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うつ病の症状はきっかけによって違う?症状の違いから考える心のケア

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うつ病の症状はきっかけによって違う?症状の違いから考える心のケア

うつ病の症状はきっかけによって違う?症状の違いから考える心のケア

2026/08/02

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

心理カウンセリングで抑うつに関するご相談を受けていると、「うつ」と一言で表しても、その苦しさの現れ方は人によってかなり違うことを感じます。

 

深い悲しみが続く方もいれば、「悲しい」というより、とにかく身体が重くて動けない方もいます。

 

眠れなくなる方もいれば、反対に何時間寝ても眠い方もいます。

 

自分を激しく責める方もいれば、何も感じられなくなったように話される方もいます。

 

こうした違いは、決して珍しいことではありません。

 

上記のように、抑うつ症状は誰にでも同じ形で現れるわけではなく、その人が置かれている状況や経験した出来事によって、症状の現れ方が異なる可能性があります。

 

Keller et al.(2007)の研究も、死別、恋愛関係の喪失、慢性的なストレス、失敗など、それぞれ異なる出来事と、異なる抑うつ症状のパターンとの関連を示しています。

 

そのため、心のケアでは「うつだからこの方法」と一律に考えるのではなく、何が起きて、今どのような症状に苦しんでいるのかを丁寧に見ていくことが大切です。

 

そこで今回は、うつ病とその発症のきっかけの関係についてシェアしたいと思います。

 

※本記事は、公認心理師として一般的な情報を提供するものであり、特定の方の診断や治療、効果を保証するものではありません。症状によって生活に大きな支障が出ている場合は、精神科・心療内科などの医療機関にご相談ください。

 

 

1:うつ病は「悲しい病気」とは限らない

 

うつ病というと、強い悲しみや落ち込みを思い浮かべる方が多いと思います。

 

しかし実際には、抑うつ症状にはさまざまなものがあります。

 

気分の落ち込みだけでなく、何をしても楽しくない、疲れやすい、眠れない、眠りすぎる、食欲がなくなる、反対に食べすぎる、集中できない、自分を責める、身体が動かない、落ち着かないなど、多様な症状があります。

 

厚生労働省も、うつ病では心の不調だけでなく、睡眠や食欲の変化、身体のだるさなど、身体面に症状が現れることがあると説明しています。

 

つまり、「涙が出ないからうつではない」「悲しいというより疲れているだけだから大丈夫」とは限らない、ということなんですね。

 

2:出来事によって抑うつの現れ方は違うのか

 

この点を検討したのが、Keller et al.(2007)の研究です。

 

研究では、過去1年間に抑うつ症状を経験した4,856人を対象として、本人が抑うつのきっかけになったと考えている出来事と、12種類の抑うつ症状との関連が調べられました。

 

研究で扱われた症状には、気分の落ち込み、喜びや興味の喪失、疲労感、身体の動きの低下、落ち着かなさ、不眠、過眠、食欲低下、食欲増加、自分を傷つけたいという考え、集中困難、罪悪感などが含まれています。

 

そして、出来事は「身近な人の死」「恋愛関係の喪失」「失敗」「慢性的なストレス」「健康問題」「対人葛藤」「将来への恐怖」「その他」「明確なきっかけなし」の9カテゴリーに分けられました。

 

分析の結果、経験した出来事によって、次のような抑うつ症状の現れ方には異なる傾向が認められました。

 

ただし、これはあくまでも「傾向」であって、「必ずこうなる」とは限らないと考えることが重要です。

 

(1)身近な人を亡くした場合

 

家族や親しい人との死別では、強い悲しみ、物事を楽しめない・喜びを感じられない状態、食欲の低下が比較的目立っていました。

 

一方で、過眠や罪悪感は相対的に少ない傾向がみられました。

 

つまり、大切な人を失ったことに関連する抑うつでは、「身体が重くて何もできない」というよりも、悲しみや喪失感そのものが症状の中心になりやすかったと考えられます。

 

(2)失恋や離婚など、恋愛関係を失った場合

 

失恋、離婚、パートナーとの別れなどでは、死別と同じように、悲しみ、喜びの喪失、食欲低下が目立っていました。

 

さらに恋愛関係の喪失では、罪悪感や集中力の低下も比較的強くみられました。

 

これは、「自分の何が悪かったのだろう」「あのとき違うことをしていれば」と過去を振り返り、自分を責める方向へ気持ちが向かいやすいことが、この症状の特徴からもうかがえます。

 

一方、疲労感、身体の動きの低下、落ち着かなさ、過眠、食欲増加などは相対的に少ない傾向がありました。

 

(3)仕事や目標などで「失敗した」と感じた場合

 

仕事、学業、目標の断念など、本人が「失敗」と感じた出来事のあとでは、死別や失恋とは少し異なる傾向が示されました。

 

比較的目立っていたのは、疲労感や過眠など、エネルギーが低下するような症状です。

 

反対に、強い悲しみ、楽しめない感覚、食欲低下といった症状は、死別や恋愛関係の喪失に比べると目立ちにくい傾向がありました。

 

