毒親に育てられると不安や抑うつが強くなる?「親の心理的コントロール」の影響とは
2026/10/13
毒親に育てられると不安や抑うつが強くなる?「親の心理的コントロール」の影響とは
カウンセリングを行っていると、次のような悩みを訴える方のケアを行うことが少なからずあります。
✔「自分で決めるのが怖い」
✔「自分が悪いことをしたように感じるので、誰かを失望させたくない」
✔「相手が不機嫌になると、すぐ自分のせいだと思ってしまう」
✔「自分が何をしたいのかより、相手が何を望んでいるのかを考えてしまう」
そして、その背景をたどると、次のような経験をされた方が一定数おられます。
✔「親の言うことを聞かないと責められた」
✔「親を悲しませると、自分が悪い子だと思わされた」
✔「自分の気持ちより、親の期待が優先されていた」
一般には、このような親を「毒親」と表現することがあります。
そして心理学的には、こうした養育の一部を親の心理的コントロールという概念で捉えることがあります。
Chyungら(2022)のメタ分析では、親から心理的にコントロールされていると強く感じる子どもほど、抑うつや不安も強い傾向があることが示されました。
ただし、これは「毒親に育てられたら必ず心の病気になる」という意味ではありません。
重要なのは、「親との関係の中で、自分の感情・考え・選択をどのように扱うことを学んできたのか」を見ることです。
そこで、ここでは毒親の養育と抑うつや不安との関係についてシェアしていきたいと思います。
1:「毒親」と「心理的コントロール」は同じではない
「毒親」という言葉を多くの方が目にするようになり、その結果とても広い意味で使われてるようになってきました。
✔暴言が多い。
✔子どもを否定する。
✔過干渉である。
✔無関心である。
✔子どもの人生を支配する。
このように、さまざまな歪んだ親子関係が「毒親」という一言で表現されることがあります。
確かに、これらは子供にとっては有害な養育と言わざるを得ないでしょう。
ただ、毒親の養育の特徴として「子供に対する心理的コントロール」が見られる確率が高いということが言えます。
そしてChyungらの研究が扱った心理的コントロールは、もう少し具体的な概念として取られられました。
ここで言う心理的コントロールとは、子どもの行動だけではなく、考え方や感情、自己評価、親との関係性に働きかけて、親の望む方向へ動かそうとする養育行動を指します。
例えば、「そんなことをしたら、お母さんがどれだけ悲しむと思っているの?」「言うことを聞かないなら、もう知らない」「あなたはそんなふうに考えるべきではない」という関わりです。
2:罪悪感を使う支配
心理的コントロールで特に重要なのが、罪悪感を使って子どもを動かすことです。
親から直接、「それをすると私は傷つく」「そんな子に育てた覚えはない」「私を裏切るの?」と言われ続けたとします。
すると子どもは、「自分の希望を優先すると、親を傷つける」と学ぶ可能性があります。
そうなると成長してからも、「断ると相手がかわいそう」「自分の希望を言うのはわがまま」「相手を失望させるくらいなら、自分が我慢した方がよい」と考えやすくなることがあります。
これは単なる「親の言うことを聞く習慣」ではないため、自分の欲求を持つこと自体に罪悪感を感じるという形で残るリスクが高まるんですね。
3:愛情を引っ込めることも、子どもに強い影響を与えてしまう
もう一つ代表的なのが、「愛情の引き上げ」です。
例えば、親の期待どおりに行動しているときには子供に対して優しい態度をとるとします。
しかし、反対すると急に無視する、話しかけなくなる、冷たくなる、「もうあなたのことは知らない」と言う…。
このような経験が繰り返されると、「愛されるためには、相手の期待に応えなければならない」と学ぶ可能性が高まります。
その結果、大人になっても、「嫌われないようにしなければ」「相手が不機嫌なのは自分のせいかもしれない」「本音を言ったら関係が壊れる」と感じやすくなることに繋がりやすくなります。
4:厳しいルールがあると「毒親的な心理的コントロール」?
