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強迫症のエクスポージャーとは?「大丈夫」を確認しないアプローチの意味~神戸、芦屋、西宮のカウンセリングより~

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強迫症のエクスポージャーとは?「大丈夫」を確認しないアプローチの意味

強迫症のエクスポージャーとは?「大丈夫」を確認しないアプローチの意味

2026/07/31

みなさん、こんにちは。

神戸や芦屋、西宮などの近隣都市で活動しているこころのケア心理カウンセリングルームの心理カウンセラー(公認心理師) 駒居義基です。

 

強迫症に対するケアは一般的に暴露妨害法(ERP)を行います。

 

これは「手を洗ったけど、まだ洗えていないのではないか」という思い(強迫観念)がありながらも洗浄行為(強迫行動)をとらない、という心理療法です。

 

しかし、この心理療法は強迫症を抱えている方にとってはハードルが高く感じられるものです。

 

「怖いものに無理やり近づかなければならない」


「不安がなくなるまで耐え続けなければならない」


「確認や洗浄をやめて、本当に何か起きたら取り返しがつかない」

 

このように理解すると、エクスポージャーを怖いと感じるのは当然です。

 

しかし暴露妨害法は、苦しさを我慢することを目的とした治療ではありません。

 

不安や疑いが残っていても強迫行為をせずに過ごし、「確実に安心できなくても対処できる」「強迫行為をしなくても、予想した結果になるとは限らない」という新しい学びを脳が積み重ねる治療です。

 

したがって、取り組んでいる最中に不安が十分に下がらなくても、暴露妨害法が失敗したとは限りません。

 

予定した状況に近づき、強迫行為を控え、自分の予測と実際の結果を確認できたこと自体が重要な治療経験になります。

 

そこで今回は、強迫症に対する暴露妨害法についてシェアしたいと思います。

 

 

1:暴露妨害法とは

 

正式名称は、曝露反応妨害法、英語ではExposure and Response Preventionといい、略してERPと呼ばれます。

 

暴露とは、強迫観念や不安を引き起こすために避けている状況へ、段階的に近づくことです。

 

反応妨害とは、不安を下げるために繰り返している強迫行為を行わないことです。

 

例えば、汚染への恐怖がある方であれば、避けていた物に触れたあと、過剰な手洗いを行わずに過ごします。

 

確認の症状がある方であれば、戸締まりを決めた回数で終え、もう一度確認したい気持ちがあっても戻らずに外出します。

 

強迫行為には、目に見える行動だけでなく、頭の中で記憶をたどる、嫌な考えを打ち消す、安心できる言葉を繰り返す、家族に大丈夫か確認するといった行動も含まれます。

 

厚生労働省の治療者用マニュアルでは、ERPを中心とする治療の有効性が海外の無作為化比較試験、日本国内の研究、メタ分析によって示されていると説明されています。

 

日本不安症学会・日本神経精神薬理学会の診療ガイドラインでも、エビデンスの蓄積からERP、またはERPを含む認知行動療法を選択することが望ましいとされています。

 

2:強迫症の悪循環

 

強迫症では、次のような悪循環が起きています。

 

まず、「手に危険な汚れがついたかもしれない」「鍵を閉め忘れたかもしれない」などの強迫観念が浮かびます。

 

すると、不安、嫌悪感、罪悪感、「しっくりこない」という感覚が強くなります。

 

その苦しさを下げるために、手洗い、確認、やり直し、回避、安心の確認などを行います。

 

強迫行為をすると、一時的には楽になります。

 

しかし、それによって脳は「強迫行為をしたから危険を避けられた」と学習します。

 

そのため、次に同じ不安が生じたときには、さらに強迫行為をやめにくくなります。

 

暴露妨害法では、この悪循環の中にある「不安が生じたら、強迫行為によって安心しなければならない」という結びつきを少しずつ変えていきます。

 

3:不安が下がるまで続けなければならないのか

 

従来の暴露妨害法では、不安を引き起こす状況にとどまり、時間の経過とともに不安が低下する「馴化」、つまりある種の「慣れ」が重視されてきました。

 

もちろん、繰り返し取り組む中で不安が下がる経験は、治療への自信につながります。

 

