強迫症では家族の協力が逆効果になることも?家族の巻き込まれの問題
2026/09/22
強迫症では家族の協力が逆効果になることも?家族の巻き込まれの問題とは?
強迫症というのはご本人だけでなく、ご家族も疲れ切っているケースも珍しくありません。
たとえば強迫症では、症状の内容によって次のような確認を家族に求めることがあります。
✔ 確認・加害への恐怖
「玄関の鍵、本当に閉まっていたよね?もう一度見てきてほしい」
✔ 汚染・洗浄への恐怖
「この食事は汚染されていないよね?食べても大丈夫だよね?」
✔ 加害・責任への恐怖
「さっき誰かにぶつかったり、傷つけたりしていないよね?」
✔ 侵入思考・タブーな思考への恐怖
「こんな考えが浮かんでも、本当にそうしたいと思っているわけではないよね?」
✔ 対称性・「しっくりこなさ」へのこだわり
「これ、ちゃんと左右同じに並んでいるよね?おかしくないよね?」
ご本人としては、本当に不安だから確認しています。
そしえご家族も、苦しんでいる姿を見ると「大丈夫だよ」と答えてあげたくなります。
ところが、確認して安心しても、しばらくするとまた不安になります。そして再び確認する。この繰り返しが続いていくことがあります。
Lebowitzら(2012)は、こうした家族の対応を「family accommodation(家族の巻き込まれ)」として整理しています。
これは、ご家族が強迫行為に参加したり、不安になる状況を避けられるよう手助けしたり、強迫症状に合わせて家族の生活まで変更したりすることを指します。
こうした巻き込まれは強迫症で非常によくみられ、症状の重さとも一貫して関連しています。
ここで大切になるのが、家族が本人を助けること自体が問題なのではないということです。
大切なのは、「本人の苦しさを支えること」と「強迫症が求める確認や回避に協力すること」を分けることです。
そこでこのブログでは、強迫症(強迫性障害)とご家族の巻き込まれについてシェアしたいと思います
1.「ご家族の巻き込まれ」とは何か
ご家族の巻き込まれには、さまざまな形があります。
例えば汚染への恐怖が強い方のために、家族が代わりにドアノブを触る。本人が安心できるまで家族も何度も手を洗う、とったものです。
そして確認強迫がある方に、「鍵は閉まっているよ」「ガスは消したよ」と何度も保証することになります。
また加害への恐怖がある方に、「あなたが誰かを傷つけることなんて絶対にないよ」と繰り返し安心させることも典型例です。
あるいは、本人が不安になる場所を家族全員で避けたり、強迫のためにできなくなった家事をご家族がすべて代わりに行ったりすることもあります。
この場合、ご家族は、本人を苦しめようとしているわけではありません。
むしろ、苦しんでいる本人を何とか安心させたいからこそ協力していることがほとんどです。
2.なぜ「安心させること」が問題になるのか
ここが強迫症を理解するうえで重要です。
例えば、「この手は汚れていないよね?」とご家族に確認したとします。
この時、ご家族が「大丈夫。汚れていないよ」と答えると、不安は一時的に下がります。
すると脳は、「不安になった→ 家族に確認した→ 安心できた」という経験を学習します。
その結果、次に同じような不安が起きたとき、「また確認すれば安心できる」と考えやすくなります。
つまり確認によってその場の苦しさは軽くなる一方で、「確認しなければ不安に耐えられない」という学習が強くなってしまうことに繋がってしまいます。
これは、何度も手を洗う、鍵を確認するなどの強迫行為と基本的には同じ仕組みです。
3.家族への確認も強迫行為になることがある
強迫行為というと、「手を何十回も洗う」「鍵を何度も確認する」といった行動を想像しやすいと思います。
それは確かにそうなのですが、しかし、「家族から安心をもらうこと自体が強迫行為の一部になっている」ことも珍しくありません。
例えば、「私、大丈夫だよね?」と一度聞いてくるとします。
そしてご家族から「大丈夫」と言われると安心します。
しかし数分すると、「でも本当に大丈夫かな」という疑いが再び出てきます。
そこで、「絶対に大丈夫?」ともう一度確認することになります。
このように、「不安 → 確認 → 安心 → 再び疑い → 再確認」という循環が続きます。
問題は、「家族の説明が足りなかった」ことではありません。
強迫症では、100%の確実性を得ようとしても、疑いが再び生まれてしまうことが珍しくありません。
その結果、ご家族に対する確認も強迫的になってしまうのです。
4.家族もまた、この循環から抜けにくくなってしまう
こうしたケースでは、ご家族側なりの理由があります。
本人が強い不安を訴えているときに、「今回は答えないよ」と言えば、本人の不安がさらに強くなることがあります。
すると怒ったり、泣いたり、「どうして助けてくれないの?」と言われることに繋がりやすくなります。
するとご家族としても、「一回答えるだけなら」と確認に応じたくなります。
すると、回答すると本人が落ち着き、家庭内の緊張も下がります。
つまり、「本人は確認して不安が下がり、家族も答えることで家庭内の緊張が下がる」ということがあるため、双方にとってその短期的なメリットが生じます