「つらくて泣いている」というより、「何もする気になれない」「ずっと寝ていたい」「身体が重い」といった形で抑うつが表れる場合がある、ということです。

 

(4)仕事・経済問題などの慢性的なストレスが続いた場合

 

仕事の負担、経済的な問題、法律上の問題など、長期間にわたってストレスが続いていた場合には、疲労感、過眠、食欲の増加が比較的目立っていました。

 

一方で、悲しみ、喜びや興味の喪失、食欲低下は相対的に少ない傾向がみられました。

 

この結果は臨床的にも重要です。

 

慢性的なストレスによる抑うつでは、本人が「悲しくないから、うつではない」と考えてしまうことがあります。

 

しかし実際には、「何時間寝ても眠い」「身体が重い」「疲れて何もしたくない」「食べる量が増えた」といった形で心身の負担が現れることがあります。

 

(5)自分自身の健康問題がきっかけになった場合

 

病気や身体の不調など、自分自身の健康問題に関連した抑うつでは、特に精神運動制止、つまり考えたり動いたりする速度が落ち、身体の動きが鈍くなるような症状が比較的目立っていました。

 

反対に、罪悪感は比較的少ない傾向が認められました。

 

ただし、身体疾患そのものによる疲労や活動量の低下も考慮する必要があるため、健康問題がある場合には、心理面だけでなく身体面を含めて状態を見ることが大切です。

 

(6)人間関係の葛藤がきっかけになった場合

 

家族、友人、職場などでの対人葛藤が関連していた場合には、他の出来事と比べて罪悪感が比較的強くみられました。

 

人間関係で問題が起きると、「自分の言い方が悪かったのではないか」「自分が相手を傷つけたのではないか」「もっと違う対応ができたのではないか」と、自分の行動を繰り返し振り返ることがあります。

 

もちろん、罪悪感があるからといって、本当にその人に責任があるとは限りません。

 

というのは、抑うつが強くなると、実際以上に自分の責任を大きく捉えてしまうこともあるからです。

 

(7)将来に対する強い恐怖を経験した場合

 

この場合には、食欲増加が比較的みられやすく、罪悪感は少ない傾向がありました。

 

将来への不安が長く続くと、「悲しい」という感情よりも、緊張や不安を抱えながら食行動などに変化が現れることがあるのかもしれません。

 

(8)はっきりしたきっかけがない場合

 

興味深いのは、「特に思い当たる出来事はなく、突然抑うつ状態になった」と回答した方たちです。

 

このグループでは、疲労感、過眠、食欲増加、身体や思考の動きの低下が比較的目立っていました。

 

一方、悲しみ、食欲低下、集中困難などは比較的少ない傾向でした。

 

また、自分を傷つけることについての考えも一部の分析では多く認められました。

 

ただし、この結果は別の分析では再現されていないため、「きっかけのない抑うつでは自傷念慮が生じやすい」とまでは断定できません。

 

(9)同じ「うつ」でも、その中身は同じではない

 

Keller et al.(2007)の研究をまとめると、特徴的なのは次のような違いです。

 

✔死別・失恋などの喪失では、悲しみ、喜びの喪失、食欲低下といった「喪失感」に近い症状が目立つ。

 

✔失敗や慢性的なストレスでは、疲労感、過眠など「エネルギーの低下」に近い症状が目立つ。

 

✔対人葛藤では、罪悪感が比較的目立つ。

 

✔健康問題では、身体や思考の動きが鈍くなる精神運動制止が比較的目立つ。

 

✔明確なきっかけがない抑うつでは、疲労、過眠、食欲増加、精神運動制止などが比較的目立つ。

 

このような違いが示されています。

 

もちろん、これはあくまで集団としてみた「傾向」です。

 

「失恋したから必ず食欲がなくなる」「仕事のストレスだから必ず眠くなる」ということではありません。

 

当然ですが、同じ出来事を経験しても、症状の現れ方には大きな個人差があります。

 

ただ、この研究から考えたいのは、抑うつという同じ名前で呼ばれていても、その人が実際に経験している苦しさは一人ひとり異なるということです。

 

だからこそカウンセリングでも、「うつがあるかどうか」だけを見るのではなく、何が起き、その後どのような症状が現れ、現在の生活のどこに最も負担がかかっているのかを丁寧に見ていくことが大切となってきます。

 

3:「なぜつらいのか」を理解することがケアにつながる

 

例えば、仕事上の負担が長期間続き、疲労感が強く、休日には一日中眠ってしまう方がいたとします。

 

その方に「もっと楽しいことをしましょう」と勧めても、まず身体と心の負荷を下げなければ難しい場合があります。

 

一方、大切な人との別れを経験し、悲しみや自責感が非常に強い場合には、「どうすれば元気になるか」だけを考えるより、失ったものについて語り、その出来事を自分の人生の中で受け止めていく時間が必要になることがあります。

 

つまり、同じ「抑うつ」であっても、必要な支援は少しずつ違ってきます。

 