しかし、Jacoby & Abramowitz(2016)は、暴露中に不安がどれほど下がったかが、必ずしも長期的な治療効果を予測するわけではないと指摘しています。

 

つまり不安が十分に下がらないままでも、治療効果が得られるということです。

 

不安の低下だけを成功の条件にすると、「不安が残ったから失敗した」「今日は前より怖かったから悪化した」と受け止めやすくなります。

 

その結果、暴露を「不安を消すための新しい儀式」として使ってしまう可能性もあります。

 

暴露妨害法で重要なのは、不安を必ず下げることではなく、不安がある状態でも強迫行為以外の行動を選べるようになることです。

 

4:抑制学習理論から考える暴露妨害法

 

Jacoby & Abramowitz(2016)が紹介した抑制学習理論では、暴露妨害法によって古い恐怖の記憶が消えるとは考えません。

 

例えば、「確認しなければ事故が起きる」という古い学習が完全に消えるのではなく、「確認したくても、確認せずに行動できる」「確認しなくても、予想した結果になるとは限らない」という新しい学習が脳に加わると考えます。

 

そのため、治療が進んだあとでも、疲労やストレス、環境の変化によって不安が再び強くなることがあります。

 

しかし、それは治療が無駄になったという意味ではありません。

 

古い恐怖の学習が一時的に強く表れただけであり、治療で身につけた新しい対応をもう一度選ぶことが大切です。

 

5:「予測」と「実際の結果」を比べる

 

抑制学習を重視した暴露妨害法では、課題を行う前に、自分が何を恐れているのかを具体的にします。

 

例えば、次のような予測です。

 

✔「一度しか確認しなければ、外出中ずっと不安で何もできない」

 

✔「手を洗わなければ、不快感が強くなり続けて耐えられなくなる」

 

✔「嫌な考えを打ち消さなければ、本当に行動に移してしまう」

 

そのうえで、強迫行為を控えながら、実際には何が起きたかを確認します。

 

重要なのは、「絶対に病気にならない」「将来も事故が起きない」と証明することではありません。

 

強迫症が恐れる結果には、何年も先のことや、完全には確かめられないことも多々あるからです。

 

その場合は、「不確かさがあっても生活を続けられるか」「不快感があっても強迫行為をせずに過ごせるか」「嫌な考えが浮かんでも、それを行動に移さずにいられるか」を確かめます。

 

6:暴露妨害法の具体的なステップ

 

では、暴露妨害法の具体的な進め方を見ていきましょう。


1.強迫症の仕組みを把握する

 

まずは、何がきっかけになり、どのような強迫観念が浮かび、どのような強迫行為をしているかを確認します。

 

その際、目に見える行為だけでなく、回避、安心の確認、頭の中の打ち消しや確認も書き出します。

 

2.取り戻したい生活を明確にする

 

「不安をなくす」だけではなく、強迫症が軽くなったら何をしたいかを考えます。

 

例えば家族と外出したい、仕事に集中したい、入浴時間を短くしたいなど、生活上の目標を設定します。

 

3.取り組む課題と予測を決める

 

最初から最も怖い課題を行う必要はありません。

 

ご本人が取り組む意味を理解でき、少し努力すれば実施できる課題を相談して決めます。

 

厚生労働省のマニュアルでも、課題は本人の生活の中で起こりやすく、極端すぎない内容から検討し、治療者が一方的に決めないことが重視されています。

 

4.暴露し、強迫行為を控える

 

決めた状況に近づき、手洗い、確認、やり直し、回避、安心の確認などを控えます。

 

完全にやめることが難しい場合には、回数を減らす、開始を遅らせるなど、状態に応じて調整することもあります。

 

5.不安の低下ではなく「学んだこと」を確認する

 

実は、これが非常に重要です。

 

終了後には、不安が何点まで下がったかだけでなく、次の点を振り返ります。

 

✔予測していたことは実際に起きたか。

 

✔強迫行為をしなくても何ができたか。

 

✔不安や不快感について新しくわかったことは何か。


✔次に試すなら何を変えるか。

 

6.場所や状況を変えて練習する

 

強迫症の場合、一つの場所だけでできても、別の場所では再び不安が強くなることがあります。

 