そのため、このご本人の確認行動と家族の安心の提供という悪循環は続きやすいのです。
5.強迫症は「ご本人だけの問題」ではなく、家族全体の対応に広がることも問題となる
この論文から分かる重要なことの一つは、強迫症を「本人の頭の中だけで起きている問題」として捉えないことです。
強迫症が長く続くと、ご本人の不安や強迫行為に、少しずつご家族も関わるようになることがあります。
例えば、ご本人が「本当に大丈夫?」と確認すると、ご家族は不安を和らげるために「大丈夫だよ」と答える。
ご本人が触れないものがあれば、家族が代わりに触る。不安になる場所があれば、家族も一緒に避ける。
このような対応をすると、ご本人は一時的に安心できます。
またご家族にとっても、ご本人が落ち着くことで家庭内の緊張が和らぎます。
そのため、ご本人にとってもご家族にとっても、「これでよかった」と感じやすくなります。
しかし、この一時的な安心が繰り返されると、「不安はそのままでは耐えられない」「安心するためには誰かに確認してもらう必要がある」「少しでも危険が残っているなら、完全になくさなければならない」という強迫症の考え方が、かえって強まりやすくなることに繋がりやすくなります。
そのため治療では、ご本人が行っている手洗いや確認といった強迫行為だけでなく、ご家族がどのような形で強迫症の循環に巻き込まれているかを見ることも大切になってきます。
例えば、次のような流れです。
強迫観念や「本当に大丈夫だろうか」という疑いが生じる
↓
不安が強くなる
↓
ご家族に確認したり、代わりに何かをしてもらったり、避けることへの協力を求める
↓
ご家族が応じる
↓
本人の不安が一時的に下がる
↓
ご家族側も本人が落ち着いたことで安心する
↓
次に不安が起きたときも、同じ対応が選ばれやすくなる
↓
強迫症の循環が続いていく
ここで大切なのは、家族の「優しさ」や「助けたいという気持ち」が悪いわけではないということです。
むしろ、本人が苦しんでいるからこそ、家族は何とか安心させようとします。
ただ、その優しさが知らないうちに強迫症が求めるルールの中に取り込まれてしまうことに繋がりがちになります。
だからこそ、家族への支援では「もう助けない」という方向ではなく、本人の不安には寄り添いながら、強迫症そのものには協力しない形へ少しずつ助け方を変えていくことが重要になります。
6.「ご家族が悪い」という単純は話ではない
ご家族の巻き込まれについて説明すると、「では、今まで私たちがやってきたことが悪かったのでしょうか」
とご家族が感じる方もおられます。
しかし、そう考える必要はありません。
ご家族は、その時点でできる方法を使って本人を助けようとして来られました。
実際、強迫症が重いほど家族の巻き込まれも強くなる傾向があり、単純に「家族が協力したから症状が重くなった」とは言えません。
その後に行われた大規模な研究でも、家族の巻き込まれが強い人ほど強迫症状も重いという中程度の関連が確認されています。
一方で、治療前の家族の巻き込まれが強いからといって、その後の治療効果が悪くなるとは明確には示されませんでした。
つまり大切なのは、「誰が悪かったのかを探すことではなく、現在できあがっている循環をどう変えるか」なんですね。
7.「助けない」のではなく「助け方を変える」
ご家族の巻き込まれを減らすというと、「本人を突き放すのですか?」と思われるかもしれません。
しかし、決してそうではありません。
たとえばご本人が、「これ、汚れていないよね?」と確認してきたとします。
これまでなら、「絶対に汚れていないよ。大丈夫」と答えていたかもしれません。
しかし強迫症への対応では…
✔「今、とても確認したくなっているんだね」
✔「不安なのは分かるよ」
✔「でも今回は、汚れているかどうかの確認には答えないでおこう」
…という対応が考えられます。
上記の対応は、不安そのものは受け止めています。
しかし、「安全だと保証してほしい」という強迫症からの要求には応じていません。
この区別がご本人の強迫症からの回復のサポートにおいて、非常に重要です。
8.突然すべての確認をやめることではない
しかしながら、「今日からご家族は一切確認に答えない」と急激に変えることが、いつでも適切とは限りません。
ご家族が突然対応を変えると、ご本人の不安が急激に高まったり、家庭内の衝突が増えたりする場合があります。
実際、ご家族が強迫への協力を止めようとした際、本人の苦痛や怒りが強まることがあると報告されています。
そうした問題があるため、心理カウンセリングでは「どの確認から減らすか」「家族はどのように返答するか」「本人の不安が強くなったときにどう対応するか」をあらかじめ話し合います。
つまり、無理のないところから少しずつ変えていく方が現実的なんですね。
9.強迫症の治療では「不安がなくなること」を待たない
強迫症では、「不安がなくなったら確認をやめよう」とすると、なかなか確認をやめられません。
治療ではむしろ、「不安や疑いが残っていても、確認しないで過ごす経験」を積み重ねます。
例えば…
✔「汚れているかもしれない。でも確認しない」
✔「鍵を閉め忘れた可能性はゼロではない。でも戻らない」
