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境界性パーソナリティ症(障害)の恋愛の難しさ~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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境界性パーソナリティ症と恋愛の愛着スタイル、見捨てられ不安との関係について

境界性パーソナリティ症と恋愛の愛着スタイル、見捨てられ不安との関係について

2026/06/10

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

境界性パーソナリティ症(障害)の方にとって、恋愛は時に非常に苦しいものになってしまいます。

 

連絡が遅いと不安になる、相手を信じることができず確認行動を繰り返す、相手からの愛情を素直に受け取れない…

 

これらは境界性パーソナリティ症の方が恋愛において抱えがちになる悩みです。

 

このような悩みは、本人にとってとても苦しいものです。

 

こうした悩みは周囲からは「考えすぎ」「重い」「依存しすぎ」と見られてしまうことがありますが、実際には、恋愛関係の中で愛着システムが強く刺激されていると考える方が妥当です。

 

境界性パーソナリティ症と恋愛の困難を理解する上では、愛着不安と愛着回避の視点が重要です。

 

特に、「見捨てられるのではないか」という強い不安は、境界性パーソナリティ症の対人関係の苦しさと深く関係します。

 

そこで、このブログでは境界性パーソナリティ症の恋愛問題、特に愛着と見捨てられ不安についてシェアしたいと思います。

 

※本投稿は公認心理師としての一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の診断・治療を行うものでも効果を保証するものでもありません。

※気になる症状がある場合は、必ず医療機関等の専門機関にご相談ください。

 

1.境界性パーソナリティ症と愛着障害~見捨てられ不安と「近づきたいのに怖い」恋愛の苦しさ~

 

 

境界性パーソナリティ症では、恋愛や親密な人間関係の中で、強い不安や感情の揺れが起こることがあります。

 

このような反応は、ご本人にとっても非常につらいものです。

 

そして、その背景には、愛着の不安定さや見捨てられ不安が関係していることが多々あります。

 

ここでは、Smith & South(2020)の論文をもとに、境界性パーソナリティ症における愛着障害、見捨てられ不安、そして「近づきたいのに怖い」という恐れ回避の仕組みをシェアしたいと思います。

 

1-1.この論文は何を調べた研究なのか

 

まずは、毎回恒例の論文の簡単な解説を…

 

Smith & South(2020)の論文は、恋愛における愛着スタイルと境界性パーソナリティ病理の関連を調べたメタ分析です。

 

この論文では、恋愛関係における愛着スタイルのうち、主に「愛着不安」と「愛着回避」という2つの側面が扱われました。

 

愛着不安とは、相手に見捨てられるのではないか、嫌われるのではないか、関係が終わるのではないかと強く不安になりやすい傾向です。

 

また愛着回避とは、親密な関係に近づきすぎることを怖く感じ、距離を取ろうとする傾向です。

 

この研究では、愛着不安は境界性パーソナリティ症の特徴と比較的強く関連していることが示されています。

 

また、愛着回避も関連していました。

 

さらに、愛着不安と愛着回避が重なる場合、つまり「近づきたいけれど怖い」「頼りたいけれど信じられない」といった状態では、境界性パーソナリティ症の特徴とより強く結びつく可能性があります。

 

ここからわかるのは、境界性パーソナリティ症の恋愛の苦しさは、親密な関係の中で安心を求める気持ちと、傷つくことへの恐れが強くぶつかり合っている状態として理解する必要がある、ということです。

 

1-2.愛着障害とは何か

 

愛着とは、不安なときや苦しいときに、安心できる相手とのつながりを求める心の働きです。

 

人は本来、怖いとき、寂しいとき、傷ついたときに、誰かにそばにいてほしいと感じます。

 

そして、安心できる相手に受け止めてもらうことで、少しずつ気持ちを落ち着かせることができます。

 

しかし、過去の人間関係の中で、安心して頼る経験が少なかったり、頼ったときに拒絶されたり、感情を受け止めてもらえなかったりすると、親密な関係の中で安心することが難しくなるリスクが高まります。

 

その結果、大人になってからの恋愛や対人関係で、相手への猜疑心や離れている時間に強い不安を感じるという問題が生じやすくなります。

 

