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休職から仕事に戻るタイミングはいつ?認知行動療法と就労支援の観点から

休職から仕事に戻るタイミングはいつ?認知行動療法と就労支援の観点から

2026/09/24

休職から仕事に戻るタイミングはいつ?認知行動療法と就労支援の視点より

うつ病や不安症等で休職中、あるいは離職してからの社会復帰を目指していおられる方のお話を伺っていると、まだ症状が完全に来ていないことや、復職後や社会復帰後にまた崩れてしまうのでは、という不安をどうしても抱きがちです。

「まだ朝につらさが残っているので働けません」

 

もちろん、心身の状態が不安定な時期に無理をして復職することは適切ではありません。

 

一方で、「症状が完全になくなるまで仕事のことは考えない」とすると、復職そのものへの不安や回避が強くなってしまう場合もあります。

 

Remeら(2015)は、うつや不安などによって働くことが難しくなっている人を対象に、仕事に焦点を当てた認知行動療法と必要に応じた就労支援を組み合わせる方法を検討しました。

 

その結果、通常の支援だけを受けた人と比べて、仕事への参加を増やしたり維持できた人が多く、抑うつや不安、生活の質にも改善がみられました。

 

この研究から分かる大切なことは、復職を「治療が終わった後に考えること」にするのではなく、治療の中で仕事への戻り方そのものを扱うことには意味があるということです。

 

そこで今回は、うつ病や不安症等の方の就労復帰についてシェアしたいと思います。

 

1.「治ってから働く」という順番だけが正解ではない

 

従来は、「症状を治療す→ 元気になる→ 復職する」という順番で考えることが多くありました。

 

もちろん、この流れが必要な方もいます。

 

しかし、実際には症状の程度と働く力は完全には一致しません。

 

多少の不安が残っていても働ける人もいれば、症状自体はかなり改善しているのに、「また失敗するのではないか「そもそも仕事ができるのだろうか?」という不安によって戻れない方もいます。

 

つまり、「症状がどのくらいあるか」と「仕事に戻れるか」は別々に評価する必要があるんですね。

 

2.研究ではどのような人を対象にしたのか

 

いつも通り論文を参照にしながら書いていますので、研究論文に軽く触れておきますね。

 

Remeらの研究では、主にうつや不安などの心理的な問題によって働くことに困難を感じている成人が対象となりました。

 

休職中の人だけでなく、休職する危険が高い人や、長期間にわたって仕事から離れている人も含まれていました。

 

そのため、この研究は単純な「復職プログラム」ではなく、仕事への参加が難しくなっている幅広い人を対象にした実臨床に近い研究です。

 

3.行われたのは「仕事に焦点を当てた認知行動療法」

 

認知行動療法というと、「ネガティブな考え方を修正する治療」というイメージを持つかもしれません。

 

確かに認知行動療法にはそうした一面もありますが、しかしこの研究で行われたのは、一般的な症状だけを扱う認知行動療法ではありません。

 

仕事に関連する不安や考え方、行動そのものを治療の中で扱う認知行動療法です。

 

具体的に何を行ったのかと言うと、「以前と同じように働けなければ意味がない」「復職して疲れたら、また病気が悪化した証拠だ」といった認知にアプローチします。

 

そして、必要に応じて仕事上の負荷、休憩、業務量、人との関わり方なども検討しました。

 

また研究では、仕事に焦点を当てた認知行動療法と就労支援を受けた人の方が、通常の支援を受けた人よりも、仕事への参加を増やしたり、維持できた人が多くなりました。

 

そしてこの研究で特に注目されたのは、長期間仕事から離れていた方々です。

 

このグループでは、通常支援だけの場合よりも、仕事焦点型の認知行動療法と就労支援を受けた人の方が、仕事へ戻ったり就労を増やした人が明らかに多くなりました。

 

これは臨床的に重要です。

 

休職が長くなればなるほど、「ブランクが長すぎる」「もう戻れない」という思いが強くなることがあります。

 

しかし、長期間仕事から離れている方でも、仕事そのものを治療課題として扱うことで仕事への再参加につながる可能性があることが研究によって示されました。

 

4.抑うつや不安も改善傾向がみられた

 

復職を考えた場合、「症状が残っているうちから仕事について考えると、かえって悪化するのでは?」と心配になる方も当然おられると思います。

 

しかし、この研究では、仕事焦点型の認知行動療法と就労支援の組み合わせが仕事への参加だけでなく、抑うつや不安、生活の質についても改善が示されました。

 

もちろん、重症状態で無理に働きましょうという意味ではありません。

 

適切な心理的支援のもとで、仕事への不安や復帰の準備を扱うこと自体が、復職の成功だけではなく、症状の回復の一部になり得るということが示されたんですね。

 

