うつ病と社会的支援の関係~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

お問い合わせはこちら

うつ病と人とのつながり:「友達の数」より大切な社会的支援と所属感

うつ病と人とのつながり:「友達の数」より大切な社会的支援と所属感

2026/10/24

うつ病と人とのつながり:「友達の数」より大切な社会的支援と所属感

うつ病になってしまうと、人との関係がしんどい、重荷になるというケースが生じやすくなります。

 

しかし、孤独であることはうつ病の回復を妨げる要因にもなります。

 

そのため、こうしたとき「孤立はよくないから、もっと人と会いましょう」と言われても、負担感しか生じない、と言う事にもなってしまいます。

 

確かにうつ病において孤独は回復の阻害要因ですが、しかし実際には、「人と会うことそのもの」が大切なのではありません。

 

De Risioら(2024)が、社会的つながりとうつ病に関する多数のメタ分析をさらにまとめて検討したところ、社会的支援があることは、全体としてうつ病・うつ症状の少なさと関連していました。

 

ここから大切なのは、「たくさんの人と付き合えばよい」ということではありません。

 

それよりも、「自分は誰かとつながっている」「困ったときには頼れる」「ここにいてもよい」と感じられる関係があることが重要です。

 

つまりうつ病と社会的つながりを考えるときには、人間関係の数ではなく、その質や所属感まで見る必要があるんですね。

 

そこでこのブログでは、うつ病と社会的なつながりの関係についてシェアしたいと思います。

 

1:うつ病と関係する「社会的支援」とは

 

社会的支援とは、単に周囲に人がいることではありません。

 

✔つらいときに話を聞いてくれる。

✔困ったときに助けを求められる。

✔体調が悪いときに配慮してもらえる。

✔自分の状態を理解しようとしてくれる。

 

こうした人間関係から得られる支えが社会的支援です。

 

そのため、「家族がいるから孤独ではない「職場に人がたくさんいるから孤立していない」とは限りません。

 

周りに人がいても、「誰にも本当のことを話せない」「愚痴を吐いたら嫌われる」と感じていれば、本人には十分な支えとして経験されないことになってしまいます。

 

また反対に友達が少なくても「この人なら話しても大丈夫」と思える相手が一人いることが、大きな支えになることがあります。

 

2:「友達が何人いるか」より「どんな関係なのか」

 

上記の内容からお分かりいただける通り、友人関係については、人数だけを見るのでは不十分です。

 

子どもや青年期の研究をまとめたメタ分析では、友人の数だけでなく、友人関係の質とうつ症状との間にも関連があることが確認されています。

 

特に、否定的な友人関係は、単純な友人の人数以上に心理的適応と関係する可能性が示されています。

 

これは感覚的に理解しやすいのではないでしょうか。

 

友達が何人もいても、「批判される」「いつも気を遣う」「嫌われないように無理をする」自分の話はできない」という関係ばかりなら、それが支えになるとは言い難いでしょう。

 

反対に、「体調が悪ければ断っても大丈夫」「無理に元気に振る舞わなくていい」「話したくないときには話さなくてもいい」と思える関係なら、人数が少なくても安心につながります。

 

そのため、「友達を増やす」より、「安心できる関係を持てているか」を考えることの方が大切であるといえるでしょう。

 

3:「所属感」という重要な要素

 

もう一つ重要なのが、所属感です。

 

所属感とは、「自分はここにいてよい」「自分はこの集団の一員だ」と感じられる感覚です。

 

その形態は、家族や職場、学校、趣味の集まり、そして地域やオンラインコミュニティなど様々です。

 

社会的アイデンティティとうつ病についてまとめた研究では、自分がある集団の一員だと感じることは、全体としてうつ症状の少なさと関連していました。

 

ただし、研究間のばらつきは大きく、どんな集団でも所属すればよいという単純な関係ではありません。

 

大切なのは、「所属している」という事実より、「そこを自分の居場所だと感じられるか」なんですね。

 

そのため会社に在籍していても、「自分だけ浮いている」と感じていれば、所属感は弱いでしょう。

 

一方、反対に月に一度しか会わない趣味仲間でも、「ここなら自分らしくいられる」と思えるなら、大切な居場所になることがあります。

 

4:うつ病になると起こりやすい「人とのつながりの悪循環」

 

ここで特に注意したいのが、うつ病と社会的孤立の関係は一方向ではないということです。

 

社会的なつながりが少ないからうつ病になる、と単純に考えることはできません。

 

むしろ、うつ病になること自体が、人とのつながりを減らすことがあります。

 

例えば、「うつ状態になる→人と話すのがしんどくなる→LINEを返さなくなる→誘いを断るようになる→周囲からの連絡も減る→「自分には誰もいない」と感じる」→「孤独感や抑うつがさらに強くなる」という悪循環も考えられます。

 

そしてうつ病では、疲労感やアンヘドニアによって、「人に会えば多少楽しいかもしれないけれど、会いに行こうと思えない」こともあります。

 

すると、人間関係から得られる安心感や楽しさに触れる機会そのものが減ってしまいます。

 

しかし、だからといって、無理に人と会えばよいわけではありません。

 

まずは、「短いメッセージを一通返す」「安心できる人と短時間だけ話す」「同じ部屋で家族と過ごす」「カウンセラーなどの支援者と定期的につながる」といった、負担の少ないつながりを切らさないことが現実的といえるでしょう。

