことが重要になります。

 

ここから、Menninらは後に感情調整療法を発展させていきました。

 

5:「心配の下にある感情」を見つける

 

これまでの背景があるため、ケアにおいては心配の内容だけを追い続けるより、「その心配の下にある感情は何か」を探ることがあります。

 

例えば「子どもの進学が心配です」という話でも、その下には…

 

✔「失敗させたら親として責任がある」という恐れ

✔「自分の手から離れていく」という寂しさ

✔「なぜ本人はもっと頑張らないのか」という怒り

 

…という感情や思いがあるかもしれません。

 

このとき、「心配をなくそう」とするより、「私は寂しいのかもしれない」「怒っている部分もある」と整理できることで、心配とは違う形で感情を扱えるようになることが期待できます。

 

6:感情に「気づけない」のではなく、「どう扱えばよいか分からない」ことも

 

全般不安症の方のすべてが、自分の感情に気づけないわけではありません。

 

むしろ…

 

✔感情には気づいているけれど、何なのか整理できない

✔分かっていても受け入れにくい

✔どう扱えばよいのか分からない

 

…という状態の方が近い場合があります。

 

そのため、「もっと自分の感情に気づきましょう」だけでは十分ではありません。

 

気づいた後に、「その感情とどう付き合うか」まで考える必要があります。

 

7:「心配は感情を避ける」のか、それとも「不安を維持する」のか

 

ここで、以前紹介したLlera & Newman(2014)の感情的コントラスト回避モデルと比べると、さらに理解しやすくなります。

 

Menninらは、「感情が強く、理解しにくく、怖く、扱いにくいから、心配によって感情から距離を取ろうとする」と考えました。

 

一方、Llera & Newmanは、「心配することであえてネガティブな感情を維持し、突然さらに悪い感情になる『落差』を避けている」と考えました。

 

これらは、一見すると矛盾しているように見えます。

 

しかし、「心配によって、生々しい感情やイメージとの直接的な接触は避けながら、慢性的な緊張や不安は維持している」と考えれば、両方が同時に起こる可能性があります。

 

つまり、「感情を避けたいから心配する」

 

そして同時に、「突然感情が悪化するのが怖いから、心配によって身構え続ける」ということです。

 

この2つの視点を組み合わせると、全般不安症で心配が長く続く理由がより理解しやすくなります。

 

8:心配をなくすことより、感情を扱えるようになること

 

全般不安症では、「心配を止めたい」という願いを持つことは当然です。

 

もちろん、心配によって生活が大きく制限されているなら、それを減らしていくことは大切です。

 

ただし、「心配をしないようにすることだけ」を目標にすると、うまくいかないことがあります。

 

というのは心配の背景に、「強い感情、感情への恐れ、感情をどう扱えばよいか分からないという困難」があるからです。

 

Menninら(2005)の研究から考えると、「なぜこんなに心配するのだろう」という問いに加えて、「私は今、何を感じることを避けようとしているのだろう」と考えてみることが一つの手がかりになります。

 

心配が完全になくならなくても、感情を感じたときに、「これは不安だ」「今、悲しいんだ」「怒っている部分もある」をまず整理します。

 

そして、その感情があっても自分に必要な行動を選べるようにしていきます。

 

そのような状態を増やしていくことも、全般不安症からの回復にとって大切な方向の一つだと言えるでしょう。

 

よくある質問

 

Q1.感情について考えると、余計につらくなりそうで怖いです

 

無理に強い感情へ飛び込む必要はありません。

 

カウンセリングでは、現在扱える範囲で少しずつ確認します。

 

目的は感情を強く味わわせることではなく、「感情が出ても扱える」という経験を増やすことです。

 

Q2.自分が何を感じているのか、うまく言葉にできません

 

珍しいことではありません。

 

最初から「これは悲しみです」と正確に分ける必要はありません。

 

「胸が重い」「落ち着かない」「イライラする」など、身体感覚や大まかな感覚から始める方法もあります。

 

Q3.心配していると準備ができるので、すべての心配を減らす必要はないのでは?

 

その通りです。

 

具体的な問題解決につながる心配までなくす必要はありません。

 

問題になるのは、同じことを繰り返し考えても新しい解決策が増えず、生活や睡眠を圧迫している場合です。

 

「考えること」と「考え続けること」を分けて見ることが大切です。

 

Q4.不安を受け入れるというのは、我慢することですか?

 

単に耐え続けるという意味ではありません。

 

「不安があってはいけない」と戦い続けるのを少しやめ、不安がある状態でも必要な行動を選べるようになることを目指します。

 

必要に応じて休息やコーピングを使うこととも両立します。

 

Q5.心配の原因が実際に解決できる問題なら、感情より問題解決を優先してもよいですか?

 

はい。

 

現実的に解決できる問題なら、具体的な行動に移すことが重要です。

 

一方、答えが出ないことを何時間も考え続けている場合には、問題解決というより感情を管理するための心配になっている可能性があります。

 

両者を区別することが大切です。

 

参考文献

Mennin et al. (2005). Preliminary evidence for an emotion dysregulation model of generalized anxiety disorder. Behaviour Research and Therapy, 43(10), 1281–1310.

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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