ここは大切な区別です。
親が、「夜遅くまで外出しない」「宿題を終えてからゲームをする」「危険な場所には行かない」というルールを決めること自体は、心理的コントロールとは限りません。
これは行動的コントロールと呼ばれます。
親が子どもの年齢に応じて、生活上のルールや境界線を設けることが養育上必要な面があります。
一方、問題になるのは、「何をするか」だけでなく、「何を感じるべきか」「何を考えるべきか」まで親が支配しようとすることです。
つまり、「この行動は危険だからやめよう」と、「そんなことをしたら親を悲しませる。だから自分の気持ちを変えなさい」では、意味合いが全く違ってくる、ということなんですね。
5:心理的コントロールと抑うつ・不安の両方に関連が
Chyungら(2022)は、多くの研究をまとめて分析しました。
その結果、親から心理的にコントロールされていると感じている子どもほど、抑うつや不安が強い傾向が確認されました。
関連の大きさは、研究全体として無視できない程度のものでした。
ただし、「心理的コントロールを受けたから抑うつになった」と一方向の因果関係を証明した研究ではありません。
例えば、子どもの不安が強いために、親が心配して過度に介入することもあります。
つまり、「親のコントロールが子どもの不安を強める」こともあれば、「子どもの不安が親のコントロールを増やす」ということも考えられます。
つまり、親子関係は一方向ではなく、相互作用として考える必要があるんですね。
6:なぜ毒親的な心理的コントロールが抑うつにつながるのか?
心理的コントロールを受け続けると、「私は何をしたいか」より、「どうすれば相手を失望させずに
機嫌を損ねずに済むか」を優先しやすくなります。
すると、「自分の気持ちを優先するべきではない」「自分で決めると失敗する可能性が高い」「相手の期待に応えられない自分には価値がない」といった自己評価につながる場合があります。
こうした状態では、自分の人生を自分で選んでいるという感覚が弱くなります。
その結果として、無力感や自己否定、抑うつが強まることが考えられます。
7:不安の場合は「自分で決めることへの怖さ」が残ることも
不安との関係では、「自分で決める経験が十分に積めないこと」が一つのポイントになります。
親がいつも、「それはやめなさい」「私の言うとおりにしなさい」「あなたには分からない」と決めてしまえば、子どもは…
自分で決める → 結果を経験する → うまくいかなくても対処する
…という経験を積みにくくなります。
その結果、大人になっても、「これで大丈夫?」「この選択で間違っていない?」と誰かに確認したくなることがあります。
つまり、心理的コントロールは、自律性や自己効力感を育てる機会を狭める可能性があると考えることができます。
8:母親と父親では影響が違うのか
ここで「母親から言われたことと、父親から言われたことでは影響が違うのでしょうか」という疑問が生じます。
Chyungら(2022)の分析では、親の性別によって関連の現れ方に違いがみられる部分がありました。
特に抑うつについては、母親からの心理的コントロールとの関連が父親より強く表れる傾向が報告されています。
一方、不安については、母親と父親の違いはそれほど明確ではありませんでした。
ただし、この結果から、「母親の方が子どもに悪影響を与える」と考えるのは適切ではありません。
実際に臨床では、父親の養育によって心に傷を負ってしまっているクライエント様も珍しくありません。
というのは、親子が一緒に過ごす時間、家庭内での役割、文化、子どもの性別、親子関係の近さなど、さまざまな要因が影響するからです。
そのため臨床でも、「母親だったから問題だった」「父親だったから影響が小さい」とは考えません。
むしろ重要なのは、誰から言われたのか以上に、どのような関係の中で、どのようなメッセージを繰り返し受け取ってきたのかです。
例えば「お母さんを悲しませないようにしなさい」と言われ続けた人もいれば、「父親の言うことには逆らってはいけない」という家庭で育った子供もいます。
そこで子どもが、「愛されるには従わなければならない」「反対すると関係を失う」「自分より相手の気持ちを優先しなければならない」と学んだのであれば、その学習が大人になってからの人間関係にも残る可能性があります。