また、相手の反応に敏感になる、「嫌われたのではないか」とすぐに感じてしまう、不安になると、確認や追いかけ行動が止まらなくなる、逆に、感情的になって相手を突き放してしまうという問題もあります。

 

このような愛着の不安定さは、境界性パーソナリティ症の見捨てられ不安や対人関係の不安定さと深く関係しています。

 

1-3.境界性パーソナリティ症と見捨てられ不安

 

境界性パーソナリティ症を理解するうえで、見捨てられ不安は非常に重要です。

 

見捨てられ不安とは、大切な人が自分から離れていくのではないか、嫌われるのではないか、突然関係が終わるのではないかという強い不安です。

 

恋愛においては、次のような場面で見捨てられ不安が強くなりやすくなります。

 

相手からの返信が遅い。


相手の声のトーンが少し冷たく感じる。


予定を変更される。


相手が一人の時間を求める。


相手が疲れていて、いつもより反応が薄い。


自分以外の人と楽しそうにしている。

 

こうした出来事は、客観的には小さな変化に見えるかもしれません。

 

しかし、境界性パーソナリティ症の方にとっては、「もう大切にされていない」「見捨てられる」「関係が終わる」という苦痛に満ちた解釈が生じてしまうのです。

 

このとき、ご本人の中では不安という心の警報が鳴っているような状態になります。

 

そのため、不安を落ち着かせるために、相手に何度も確認したり、連絡を増やしたり、責めたり、試すような行動につながりやすくなります。

 

またご本人も、後から冷静になると、「またやってしまった」「相手を困らせてしまった」「どうして自分は普通に恋愛できないのだろう」という苦しさにつながってしまいます。

 

1-4.愛着不安とは何か

 

愛着不安とは、親密な相手との関係において、見捨てられることや嫌われることへの不安が強くなりやすい傾向です。

 

境界性パーソナリティ症では、この愛着不安が強く現れることがあります。

 

たとえば、相手からの返信が遅いと、それだけで心が大きく揺れることがあります

 

そして、返信の遅さに対して次のような破局的な解釈が成立してしまいます。

 

「何か悪いことを言ったのかもしれない」


「もう嫌われたのかもしれない」


「他の人のほうが大切なのかもしれない」


「このまま離れていくのではないか」

 

いったん、こうした解釈が成立すると、不安を落ち着かせるために、何度も連絡するといった行動が生じる場合が珍しくありません。

 

また相手の気持ちを確認したくなり、「本当に好き?」「怒ってる?」「もう嫌になった?」という確認行動が生じやすくなります。

 

ここで大切なのは、ご本人は関係を失うことが怖くてたまらない、ということです。

 

ただし、不安が強すぎると、どうしても確認、追及、怒り、泣く、試し行動、突然の別れ話などにつながりやすくなり、結果として関係が不安定になってしまいます。

 

1-5.愛着回避とは何か

 

境界性パーソナリティ症では、愛着不安だけでなく、愛着回避の側面も見られることがあります。

 

愛着回避とは、親密な関係に近づきすぎることを負担に感じ、距離を取りたくなる傾向です。

 

恋愛では、相手に頼れない、自分の本音を話すのが怖い、一人でいたほうが傷つかずに済むと感じる、といった形で表れやすい傾向があります。

 

もちろん、愛着回避がある方は、恋愛を大切にしていないわけではありません。


ただ、親密になることに対して、どこかで「危険だ」と感じていることがあるのです。

 

というのは、以下のような思考が自動的に働いてしまうのです。

 

近づくと傷つくかもしれない。


頼ると裏切られるかもしれない。


本音を出すと拒絶されるかもしれない。

 

このような恐れがあるため、親密になりたい気持ちがあっても、実際に近づくと怖くなり、距離を取ってしまうことにつながります。

 

1-6.恐れ回避とは何か~アクセルとブレーキが同時に踏まれる状態~

 

愛着不安と愛着回避が両方強い場合、「恐れ回避型」や「無秩序型」に近い愛着のあり方として理解されることがあります。

 

恐れ回避をイメージしやすく言うと、心の中でアクセルとブレーキを同時に踏んでいる状態です。

 

アクセルは、「近づきたい」「愛されたい」「そばにいてほしい」「見捨てられたくない」という気持ちです。

 

