自己肯定感は「高い評価」だけでは育たない
2026/06/26
みなさん、こんにちは。
神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。
カウンセリングに来られる方で、「自己肯定感の低さ」に悩まれている方は珍しくありません。
そして、自己肯定感を上げる方法というものがなかなか見つからず、その結果しんどさを抱え続けなければならないという状態に至っています。
自己肯定感の低さの大きな要因の1つとして、自己に対する評価、つまり自分自身への評価や他人からの評価によって解決されるのではないかという仮説が成立します。
結論から言えば、自己肯定感は、能力や成果を高く評価することだけでは育ちません。
必要なのは、うまくできた自分だけではなく、失敗した自分、弱さのある自分、迷っている自分も含めて「それでも自分でいてよい」と扱えることです。
そして、その感覚を育てるうえで、評価せずに関わってくれる信頼できる他者の存在が大きな支えになります。
そこで今回は、自己肯定感の育て方についてシェアしたいと思います。

1-1.自己評価と自己肯定感は同じではない
先ほど、自己肯定感と自分自身への評価の関連についてお話ししました。
実は自己肯定感と、自分自身に対する評価は、似て非なるものです。
自己評価とは、自分の能力、成果、外見、役割などを判断することです。
例えば、仕事ができる、人から頼りにされている、容姿に自信がある、学歴や収入が高い、努力を継続できるといったことは、自分に対する肯定的な評価につながります。
こうした評価は、確かに自信を支える大切な要素です。
しかし、仕事の成果や周囲からの反応、年齢や環境の変化などによって、こうした評価は一定せず、揺れ動いてしまうことが珍しくありません。
仕事で失敗することもあります。
年齢や体調によって、以前と同じように動けなくなることもあります。周囲から評価されない時期もあるでしょう。
そのため、自己評価だけで自分の価値を支えていると、基準を満たせなくなった瞬間に、自分への信頼まで崩れやすくなります。
一方、自己肯定感は、「失敗しても、自分を敵にしない感覚」と捉えることができます。
行動が不適切だったと認めても、自分の人格全体を否定しないことや、能力が足りない部分があっても、自分の存在価値まで下げないこと。
この切り分けができることが、自己肯定感の重要な土台です。
1-2.他人の評価に頼るほど、自己肯定感が不安定になる理由
自己肯定感が弱いと、人は自分の価値を自分だけでは支えきれないため、他人の評価によって安心しようとしやすくなります。
褒められるとほっとし、感謝されると自分には価値があると感じ、誰かに必要とされることで自分の存在を確かめようとします。
しかし、他人がどのように反応するかは、自分の努力だけで決められるものではありません。
どれだけ努力しても褒められないことがあります。
親切にしても感謝されないことがあります。
相手の機嫌や価値観によって、評価が変わることもあります。
そのため、他者からの評価に強く依存していると、嫌なことでも頼みを断れなくなったり、相手の期待を先回りして満たそうとしたりすることが増えていきます。
また、不満や違和感があっても口にできず、相手の表情や声の調子、メッセージの返信速度などを細かく確認しては、「嫌われていないか」「評価が下がっていないか」と不安になることもあります。
さらに、相手からの評価を失わないために、自分の体調や気持ちを後回しにして無理を続けてしまう事にもつながります。
こうした振る舞いは、周囲からは協調的で気配りのできる人に見えるかもしれません。
しかし、その内側では不安や怒り、疲労が少しずつ蓄積し、やがて人間関係そのものが大きな負担になることになってしまう可能性を高めてしまいます。
そのため自己肯定感を育てるには、「相手に評価される自分」だけでなく、「評価されなくても自分を見捨てない感覚」が必要です。
1-3.信頼できる他者が自己肯定感を支える理由
自分を肯定することは、自分一人だけで完結するとは限りません。
人は、周囲の人との関わりを通して、「自分はどのように扱われる存在なのか」を少しずつ学んでいきます。
例えば、失敗するたびに強く責められたり、弱音を吐いたときに軽蔑されたり、自分の意思で断っただけで関係を切られたりする経験が続くと、どうなるでしょうか。
人は次第に「うまくできる自分でなければ受け入れてもらえない」「相手の期待に応えなければ見捨てられる」と感じやすくなる可能性が高まります。
その結果、本来の気持ちや弱さを隠し、相手に合わせることが習慣になっていきます。
そして、「ありのままの自分では、人から大切にしてもらえない」という感覚が、心の中に根づきやすくなるのです。