そのため治療が進んだ段階では、自宅、職場、外出先など異なる状況で取り組むことが、新しい学習を生活全体に広げる助けになります。

 

ただし、課題の順序や変化を増やす方法についてはご本人の状態に合わせた慎重な調整が必要です。

 

7:一人で最も怖い課題を始める必要はありません

 

強迫症に苦しんでいても、暴露妨害法に踏み出せない方は珍しくありません。

 

そしてそうした方は治療への意欲がないからと考えるべきではありません。

 

というのは、何をされるのかわからない、強迫行為をやめたら生活できなくなると思う、過去に無理な課題をして失敗したと感じているなど、さまざまな理由があります。

 

大切なのは、「やるか、やらないか」を迫ることではなく、何が怖くて着手できないのかを明らかにすることです。

 

カウンセリングでは、症状の悪循環、回避している状況、家族の巻き込み、メンタルチェッキングなどを確認し、本人が納得できる課題を一緒に設計します。

 

症状が重い場合、うつ状態や自傷・最悪の選択肢を考えてしまうという場合、また強い解離や妄想的な確信がある場合には、精神科や心療内科との連携も必要です。

 

まとめ

 

暴露妨害法は、強い恐怖に耐えて不安を消すための治療ではありません。

 

不安や疑いが残っていても強迫行為を控え、自分が予測していたことと実際の結果を比較しながら、新しい学びを積み重ねる治療です。

 

成功の基準は、不安がゼロになったかどうかだけではありません。

 

✔避けていた状況に近づけた。

 

✔強迫行為を控えられた。

 

✔不安があっても生活を続けられた。

 

✔恐れていた結果について新しい情報を得られた。

 

これらはすべて、回復につながる大切な経験です。

 

ただし、暴露妨害法が必要だとわかっていても始められない場合は、無理に一人で取り組むのではなく、強迫症と認知行動療法を理解している専門家へ相談するのがよいでしょう。

 

よくある質問


Q1.暴露妨害法では、最も怖いことから始めますか?

 

通常は、ご本人と相談しながら取り組める課題を決めます。

 

いきなり最も怖い課題を強制するものではありません。

 

治療の目的と課題の意味を共有し、状態に応じて段階を調整します。

 

Q2.暴露中に不安が下がらなくても効果はありますか?

 

不安がその場で十分に下がらなくても、失敗とは限りません。

 

不安がある状態で強迫行為を控え、予測していた結果と実際の結果を比較できれば、新しい学習につながります。

 

Q3.確認を一回でもしたら失敗でしょうか?

 

一回確認したことだけで、治療全体が失敗になるわけではありません。

 

何がきっかけで確認したのか、どこまで控えられたのかを振り返り、次の課題を調整します。

 

完全にできたかどうかだけでなく、以前との違いを見ることが大切です。

 

Q4.頭の中で安心するのも強迫行為ですか?

 

嫌な考えを打ち消す、記憶を何度もたどる、「大丈夫」と繰り返すなど、安心を得るための思考が強迫行為と同じ働きをしている場合があります。

 

これをメンタルチェッキングや心の中の儀式と呼ぶことがあります。

 

Q5.家族に「大丈夫」と言ってもらうのはよくないのでしょうか?

 

家族への確認によって一時的に安心しても、繰り返すほど自分で不確かさに対応する機会が減る場合があります。

 

ただし、家族の対応を突然すべて変えると混乱が生じることもあるため、本人・家族・支援者で進め方を相談することが重要です。

 

参考文献・参考資料

 

Jacoby, R. J., & Abramowitz, J. S.(2016). Inhibitory learning approaches to exposure therapy: A critical review and translation to obsessive-compulsive disorder. Clinical Psychology Review, 49, 28–40.

日本不安症学会・日本神経精神薬理学会(2025)『強迫症の診療ガイドライン 第1版』

厚生労働省『強迫性障害(強迫症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)』

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この記事の執筆者

駒居 義基(こころのケア心理カウンセリングルーム 代表)

心理カウンセラー(公認心理師)。20年以上の臨床経験と心理療法の専門性を活用して、神戸市や芦屋市、西宮市の近隣都の方々にお住いの心のお悩みを抱えている方に対して、芦屋市を拠点に最適なサポートを提供しています。

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