その結果、「パートナーの機嫌を過剰に気にする」「上司に反対意見を言えない」「頼まれると断れない」「自分の希望を言うと罪悪感を覚える」といった形で現れることがあります。
そのためカウンセリングでは、「母親と父親のどちらが悪かったのか」を決めることより、「親との関係から身につけたルールが、今の自分にも必要なのか」を一緒に考えていきます。
子どもの頃には、「親に逆らわない」ことが家庭の中で自分を守る方法だったかもしれません。
しかし、大人になった現在は、「相手を大切にしながら、自分の気持ちも大切にする」という別の選択肢を持つことができます。
9:「親が原因」と決めるより、現在も残っているルールを見る
成人のカウンセリングでは、「親が悪かったのか」を判定することが最終目的ではありません。
それよりも「子どもの頃に身につけたルールが、今も自分を縛っていないか」を考えます。
例えば「相手を怒らせてはいけない」「人を失望させるくらいなら、自分が我慢する」「自分で決めると失敗する」「愛されるには期待に応えなければならない」というルールです。
子どもの頃には、親との関係を守るために必要だったのかもしれません。
しかし、大人になった今も同じルールが必要とは限りません。
10:カウンセリングで重視するもの
毒親的な心理的コントロールを受けてきた方の支援では、「親への怒りを消す」ことも含まれますが、それだけが目標ではありません。
それよりも「自分は本当は何を感じているのか」「自分は何を望んでいるのか」「相手を失望させても、自分の選択をしてよいのか」という部分を少しずつ取り戻していくことが大切になってきます。
これまで、「相手がどう思うか」を基準に生きてきた方が、「私はどうしたいか」という基準も持てるようになること。
それは、親を否定することとは違います。
自分の人生の判断を、自分の手元に戻していくことです。
Chyungら(2022)の研究から考えると、毒親との関係を振り返るときに大切なのは、「親が何をしたか」だけではなく、「その経験から、自分はどんなルールを身につけたのか」を見ることが重要だということが分かります。
よくある質問
Q1.親は私のためを思っていたと言います。それでも心理的コントロールになるのでしょうか?
親の意図と、子どもが受けた影響は分けて考える必要があります。
親に悪意がなくても、罪悪感を使ったり、愛情を引っ込めたりして子どもの選択をコントロールしていれば、心理的コントロールとして機能することがあります。
Q2.親に感謝している部分もあります。それでも「毒親だった」と考えてよいのでしょうか?
親との関係は「良い親」「悪い親」の二択ではありません。
愛情を受けた経験と、傷ついた経験が同時に存在することもあります。
そのため無理にどちらか一方に決める必要はなく、自分にどのような影響が残っているかを考える方が臨床的には重要です。
Q3.親を責めないと、自分のつらさを認めたことにならないのでしょうか?
その必要はありません。
「自分はこういう影響を受けた」と理解することと、「親を悪者にする」ことは別です。
責任追及ではなく、自分の現在の生きづらさを理解するために過去を振り返ることができます。
Q4.大人になって親と離れているのに、なぜまだ影響を受けるのでしょうか?
親が現在そばにいなくても、「人を失望させてはいけない」「自分で決めるのは危険」といったルールが自分の中に残っていることがあります。
そのため、現在の対人関係や仕事でも同じ反応が繰り返される場合があります。
Q5.自分の子どもにも同じことをしてしまわないか心配です
気づいていること自体が重要です。
子どもにルールを示すことと、罪悪感や愛情を使って内面まで支配することは違います。
「私はこうしてほしい」と伝える一方で、「あなたはどう思う?」と本人の感情や考えを尊重することが、心理的コントロールを減らす一つの方法です。
参考文献
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こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
兵庫で親子関係のご相談に対応
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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