5.「症状がゼロになるまで待つ」という考え方には注意が必要

 

復職を考えるとき、どうしても「朝から一日中元気でなければならない」「疲れてはいけない」「不安を感じてはいけない」と考えてしまいがちになります。

 

しかし、仕事をしていれば健康な人でも疲れますし、不安を感じることもあります。

 

そこで大切なのは、「症状があるかないかではなく、その症状があっても必要な行動ができるか」という視点です。

 

✔「疲れたら休憩する」

✔「不安が出たら対処する」

✔「業務量を調整する」

 

これらの工夫も、復職のための大切な取り組みです。

 

6.働きながら対処する土台を作る

 

この研究の考え方を一言で表すなら、「働けるほど元気になる」だけでなく、「働きながら対処する土台を作る」ということです。

 

例えば、疲労が出たらどうするか、集中力が落ちたときどう対応するか、仕事量をどう調整するか、上司に何を伝えるか、調子が下がったとき、どこで立て直すか…

 

こうした現実的な問題をあらかじめ扱っておくことで、「調子を崩したらすべて終わり」という状態から、「調子が落ちても対処できる」という状態へ変わっていきます。

 

また、この研究を「症状があっても仕事に戻るべき」と受け取るのは適切ではありません。

 

研究では、心理療法家が状態を評価し、必要な就労支援を組み合わせながら進めています。

 

また、重篤な精神状態など、就労より安全確保や治療を優先すべきケースは対象から除かれていました。

 

したがって重要なのは、「早く戻ることではなく、治療と復職準備を切り離さないこと」といえるでしょう。

 

復職のタイミングは、その方の状態、仕事内容、職場環境、通勤負担、睡眠、再発リスクなどを踏まえて個別に判断する必要があります。

 

また復職を「ゴール」ではなく「回復過程の一部」と考えるという視点も大切です。

 

Remeら(2015)の研究は、うつや不安による休職からの回復を考えるうえで重要な示唆を与えています。

 

つまり復職は、「完全に治った後に行うもの」ではなく、「治療の中で少しずつ準備していくものと考えることができます。

 

「今の自分では働けない」と感じたときには、「症状が残っているから無理」だけで終わらせるのではなく、

何が仕事への復帰を妨げているのかを具体的に整理することが大切です。

 

それは症状なのか、不安なのか、職場環境なのか、完璧に働かなければならないという考えなのか、長く休んだことで自信を失っているのか…。

 

これらの内容によって支援の方針は変わってきます。

 

そして、それを一つずつ明らかにすることで、「働ける・働けない」という二択ではなく、自分に合った社会復帰の方法を考えやすくなっていくでしょう。

 

よくある質問

 

Q1.まだ朝に気分が重いのですが、復職を考えるのは早いでしょうか?

 

朝のつらさが残っているだけで復職不可とは決まりません。

 

一日の中でどの程度活動できるか、通勤や業務負荷に耐えられるか、休息で回復できるかなどを含めて考える必要があります。

 

症状の有無より、実際の生活機能を見ることが大切です。

 

Q2.一度復職してまた休職したらと思うと怖いです

 

再休職への不安は珍しくありません。

 

そのため、「二度と調子を崩さない」ことを目標にするより、調子が落ちたときに早めに気づき、業務量を調整したり支援を求めたりできる仕組みを作ることが重要です。

 

Q3.以前と同じ仕事量ができなければ復職する意味はないと考えてしまいます。

 

そのお気持ちは分かります。

 

しかし段階的な復職や業務調整も立派な復職です。

 

いきなり以前と同じ負荷を目指すより、現在の状態に合わせて仕事量を調整し、安定して続けられることを優先する方が現実的な場合があります。

 

Q4.長く休職しているので、もう働けない気がします

 

長期間仕事から離れると、自信を失いやすくなります。

 

ただ、今回の研究では、長く就労から離れていた人でも、仕事に焦点を当てた心理療法と就労支援によって仕事への参加が増える可能性が示されました。

 

休職期間だけで可能性を判断する必要はありません。

 

Q5.カウンセリングでは復職について何を話せばよいのでしょうか?

 

認知行動療法ではカウンセラーがどのような問題があるのかを検討するためにリードをしますので、事前に考えがまとまらなくても問題ありません、

 

認知行動療法では「復職したいかどうか」だけでなく、「何が一番怖いか」「以前の職場で何が負担だったか」「どの程度の勤務ならできそうか」「再発したときにどう対応するか」などを具体的に検討します。

 

そして復職への不安を細かく分けることで、必要な支援も見えやすくなります。

 

参考文献

Reme et al. (2015)Work-focused cognitive-behavioural therapy and individual job support to increase work participation in common mental disorders: a randomised controlled multicentre trial.Occupational and Environmental Medicine, 72(10), 745–752.

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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