一方で、ブレーキは、「近づいたら傷つく」「頼ったら裏切られる」「大切にされたら失うのが怖い」「相手を信じるのが怖い」という気持ちです。

 

つまり、心の中では次のようなことが同時に起こっています。

 

相手に近づきたい。でも、近づくのが怖い。

 

見捨てられたくない。でも、頼ると裏切られそうで怖い。
 

大切にされたい。でも、大切にされるほど失うのが怖くなる。

 

安心したい。でも、安心できる関係ほど落ち着かない。

 

この状態では、恋愛関係の中で「追いかける」と「突き放す」が交互に起こることになります。

 

不安になると、相手に強く近づきたくなります。

 

何度も連絡したり、気持ちを確認したり、相手を求めたりします。


ところが、いざ相手が近づいてくると、今度は怖くなります。「本当に信じていいのか」「裏切られるのではないか」と感じ、相手を疑ったり、距離を取ったりしてしまいます。

 

これは一見すると矛盾しているように見えます。


しかし、ご本人の中では、愛着を求める気持ちと、傷つくことを避けようとする気持ちが同時に動いているのです。

 

境界性パーソナリティ症の愛着の苦しさを理解するうえで、この「アクセルとブレーキが同時に踏まれる状態」はとても大切です。

 

1-7.見捨てられ不安が生む恋愛の悪循環

 

境界性パーソナリティ症と愛着不安が重なると、恋愛関係では次のような悪循環が起こりやすくなります

 

最初に、相手の小さな、ご本人にとってはネガティブな変化に気づきます。

 

例えば、返信が遅い、表情が硬い、以前より連絡が少ないといったものが代表的です。

 

すると、不安が強くなり、確認行動が増えます。

 

具体的には、何度も連絡したり相手の気持ちを確かめる、あるいは責める、試す、別れを切り出す、といったものです。

こうした言動は、どうしても相手が疲れさせてしまいます。

 

そして相手が疲れて少し距離を取ると、それがさらに「やっぱり見捨てられる」という証拠のように感じられます。

 

すると、不安はさらに強くなるという悪循環が生じます。

 

ここで大切なのは、ご本人は確認したくなるほどの強い不安に苦しめられているということです。

 

1-8.愛着の問題は「依存」だけでは説明できない

 

境界性パーソナリティ症や愛着不安がある方は、「依存的」と言われることがあります。

 

確かに、相手への確認や強い不安が目立つことはあります。

 

しかし、それを単に「依存」とだけ見ると、本質を見誤ります。

 

というのは、多くの場合、そこには安心したい気持ちと、傷つくことへの恐れがあるからです。

 

つまり…

 

相手に近づきたい。でも、裏切られるのが怖い。

 

離れられたくない。でも、自分から信じるのも怖い。

 

頼りたい。でも、頼ったあとに拒絶されるのが怖い。

 

大切にされたい。でも、大切にされるほど失うのが怖い。

 

…という心理状態が生じてしまうのです。

 

つまり、問題は安心して頼る力が育ちにくかったこと、そして親密な関係の中で安心を感じにくいことが本質なんですね。

 

そのため、心理的支援では安心して頼る経験を少しずつ作ること、不安が高まったときに相手を責めずに伝えること、関係を壊さずに距離を調整することが大切になります。

 

1-9.回復に向けてできること

 

境界性パーソナリティ症や愛着不安がある場合、恋愛の中で自分を責めすぎないことが大切です。

 

衝動的に関係を不安定にする行動を取った後に自分を責めると、不安や孤独はさらに強くなってしまいます。

 

つまり、境界性パーソナリティ症にとって「自己否定」は症状をさらに悪化させるものなのです。

 

大切なのは、まず自分の反応を理解することです。

 

つまり、どんなときに不安や確認行動が出やすいのかを理解する、衝動が生じた時にいったん立ち止まるということが大切になってきます。

 

愛着スタイルは時間はかかりますが、安心できる関係の経験や心理的支援を通して、少しずつ変化していく可能性があります。

 

まとめ

 

境界性パーソナリティ症の恋愛の苦しさの背景には、見捨てられ不安、親密さへの恐れ、信頼の難しさ、感情の波があります。

 

また恐れ回避とは、心の中で「近づきたい」というアクセルと、「傷つきたくない」というブレーキが同時に働いている状態です。

 

そのため、相手を求めながら疑ってしまう、近づいたあとに突き放してしまう、関係を守りたいのに壊すような行動をしてしまうことがあります。

 

恋愛で同じパターンを繰り返してしまうとき、自分を責めるだけでは改善しにくくなります。

 

そのため自分自身を丁寧に理解していくことが、回復への第一歩になります。

 

よくある質問


Q1. 境界性パーソナリティ症の方は、恋愛でどのような悩みを抱えやすいのですか?