反対に、失敗しても人格まで否定されず、意見が違っても関係が切れない経験を重ねると、自分への見方も少しずつ変わっていきます。
弱さを打ち明けても笑われず、無理な依頼を断っても意思を尊重してもらい、不安や怒り、悲しみなどの感情を抱くこと自体を責められない…。
そのような関係の中で、人は「完璧でなくても受け入れてもらえる」「自分の気持ちや希望を大切にしてよい」と感じられるようになります。
こうした体験の積み重ねが、他者への安心感だけでなく、自分自身を否定せずに受け止める感覚を育ててくれるんですね。
そのため、自己肯定感を育てるには、信頼できる他者を見つけること、良い関係を作ることが非常に大きな意味を持ちます。
信頼できる他者は、何でも肯定してくれる方ではありません。
問題があるときは率直に伝えつつも、行動の問題と人間としての価値を区別して関わってくれる方です。
そのような関係の中で、人は「失敗しても戻れる」「違う意見を持っても大丈夫」ということを学ぶことにつながります。
1-4.「NOを言っても関係が壊れない」体験が自分の軸を育てる
自己肯定感が低い方にとって、「NO」と言うことは大きな不安を伴います。
断ったら嫌われる。
相手を失望させる。
冷たい人だと思われる。
関係が壊れる。
このような予測があるため、自分の限界を越えて引き受けてしまいます。
しかし、信頼できる関係の中で「今回はできない」と伝え、それでも関係が続く経験が積み重なると、考え方が変わっていきます。
「断っても大丈夫だった」
「意見が違っても話し合えた」
「自分の希望を伝えても拒絶されなかった」
こうした経験は、「自分の感情や希望を尊重してよい」という感覚を育てます。
つまり「自分のルールで生きることができる」、言い方を変えると「ありのままの自分でいることができる」ということです。
しかし、自分のルールで生きるとは、他人を無視することではありません。
相手の事情も尊重しながら、自分の限界や価値観も同じように扱うことです。
1-5.自己肯定感を育てる3つの信頼
自己肯定感を支える関係は、次の3つの信頼につながります。
(1)他者への信頼
これは、「この人には、弱さや本音を話しても大丈夫」と思える感覚です。
信頼できる相手は、多くいる必要はありません。
一人か二人でも、否定せずに話を聞いてくれる相手がいることは大きな支えになります。
ただし、信頼とは何でも話すことではありません。
相手の反応を見ながら、少しずつ関係を深めていくものです。
(2)人間関係への信頼
一人の信頼できる方との経験が、「すべての人が自分を否定するわけではない」という認識につながります。
過去に傷つく経験が多いと、世界全体が危険に見えることがあります。
しかし、安全な関係を経験することで、「理解し合える人もいる」「助けを求めてもよい」と感じられるようになります。
3.自分への信頼
他者との安全な関係を土台に、「自分は自分でいて大丈夫」という感覚が育ちます。
これは「自分は何でもできる」という自信ではありません。
失敗しても対処できる。
傷ついても助けを求められる。
自分に合わないものは断れる。
迷っても考え直せる。
このような自分への信頼が、自己肯定感を安定させます。
1-6.信頼できる人の見分け方
信頼できる人とは、単に優しい人とは限りません。
そのため、信頼できるか否かの判断基準として、次のような特徴があるかを確認してみましょう。
話をすぐに評価せず、最後まで聞く
意見が違っても人格を否定しない
断ったときに脅したり責めたりしない
秘密や個人情報を守る
相手の都合だけを押しつけない
間違えたときに謝ることができる
一貫した態度で関わる
信頼は、肩書きや関係の長さだけでは決まりません。
家族や長年の友人であっても、安全に本音を話せない場合があります。
反対に、出会って間もなくても、丁寧に境界線を守ってくれる人もいます。
そのため、言葉よりも実際の行動を見て判断することが大切です。
1-7.自己肯定感を育てるための具体的な実践
では具体的に、どのようにして自己肯定感を高めればよいかを見ていきましょう。
(1)自分の行動と存在を分けて振り返る
失敗したときは、「自分は駄目だ」ではなく、「今回の行動のどこを変える必要があるか」と考えます。
つまり人格への攻撃ではなく、修正可能な行動へ焦点を戻します。
(2)小さな「NO」を安全な相手に伝える
いきなり大きな要求を断る必要はありません。
「今日は難しい」
「今回は参加できない」
「少し考えてから返事をしたい」
このような小さな意思表示から始めていきましょう。
(3)評価ではなく理解を求めて話す