 

5:「もっと人に会いましょう」では解決しない

 

うつ病と社会的つながりの研究を見ると、「人間関係が大切なら、もっと人に会えばいい」と思うかもしれません。

 

しかし、私はそれほど単純ではないと考えています。

 

人から傷つけられてきた方、対人関係だけで疲れてしまう方、誰にも理解されない経験を重ねてきた方、うつ病で人に会うエネルギーそのものがない方…

 

そうした方に、「外に出て交流しましょう」と勧めても、負担が増えることにつながるリスクが高くなってしまいます。

 

必要なのは、交流の量を増やすことではなく、「安心してつながれる関係を少しずつ作ること」です。

 

✔「誰となら少し話せるか」

✔「誰なら断っても関係が壊れないか」

✔「どこなら自分を演じなくてもよいか」

✔「困ったときに誰に頼れそうか」

 

これらの視点で考えることが役立ちます。

 

6:一人でいることと、孤立していることの違い

 

一人で過ごすこと自体が悪いわけではありません。

 

人と会った後に一人で休むことで回復する方もいますし、静かな時間が必要な方もいます。

 

問題になるのは、「一人でいたい」と自分で選んでいる状態ではなく、本当は誰かとつながりたいのに、つながれる相手がいない状態です。

 

つまり、孤独と一人時間は同じではないということなんですね。

 

一人で過ごしていても、「必要になればあの人に連絡できる」と思えるのであれば、心理的にはつながっていることがあります。

 

反対に、大勢の人に囲まれていても、「誰にも本当の自分を話せない」のであれば、強い孤独を感じることがあります。

 

そこで回復のために大切になってくるのが、「つながりの量」より「つながりの質」です。

 

De Risioら(2024)の研究が示しているのは、うつ病を本人の心の中だけの問題として考えないことの重要性です。

 

うつ病のケアにおいては、その方の考え方や睡眠、生活の中での活動量、そして薬物療法や心理療法というものはもちろん重要です。

 

しかし同時に…

 

✔誰かに支えられていると感じられるか

✔安心できる友人関係があるか

✔自分の居場所があると感じられるか

✔病気を理由に否定されたり排除されたりしていないか

 

…という社会的な環境も、その方の心の状態と関係しています。

 

そのため、うつ病の回復を考えるときに「もっと人付き合いを増やす」必要はありません。

 

それよりも、「この人となら少し安心できる」「ここなら自分がいてもいいと思える」という関係や場所を、一つずつ取り戻していくことが大切です。

 

また、人とのつながりを回復するとは、社交的になることではありません。

 

自分にとって安全で、無理が少なく、必要なときには支えを求められる関係を持つこと。

 

それも、うつ病からの回復を支える大切な要素の一つだと言えるでしょう。

 

よくある質問

 

Q1.うつ病になってから人と会うのが疲れます。それでも会った方がいいですか?

 

無理に会う必要はありません。

 

大切なのは、人とのつながりを完全にゼロにしないことです。

 

会うことが負担なら、短いメッセージ、電話、オンラインでのやり取りなど、自分にとって負担の小さい方法でも構いません。

 

Q2.友達がほとんどいません。うつ病の回復には不利なのでしょうか?

 

友達の人数だけで決まるわけではありません。

 

人数よりも、「この人には少し頼れる」「この場所では安心できる」という関係があるかどうかが重要です。

 

友人だけでなく、家族、支援者、職場、地域の活動なども社会的なつながりになり得ます。

 

Q3.人に悩みを話すと迷惑をかけそうで、相談できません

 

うつ病では「迷惑をかけてはいけない」という考えが強くなることがあります。

 

しかし、全てを一度に話す必要はありません。

 

「最近少し調子が悪い」「今日は話を聞いてほしい」など、小さく伝える方法から始めることもできますし、その方が話す方も聞く方も負担なく会話をすることができます。

 

Q4.職場にうつ病であることを話した方がよいのでしょうか?

 

必ず伝えるべきとは限りません。

 

ただし、必要な配慮、職場との関係、休職・復職の状況などによって判断は変わります。

 

病名をどこまで伝えるかではなく、「どのような配慮が必要なのか」を整理することから考える方法もあります。

 

Q5.私はもともと一人で過ごすのが好きです。それも問題でしょうか?

 

一人でいること自体は問題ではありません。

 

一人で過ごすことで落ち着いたり回復したりする人もいます。

 

大切なのは、「一人を選んでいる」のか、「本当はつながりたいのにつながれない」のかです。

 

よって、自分にとって心地よい一人時間まで無理に減らす必要はありません。

 

参考文献

De Risio, L., et al.(2024)
Staying connected: An umbrella review of meta-analyses on the push-and-pull of social connection in depression.Journal of Affective Disorders, 345, 358–368.DOI: 10.1016/j.jad.2023.10.112

Schwartz-Mette, R. A., et al.(2020)Relations of friendship experiences with depressive symptoms and loneliness in childhood and adolescence: A meta-analytic review.Psychological Bulletin, 146(8), 664–700.

Postmes, T., et al.(2019)Social identification and depression: A meta-analysis.European Journal of Social Psychology, 49(1), 110–126.

----------------------------------------------------------------------
こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27   サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871

お問い合わせはこちら


----------------------------------------------------------------------

この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

プロフィールはこちら

カウンセラー紹介

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。