 

境界性パーソナリティ症では、恋愛関係の中で見捨てられ不安が強くなりやすいことがあります。

 

たとえば、相手からの返信が遅いだけで強い不安を感じたり、少し態度が冷たく見えると「嫌われたのではないか」と感じたりすることがあります。

 

また、不安を抑えるために何度も確認したり、相手を責めたり、逆に自分から距離を取ったりすることもあります。

 

これは、親密な関係の中で、安心したい気持ちと傷つくことへの恐れが強く動いている状態として理解することが大切です。

 

Q2. 恋人の返信が遅いだけで不安になるのは、境界性パーソナリティ症なのでしょうか?

 

返信が遅いと不安になることだけで、すぐに境界性パーソナリティ症と判断することはできません。

 

見捨てられ不安は、境界性パーソナリティ症だけでなく、愛着不安、過去の恋愛での傷つき、アダルトチルドレンの課題、不安症、自己肯定感の低さなどでも見られることがあります。

 

ただし、返信の遅れをきっかけに、強い怒りや絶望感が出る、何度も確認せずにいられない、自傷衝動が出る、相手を試す行動が増える、関係が何度も不安定になる場合は、専門家に相談することが役立つことがあります。

 

Q3. 境界性パーソナリティ症の恋愛で「追いかける」と「突き放す」が起こるのはなぜですか?

 

境界性パーソナリティ症では、恋愛関係の中で「近づきたい気持ち」と「傷つくことへの恐れ」が同時に動くことがあります。

 

不安が強くなると、相手にそばにいてほしい、気持ちを確認したい、見捨てられたくないという気持ちが強くなります。

 

そのため、連絡を増やしたり、相手の気持ちを何度も確かめたりすることがあります。

 

一方で、相手に近づきすぎると、今度は「裏切られるのではないか」「どうせ傷つくのではないか」という恐れが出て、相手を突き放したくなることがあります。

 

これは、心の中で「近づきたい」というアクセルと、「傷つきたくない」というブレーキが同時に働いている状態です。

 

Q4. 境界性パーソナリティ症の恋愛はうまくいかないのでしょうか?

 

境界性パーソナリティ症があるからといって、恋愛が必ずうまくいかないわけではありません。

 

ただし、見捨てられ不安、感情の波、確認行動、試し行動、急な怒りや絶望感が強い場合、恋愛関係が不安定になりやすいことはあります。

 

大切なのは、どの場面で不安が高まるのか、どのような言葉や態度に傷つきやすいのか、不安になったときにどのような行動を取りやすいのかを理解することです。

 

自分の反応のパターンを理解し、相手を責める前に気持ちを言葉にする練習をしていくことで、恋愛関係を安定させやすくなる場合があります。

 

Q5. 境界性パーソナリティ症と恋愛の悩みはカウンセリングで相談できますか?

 

相談できます。

 

カウンセリングでは、恋愛で見捨てられ不安が強くなる場面、確認行動や試し行動の背景、相手を責めたくなる流れ、急に別れたくなる気持ち、親密さが怖くなる理由などを整理していきます。

 

また、不安が高まったときにすぐ行動するのではなく、一度立ち止まる方法、自分の気持ちを安全に伝える方法、相手との距離感を調整する方法も一緒に考えていきます。

 

恋愛の問題は、単に「相手との相性」だけではなく、愛着、見捨てられ不安、感情調整、自己評価の問題とも関係します。

 

一人で抱え込まず、専門家と一緒に整理することが回復の手がかりになります。

 

参考論文

Smith & South(2020)Romantic attachment style and borderline personality pathology

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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