相談するときに、「正しいかどうかを判断してほしい」のではなく、「まず話を聞いてほしい」と伝えます。
求めている関わり方を言葉にすることで、安全な対話が作りやすくなります。
(4)受け取った肯定を記録する
これは「助かった」「話してくれてよかった」「無理しなくていい」と言われた経験を書き留めておくというものです。
自己否定が強いときは、肯定された経験を忘れやすいため、記録が現実を思い出す助けになります。
1-8.信頼できる人が身近にいない場合
現在、安心して話せる相手がいない人もいるでしょう。
その場合は、無理に誰かを信頼しようとする必要はありません。
心理カウンセリング、医療機関、相談機関、自助グループなど、役割や守秘義務が明確な場所から関係を作る方法もあります。
安全な関係は、一度に完成するものではありません。小さなやり取りを積み重ね、「この人は境界線を守るか」「意見が違っても尊重するか」を確かめながら育てていくものです。
まとめ:自己肯定感は評価より「関係の中の肯定」で育つ
自己肯定感は、自分を高く評価し続けることではありません。
成果が出ない日も、失敗したときも、自分の存在まで否定せずに扱えることです。
自己肯定感を育てていくうえで、信頼できる他者との関係は大きな支えになります。
自分の弱さを話しても否定されず、NOと伝えても関係が壊れず、意見が違っても一人の人間として尊重される…。
こうした経験を少しずつ重ねることで、「この人なら信頼できる」という他者への信頼が生まれます。
そして、その信頼は「人間関係は必ずしも怖いものではない」という感覚へ広がり、やがて「自分は自分のままでいても大丈夫だ」という自分自身への信頼につながっていきます。
自己肯定感は「自分一人で強くなること」ではありません。安全な人間関係の中で、自分を大切に扱う方法を学び、それを少しずつ自分自身にも向けていくことです。
よくある質問(FAQ)
Q1.周囲から褒められても、自分に自信が持てません。なぜでしょうか?
褒められることで自己評価は上がっても、自己肯定感まで安定するとは限らないためです。
仕事の成果や努力を評価されると、一時的には安心できます。
しかし、「できている自分だけに価値がある」と感じていると、失敗や否定をきっかけに自信が大きく崩れます。
自己肯定感を育てるには、「うまくできなかったとしても、自分の存在まで否定しない」と考えることが大切です。成果と自分自身の価値を分けて捉えてみましょう。
Q2.頼み事を断りたいのに、嫌われるのが怖くてNOと言えません。
最初から強く断ろうとせず、小さな意思表示から練習することが有効です。
「今回は難しいです」「少し考えてから返事をします」「今日は対応できません」など、短い言葉から始めます。
信頼できる相手にNOを伝え、それでも関係が続いた経験は、「自分の希望を伝えても大丈夫」という感覚を育てます。
断ることは、相手そのものを拒絶することではありません。
Q3.失敗すると、「自分は駄目な人間だ」とすぐに考えてしまいます。
行動の失敗と、自分自身の価値が混ざっている可能性があります。
「私は駄目だ」ではなく、「今回の行動のどこを修正すればよいか」と問い直してみてください。
たとえば、連絡を忘れた場合は、「自分は無責任だ」と人格を責めるのではなく、「次回は予定表に記録する」と行動に焦点を移します。
反省は必要ですが、自己否定まで加える必要はありません。
Q4.弱いところを見せると、相手に嫌われたり見下されたりしそうで怖いです。
誰にでも弱さを見せる必要はありません。安全な相手を選び、少しずつ話すことが大切です。
信頼できる人かどうかは、意見が違ったときに尊重してくれるか、話した内容を勝手に広めないか、断ったときに責めないかなど、日頃の行動から判断しましょう。
最初から深い悩みを話すのではなく、「最近少し疲れている」など、小さな内容から相手の反応を確かめてもよいでしょう。
Q5.身近に信頼できる人がいません。自己肯定感を育てることはできますか?
身近な人だけにこだわらず、安全な関係を少しずつ作ることができます。
心理カウンセリング、医療機関、相談窓口、自助グループなど、役割や守秘義務が明確な場所を利用する方法があります。
また、日常の中で「話を最後まで聞いてくれた」「断っても態度が変わらなかった」といった小さな安全の経験を記録することも役立ちます。
自己肯定感は、一人で無理に高めるものではありません。安心できる関係の中で、自分を否定せずに扱う経験を積み重ねながら育っていきます。
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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