✔「誰かを傷つけていないという100%の保証はない。でも家族に確認しない」
…という経験です。
これは、強迫症において用いられる曝露反応妨害法(ERP)の重要な考え方でもあります。
目標は「絶対に安全だと確信すること」ではなく、確実ではない状態でも生活できるようになることです。
10.ご家族にできることは「安心させること」だけではない
ご家族が確認に答えなくなると、「もう自分を助けてもらえない」と感じてしまう可能性を高めてしまいます。
しかし、ご家族ができることはたくさんあります。
✔不安を感じていることを理解する。
✔治療に取り組んでいることを応援する。
✔確認したい衝動に耐えられたとき、その努力を認める。
✔一緒に普通の生活を取り戻していく。
✔強迫症状ではない話をする。
つまり、強迫症には協力しなくても、本人には寄り添うことができるということですね。
この違いをご本人とご家族の双方が理解できると、家族関係そのものも少し変わってくることが期待できます。
11.強迫症を「ご家族の問題」にするのではなく、ご家族と一緒に強迫症へ対処する
Lebowitzら(2012)は、家族の巻き込まれを強迫症の治療の中で評価し、経過を追う価値のある重要な情報だと指摘しています。
その後の研究でも、家族の巻き込まれは強迫症の重症度と関連し、認知行動療法によって巻き込まれそのものも減少することが確認されています。
ここで大切なのは、「ご家族が原因だからご家族を変える」という発想では決してありません。
そうではなく、「ご本人とご家族の双方が、強迫症によって作られた循環から一緒に抜けていく」という考え方です。
もし今、「家族に確認しないと安心できない」「家族が言うことを信じたいのに、何度聞いても疑ってしまう」
という状態になっているのであれば、その悪循環がケアのターゲットとなります。
というのは、確認することで一時的に安心できる経験を繰り返した結果、確認が必要になっている可能性があるからです。
そのため回復では、「安心させてもらうこと」を増やすより、「安心できなくても少し待てた」「確認しなくても生活を続けられた」という経験を増やしていくことが重要になります。
そしてご家族もまた、「不安をなくしてあげる人」から、「不安があっても本人が前に進めるよう支える人」へ少しずつ役割を変えていくことが大切です。
よくある質問
Q1.家族に「大丈夫?」と一度だけ確認するのも駄目なのでしょうか?
一度確認しただけで必ず問題になるわけではありません。
重要なのは、その確認が「安心するために必要不可欠な行動」になっているかどうかです。
一度確認してもすぐまた聞きたくなる、確認できないと強い不安になるという場合には、強迫行為の一部になっている可能性があります。
Q2.家族が確認に答えてくれないと、不安がもっと強くなります。それでも答えてもらわない方がよいのでしょうか?
最初は不安が強くなることがあります。
そのため、急にすべての確認を禁止するのではなく、治療の中でどの確認から減らすかを相談することが大切です。
目標は苦しませることではなく、「確認しなくても不安は扱える」という経験を増やすことです。
Q3.「大丈夫だよ」と言ってもらうだけで安心するなら、それくらいご家族に協力してもらってもよいのではないですか?
短期的には確かに安心できます。
問題は、その安心が長続きせず、次の疑いが起こるたびに再確認が必要になる場合です。
そのため、「一度安心できるか」よりも、「確認がなくても生活できる範囲が広がっているか」を見ることが大切です。
Q4.家族に迷惑をかけていると思うと申し訳なくなります。自分で全部何とかすべきでしょうか?
一人ですべて解決する必要はありません。
そして、ご家族の支援そのものをなくすことが治療目標ではありません。
強迫への協力は減らしながら、不安への寄り添いや治療への応援など、別の形で支えてもらうことを目指します。
Q5.家族がすでに強迫症状にかなり巻き込まれています。今からでも変えられるのでしょうか?
変えていくことは可能です。
ただし、長く続いた家庭内のルールを一度に変更すると本人も家族も負担が大きくなります。
そのため、何にご家族が協力しているのかを書き出し、比較的減らしやすい対応から段階的に変更していく方法があります。
そして必要であれば、本人だけでなく家族も医師や心理カウンセラーと対応を共有すると進めやすくなります。
参考文献
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こころのケア心理カウンセリングRoom
兵庫県芦屋市浜芦屋町1-27 サニーコート浜芦屋302号
電話番号 : 090-5978-1871
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この記事の執筆者
駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)
心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。
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