4:症状を一つずつ見ていく

 

Fried & Nesse(2015)は、うつ病の症状を単純に合計した点数だけで捉えることには限界があり、不眠、疲労感、集中困難、自殺念慮など、それぞれの症状を個別に見ることが重要だと指摘しています。

 

別の研究では、3,703人のうつ病患者について1,030種類(!)もの異なる症状パターンが確認されています。

 

そのため、カウンセリングでも、「うつがあるか、ないか」だけを見るのではなく、「今、一番生活を苦しくしている症状は何か」という視点を持つことが大切になってきます。

 

眠れないことなのか、身体が動かないことなのか、自分を責め続けることなのか、人との関係を避けることなのか。

 

そこがわかると、取り組むべきことも見えやすくなります。

 

5:自分でできること~「今の自分」を観察する~

 

抑うつ状態にあるときは、無理に原因を一つに決める必要はありません。

 

まずは一週間程度、自分の状態を簡単に記録してみるのも一つの方法です。

 

睡眠時間、食欲、疲労感、気分、活動量、強く考えていたこと、その日にあった出来事などを書いてみます。

 

すると、「仕事の日の夜に特に落ち込む」「人と会ったあとは疲労が強い」「眠れない翌日は自己否定が強くなる」など、自分の症状のつながりが見えてくることがあります。

 

ここで大切なのは、自分を分析して責めることではありません。

 

これはうつ病がどうしても自責につながりやすいという観点から見ても重要です。

 

そのため、「私はなぜこんなに弱いのだろう」ではなく、「今の自分には何が起きているのだろう」という視点で見ることです。

 

6:カウンセリングでは「うつ」ではなく、その人を見る

 

カウンセリングでは、診断名だけを見て支援方法を決めるわけではありません。

 

どのような出来事があったのか、どの症状が強いのか、何を避けるようになったのか、生活のどこに負担がかかっているのか、そして本来どのような生活を取り戻したいのかを確認していきます。

 

そして必要に応じて、行動活性化、認知行動療法、アクセプタンス&コミットメント・セラピーなどを取り入れることもあります。

 

また、症状が強い場合には、カウンセリングだけで対応するのではなく、精神科や心療内科での診察や薬物療法を組み合わせることも重要になってきます。

 

まとめ

 

Keller et al.(2007)の研究から見えてくるのは、抑うつは一つの決まった形で現れるものではないということです。

 

喪失を経験した人と、慢性的な仕事のストレスを抱えている方では、同じ「抑うつ」であっても、心と身体に現れる症状が異なることがあります。

 

そのため、「もっと頑張らなければ」「気持ちを切り替えなければ」と一括りに考える必要はありません。

 

大切なのは、今どのような症状があり、それが何と結びつき、生活のどこを苦しくしているのかを丁寧に見ていくことです。

 

抑うつ状態が何週間も続いている、仕事や家事が難しくなっている、眠れない・眠りすぎる状態が続く、自分を強く責める、あるいは「消えてしまいたい」という気持ちが出ている場合には、一人だけで抱えず、精神科・心療内科や心理カウンセリングなどの専門的な支援につながることをおすすめします。

 

よくある質問


Q1.ストレスの種類によってうつ病の症状は変わるのですか?

 

研究では、経験した出来事の種類と、現れやすい抑うつ症状との間に一定の関連が示されています。

 

ただし個人差が大きいため、「この出来事なら必ずこの症状になる」と決まっているわけではありません。

 

Q2.悲しくないのに、うつ病になることはありますか?

 

あります。

 

うつ病では、悲しみだけでなく、意欲低下、疲労感、睡眠や食欲の変化、集中力の低下などが前面に出ることがあります。

 

Q3.原因がはっきりしていれば、うつ病ではないのでしょうか?

 

原因となった出来事が理解できることと、うつ病かどうかは別の問題です。

 

つらい出来事をきっかけとして、医学的な治療が必要な抑うつ状態になることもあります。

 

Q4.原因を見つければ、うつは改善しますか?

 

原因を理解することは役立ちますが、それだけで改善するとは限りません。

 

睡眠、活動量、考え方、対人関係、生活環境など、症状を現在維持している要因にも目を向けることが大切です。

 

Q5.カウンセリングを受ける目安はありますか?

 

気分の落ち込み、疲労、不眠、過眠、自己否定などが続き、仕事、家事、人間関係に影響が出ている場合には相談を検討してよいでしょう。

 

特に、自傷や「死にたい」という気持ちがある場合には、早めに医療機関へ相談することが重要です。

 

参考文献

Keller et al.(2007). Association of Different Adverse Life Events With Distinct Patterns of Depressive Symptoms. American Journal of Psychiatry, 164(10), 1521–1529.

Fried & Nesse(2015). Depression sum-scores don't add up: Why analyzing specific depression symptoms is essential. BMC Medicine, 13, 72.

Fried & Nesse(2015). Depression is not a consistent syndrome: An investigation of unique symptom patterns in the STARD study.* Journal of Affective Disorders, 172, 96–102.

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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